「外国人材を採用したいけれど、どの送出し機関を選べばいいのか分からない」「悪質な業者に騙されて、採用後にトラブルが起きたらどうしよう……」と悩んでいませんか?
外国人材の早期離職や失踪の原因が、実は現地の送出し機関にあったというケースは少なくありません。
送出し機関選びは、単なる紹介業者選びではなく、外国人材が日本で安心して働き続けるための「最初のパートナー選び」です。
この記事では、送出し機関の仕組みから悪質業者の見分け方、費用相場、国別の手続きまでを分かりやすく解説します。
- 送出し機関の役割と、監理団体・登録支援機関との違い
- 悪質な送出し機関の特徴と、企業が負う法的リスク
- 優良な送出し機関を見極める5つのチェックポイントと費用相場
- 特定技能・育成就労のルールと、国別の手続きの違い
1.送出し機関とは?外国人採用における役割と仕組み
送出し機関(送り出し機関)とは、日本で働きたい外国人を現地で募集・教育し、出国に必要な手続きを行う海外の機関です。たとえるなら「日本へ行きたい人のための、現地の学校兼求人応募の窓口」です。
送出し機関の主な4つの業務は?
送出し機関の業務は、募集・教育・手続き・帰国後支援の4つです。

- 人材の募集と選抜:日本企業の条件に合う人材を募集し、面接の準備をします。
- 入国前の教育:日本語、日本のマナーや生活ルールを教えます。
- 行政手続きの代行:現地政府への書類提出や、パスポート・ビザ申請の準備を行います。
- 帰国後のキャリア支援:母国へ戻った人材の再就職をサポートします。
監理団体・登録支援機関とは何が違う?
送出し機関は海外で人材を送り出す側、監理団体と登録支援機関は日本国内で受け入れを支える側です。
| 機関 | 所在地 | 主な役割 | 関わる制度 | 部活動にたとえると |
|---|---|---|---|---|
| 送出し機関 | 海外 | 募集・入国前教育・出国手続き | 技能実習・特定技能・育成就労 | 選手をスカウトし基礎練習をさせる現地クラブ |
| 監理団体(育成就労では監理支援機関) | 日本 | 受入れ企業の監査・指導 | 技能実習・育成就労 | ルールを守っているか見る外部の審判 |
| 登録支援機関 | 日本 | 生活・業務の支援(企業から委託) | 特定技能 | 選手を支える専属マネージャー |
企業が海外の送出し機関を直接探すのは難しいため、実際には監理団体や登録支援機関を通じて、提携先の送出し機関から人材を紹介してもらう形が一般的です。
制度ごとに送出し機関の利用ルールはどう違う?
技能実習と育成就労は認定送出し機関の利用が前提、特定技能は原則任意ですが国によっては実質必須です。
| 制度 | 送出し機関の利用 | ポイント |
|---|---|---|
| 技能実習 | 必須 | 相手国政府が認定した送出し機関を通す |
| 育成就労(2027年4月1日施行) | 認定送出し機関が前提 | 本人が送出し機関に払う費用は、所定内賃金月額の2か月分が上限 |
| 特定技能 | 原則任意 | ベトナム・フィリピン・カンボジア・ミャンマーなどは、二国間の協力覚書(MOC)に基づく本国手続きで認定機関の関与が必要 |
育成就労制度は技能実習に代わる新制度で、2027年4月1日に施行されます。
監理支援機関の許可申請は2026年4月15日、育成就労計画の認定申請は同年9月1日から、施行日前の受付がすでに始まっています。
出典:国際人材協力機構(JITCO) 送出し国・送出機関、出入国在留管理庁 特定技能に関する二国間の協力覚書
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2027年から始まる「育成就労制度」への移行に伴い、技能実習からの変更点や受け入れ準備に不安を感じていませんか?こちらの記事では、新制度の概要から企業が今すぐ取り組むべき対策まで分かりやすく解説しています。
2.なぜ送出し機関の選び方が重要なのか?

送出し機関の質は、採用後の失踪や企業の法的リスクに直結します。「人材を紹介してくれればどこでも同じ」と考えるのは危険です。
法外な手数料と借金が失踪を招く
失踪の大きな原因は、外国人本人が来日前に背負う借金です。出入国在留管理庁の調査では、技能実習生の約55%が来日前に母国で借金をしており、平均借入額は約54万8,000円でした。
送出し機関に支払った費用の平均も約52万1,000円にのぼります。
「早く借金を返さなければ」という焦りから、SNSの「もっと稼げる」という求人に誘われ、職場を離れてしまう。これが失踪の典型的な流れです。
失踪者数は2023年に過去最多の9,753人に達した後、2025年には3,950人まで減りました(失踪率0.6%)。それでも、国籍別ではベトナムが65.6%を占めており、送出し段階の費用負担は今も重要な課題です。

企業が負う法的ペナルティは?
失踪した外国人が不法就労に関わったり、在留資格の確認が不十分だったりすると、受入れ企業も責任を問われます。
不法就労助長罪
2025年6月の改正入管法施行で厳罰化され、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)が科されます。法人にも罰金が科される両罰規定があります。
受入れ停止
入管法などの違反で罰金刑以上の刑を受けると、一定期間(特定技能では原則5年間)新たな外国人材を受け入れられなくなります。
「知らなかった」では済まされません。会社の信用を守るためにも、健全な送出し機関を選ぶことが不可欠です。
出典:出入国在留管理庁 技能実習生の支払い費用に関する実態調査
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失踪や不法就労といったトラブルを防ぐには、実習生が抱える問題の背景を把握することが欠かせません。こちらの記事では、技能実習生を巡る代表的な問題点と、企業が取るべき具体的な5つの予防・解決策をまとめています。
3.悪質な送出し機関の特徴は?

悪質な送出し機関は、「認定を示せない」「お金の流れを隠す」「不都合な数字を答えない」という共通点があります。次のどれか1つでも当てはまれば、契約を見送りましょう。
| 危険サイン | なぜ問題か |
|---|---|
| ライセンス番号や政府認定を示せない | 無認定のブローカーの可能性が高い |
| 本人から保証金・違約金を取っている | 借金を増やし、途中で辞められない状態をつくる |
| 本人負担費用の金額や内訳を出さない | 相手国の上限を超えた徴収を隠している恐れがある |
| 監理団体・企業へのキックバックや過剰な接待を持ちかける | 技能実習・育成就労では禁止行為。費用は最終的に本人に転嫁される |
| 定着率・失踪率を聞くとはぐらかす | 教育やマッチングに問題を抱えている可能性がある |
| 教育期間が極端に短い、内容を説明できない | 入国後のミスマッチや早期離職につながる |
特にキックバックは、受け取った側も責任を問われます。「紹介料を還元します」といった提案は、その場で断ってください。
4.優良な送出し機関を選ぶ5つのチェックポイント

優良な送出し機関は、政府認定・費用の透明性・教育・国内窓口・定着率の5点で見極めます。まずは一覧で確認しましょう。
| チェックポイント | 確認方法 | NGサイン |
|---|---|---|
| 1. 政府認定 | OTITの認定送出機関一覧、相手国省庁の公表情報と照合 | 番号を出さない、一覧に名前がない |
| 2. 本人負担費用 | 費用の金額と内訳を書面でもらう | 保証金・違約金がある、内訳がない |
| 3. 教育カリキュラム | 時間数・内容・教材・教室を確認(オンライン見学も可) | 試験対策だけ、生活指導がない |
| 4. 日本国内の窓口 | 国内事務所の有無、担当者の日本語力 | 連絡が現地のみ、通訳を介さないと話せない |
| 5. 実績と定着率 | 送出し人数、定着率・失踪率の数字を聞く | 数字を出さない、失踪が多い |
1. 政府から認定を受けているか
最初に確認すべきは、相手国政府の認定です。技能実習の認定送出し機関は外国人技能実習機構(OTIT)のサイトに一覧が載っています。
フィリピンならDMW(移住労働者省)のライセンス番号を公表情報と照合しましょう。一覧に名前がない、番号を示せない事業者は利用してはいけません。
2. 外国人本人から取る費用が適正で透明か
優良な機関は、本人から取る手数料の金額と内訳を説明できます。相手国の上限を超えていないか、保証金や違約金を取っていないかを書面で確認しましょう。育成就労では、本人負担は所定内賃金月額の2か月分が上限になります。
3. 日本語教育と生活指導が充実しているか
試験合格だけでなく、日常会話・業界の専門用語・ゴミ出しなどの生活ルールまで教えているかを確認します。特定技能1号では日本語能力検定(JLPT) N4相当以上の日本語力が求められます。入国前教育の総時間は400〜500時間程度がひとつの目安とされています(業界でよく使われる目安)。
4. 日本国内に窓口があり、日本語で連絡が取れるか
トラブル時の対応スピードを左右するのが、日本国内の事務所や連絡窓口です。担当者が日本語でやり取りできれば、病気や人間関係のトラブルの際にもすぐ間に入ってもらえます。
5. 送出し実績と定着率のデータがあるか
送り出した人数だけでなく、その人たちがどれだけ長く働いているか(定着率)を聞きましょう。定着率は、事前のマッチングと教育の質を映す数字です。数字を出せない、または失踪率が高い機関は避けてください。
5.送出し機関の費用相場はいくら?

費用は「企業が払うもの」と「外国人本人が払うもの」に分かれます。本人負担が大きいほど借金と失踪のリスクが高まるため、両方を確認することが大切です。
| 負担者 | 主な費用 | 目安 |
|---|---|---|
| 受入れ企業 | 紹介料・教育費・手続き費用など | 1人あたり数十万円〜100万円程度(制度・国・分野で大きく変わる) |
| 外国人本人(技能実習の実態) | 送出し機関への手数料・教育費など | 平均約52万1,000円(出入国在留管理庁調査) |
| 外国人本人(育成就労) | 送出し機関が徴収できる全ての費用 | 所定内賃金月額の2か月分が上限 |
本人負担を企業が肩代わりする、または本人負担ゼロをうたう送出し機関もあります。
見積もりを比べるときは、企業側の金額の安さだけで選ばず、本人がいくら払うのかを必ずセットで確認してください。
6.【国別】主要な送出国の手続きと注意点

特定技能では、日本と送出国が作成した二国間の協力覚書(MOC)により、国ごとに本国側の手続きが異なります。
MOCの相手国はフィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、インドネシア、ベトナムなど17か国です。
| 国 | 主な窓口・手続き | 選ぶときの注意点 |
|---|---|---|
| ベトナム | 認定送出し機関が発行する推薦者表(特定技能外国人表) | 本人負担が高額になりやすい。推薦者表が2024年3月改定後の現行様式か確認 |
| フィリピン | DMW(移住労働者省)の認定機関経由、MWOの審査・DMW登録 | ライセンス番号をDMWの公表情報と照合。手続きに時間がかかるため余裕を持った計画を |
| インドネシア | MOCに基づく本国手続き(政府の求職者登録など) | 送出し機関の利用は必須ではないが、本国の登録手続きの確認が必要 |
| ミャンマー | 認定送出し機関経由、海外労働者身分証明カード(OWIC)の取得 | 政情の影響で手続きが止まることがあるため、進捗を送出し機関に定期確認 |
| カンボジア | 認定送出し機関経由、登録証明書の取得 | 登録証明書がないと在留資格の手続きが進まない |
手続きの詳細は変更されることがあります。最新の情報は出入国在留管理庁「特定技能に関する二国間の協力覚書」で、国ごとに確認してください。
宗教上の配慮(礼拝の時間、ハラール食など)や母国の状況へのケアも、定着には欠かせません。ただし性格や価値観は人それぞれなので、国籍で決めつけず一人ひとりと向き合うことが大切です。
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7.自社で選ぶのが難しいときは?国内パートナーの選び方

自社で海外の送出し機関を監査するのが難しい場合は、優良な送出し機関と提携する監理団体・登録支援機関を選ぶのが現実的です。
特に技能実習(育成就労)では、送出し機関を選ぶのは基本的に監理団体です。
優れた監理団体・登録支援機関は、現地に足を運んで送出し機関を選別し、継続的に監査しています。面談では、次の質問をしてみましょう。
監理団体・登録支援機関に聞くべき質問リスト
- 提携している送出し機関はどこですか?選定基準と監査の頻度を教えてください
- 外国人本人が送出し機関に支払う費用の金額と内訳を把握していますか?
- 入国前教育の時間数・内容・教材を見せてもらえますか?
- 過去の定着率と失踪率はどれくらいですか?
- トラブル時に日本語で対応できる窓口はどこですか?
- 入国後の生活支援や労務管理のサポートはどこまで含まれますか?
これらに具体的な数字や資料で答えられるパートナーであれば、提携先の送出し機関の質も期待できます。
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信頼できる送出し機関と提携しているパートナーを選ぶなら、登録支援機関の役割や費用相場の理解が不可欠です。こちらの記事では、自社に最適な登録支援機関を見極めるための失敗しない選び方を詳しく解説しています。
8.送出し機関に関するよくある質問

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協力覚書(MOC)を結んでいない国からも、特定技能で採用できますか?
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はい、採用できます。出入国在留管理庁は、MOCを作成した国でなければ特定技能外国人を受け入れられないわけではないと明記しています。ただし、MOCのない国は本国側の手続きについて入管庁の国別案内がないため、その国の駐日大使館などに個別に確認しましょう。
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すでに日本に住んでいる外国人を特定技能で採用する場合も、本国の手続きは必要ですか?
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国によっては必要です。たとえばベトナム国籍の人を国内で採用する場合も、在留資格を変更する前に、駐日ベトナム大使館から推薦者表の承認・発行を受けなければなりません。海外から呼び寄せる場合とは手続きの流れが違うため、国籍ごとに入管庁の案内を確認してください。
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受入れ企業が海外の送出し機関と直接契約することはできますか?
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特定技能であれば可能です。たとえばベトナムから受け入れる場合は、受入れ企業がベトナム政府(DOLAB)認定の送出し機関と「労働者提供契約」を結びます。一方、技能実習(育成就労)の団体監理型では、送出し機関と契約するのは監理団体(監理支援機関)です。
-
送出し機関の現地視察は必要ですか?
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法律上の義務ではありませんが、初めて取引する場合や採用人数が多い場合はおすすめです。教室や寮の環境、授業の進め方、候補者の日本語力を自分の目で確かめられます。渡航が難しい場合は、オンライン見学や、提携先の監理団体・登録支援機関の視察報告で代わりに確認しましょう。
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育成就労が始まると、受入れ中の技能実習生はどうなりますか?
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2027年4月1日の施行時点で実習中の人は、そのまま技能実習を続けられます。1号の人は2号に進めますが、3号に進めるのは施行日時点で2号を1年以上行っている人に限られます。施行日前に計画認定と在留資格認定証明書を受けた人は、2027年6月30日までに入国する必要があります。
9.まとめ:信頼できる送出し機関を選び、安心の雇用関係を
送出し機関選びは、安く人を集めるためのものではありません。外国人材の安心を守り、自社で長く活躍してもらうための土台づくりです。
- 相手国政府の認定・ライセンスを必ず確認する
- 本人負担費用の金額と内訳を書面で確かめる
- 日本語教育と生活指導のカリキュラムを確認する
- 日本国内の窓口と、定着率・失踪率のデータを確認する
- 自社で選ぶのが難しければ、提携先の選定基準を説明できる監理団体・登録支援機関を選ぶ
外国人材を「人手不足の穴埋め」ではなく「共に成長するパートナー」として迎えること。その第一歩として、信頼できる送出し機関・支援機関を選んでください。