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特定技能の派遣は雇える?対象分野や条件と違法リスクを解説

 労働人口の減少に伴い、即戦力となる外国人材「特定技能」への注目が高まっています。

自社で直接雇用を行う際の手続きや生活支援の負担を懸念し、人材派遣の活用を検討する企業も少なくありませんが、入管法上、特定技能の派遣には非常に厳格な制限が存在します。

本記事では、例外的に派遣が認められる分野や受入企業が遵守すべきコンプライアンス、直接雇用とのコスト比較まで、実務に直結する知識を実務の観点から解説します。

この記事を読んでわかること
  • 特定技能外国人を派遣雇用できる「農業」「漁業」の適法要件
  • 不法就労助長罪のリスクを回避するための在留カード確認手順
  • 派遣と直接雇用(登録支援機関委託)におけるコスト・手間の違い

1.そもそも「特定技能」の外国人は派遣で雇えるの?

そもそも「特定技能」の外国人は派遣で雇えるの?

特定技能における派遣雇用の可否について、入管法が定める原則的なルールと例外的な分野、そして最新の対象分野における動向を解説します。

原則は「直接雇用(正社員など)」が国のルール

在留資格「特定技能」の制度運用において、国が定めている根本的な大原則は「直接雇用」による受け入れです。

これは、受け入れ企業が外国人材と直接、労働契約(雇用契約)を締結し、フルタイムの正社員やそれに準ずる雇用形態で現場に迎えることを意味します。

参考:出入国在留管理庁 特定技能制度

なぜ直接雇用が原則とされているのかというと、中間搾取の排除や労働条件の安定性を確保し、外国人労働者の人権を保護するためです。

過去の技能実習制度等における反省を踏まえ、雇い主である企業が法的・道義的責任を明確に負うべきであるという観点から、特定技能では原則として「派遣」による労働力の調達は認められていません。

まずはこの直接雇用主義が基本であることを正確に把握しておく必要があります。

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例外として「農業」と「漁業」の2つの業界だけ派遣が認められている理由

直接雇用を大原則とする特定技能制度ですが、産業の構造上、例外的に「農業」および「漁業」の2分野においてのみ、派遣形態での受け入れが適法として認められています。

この特例が設けられた背景には、一次産業特有の激しい「季節変動(繁閑差)」があります。

作物の収穫期や魚の回遊時期、育成段階などにより、特定の数ヶ月間だけ膨大な労働力が必要となり、それ以外の閑散期には仕事が激減するという構造的な課題を抱えているためです。

個々の小規模な農家や漁業法人が通年で直接雇用を維持することは経営上困難ですが、年間を通じて季節ごとに忙しい産地や品目を巡回する「広域循環型派遣」という仕組みを活用すれば、生産者は繁忙期のみ必要な労働力を確保でき、外国人スタッフも通年で安定した賃金収入を得ることが可能になります。

こうした相互の利害関係と産業保護の目的から、この2分野に限定して派遣が許容されているのです。

【2026年最新】新しく追加された業界(自動車運送や鉄道など)では派遣はできる?

特定技能制度は、国内の人手不足情勢に合わせて対象分野の追加などのアップデートが継続的に行われています。

近年では、自動車運送業(トラック・バス・タクシーの運転手等)、鉄道、林業、木材産業といった新たな4分野が特定産業分野として追加され、現在は計16分野で運用されています。

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これら新規追加分野の企業の多くも深刻な労働力不足に直面しているため、「新分野でも派遣形態での受け入れができるのではないか」という期待の声が聞かれます。

しかしながら、これら新規追加分野を含め、農業・漁業以外のすべての分野において、派遣雇用は一切認められていません

新分野における受け入れは、あくまで日本人と同等以上の処遇を前提とした直接雇用のみが適法となります。制度の変更点と、農業・漁業のみに維持されている特例措置の境界線を混同しないよう、確実な実務上の整理が必要です。

2.特定技能の「派遣」を利用するときに会社が満たすべき条件

特定技能の「派遣」を利用するときに会社が満たすべき条件

特定技能の派遣契約を適法に運用するために、現場となる派遣先企業および労働力を供給する派遣元企業の双方がクリアすべき法的要件を整理します。

現場(派遣先)の会社に求められる「過去のリストラなし」などのルール

特定技能の外国人スタッフを派遣形態で現場に迎え入れる場合、派遣先となる企業側には、入管法および労働関係法令に基づく厳格な適合基準が課されます。

まず極めて重要な要件として、外国人材を受け入れる直前の1年間において、同じ業務に従事している日本人労働者を会社都合で離職(いわゆるリストラや解雇などの非自発的離職)させていないことが挙げられます。

日本人の雇用を脅かして外国人を低コストや調整弁として代替することを防ぐためです。

また、過去1年間に自社から外国人の「行方不明者」を発生させていないこと、労働・社会保険・租税に関する法令を完全に遵守し、滞納がないことも必須となります。

過去5年以内に労働法令違反などで処分を受けていない(欠格事由に該当しない)健全な経営体制が、受け入れの最低条件として厳しく審査されます。

派遣元の会社(人材会社)に必要な「国の許可」と「実績」

外国人材を供給する側の「派遣元企業(人材会社)」に対しても、非常にハードルの高い要件が設定されています。

一般的な労働者派遣事業の適切な営業許可を厚生労働省から受けていることは当然ながら、さらに、当該特定の産業分野において「一定の実績や能力」を有している必要があります

具体的には、農業関連の団体や、漁業・水産加工の分野において3年以上の適切な実績があること、あるいはそれに準ずる実務経験を持つ役職員が在籍していることなどが求められます。

これは、特定技能1号の外国人に提供することが法律で義務付けられている「10項目の義務的支援計画」(事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保支援、生活オリエンテーション、相談・苦情対応など)を、外国人が十分に理解できる言語(多言語)を用いて確実に実行する体制を整えなければならないためです。

それぞれが担当する「協議会」への加入と協力の義務

特定技能制度を適法に活用するためには、各省庁が管轄する「協議会」との関係性を正しく構築する必要があります。

農業分野であれば農林水産省が管轄する「農業特定技能協議会」、漁業分野であれば水産庁が管轄する「漁業特定技能協議会」が該当します。

これら協議会における役割分担として、直接の雇用主である「派遣元企業(人材会社)」は、特定技能外国人を初めて受け入れた日から4か月以内に、協議会へ正会員(構成員)として加入する法的な義務を負います。

一方、現場で実際の指揮命令を行う派遣先企業は、協議会の直接の加入義務者ではありませんが、協議会から運用の適正化を目的とした情報提供の要請や、現地調査の申し入れがあった場合には、これに誠実に「協力」しなければならない義務が生じます。

この二元的な責任構造を理解しておくことが、コンプライアンス遵守の第一歩となります。

出典:農林水産省「農業特定技能協議会」WEB申請水産庁「漁業特定技能協議会」

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多くの企業が抱く最大の誤解が、「派遣会社から送り込まれてくるスタッフなのだから、ビザの適格性や法律面の管理は派遣会社が全責任を負っているはずだ」という思い込みです。

しかし、入管法における「不法就労助長罪(入管法第73条の2)」は、直接の雇用主(派遣元)だけでなく、実際に現場で労働させている企業(派遣先)に対しても等しく適用されます

不法就労助長罪の条文(入管法第73条の2)

次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

  1. 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
  2. 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
  3. 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

出典元:e-GOV 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)

万が一、派遣会社側の確認不備や故意によって、不法滞在者や、在留期限の切れた外国人、あるいは対象外の資格しか持たない外国人を自社の現場で就労させてしまった場合、派遣先企業も「過失責任」を問われます。

「派遣会社が大丈夫だと言ったから」という抗弁は、刑事免責の理由にはなりません。

処罰された場合、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科されるだけでなく、その後5年間は特定技能を含めたすべての外国人受け入れが全面的に不可能となるため、企業の存続に関わる致命的なダメージを受けます。

会社を守るための水際対策!在留カードの正しいチェック方法

この致命的なリーガルリスクから自社を守るためには、派遣会社任せにせず、現場への着任時に自社独自の「水際対策」をマニュアル化して実践することが不可欠です。

外国人スタッフが現場に到着した際、必ず「在留カード」の原本提示を求め、担当者が直接以下の項目を確認してください。

まず、表面の「在留資格」が『特定技能』であり、かつ自社の業務区分に対応しているか。次に、「在留期間の満了日」が経過しておらず、有効期間内であるか。そして最も重要なのが、精巧に作られた「偽造在留カード」の判別です。

在留カード

目視だけでの偽造チェックには限界があるため、出入国在留管理庁が公式に提供している無料の「在留カード等読取アプリケーション」を会社の端末に導入し、カード内に埋め込まれているICチップの情報を読み取って、入管のデータベースと一致しているかを確認する手順を社内の標準フローとして定着させることが、確実なリスク管理となります。

資格外活動に該当するリスクと任せていい業務の範囲

特定技能の派遣において、実務上最も発生しやすい違反が「業務範囲の逸脱」です。

例えば、農業分野の特定技能として受け入れた派遣スタッフに対し、作物の栽培や収穫といった農作業(認められた職務範囲)だけでなく、人手不足だからという理由で、自社が運営する別法人の食品加工工場で専任のライン作業をさせたり、販売店のレジ打ちや一般事務のタスクを終日命じたりするケースです。

これは在留資格で認められた活動範囲を著しく超えるため、入管法違反(資格外活動・在留不適格)として一発アウトとなります。

特定技能は、主たる業務に関連する「付随業務」への従事は一定範囲で認められていますが、付随業務のみを専ら行わせることは固く禁止されています

現場の指示を出す管理者や作業リーダーに対し、その外国人スタッフが「何の資格で、どの範囲の業務まで指示してよいか」を完全に周知徹底しておく体制整備が必要です。

4.お金と手間の本音比較!「派遣」と「直接雇用」はどちらを選ぶべき?

お金と手間の本音比較!「派遣」と「直接雇用」はどちらを選ぶべき?

派遣受け入れと自社直接雇用におけるコスト構造、および人事労務の手間を天秤にかけ、自社に最適な採用ルートを見極めるための基準を提示します。

初期費用と月々のマージンから見る「派遣」のコスト相場

特定技能の派遣スキームを選択した場合、まず発生するのが派遣会社への「人材紹介手数料」です。

これが初期費用として、労働者1人あたり約30万〜60万円のレンジが市場相場となります。そして、稼働後に毎月支払う費用は、労働時間に応じた派遣料金(時給単価)となります。

この派遣料金には、スタッフ本人の基本賃金だけでなく、派遣会社が負担する社会保険料の会社負担分、法定の10項目に及ぶ複雑な生活・行政支援にかかる人件費、そして派遣会社のマージンがすべて上乗せされています。

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そのため、実質的な月額換算コストは25万円前後に達することが多く、日本人の一般的な一般派遣や、直接雇用の基本給と比較すると2〜3割高くなる傾向があります。

その代わり、煩雑なビザ申請手続きの代行や日常のメンタルケア、採用ミスマッチ時のスタッフの交代対応などを派遣会社側が全て引き受けるため、受入企業側の「初期の手間と採用失敗リスク」を実質的にゼロにできるという高い付加価値が存在します。

外部の専門機関に支援を任せる「直接雇用」のコスト相場

一方、自社で直接雇用を行い、登録支援機関を活用する場合のコスト構造を紐解きます。

直接雇用の場合は、同一労働同一賃金の原則に基づき、日本人と同等以上の報酬(社内の賃金規程や地域相場を客観的根拠とする水準)を支払う必要があります。

その上で、自社で外国人の生活支援を行うリソースがない場合は、出入国在留管理庁長官の登録を受けた「登録支援機関(とうろくしえんきかん)」に支援計画の全部または一部を委託するのが一般的です。

この登録支援機関に支払う月額の委託管理料(サポート費用)の市場相場は、外国人1人あたり毎月「2.0万円〜2.5万円以下」のラインが最も多いボリューム層となっています。

これを直接雇用の基本給やお給料に加算したとしても、毎月の固定コストという側面だけで見れば、派遣会社へ支払う月々の総額よりも、直接雇用(登録支援機関委託)の方がかなり低く抑えられるケースが大半を占めます。

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会社のスケジュールや繁閑差(忙しい時期のズレ)に合わせた賢い選び方

コストの絶対額だけで比較すると「直接雇用の方が経済的だ」と判断しがちですが、自社の「事業スケジュール」や「労働需要の波(繁閑差)」を考慮しなければ、最適な意思決定は下せません。

自社の業務が1年を通じて常に安定しており、指導を重ねて現場の中核として長く定着させたい、生産性を向上させたいと考えるのであれば、迷わず直接雇用を選択すべきです。

一方、収穫期や漁期など、1年のうち特定の「3ヶ月間だけ」極端に労働力が必要で、残りの9ヶ月間は閑散期になるというビジネスモデルであれば、どれほど月額単価が高く見えようとも派遣雇用を活用する方が合理的です。

閑散期における無駄な人件費の固定化や雇用維持の義務から解放されるため、トータルの経営指標・採用予算として評価した際には、派遣の方が圧倒的に無駄のない経営効率化をもたらすことになります。

出典:SMILEVISA 特定技能外国人に関する統計・管理料相場

5.労働者派遣法との関係と最新の入管運用要領に基づく特例措置

労働者派遣法との関係と最新の入管運用要領に基づく特例措置

労働者派遣法との競合問題や、最新の入管運用要領の改正、そしてこれからの未来のロードマップとなる新制度への移行について解説します。

労働者派遣法の「3年ルール」との関係はどうなる?

特定技能1号の在留資格自体は、日本国内で「通算最大5年間」の就労が可能であると規定されています。

しかし、特定技能の外国人を派遣形態で受け入れる場合、入管法だけでなく、国内の「労働者派遣法(ろうどうしゃはけんほう)」の適用を全面的に受ける点に細心の注意が必要です。

同法には、派遣先の同一の組織的単位(課や現場ラインなど)に対して、個人の派遣スタッフを継続して送り込める期間は「原則として上限3年まで」とする、いわゆる「3年ルール(派遣期間制限)」が存在します。

つまり、在留資格上は5年滞在できたとしても、労働者派遣法の制限により、実質的に同じ現場でそのスタッフを派遣のまま使い続けられるのは最大3年が限界となります。

3年を超えてその優秀な人材を現場に引き留めたい場合は、会社の組織を変更するか、派遣契約を終了して自社の「直接雇用(正社員など)」へと切り替える届出・申請手続きを逆算して進める必要があるため、人事労務のロードマップに組み込んでおくべき重要な論点です。

試験に落ちてもチャンスがある?最長6年目まで働ける新しい特例

特定技能1号の5年の在留上限が迫る外国人材は、より高度な熟練技能を証明する「特定技能2号」の試験に合格することで、在留期間の更新上限がなくなり、要件を満たせば家族帯同(配偶者や子)も可能となる長期就労への道が開かれます。

しかし、実務上「1号の期限までに2号試験に合格できなかったら、即座に帰国させなければならないのか」という懸念が企業側にありました。

この問題に対し、最新の入管運用要領の改正により、特例的な救済措置が導入されました。万が一試験に不合格となった場合でも、

  • 「必須の技能試験において合格基準の80%以上の得点を取得していること」
  • 「今後も受験を継続する明確な誓約書があること」
  • 「受け入れ企業側に雇用継続の強い意志があること」

といった要件を満たしていれば、審査を経て最長で「6年目」までの在留延長が適法に認められるようになりました。

企業側にとって、育成した即戦力人材を試験不合格という不運だけで突然失うリスクを回避できる、実務上極めて価値の高いアップデート情報です。

出典:出入国在留管理庁 通算在留期間

これからの「育成就労(いくせいしゅうろう)制度」への移行とキャリアのロードマップ

特定技能における派遣雇用の活用は農業と漁業の2分野に限定された特例であり、受入企業は派遣会社任せにせず共同責任者としての当事者意識を持つことが不可欠です。

法的なコンプライアンスを遵守し、不法就労助長罪などのリスクを徹底的に排除した上で、外国人材を重要なビジネスパートナーとして迎える体制を構築することこそが、企業の持続的な成長と人手不足解消の鍵となります。

出典:出入国在留管理庁「特定技能運用要領」

6.リスクを排した特定技能派遣の活用で持続的な成長へ

在留資格「特定技能」における派遣雇用の活用は、農業と漁業の2分野に限定して認められた極めて例外的な特例措置です。

手続きの煩雑さや日常の生活支援から解放されるという利便性がある一方で、受入企業(派遣先)は派遣会社任せにすることなく、共同責任者としての強い当事者意識を持つことが不可欠となります。

実務においては、現場での「業務範囲の逸脱」や「在留カードの確認漏れ」といった些細な油断が、自社を巻き込む不法就労助長罪などの深刻なリーガルリスクへと直結しかねません。

法的なコンプライアンスを完全に遵守し、強固なリスク管理体制を構築して初めて、外国人材は事業の持続的な成長を支える強力なパートナーとなります。

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記事を書いた人
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行政書士法人バタフライエフェクト
行政書士法人バタフライエフェクトは、外国人の就労ビザ取得、相談のエキスパートです。上場企業様から小規模の会社様まで、これまで10,000件以上の案件を支援。就労ビザを踏まえた外国人雇用のコンサルティングも行っており、年間実績1,500件、ビザの専門家が多数在籍しています。
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