特定技能の外国人材を受け入れる際、必ず耳にする「義務的支援」という言葉。
「具体的に何をすればいいの?」「自社でできるの?それとも登録支援機関に委託すべき?」と頭を悩ませている受入れ企業や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
実際、日本在住外国人の96.8%が在留期間終了後も日本での就労継続を希望しており、特定技能を選んだ理由として「入社前後のサポート(登録支援機関の支援)が手厚いこと」を挙げる声も38.3%にのぼります(2022年マイナビグローバル調査)。
義務的支援の質は、単なる法令遵守にとどまらず、外国人材の定着とマッチングそのものを左右する要素なのです。
この記事では、労働関係法令や出入国在留管理庁のガイドラインに基づき、義務的支援の10項目や具体的な数値ルール、自社対応と外部委託のメリット・デメリット、信頼できる登録支援機関の選び方まで、難しい専門用語を使わずにわかりやすく解説します。
- 特定技能における「義務的支援10項目」の具体的ルールと数値基準
- 義務的支援を「自社対応(内製化)」するか「外部委託」するかの判断軸
- 失敗しない登録支援機関の選び方と、外国人材の定着率を高めるポイント
1.特定技能制度における「義務的支援」とは?基本概要と任意的支援との違い

特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、彼らが日本で安心して働き、生活できるようにするための手厚いサポートが法律で義務付けられています。
特定技能1号制度では、外国人材が日本で不自由なく生活し、スムーズに仕事に慣れることができるよう、法律に基づいた支援を行うことが受入れ企業の義務となっています。この支援は「1号特定技能外国人支援計画」という計画書にまとめて実施します。
支援には、必ず行わなければならない「義務的支援」と、企業の判断で行う「任意的支援」の2種類があります。
義務的支援と任意的支援の決定的な違い
義務的支援とは、出入国在留管理庁のガイドラインで「必ず実施しなければならない」と定められている支援のことです。
一方、任意的支援とは「実施することが望ましい」とされる手厚いフォロー(例:引っ越し費用の全額負担や、社内イベントへの招待など)を指します。
| 項目 | 義務的支援 | 任意的支援 |
|---|---|---|
| 実施義務 | 必須(不履行は法令違反) | 望ましいとされる推奨事項 |
| 計画書への記載 | 必ず記載する | 記載すると法的実施義務が発生 |
| 主な例 | 事前ガイダンス、住居確保支援など10項目 | 引っ越し費用の負担、社内イベント招待など |
ここで注意したいのは、任意的支援であっても、一度「支援計画書」に記載して提出すると、法律上の実施義務が生じる点です。
「良かれと思って計画書に書いたけれど実行できなかった」という場合でも、計画不履行とみなされるリスクがあるため、計画書への記載は慎重に行う必要があります。
支援計画を守らない場合のリスク・罰則
もし受入れ企業が義務的支援を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、法律違反となり厳しいペナルティが科されます。
出入国在留管理庁から改善命令を受けるだけでなく、最悪の場合は特定技能外国人の受入れ許可(登録)が取り消される可能性があります。
さらに、取り消しから5年間は新たな特定技能外国人を受け入れられなくなるため、企業の事業計画に大きな影響を及ぼします。
だからこそ、義務的支援は「絶対に漏れなく実施する」体制を整えることが極めて重要なのです。
補足:特定技能2号は対象外
義務的支援は特定技能「1号」の外国人が対象で、より熟練した技能を持つ「2号」は原則として支援計画の対象外です。2号は在留期間の更新制限がなく家族帯同も認められるなど、1号に比べて在留の自由度が高いことが背景にあります。
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2.受入れ企業・登録支援機関が行う「義務的支援10項目」と具体的ルール
法律で定められた義務的支援は全部で10項目あります。それぞれに「何時間をどこでやるか」「どんな基準を満たすか」という細かな数値ルールが決められています。
義務的支援の10項目は、入社前から在職中、そして退職後に至るまで、外国人材の日本生活をトータルで支える内容になっています。まずは全体像を一覧で確認しましょう。


出典:出入国在留管理庁 1号特定技能外国人支援・登録支援機関について

ここでは、特に実務で重要となるルールや数値をわかりやすく噛み砕いて解説します。
①事前ガイダンス(実施時間:3時間以上)
雇用契約を結んだ後、外国人が日本に入国する前(国内在留者の場合は転職前)に、仕事内容や給与、生活ルールについて説明を行います。
- 実施時間:
合計3時間以上 - 使用言語:
外国人が十分に理解できる母国語など - 内容:
結ぶ契約の内容、日本で従事する業務、控除される税金や社会保険料の手取りシミュレーションなど
入社後の「こんなはずじゃなかった」というギャップ(リアリティ・ショック)を防ぐため、良いことだけでなく大変な点も含めて丁寧に伝えることが大切です。
②出入国時の送迎(空港までの同行・出迎え)
外国人が日本に到着した際と、母国へ帰国する際、適切な送迎を行います。
- 入国時:
日本の空港へ出迎えに行き、住居(寮やアパート)まで同行・送迎する - 帰国時:
帰国時に保安検査場の手前まで同行し、出国を確認する
単に航空券を手配するだけでなく、確実に移動できるよう付き添うことが求められます。
③住居確保・生活に必要な契約支援(居室面積:1人あたり7.5㎡以上)
安心できる住まいを確保し、ライフラインの契約をサポートします。
- 居室面積:
1人あたり7.5㎡以上(タタミ約4.5畳以上の広さ)を確保する - 契約サポート:
アパートの賃貸契約の連帯保証人になる、または保証会社の手配をする - ライフライン:
銀行口座の開設、携帯電話の契約、電気・ガス・水道の手続きに同行する
日本の賃貸契約や口座開設は手続きが複雑なため、窓口への同行や書類の記入補助が欠かせません。
④生活オリエンテーション(実施時間:8時間以上)
日本で生活する上で必要なルールやマナーを教える講習を実施します。
- 実施時間:
合計8時間以上(入国後、業務を開始する前に実施) - 内容:
日本の街のルール(ゴミの出し方・分別、交通ルール)、防災・防犯知識、緊急時の連絡先(110番・119番の使い方)、医療機関の利用方法など
動画や図解などを使い、理解できているかを確認しながら分かりやすく進める工夫が必要です。
⑤公的手続等への同行
市役所や区役所などでの行政手続きに同行し、書類作成や申請を補助します。
- 内容:
住居地届出(住民登録)、マイナンバーカードの手続き、国民健康保険や国民年金に関する手続きなど - タイミング:
住居地の届出(市役所等への提出)は入国後14日以内に行う必要があり、遅滞なく各種手続きへ同行・補助を行います
⑥日本語学習機会の提供
日本での生活や仕事に困らないよう、日本語を学ぶ機会を提供・支援します。
内容:
地域の日本語教室やオンライン日本語講座の案内、入学手続きのサポート、学習教材の提供など
学費の全額を企業が負担することまでは義務付けられていませんが、学習しやすい環境を整えることが求められます。
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⑦相談・苦情への対応(母国語対応の体制づくり)
仕事や生活に関する困りごと、人間関係の悩み、苦情について、いつでも相談できる体制を作ります。
- 体制:
外国人が母国語でスムーズに相談できるよう、母国語対応ができる担当者を配置する - 対応:
相談を受けた場合は遅滞なく対応し、必要な助言や指導を行う
職場内だけでなく、プライベートの悩みにも寄り添える相談窓口があることが、心理的安全性を高めます。
⑧日本人との交流促進
地域社会や職場の人々と打ち解けられるよう、交流のきっかけを作ります。
内容:
地域の自治会行事(お祭りや清掃活動)への参加案内、社内イベント(食事会や季節の行事)への誘いなど
孤立を防ぎ、地域の一員として安心して過ごせるように後押しします。
⑨転職支援(受入れ側の都合による雇用解除時)
万が一、会社の業績悪化など会社都合で雇用契約を解除(解雇や倒産など)する場合、次の転職先が見つかるよう支援します。
内容:
新しい受入れ企業を探すサポート、ハローワークへの同行、推薦書の作成、有給休暇の付与など
外国人材が日本で路頭に迷うことがないよう、手厚い法的保護が定められています。
⑩定期的な面談・行政機関への通報(3か月に1回以上)
支援責任者や担当者が、外国人本人およびその上司と定期的に面談を行います。
- 頻度:
3か月に1回以上 - 場所・形式:
原則として対面で実施します(※相手方が遠隔地に居住しているなど、一定のやむを得ない事情・条件を満たす場合に限りオンライン実施が認められます) - 内容:
労働条件が守られているか、残業代が正しく払われているか、ハラスメントがないかなどを確認し、違法行為を発見した場合は労働基準監督署や入管に通報する役割も担います
3.義務的支援は「自社対応」と「外部委託(登録支援機関)」どちらが良い?

義務的支援は受入れ企業が自社で行うこともできますが、自社対応(内製化)と登録支援機関への外部委託にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
義務的支援10項目を自社で完結させるか、外部の「登録支援機関」に委託するかは、多くの受入れ企業が直面する最大の判断ポイントです。企業の体制やリソースに合わせて最適な方法を選ぶ必要があります。
自社対応(内製化)ができる条件とメリット・デメリット
自社で義務的支援を行う場合、法律上の厳しい条件(自社要件)をクリアしなければなりません。
自社対応ができる主な条件
- 過去2年間に特定技能や技能実習生などの受入れ実績があること
- 外国人が理解できる言語(母国語など)で相談に乗れる社内体制・担当者がいること
- 過去5年間に労働法令や入管法などの違反がないこと
| 自社対応(内製化) | 登録支援機関へ委託 | |
|---|---|---|
| コスト | 委託費用がかからず抑えられる | 1人あたり月額平均28,386円が相場 |
| 業務負担 | 書類作成・行政手続き・トラブル対応など非常に重い | 実務の大半を任せられ、負担を大幅に軽減 |
| ノウハウ | 社内に蓄積され、外国人社員との距離が縮まりやすい | 専門機関のノウハウを活用できる |
| 法改正対応 | 自社で常にキャッチアップが必要 | 委託先が対応してくれる |
| コンプライアンス | 自社要件を満たし続ける必要がある | リスクを軽減しやすい |
自社対応はコストを抑えられる反面、労務担当者の負担が非常に大きくなるという注意点があります。
登録支援機関へ委託するメリットと費用相場
自社の要件を満たせない場合や、社内リソースに余裕がない場合は、出入国在留管理庁に登録された「登録支援機関」へ支援業務を委託することになります。
実際に、特定技能外国人を受け入れている企業の8割以上が外部委託を活用しており、自社支援(完全内製化)を行っている企業は2割未満にとどまります。
委託のメリット
- 複雑な支援実務や入管手続き、母国語での相談対応をプロに一括で任せられる
- 社内の労務担当者の負担を大幅に軽減でき、本業に集中できる
- 法令遵守(コンプライアンス)のリスクを減らせる
委託の費用相場
- 月額支援委託費:外国人1人あたり平均28,386円。最も多い価格帯は20,000円超〜25,000円以下(全体の26.2%)
- 初期費用・申請サポート代:別途数万円〜10万円程度(機関により異なる)
義務的支援の委託費用は、企業が全額負担することが法律で義務付けられており、外国人本人の給与から控除(天引き)することは絶対に禁止されている点に注意しましょう。
4.信頼できる登録支援機関を選ぶための3つのチェックポイント

出入国在留管理庁の公表データ(2026年8月時点集計等)によると、全国の登録支援機関の登録数は11,537機関にのぼりますが、実際に活動している機関にはばらつきがあります。
受入企業と委託契約を締結している機関は全体の約50%にとどまり、過去1年間の支援実績が「0人」の機関も25.4%存在するという出入国在留管理庁のデータもあります。自社に合った信頼できるパートナーを選ぶことが大切です。
登録支援機関の中には、名前だけの登録で実質的なサポート実績がない機関や、書類の処理だけで生活フォローがおろそかな機関も一部存在します。
悪質な機関を選んでしまうと、外国人材の早期離職やトラブルに直結してしまいます。なお、特定技能外国人の約88.4%は実際に登録支援機関の支援を受けており、支援の実働実績は一部の優良機関に集中しているのが実情です。
ここでは、失敗しない登録支援機関の選定ポイントを3つご紹介します。
①実働実績と対応言語の充実度
単に登録されているだけでなく、「実際に何人の支援を行っているか」という実働実績を確認しましょう。
前述の通り、支援実績が0人の登録支援機関も一定数存在するため、面談時に直近1年間の支援人数を具体的に尋ねることをおすすめします。
また、受け入れる外国人の母国語に精通したスタッフが在籍しているかも重要です。緊急時の夜間連絡や、複雑な悩みのヒアリングができるネイティブスタッフがいるかどうかを面談時に確認してください。
②行政書士や社労士など専門家との連携体制
特定技能の制度は、入管法だけでなく労働基準法や社会保険などの労務管理と深く結びついています。
自社内に行政書士や社会保険労務士が在籍している、あるいは提携している登録支援機関を選ぶと、在留資格申請や労務トラブルの際にもスピーディーかつ法的に正しいアドバイスを受けることができます。
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③「丸投げ」にせず受入れ企業と伴走してくれるか
支援業務を外部委託する場合でも、現場での指導や日常のコミュニケーションを行うのは受入れ企業自身です。
「すべて任せてください」と丸投げを推奨する機関よりも、企業の現場担当者とこまめに連絡を取り合い、職場内での定着まで一緒に考えてくれる「伴走型」の支援機関を選ぶことが、長期的な雇用成功の鍵となります。
5.よくある質問

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特定技能2号の外国人にも義務的支援は必要ですか?
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いいえ、義務的支援は特定技能1号が対象です。2号は在留更新の制限がなく家族帯同も可能になるなど自立性が高いとみなされており、支援計画の対象外となっています。
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支援実施時の記録や書類は保存しておく必要がありますか?
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はい。支援の実施日時・内容・対応者などを記録した『支援実施記録』を作成し、特定技能雇用契約終了日から5年間保存しておくことが義務付けられています。詳細な記載事項や運用ルールは出入国在留管理庁の運用要領等で必ず確認してください。
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登録支援機関に委託すれば、受入企業は何もしなくてよいのですか?
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いいえ。委託した場合でも、支援計画の実施責任は最終的に受入企業(特定技能所属機関)にあります。現場での日常的なコミュニケーションや指導は受入企業自身が担う必要があり、「丸投げ」はトラブルの原因になります。
6.まとめ:法令遵守と円滑な受入れを実現する支援へ
特定技能制度における「義務的支援」は、単に法令違反やペナルティを避けるための「事務手続き・コスト」ではありません。
日本という慣れない土地で不安を抱えながら働く外国人材の心理的安全性を確保し、「この会社で長く働きたい」「日本に来てよかった」と感じてもらうための、極めて価値のある「定着への投資」です。
実際、日本在住外国人の96.8%が在留期間終了後も日本での就労を希望し、特定技能を選ぶ理由として支援の手厚さを挙げる声も少なくありません。
事前ガイダンスや生活オリエンテーション、日々の面談といった支援のひとつひとつを丁寧に行うことが、外国人材の笑顔と信頼を生み、結果として企業の深刻な人手不足を解消する強力な力となります。
自社で手厚いフォロー体制を整えるのか、信頼できる登録支援機関というパートナーと一緒に歩むのか、自社の体制に合った最適な選択を行い、外国人材と共に成長できる職場づくりを進めていきましょう。