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技能実習生の職種一覧|91職種168作業の要件と受け入れポイント

技能実習生の受け入れを検討している企業が最初に確認すべきは、自社の業務が対象職種に該当するかどうかです。

2025年現在、91職種168作業が受け入れ対象として定められていますが、単純に職種名が含まれているだけでは受け入れできません。

必須業務の時間割合や職種特有の要件など、詳細な条件をクリアする必要があります。

この記事では、技能実習生の対象職種の確認方法から受け入れ準備まで、実務に必要な情報を解説します。

この記事を読んでわかること
  • 技能実習生を受け入れ可能な91職種168作業の全一覧と各分野の特徴
  • 自社の業務が対象職種に該当するかを判定する具体的な手順と確認方法
  • 技能実習計画作成から受け入れ後の指導体制まで押さえるべき重要ポイント

1.技能実習生の職種とは?基本的な仕組みを理解しよう

技能実習生の職種とは?基本的な仕組みを理解しよう

技能実習生の受け入れを成功させるためには、まず「職種」と「作業」の基本的な仕組みを正しく理解することが重要です。

多くの企業が職種選択で失敗する原因の多くは、この基本的な理解が不十分であることにあります。

移行対象職種と作業の違いを正しく理解する

技能実習制度において、受け入れ対象業務は「職種」と「作業」の2段階で分類されています。

職種とは

技能実習制度において対象となる業務分野の大きな分類を指します。例えば「溶接」「機械加工」「建築大工」などが職種にあたります。

作業とは

職種をさらに細分化したもので、使用する機器や現場、製品の違いなどによって区別されます。例えば「溶接」職種の場合、「手溶接」と「半自動溶接」の2つの作業に分かれています。

技能実習は原則として作業単位で行われるため、受け入れ企業は実習させたい業務が法令に定められた作業に該当しているかを確認し、それに基づいて技能実習計画を作成する必要があります。

移行対象職種とは

移行対象職種とは、技能実習1号(1年以内)から技能実習2号・3号(最大5年間)への移行が認められる職種・作業のことです。

外国人技能実習機構は移行対象職種を以下のように定義しています。

「技能実習評価試験の整備などに関する専門家会議による確認の上、第2号又は第3号技能実習への移行に係る技能実習において技能実習生が修得などをした技能等の評価を客観的かつ公正に行うことができる公的評価システムとして整備された、技能検定等を有する職種・作業の総称」

出典:OTIT(外国人技能実習機構) 移行対象職種情報

移行対象職種以外の職種・作業でも1年以内の技能実習1号は可能ですが、実質的な実習期間が短くなるため、多くの企業は移行対象職種での受け入れを選択しています。

技能実習で扱う3つの業務分類とその役割

技能実習では、実習生が従事する業務を「必須業務」「関連業務」「周辺業務」の3つに分類し、それぞれに時間割合の要件が設けられています。

技能実習の3つの業務分類
技能実習の3つの業務分類
実習生が従事する業務は「必須」「関連」「周辺」の3つに分類され、それぞれに実施時間のルールが定められています。
必須業務
年間の実習時間全体の 50% 以上
その職種・作業の核となる技能を習得するために、必ず従事しなければならない業務です。
手溶接作業の例
平板突合せ継手の溶接、隅肉継手の溶接 など
🔗
関連業務
年間の実習時間全体の 50% 以下
必須業務をより深く理解し、実践的な技能を習得するために設定される業務です。
手溶接作業の例
ガス溶接 など
🧹
周辺業務
年間の実習時間全体の 1/3 以下
日本人従業員も通常行う付随的な業務で、職場での実践的な経験を積むために行います。
一般的な例
製品の梱包、清掃作業 など

必須業務

必須業務は、当該職種・作業で必ず従事しなければならない業務です。必須業務の時間数が年間の実習時間全体の半分以上であることが要件となっています。

必須業務はその職種・作業の核となる技能を習得するための業務であり、審査基準に記載されたすべての必須業務を技能実習計画に盛り込む必要があります。

例えば手溶接作業の場合、「平板突合せ継手の溶接」「隅肉継手の溶接」など、溶接技能の習得に不可欠な業務が必須業務として定められています。

関連業務

関連業務は、必須業務との関連性が認められる業務で、年間の実習時間全体の2分の1以下に制限されています。関連業務は必須業務をより深く理解し、実践的な技能を習得するために設定されます。

手溶接作業では「ガス溶接」などが関連業務として認められています。

周辺業務

周辺業務は、日本人従業員と同様に従事することが想定される業務で、年間の実習時間全体の3分の1以下に制限されています。周辺業務は製品の梱包や清掃作業など、直接的な技能習得ではないものの、職場での実践的な経験を積むために必要な業務です。

また、必須業務・関連業務・周辺業務それぞれにおいて、「安全衛生業務」を設定する必要があり、時間数としては業務毎に全体の10%以上を占めていることが要件となります。

この業務分類と時間割合の要件を正しく理解し、実習計画に適切に反映させることが、技能実習の認定を受けるための重要なポイントです。

2.【2025年最新】技能実習生受け入れ可能な91職種168作業の完全一覧

【2025年最新】技能実習生受け入れ可能な91職種168作業の完全一覧

2025年3月時点において、技能実習制度で受け入れ可能な業務は91職種168作業と定められています。

これらの職種・作業は8つの分野に大別され、それぞれに特有の要件や制約が設けられています。

8分野の職種数と主な特徴

8分野の職種数と主な特徴
技能実習8分野の職種と特徴
技能実習8分野の職種と特徴
技能実習制度で受け入れ可能な職種は8つの分野に大別され、それぞれに特有の要件や制約が設けられています。
🌳
農業・林業分野
3職種 7作業
耕種農業、畜産農業、林業で構成。営農証明書の提示や、林業では特定の法律に基づく認定事業者であることが求められるなど、職種ごとに特有の条件があります。
🐟
漁業分野
2職種 10作業
漁船漁業と養殖業の2職種。水産庁の協議会から証明書の交付を受ける必要があり、他の分野とは大きく異なる事前準備が求められるのが特徴です。
🏗️
建設分野
22職種 33作業
最も職種数が多い分野。キャリアアップシステムへの登録、月給制の採用、受入れ人数枠など、建設分野特有の厳格な要件が定められています。
🥫
食品製造分野
11職種 19作業
食品の製造・加工に関する職種。食品衛生法に基づく営業許可や、特定の法律に基づく許可証が必要な場合が多く、衛生管理と設備要件が厳格です。
👕
繊維・衣服分野
13職種 22作業
紡績から縫製まで繊維製品の製造が対象。製造工程が多段階にわたるため、実習生がどの工程に従事するかを明確にした計画作成が重要になります。
🔧
機械・金属分野
17職種 34作業
鋳造から金属熱処理まで幅広い職種を含みます。特に金属熱処理業では、事業所の規模や技能士の在籍など、業界特有の厳しい要件が設けられています。
その他分野
21職種 39作業
家具製作、印刷、プラスチック成形、介護、宿泊など多様な職種で構成。特に介護では、専門知識を持つ指導員の在籍が求められるなど、職種ごとに要件が異なります。
📋
社内検定型
2職種 4作業
空港グランドハンドリングとボイラーメンテナンスが該当。企業が独自に構築した技能評価システム(社内検定)を活用する特殊な職種です。
技能実習 職種・作業一覧
技能実習 職種・作業一覧
1. 農業関係(3職種7作業) +
職種名作業名
耕種農業●施設園芸
畑作・野菜
果樹
畜産農業●養豚
養鶏
酪農
林業育林・素材生産作業
2. 漁業関係(2職種10作業) +
職種名作業名
漁船漁業●かつお一本釣り漁業
延縄漁業
いか釣り漁業
まき網漁業
ひき網漁業
刺し網漁業
定置網漁業
かに・えび・かご漁業
棒受網漁業
養殖業●ほたてがい・まがき養殖
3. 建設関係(22職種33作業) +
職種名作業名
さく井パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
建築板金ダクト板金
内外装板金
冷凍空気調和機器施工△冷凍空気調和機器施工
建具製作木製建具加工
建築大工大工工事
型枠施工型枠工事
鉄筋施工鉄筋組立て
とびとび
石材施工石材加工
石張り
タイル張りタイル張り
かわらぶきかわらぶき
左官左官
配管建築配管
プラント配管
熱絶縁施工保温保冷工事
内装仕上げ施工プラスチック系床仕上げ工事
カーペット系床仕上げ工事
鋼製下地工事
ボード仕上げ工事
カーテン工事
サッシ施工ビル用サッシ施工
防水施工シーリング防水工事
コンクリート圧送施工コンクリート圧送工事
ウェルポイント施工ウェルポイント工事
表装壁装
建設機械施工●押土・整地
積込み
掘削
締固め
築炉築炉
4. 食品製造関係(11職種19作業) +
職種名作業名
缶詰巻締●缶詰巻締
食鳥処理加工業●食鳥処理加工
加熱性水産加工食品製造業●節類製造
加熱乾製品製造
調味加工品製造
くん製品製造
非加熱性水産加工食品製造業●塩蔵品製造
乾製品製造
発酵食品製造
水産練り製品製造業かまぼこ製品製造
牛豚食肉処理加工業●牛豚部分肉製造
ハム・ソーセージ・ベーコン製造△ハム・ソーセージ・ベーコン製造
パン製造●パン製造
そう菜製造業●そう菜加工
農産物漬物製造業●△農産物漬物製造
医療・福祉施設給食製造●△医療・福祉施設給食製造
5. 繊維・衣服関係(13職種22作業) +
職種名作業名
紡績運転●前紡工程
精紡工程
巻糸工程
合ねん糸工程
織布運転●準備工程
製織工程
仕上工程
染色糸浸染
織物・ニット浸染
ニット製品製造靴下製造
丸編みニット製造
たて編ニット生地製造●たて編ニット生地製造
婦人子供服製造婦人子供既製服縫製
紳士服製造紳士既製服製造
下着類製造●下着類製造
寝具製作寝具製作
カーペット製造●△織じゅうたん製造
タフテッドカーペット製造
ニードルパンチカーペット製造
帆布製品製造帆布製品製造
布はく縫製ワイシャツ製造
座席シート縫製●自動車シート縫製
6. 機械・金属関係(17職種34作業) +
職種名作業名
鋳造鋳鉄鋳物鋳造
非鉄金属鋳物鋳造
鍛造ハンマ型鍛造
プレス型鍛造
ダイカストホットチャンバダイカスト
コールドチャンバダイカスト
機械加工普通旋盤
フライス盤
数値制御旋盤
マシニングセンタ
金属プレス加工金属プレス加工
鉄工構造物鉄工作業
工場板金機械板金作業
めっき電気めっき
溶融亜鉛めっき
アルミニウム陽極酸化処理陽極酸化処理
仕上げ治工具仕上げ
金型仕上げ
機械組立仕上げ
機械検査機械検査
機械保全機械系保全
電子機器組立て電子機器組立て
電気機器組立て回転電機組立て
変圧器組立て
配電盤・制御盤組立て
開閉制御器具組立て
回転電機巻線製作
プリント配線板製造プリント配線板設計
プリント配線板製造
アルミニウム圧延・押出製品製造●△引抜加工仕上げ
金属熱処理業●全体熱処理
表面熱処理(浸炭・浸炭窒化・窒化)
部分熱処理(高周波熱処理・炎熱処理)
7. その他(21職種39作業) +
職種名作業名
家具製作家具手加工
印刷オフセット印刷
グラビア印刷●△
製本製本
プラスチック成形圧縮成形
射出成形
インフレーション成形
ブロー成形
強化プラスチック成形手積み積層成形
塗装建築塗装
金属塗装
鋼橋塗装
噴霧塗装
溶接●手溶接
半自動溶接
工業包装工業包装
紙器・段ボール箱製造印刷箱打抜き
印刷箱製箱
貼箱製造
段ボール箱製造
陶磁器工業製品製造●機械ろくろ成形
圧力鋳込み成形
パッド印刷
自動車整備●自動車整備
ビルクリーニングビルクリーニング
介護●
クリーニング●△リネンサプライ仕上げ
一般家庭用クリーニング
コンクリート製品製造●コンクリート製品製造
宿泊●△接客・衛生管理
RPF製造●RPF製造
鉄道施設保守整備●軌道保守整備
ゴム製品製造●△成形加工
押出し加工
混練り圧延加工
複合積層加工
鉄道車両整備●走行装置検修・解ぎ装
空気装置検修・解ぎ装
木材加工●△機械製材
社内検定型の職種・作業(2職種4作業) +
職種名作業名
空港グランドハンドリング●航空機地上支援
航空貨物取扱
客室清掃
ボイラーメンテナンス●△ボイラーメンテナンス

(注1)●の職種:技能実習評価試験に係る職種

(注2)△のない職種・作業:3号技能実習まで実習可能です。

出典:厚生労働省 技能実習制度 移行対象職種・作業一覧

技能実習3号移行不可の職種・作業(△印)について

技能実習3号への移行対象職種は82職種153作業となっており、一部の職種・作業では技能実習3号への移行ができません

これらは職種・作業名に「△」印が付けられており、最長3年間(技能実習1号・2号まで)での実習となります。

3号移行不可の主な理由は、技能評価システムの整備状況や業界の特性によるものです。

例えば、新しく追加された職種や、技能検定制度との整合性が十分に確立されていない作業などが該当します。

3号移行不可の職種・作業で技能実習生を受け入れる場合は、3年間での技能習得を前提とした実習計画を立てておきましょう。

また、技能実習終了後の進路として、特定技能制度への移行が可能な職種については、その準備も併せて検討することをお勧めします。

参考:OTIT 移行対象職種情報

職種特有要件が設定されている主要職種

多くの職種で、業界の特性や法令に基づく特有の要件が設定されています。主要なものは以下の通りです。

  • 建設関係の特有要件
  • 食品製造関係の特有要件
  • 介護の特有要件
  • その他の特殊要件

建設関係の特有要件

建設分野では、建設キャリアアップシステムへの登録が義務付けられています。また、技能実習生に対する月給制の採用、実習生の数が常勤職員の総数を超えないことなど、建設業界特有の要件があります。

食品製造関係の特有要件

食品衛生法に基づく営業許可の取得が必須です。例えば、牛豚食肉処理加工業では食品衛生法に基づく食肉処理営業許可書を有する事業所の業態であること、そう菜製造業では食品の大量調理を行うための厳密な設備要件を満たすことが求められます。

介護の特有要件

監理団体、企業・事業主に専門知識と技術を有する者の在籍が求められるなど、介護の専門性を担保するための要件が設定されています。

その他の特殊要件

自動車整備では道路運送車両法に基づく認証を受けた自動車特定整備事業場での作業であること、ビルクリーニングでは建築物における衛生的環境の確保に関する法律に掲げる登録業種の登録を受けていることなど、各職種の特性に応じた要件があります。

これらの特有要件は、技能実習計画の作成前に必ず確認し、すべての要件をクリアできることを確認してから受け入れ手続きを進めることが重要です。

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3.自社の業務が技能実習対象職種に該当するかを確認する方法

自社の業務が技能実習対象職種に該当するかを確認する方法

技能実習生の受け入れを検討する際、最も重要なのは自社の業務が技能実習の対象職種に該当するかの正確な判定です。

単純に職種名が一覧に含まれているだけでは不十分で、詳細な要件をクリアできるかの確認が必須です。

厚生労働省の審査基準を使った判定手順

技能実習生が従事する業務が移行対象職種・作業に該当するかを判断する基準が、厚生労働省が公表している「審査基準」です。

審査基準には職種・作業に関する細かな要件が書かれているため、監理団体の計画作成指導者から、実習実施者の技能実習責任者、技能実習指導員まで、内容の確認が必要となります。

審査基準の入手方法

移行対象職種ごとの審査基準は、技能実習実施計画書のモデル例や試験基準の資料とともに、厚生労働省のホームページにすべて掲載されています。「技能実習計画審査基準」で検索すると、最新版の審査基準を確認できます。

参考:厚生労働省 技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験試験基準

審査基準の7つのチェック項目
審査基準の7つのチェック項目
自社の業務が技能実習の要件を満たすか、以下の7項目に沿って厚生労働省の「審査基準」と照合し、詳細に確認する必要があります。
1. 作業の定義
実習生がどのような業務に従事するかの公式な記載
2. 必須業務
必ず従事しなければならない業務の詳細
3. 関連業務・周辺業務
必須業務との関連性が認められた業務
4. 使用する素材・材料等
業務で用いる原料や扱う道具の詳細
5. 機械・器具等
使用が義務付けられた機械・器具の詳細
6. 製品等の例
作られる製品例や想定される成果物
7. ならない業務例
従事が認められていない禁止業務のリスト

これらの項目を自社の業務内容と照合し、すべての要件を満たせるかを確認します。

判定が困難な場合の相談先

判定が困難な場合は、以下の機関に相談することをお勧めします。

  • 公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)
    技能実習制度の総合的な相談窓口(https://www.jitco.or.jp/
  • 監理団体
    職種・作業の該当性について専門的なアドバイスを提供
  • 外国人技能実習機構(OTIT)
    制度の運用について公的な見解を提供(https://www.otit.go.jp/
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必須業務の時間割合をクリアできるかの計算方法

技能実習の認定を受けるためには、業務時間の割合要件をクリアする必要があります。この計算方法を正確に理解することが重要です。

年間実習時間の算出方法
年間実習時間の算出方法
技能実習計画を作成する際、まず年間の総実習時間を算出します。計算は以下の3つの要素を掛け合わせることで行います。
🕒
1日の実習時間
8時間
×
📅
週の実習日数
5日
×
🗓️
年間実習週数
50週
【計算例】
8時間 × 5日 × 50週 = 2,000時間

必須業務50%以上の確認手順

必須業務の時間数が年間の実習時間全体の半分以上であることが要件となっています。上記の例では、年間2,000時間のうち1,000時間以上を必須業務に充てる必要があります。

審査基準に記載されたすべての必須業務について、それぞれの予定時間を積み上げ、合計が50%以上になることを確認します。

安全衛生業務10%以上の組み込み方

必須業務・関連業務・周辺業務それぞれにおいて、「安全衛生業務」を設定する必要があり、時間数としては業務毎に全体の10%以上を占めていることが要件となっています。

例えば、必須業務が1,000時間の場合、そのうち100時間以上を安全衛生業務に充てる必要があります。関連業務や周辺業務についても、同様に10%以上の安全衛生業務を組み込みます。

使用する機械・材料・製品要件の確認ポイント

審査基準では、使用する機械・器具や材料についても詳細な要件が定められています。

機械・材料・製品の要件確認ポイント
「機械・材料・製品」3つの要件確認ポイント
🛠️
指定された機械・器具の準備
使用が義務付けられた機械・器具を確認し、実習開始までに準備します。JIS規格の溶接機など、職種ごとに細かく指定されています。
🧱
JIS規格材料などの調達要件
特に製造業ではJIS規格適合材料の使用が必須な場合があります。安定的に調達できるか、事前に確認することが重要です。
🎁
想定製品との整合性確認
審査基準の製品例と自社の製品が大きく異なる場合、職種・作業の選択を見直す必要があります。

これらの要件確認を怠ると、実習開始後に計画変更が必要になったり、最悪の場合は認定取り消しとなるリスクがあります。受け入れ前の十分な確認が成功の鍵となります。

4.技能実習生受け入れ準備で必ず押さえるべき重要事項

技能実習生受け入れ準備で必ず押さえるべき重要事項

技能実習生の受け入れが決まったら、適切な準備を進めることが成功の鍵となります。

ここでは、受け入れ準備で特に重要な2つの事項について詳しく解説します。

技能実習計画作成時の注意点とコツ

技能実習計画は、技能実習の認定を受けるための最も重要な書類です。計画書の質が認定の可否を左右するため、細心の注意を払って作成する必要があります。

技能実習計画作成の基本的な流れ
技能実習計画作成の5つのステップ
1
職種・作業の最終確認
審査基準に照らし、自社業務が対象職種に該当するかを再確認します。
2
業務時間の配分計画
必須・関連・周辺業務の時間を計算し、規定の割合を満たすよう配分します。
3
指導体制の整備
技能実習指導員と責任者を選任し、それぞれの役割分担を明確にします。
4
技能習得目標の設定
技能検定の受検など、実習生が達成すべき具体的な目標を設定します。
5
安全衛生計画の策定
職種に応じた安全衛生教育の計画を立て、管理体制を構築します。

業務内容記載時の具体的な書き方

業務内容の記載では、抽象的な表現ではなく、具体的で詳細な記述が求められます。

良い記載例
「普通旋盤を使用し、直径50mm、長さ200mmの鋼材を加工し、外径公差±0.05mmの精度で円筒状部品を製作する」
悪い記載例
「旋盤作業を行う」

また、使用する機械・器具の型番や仕様、加工する材料の規格、製品の寸法・公差なども具体的に記載しなければいけません。

審査でよく指摘される項目とその対策

審査において指摘されることが多い項目と対策は以下の通りです。

よく指摘される項目対策方法
必須業務時間の不足必須業務が50%を下回っている場合の指摘。業務配分を見直し、必須業務の時間を増やす
安全衛生業務の不備各業務区分で10%以上の安全衛生業務が組み込まれていない場合の指摘。安全衛生教育や点検作業の時間を適切に配分する
使用機械・材料の不整合審査基準で求められる機械・材料と実際の使用予定のものが異なる場合の指摘。基準に適合した機械・材料を準備するか、職種・作業の見直しを行う
指導体制の不明確技能実習指導員の経験・資格が不十分、または指導方法が具体的でない場合の指摘。適切な指導員の選任と詳細な指導計画の作成を行う

受け入れ後の指導体制構築のポイント

技能実習生が来日した後の指導体制の構築は、実習の成功を左右する重要な要素です。

技能実習指導員の選任要件

技能実習指導員は、当該職種・作業について5年以上の経験を有する者、または厚生労働省令で定める要件を満たす者から選任する必要があります。具体的には、

  • 当該職種・作業の技能検定1級の有資格者
  • 当該職種・作業について10年以上の実務経験を有する者
  • 外国人技能実習機構が認定した養成講習を修了した者

指導員の選任にあたっては、技術的な能力だけでなく、外国人とのコミュニケーション能力や指導意欲も重要な選定基準となります。

安全衛生教育の実施ポイント
安全衛生教育で押さえるべき5つのポイント
技能実習では、日本人従業員以上に徹底した安全衛生教育が求められます。入国直後には、以下の内容を含む包括的な教育を実施しましょう。
⚠️
危険箇所の確認と回避
職場のどこに危険が潜んでいるかを具体的に示し、安全な行動方法を徹底します。
⚙️
機械・器具の安全操作
使用するすべての機械や器具について、正しい操作手順と緊急停止方法を指導します。
⛑️
保護具の正しい着用
ヘルメットや安全靴など、指定された保護具の正しい着用方法と管理方法を教えます。
🚑
緊急時の対応手順
火災や怪我が発生した際の具体的な対応手順と、緊急連絡先を明確に伝えます。
👷
安全への心構え
「自分の身は自分で守る」という意識を高め、労働災害防止の基本を指導します。

教育は実習生の母国語に対応した教材を使用し、理解度を確認しながら進めることが重要です。また、定期的な安全衛生教育の実施と記録の保管も義務付けられています。

技能評価試験対策の進め方

技能実習2号・3号への移行には技能評価試験(技能検定等)の合格が必要です。効果的な試験対策を行うことで、実習生の技能向上と移行成功率の向上が期待できます。

試験対策は以下のステップで進めます。

  1. 試験内容の把握
    学科試験・実技試験の出題範囲と評価基準の確認
  2. 習得状況の定期的な評価
    月次での技能チェックと弱点の把握
  3. 集中対策期間の設定
    試験前3ヶ月程度の集中的な対策実施
  4. 模擬試験の実施
    本番さながらの模擬試験による最終確認

特に実技試験については、制限時間内での作業完了と品質基準のクリアが求められるため、繰り返し練習による技能の定着が不可欠です。

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5.職種選択で失敗しないための重要な注意点

職種選択で失敗しないための重要な注意点

技能実習の成功には適切な職種選択が欠かせません。

しかし、多くの企業が職種選択で失敗し、計画変更や最悪の場合は実習中止に追い込まれるケースがあります。

ここでは、そうした失敗を避けるための重要な注意点を解説します。

よくある職種選択の間違いパターン

技能実習の職種選択で最も多い失敗パターンと、その対策方法について詳しく説明します。

  • 業務内容の齟齬
  • 必須業務時間不足
  • 移行対象職種・作業とはならない業務に従事させるなどの不適切な業務従事

業務内容の齟齬を防ぐ方法

最も多い失敗パターンは、審査基準で定められた業務内容と、実際に実習生に従事させる業務との間に齟齬が生じることです。

例えば、「機械加工」職種で計画を作成したにも関わらず、実際には組み立て作業が中心となっているケースや、「食鳥処理加工業」で計画を立てたものの、実際には食鳥以外の食肉処理が中心となっているケースなどがあります。

この齟齬を防ぐためには、以下の対策が有効です。

業務内容の齟齬を防ぐ方法

必須業務時間不足の回避策

技能実習では必須業務が年間実習時間の50%以上であることが要件ですが、実際に計算してみると50%を下回ってしまうケースが多くあります。

典型的な要因は以下の通りです。

  • 付随作業の過大評価
    材料準備や後片付けなど、必須業務に含まれない作業時間の過大評価
  • 機械トラブル時間の未考慮
    機械の故障やメンテナンス時間を実習時間に含めてしまう
  • 検査・待機時間の誤算
    品質検査や次工程への待機時間を必須業務時間に含めてしまう

これらの要因を排除し、純粋な必須業務時間を50%以上確保するためには、以下の対策をしましょう。

  • 実作業時間の精密測定
    ストップウォッチを使用した実作業時間の測定
  • 非生産時間の明確な区分
    必須業務以外の時間を明確に区分し、計算から除外
  • 業務配分の最適化
    必要に応じて業務内容を調整し、必須業務の比重を高める

不適切な業務従事の防止対策

審査基準では、各職種・作業について「移行対象職種・作業とはならない業務例」が明記されています。

これらの業務に従事させることは制度違反となり、厳しい指導や認定取消しの対象となります。

よくある違反例としては、以下のようなものがあります。

  • 建築大工職種で、プレカット材の組み立てのみを行わせる(手加工技能が習得できない)
  • 機械加工職種で、単純な製品の取り付け・取り外し作業のみを行わせる
  • 食品製造職種で、包装・梱包作業のみを行わせる

これらの違反を防止するためには、

  • 審査基準の徹底的な理解
    「移行対象職種・作業とはならない業務例」を全関係者が理解
  • 作業指示書の整備
    実習生への作業指示において、適切な業務のみを記載
  • 定期的な業務内容の確認
    月次での業務内容チェックと必要に応じた修正

6.しっかりとした基盤づくりで実現する技能実習の成功

しっかりとした基盤づくりで実現する技能実習の成功

技能実習生の受け入れ成功の鍵は、事前の十分な準備にあります。

91職種168作業から自社に適した職種を選択し、審査基準に基づく詳細な要件確認を行うことで、スムーズな受け入れが可能になります。

不明な点があれば専門機関に相談し、計画的に進めることがスムーズな受け入れの基本です。

適切な準備をしておけば、企業の成長と実習生の技能習得という双方にとって価値ある技能実習を実現できるでしょう。

記事を書いた人
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行政書士法人バタフライエフェクト
行政書士法人バタフライエフェクトは、外国人の就労ビザ取得、相談のエキスパートです。上場企業様から小規模の会社様まで、これまで10,000件以上の案件を支援。就労ビザを踏まえた外国人雇用のコンサルティングも行っており、年間実績1,500件、ビザの専門家が多数在籍しています。
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