特定技能外国人を受け入れる際、登録支援機関への委託費用や自社支援とのコスト差に悩む企業は少なくありません。
支援委託料の全国平均は月額約2.8万円ですが、実際のトータルコストは初期費用やビザ申請代行、送迎などの追加実費によって大きく変動します。
本記事では、労働法規や入管関連制度の実務・法令に基づき、各種費用の内訳や自社支援との損益分岐点、さらに給与天引きの禁止といったコンプライアンス上の注意点まで分かりやすく解説します。
- 登録支援機関への月額委託料の相場(平均約2.8万円)と2つの料金体系の違い
- 受入時にかかる初期費用やビザ申請代行・送迎などの追加実費の内訳
- 自社支援へ切り替えるための要件と、委託 vs 自社支援の損益分岐点・選定ポイント
1.登録支援機関の費用相場と料金体系の基本

特定技能外国人の受け入れにおいて、毎月発生するランニングコストの軸となるのが登録支援機関への「月額支援委託料」です。
まずは公的データに基づく費用相場と、設定されている料金体系の種類について整理します。
月額支援委託料の相場(平均約2.8万円・ボリュームゾーンの解説)
出入国在留管理庁が公表している調査データによると、登録支援機関に支払う月額支援委託料の全国平均は1人あたり28,386円となっています。
全体の約90%が「月額3万円以下」に収まっており、その中でも特に「15,000円超〜25,000円以下」の価格帯が全体の約51%を占める最大のボリュームゾーンです。概ね1人あたり月額2万円〜3万円程度を予算の目安として考えておくとよいでしょう。
なお、2025年4月には登録支援機関に関する届出制度の見直しが行われています。
委託費用そのものへの直接的な影響は限定的ですが、契約内容や支援実施状況の報告義務が変わる可能性があるため、契約中の登録支援機関から最新の運用ルールについて説明を受けておくと安心です。
出典:出入国在留管理庁 特定技能所属機関・登録支援機関による届出
「月額定額制」と「項目別単価制」の違いと選び方
登録支援機関の料金体系は、大きく分けると「月額定額制」と「項目別単価制」の2種類が存在します。
1. 月額定額制(一括型)
毎月一定の金額(例:1人あたり月額2.5万円)を支払うことで、法令で義務付けられている10項目の支援業務を包括的にカバーするプランです。毎月のコストが予測しやすく、管理の手間が少ないため、多くの受入企業で採用されています。
2. 項目別単価制(積み上げ型)
定期面談や相談対応、各種手続の同行など、実施した支援項目ごとに単価が設定されているプランです。社内に対応できるスタッフが一部おり、特定の支援のみを部分的に外部へ委託したい場合に適しています。
選択の際は、表面的な月額料金だけでなく、自社の社内リソースで対応できる範囲と委託したい範囲を明確に切り分けた上で検討することが大切です。
出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」
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登録支援機関が担う10項目の義務的支援の具体的な内容や、自社に合った信頼できる支援機関の具体的な選び方について詳しく解説しています。費用相場を踏まえた上で委託先を比較検討したい方はぜひご覧ください。
2.月額費用だけじゃない!初期費用と追加実費の内訳

特定技能外国人を受け入れる際のトータルコストは、毎月の支援委託料だけでは収まりません。
契約時や入国時に発生する初期費用や、月額料金に含まれない追加実費の構造をあらかじめ把握しておくことが重要です。
受入時にかかる初期費用(事前ガイダンス・生活オリエンテーション等)
特定技能外国人が入国・着任するタイミングでは、月額費用とは別に「受入れ初期費用(導入費用)」が発生することが一般的です。相場としては1人あたり2万円〜5万円程度(一括導入パッケージの場合は10万円前後)となります。
主な内訳は以下の通りです。

事前ガイダンスの実施
入国前(または在留資格変更前)に、労働条件や生活環境について説明を行う業務。
生活オリエンテーションの実施
着任直後に、日本の生活ルール(ゴミ出し・交通ルール・防災等)や行政手続について案内する業務。
住居確保支援
賃貸物件の選定、契約補助、家具・家電の備品手配など。
月額に含まれないことが多い追加費用・実費(ビザ申請・送迎・通訳等)
契約前に必ず確認しておきたいのが、「月額委託料に何が含まれており、何が別料金(実費)になるか」という点です。
後から発生しやすい代表的な追加費用には以下のようなものがあります。
| 費用項目 | 主な内容 | 費用相場(1人あたり・都度) |
|---|---|---|
| 在留資格手続き費用 | 認定・変更・更新に伴う申請書類作成や行政書士報酬 | 変更・認定:10万〜20万円 更新:3万〜8万円 ※行政書士へ書類作成・申請代行を依頼した場合の報酬相場 |
| 空港送迎費・交通費 | 入出国時の空港送迎に伴う高速道路代、ガソリン代、レンタカー費用等 | 1万〜3万円/回(実費請求) |
| 緊急時の通訳手配・同行費 | 病気・ケガでの病院受診や事故・トラブル時の夜間駆けつけ対応等 | 都度見積もりまたは時間単価制 |
| 人材紹介手数料 | 人材紹介会社経由で採用した場合の成功報酬(受入初期に一括発生) | 30万〜80万円(想定年収の20〜30%) ※海外直接採用・国内移籍・技能実習からの移行など採用ルートにより変動 |
見積もりを確認する際は、月額料金の安さだけで判断せず、入国から継続支援に至る「総額(トータルコスト)」で比較検討することがトラブルを防ぐ鍵となります。
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特定技能外国人の受け入れに伴う各種申請手続きの全体像や、申請にかかる費用・スケジュールを網羅的に解説しています。初期費用や追加実費の発生タイミングを正確に把握したい際にお役立てください。
3.登録支援機関へ委託するメリットと「自社支援」との費用比較

特定技能外国人の支援は、必ずしも登録支援機関へ委託しなければならないわけではなく、要件を満たせば「自社支援(内製化)」を行うことも可能です。
ここでは自社支援のハードルと委託との損益分岐点について解説します。
自社支援に切り替えるための要件と社内人件費のハードル
外部への委託費を削減するために自社支援を検討する企業も増えていますが、出入国管理法および特定技能基準省令により、自社支援を行うためには厳しい基準が設けられています。

主な自社支援要件
受入実績
過去2年間に中長期在留者(技人国や技能実習生など)の受け入れ管理実績があること、または生活相談業務に従事した経験のある役職員を配置していること。
中立性
支援担当者が、外国人と直接の指揮命令関係にない(直接の上司ではない)立場であること。
母国語対応体制
外国人が十分に理解できる言語で、24時間体制の相談・苦情対応窓口を確保できること。
不履行がないこと
過去5年年以内に支援計画の不履行や行方不明者の発生がないこと。
特に「母国語対応が可能なスタッフの雇用」や「指揮命令系統から独立した専任担当者の配置」は、中小企業にとって社内人件費や管理工数の面で大きなハードルとなります。
委託 vs 自社支援:どちらが得かの判断基準(損益分岐点)
外部委託と自社支援のどちらが費用対効果として優れているかは、「自社で雇用・配置する支援担当者の人件費」と「外部へ支払う支援委託料の総額」のバランスによって決まります。
一般的な損益分岐点の目安は以下の通りです。
雇用人数が1〜4名程度の場合
外部委託が有利です。専任の通訳・支援担当者を社内で1名雇用する人件費(社会保険料や固定給)を考えると、月額2万〜3万円×人数分の委託料の方が圧倒的に低コストに抑えられます。
雇用人数が5〜10名以上の場合
自社支援への切り替えを検討するラインとなります。雇用人数が増えると委託料の総額が大きくなるため、バイリンガルスタッフを社内で1名専任雇用して自社支援体制を整えるほうが、トータルコストを抑えられる可能性があります。
ただし、単なる金銭的コストだけでなく、24時間対応に伴う社内スタッフの労務負荷や心理的ストレス、法令改正への追従コストなども考慮して総合的に判断することが重要です。
なお、特定技能2号へ移行した場合、対象者は支援計画の対象外となるため、登録支援機関への委託費用(月額支援委託料)自体が発生しなくなります。
長期雇用を見込む人材については、2号移行によるコスト最適化も視野に入れておくとよいでしょう。
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特定技能1号から2号へスムーズに移行するための要件や実務上の変更点、具体的な手続きマニュアルをまとめています。支援委託費用の削減や長期雇用を見据えた受け入れ計画にお役立ていただけます。
4.費用に関して知っておくべき法令遵守(コンプライアンス)の注意点

特定技能外国人の受け入れにあたっては、労働法令および入管法に基づいた厳格なルールが存在します。
費用に関連するコンプライアンス違反は、受入停止などの重大なペナルティにつながるため注意が必要です。
支援費用は「本人負担禁止」!給与天引きや違約金のリスク
特定技能制度における最重要ルールの一つが、「支援にかかる費用を外国人本人に直接的・間接的を問わず負担させてはならない」という原則です。
- 登録支援機関への月額委託料や初期費用の全額受入企業負担義務
- 支援費用を理由とした給与からの不当な天引きの禁止
- 早期離職を防ぐ目的で「途中で辞めたら違約金を支払う」といった契約を結ぶことの禁止
これらに違反した場合、入管法違反として特定技能外国人の受入資格を取り消されるだけでなく、不法就労助長罪などの法的責任を問われるリスクがあります。
住居の家賃や光熱費などの実費を給与控除する場合は、必ず労使協定を締結し、適正な実費の範囲内にとどめる必要があります。
登録支援機関と行政書士の業務範囲(無資格での申請書類作成リスク)
受入手続の実務において注意したいのが、在留資格(ビザ)申請書類の作成権限です。
在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更・更新許可申請の書類を、報酬を得て作成代行する業務は、行政書士(または弁護士)の独占業務です。
行政書士資格を持たない登録支援機関の担当者が、書類作成の代行を行って報酬を受け取る行為は行政書士法違反となるおそれがあります。
登録支援機関を選定する際は、申請取次資格を持つ行政書士と連携・提携しているか、業務範囲の区分が明確になっているかを事前に確認しておくと安心です。
5.費用を適切に抑えつつ信頼できる登録支援機関を選ぶポイント

単なる「最安値」を理由に登録支援機関を選ぶと、トラブル発生時の対応遅れや、後からの追加料金請求によって結果的にコストが高くつくケースがあります。
費用対効果を高め、コンプライアンスを遵守したサポートを受けるための選定チェックポイントを以下に整理します。
①料金体系の透明性と見積もりの網羅性
月額料金の中に「定期面談・相談対応・行政手続同行」がどこまで含まれているか。追加発生する実費の単価表が事前に明確に提示されているか確認しましょう。
②自社業種への理解と支援実績
特定技能の対象分野(製造業、建設、介護、外食など)ごとに求められる実務知識や現場トラブルの性質は異なります。自社と同じ業界での受入支援実績がある機関を選ぶとスムーズです。
③対応言語と緊急時の駆けつけ体制
自社が採用する外国人の母国語にネイティブレベルで対応できる担当者がいるか、夜間や休日のトラブル発生時に迅速に対応できる体制があるかをチェックします。
④複数名採用時のボリュームディスカウント
同じ拠点で複数名の特定技能外国人を入社させる場合、月額委託料の人数割引(例:3名以上で1人あたり5,000円引きなど)が適用できるか相談してみるのも効果的です。
6.よくある質問(FAQ)

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登録支援機関の月額費用の相場はいくらですか?
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出入国在留管理庁の調査データによると、登録支援機関に支払う月額支援委託料の全国平均は外国人1人あたり月額28,386円です。実際の市場では月額2万円〜3万円程度が標準的な相場となっており、全体の約90%が月額3万円以下に収まっています。
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登録支援機関に委託せず、自社で支援することは可能ですか?
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可能です。ただし過去2年間の受入実績、中立的な支援担当者の配置、24時間対応可能な母国語相談体制など、特定技能基準省令で定められた厳しい要件を満たす必要があります。
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初期費用と月額費用の違いは何ですか?
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初期費用は入社前後に一度だけ発生する事前ガイダンスや生活オリエンテーション等の費用(相場2万〜5万円)で、月額費用は義務的支援を継続的に実施するための毎月発生する費用です。
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登録支援機関の費用を特定技能外国人本人に負担させることはできますか?
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できません。支援に関する費用は受入企業が全額負担することが法令で義務付けられており、給与天引きや違約金という形での本人負担も禁止されています。
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特定技能2号に移行すると委託費用はどうなりますか?
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特定技能2号の対象者は支援計画の対象外となるため、登録支援機関への月額委託料は発生しなくなります。長期雇用を予定している人材については、2号移行によるコスト削減効果も考慮に入れるとよいでしょう。
7.まとめ
登録支援機関への支援委託料は、1人あたり月額2万円〜3万円(全国平均約2.8万円)が一般的な相場です。
しかし、実際に受け入れる際には、初期費用(事前ガイダンスや生活オリエンテーション)や、在留資格申請手続きに伴う行政書士報酬、送迎費などの実費が加わります。
自社支援(内製化)への切り替えはコスト削減の選択肢となりますが、厳格な法令要件や母国語対応の社内リソース確保が必要となるため、雇用人数(おおむね5〜10名以上が境目)や社内負荷を踏まえた損益分岐点での判断が不可欠です。
また、支援費用の本人負担禁止といった法令遵守を徹底し、信頼できる専門機関と連携しながら、外国人材が安心して長期活躍できる体制を整えていきましょう。