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特定技能「自動車整備」の要件は?認証工場の注意点と2号移行

少子高齢化が進む日本の自動車整備業界において、人手不足は深刻な経営課題です。その解決策として期待されているのが在留資格「特定技能」です。

即戦力となる外国人材を受け入れるためには、本人に求められる試験合格などの要件だけでなく、企業側が「認証工場」であることなど、法令遵守に基づいた厳格な基準を満たす必要があります。

この記事を読んでわかること
  • 特定技能1号を取得するための「試験合格」と「実習移行」の条件
  • 受け入れ企業に必須の「認証工場」要件と「協議会加入」の手続き
  • 在留制限がなく家族帯同も可能になる「特定技能2号」への移行要件

1. 自動車整備分野で「特定技能」が注目される理由と、制度の全体像

自動車整備分野で「特定技能」が注目される理由と、制度の全体像

日本の自動車整備業界における整備要員数は約40万人で推移していますが、平均年齢は47.7歳に達し、有効求人倍率は4.72倍と、深刻な構造的危機に直面しています。

この危機を打開するために創設されたのが特定技能制度であり、従来の技能実習が「国際貢献」を目的としていたのに対し、特定技能は明確に「国内の人手不足解消」を目的としている点が最大の特徴です。

特定技能1号と2号の違い:5年で終わらせない長期雇用の形

特定技能制度には「1号」と「2号」の2段階があり、それぞれ在留期間や求められるスキル、待遇に大きな違いがあります。

まず、多くの外国人が最初に取得する「1号」は、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事するもので、在留期間は通算で最大5年と定められています。

1号の期間中は、企業側に多言語での生活支援や相談対応などの「義務的支援」が課されることが特徴です。

一方で、2号は「熟練した技能」を持つ人材を対象としており、試験合格などの高いハードルがあるものの、在留期間の更新制限がなくなり、要件を満たせば家族を日本に呼び寄せることも可能になります。

特定技能1号 vs 2号 徹底比較

在留資格の制度的な違いを視覚的に解説

Category 1

特定技能1号

技能水準

相当程度の知識・経験(即戦力)

在留期間

最長5年(更新が必要)

家族の帯同

原則として認められない

支援義務

企業に義務的支援が必要

主な要件

1号試験合格 または 技能実習修了

Category 2

特定技能2号

技能水準

熟練した技能(監督者レベル)

在留期間

制限なし(永住も視野)

家族の帯同

可能(条件付き:配偶者・子)

支援義務

なし(任意支援は可能)

主な要件

2号試験合格 または 実務経験等

自動車整備業界にとって、5年という期限がある1号だけでなく、無期限の就労が可能な2号への移行を見据えた採用戦略を立てることは、単なる労働力の確保を超え、将来の工場長候補や技術指導者を育成するという、中長期的な経営の安定化に直結する極めて重要なステップとなります。

ベトナム・フィリピン・インドネシアが中心の市場

自動車整備分野における特定技能外国人の在留状況を見ると、国籍別では1位がベトナム、2位がフィリピン、3位がインドネシアの順となっており、これら東南アジア諸国が主要な人材供給源となっています。

ベトナム・フィリピン・インドネシアが中心の市場

かつては国内の技能実習生からの移行が主流でしたが、近年では現地の整備学校卒業生などを対象とした「国外試験」による直接採用も着実に増加しています。

国ごとに送り出しの手続きや宗教的背景、コミュニケーションの特性が異なるため、自社の工場の雰囲気に合った国籍を選定することが重要です。

また、彼らが母国でどのような教育を受け、日本で何を学びたいのかという動機を汲み取ることが、採用後の定着率を大きく左右すると考えています。

特にフィリピンなどは労働者保護の観点から独自の手続き(DMW/MWO)が必要になるため、採用ルートに応じたスケジュール管理と、国別の文化に配慮した受入体制の整備が、円滑な雇用を実現するためのカギとなります。

参考:国土交通省 自動車整備職種における外国人技能実習に関する 電話調査

2.【外国人本人】特定技能「自動車整備」を取得するための2つのルート

【外国人本人】特定技能「自動車整備」を取得するための2つのルート

外国人が自動車整備分野の特定技能1号として働くためには、大きく分けて「試験ルート」と「技能実習からの移行ルート」の2つの道が存在します。

どちらのルートであっても、一定以上の日本語能力と、自動車の点検・整備を安全に遂行できるだけの基礎的な技術力を有していることが、入管法および分野別運用方針によって厳格に定められています。

試験ルート:技能評価試験と日本語試験(N4以上)の合格

日本での就労経験がない外国人が特定技能1号を取得する場合、まず「自動車整備分野特定技能評価試験」への合格が必須要件となります。

この試験は、学科および実技の両面から構成され、日常的な点検整備や基本的な分解整備に関する知識が問われるものです。

また、技能だけでなく日本語能力も重要な要件であり、日本語能力試験(JLPT)のN4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)への合格が求められます。

N4レベルとは「基本的な日本語を理解することができる」程度の水準であり、現場での指示を理解し、安全に業務を遂行するための最低限のコミュニケーション能力を担保するものです。

この試験ルート出身者は学習意欲が高く、自らの意思で日本の整備技術を学ぼうとする強い動機付けを持っているケースが多い傾向にあります。

採用時には、単に合格証を確認するだけでなく、日本でのキャリアプランをどのように描いているかをヒアリングすることで、入社後のミスマッチを防ぎ、スムーズな定着へとつなげることが可能になります。

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免除ルート:技能実習2号を「良好に修了」して移行する方法

現在、日本で技能実習生として自動車整備に従事している、あるいは過去に従事していた外国人の場合、試験が免除される「移行ルート」を活用できます。

具体的には、技能実習2号を「良好に修了」した者であれば、改めて技能評価試験や日本語試験を受けることなく、特定技能1号へ在留資格を切り替えることが可能です 。

ここで言う「良好に修了」とは、実習期間を計画通り満了し、かつ技能検定3級(相当)に合格していること、あるいは実習実施者(企業)による評価レポートで優良と認められることを指します。

このルートの最大のメリットは、既に日本の職場の慣習や工場の設備に慣れている即戦力を、試験の手間なく継続雇用できる点にあります。

また、特定技能へ移行することで、技能実習時代よりも自由度の高い雇用契約が可能となり、日本人と同等以上の報酬設定を行うことで、本人のモチベーション向上も期待できます。

ただし、実習生時代とは支援の仕組みや届出義務が異なるため、移行手続きに際しては、社会保険の加入状況や賃金規程の再整備など、労務管理面でのコンプライアンスを改めて見直すことが、トラブルのない安定した雇用の土台となります。

3.【受け入れ企業】が必ず満たすべき「3つの法的ハードル」

【受け入れ企業】が必ず満たすべき「3つの法的ハードル」

特定技能外国人は「即戦力」としての活躍が期待される一方で、受け入れ側の企業にも厳しい基準が課されます。これは、整備業務の安全性を確保し、かつ外国人材を不当な労働環境から守るためです。

特に、道路運送車両法に基づく工場の認証、協議会への入会、そして適切な給与設定という3つのポイントは、一つでも欠けると在留資格の許可が下りません。

1. 特定整備事業の「認証」を受けた工場であること

自動車整備分野で特定技能外国人を受け入れるためには、その事業場が地方運輸局長から「特定整備事業(電子制御装置整備を含む)」の認証を受けた認証工場であることが絶対条件となります。

これは、自動車の安全走行に直結するエンジンやブレーキなどの重要な部位を扱う業務に従事させる以上、適切な設備と資格を持った整備士が配置されている環境でなければならない、という法的な要請に基づいています。

もし、認証を受けていない工場(未認証工場)が特定技能外国人を雇用し、分解整備業務を行わせた場合、不法就労助長罪だけでなく、道路運送車両法違反にも問われる重大なリスクが生じます。

認証工場という「法的に裏打ちされた安全な職場」を提供することは、外国人材が安心して技術を習得し、プロフェッショナルとしてのキャリアを歩むための大前提です。

自社が認証を受けているか、またその事業範囲が受け入れようとする業務内容と合致しているかを事前に精査することは、採用活動を始める前の最も基本的な「守り」の対策と言えます。

認証の維持には工場の管理体制が問われるため、外国人採用を機に改めて社内のコンプライアンス意識を高める好機として捉えるのが賢明です。

参考:国道交通省 自動車特定整備事業について

2. 自動車整備分野特定技能協議会への加入(4ヶ月以内)

特定技能制度では、分野ごとの適正な運用を目的として、国土交通省や業界団体、有識者で構成される「協議会」が設置されています。

自動車整備分野で外国人を受け入れる事業主は、この「自動車整備分野特定技能協議会」に加入しなければなりません 。

具体的には、最初の特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に「自動車整備分野特定技能協議会」への加入届出を行い、地方運輸局への報告を完了する必要があります。

この協議会への加入は単なる形式的なものではなく、情報の共有や不正な受け入れの防止、さらには地域ごとの需給調整などを担う重要な仕組みです。

もし期限内に加入しなかったり、協議会が行う調査や指導を拒否したりした場合には、以降の外国人受け入れが認められなくなる可能性があります。

この加入手続きは忘れられやすいポイントの一つですが、在留資格の更新申請時に「加入証明書」の提出を求められることもあるため、確実にスケジュールへ組み込んでおく必要があります。

協議会は、最新の制度変更や運用のガイドラインを提供してくれる場でもあるため、積極的に情報をキャッチアップし、自社の受入体制を常にアップデートしていくためのパートナーとして活用することを推奨いたします。

3. 直接雇用の原則と、日本人と同等以上の報酬設定

特定技能制度における雇用形態は「直接雇用」に限られており、派遣形態での受け入れは認められていません。また、最も重要な労務管理上のルールは「日本人と同等以上の報酬を支払うこと」です。

これは、外国人であることを理由とした不当な低賃金労働を防止し、労働市場の公正性を保つための原則です。

報酬額の決定に際しては、自社の日本人整備士の賃金体系と照らし合わせ、経験やスキルに応じた適切な格付けを行う必要があります

もし比較対象となる日本人従業員がいない場合でも、近隣の同業他社の賃金相場や、最低賃金を大幅に上回る適正な水準であることを証明しなければなりません。

報酬は単なるコストではなく、本人の「貢献への対価」であり、定着に向けた最大のメッセージであるという点です。

賃金規程が曖昧なままでは、入管への説明が困難になるだけでなく、本人も将来の昇給見通しが立たず、離職のリスクが高まります。

雇用契約を締結する前に、基本給だけでなく諸手当や残業代の計算方法、賞与の有無などを明確にし、本人に「やさしい日本語」などで丁寧に説明して納得を得ることが、長期的な信頼関係を築く第一歩となります。

4.実務上の注意点:守らなければならない「分解整備」の境界線

実務上の注意点:守らなければならない「分解整備」の境界線

特定技能外国人が従事できる業務範囲については、法律上の制約を正しく理解しておく必要があります。

自動車整備分野では、日常的な点検・整備に加え、重要な安全に関わる「分解整備(特定整備)」への従事が認められていますが、それはあくまで適切な管理者の監督下で行われることが前提です。

無資格者が関われない業務と、特定技能外国人が従事できる範囲

自動車整備の現場において、特定技能1号外国人は

  • 自動車の日常点検整備
  • 定期点検整備
  • 分解整備

に従事することが可能です。これは、制度上、彼らが一定の技能試験に合格した「即戦力」とみなされているからです。

しかし、注意が必要なのは、特定技能1号を保有していることと、日本の国家資格である「自動車整備士(3級・2級等)」を保有していることは別物であるという点です。

日本の法令上、認証工場における分解整備は、整備主任者などの有資格者の指示や確認が必要であり、無資格者が独断で行うことは許されません。

特定技能外国人に業務を任せる際も、どの範囲までを単独で行わせ、どの工程で有資格者のチェックを挟むのかというオペレーションを明確にしておく必要があります。

また、主たる整備業務に付随する洗車や車内清掃、部品の管理といった作業に従事させることは可能ですが、これら「付随的業務」ばかりを専ら行わせることは認められておらず、あくまでもメインは整備業務でなければなりません。

この境界線を曖昧にしていると、実地調査で指導の対象となるだけでなく、万が一の事故が発生した際の責任問題に発展しかねません。

現場の指導者(教育担当者)に対し、本人の技術水準と法的な制限を周知徹底させることが、安全とコンプライアンスを守る鍵となります。

5.長期戦力化のカギ!「特定技能2号」への移行要件とメリット

長期戦力化のカギ!「特定技能2号」への移行要件とメリット

特定技能1号の在留期間(5年)が経過した後も、引き続き熟練した整備士として自社で活躍してもらうためには、「特定技能2号」への移行を視野に入れることが不可欠です。

2号は1号と比較して要件が格段に厳しくなりますが、その分、企業と本人の双方に大きなメリットをもたらします。

実務経験3年と高度な故障診断技術の証明

自動車整備分野において特定技能2号へ移行するためには、2つの大きな壁を越える必要があります。一つは、自動車整備に関する「3年以上の実務経験」を有していること

もう一つは、より高度な「特定技能2号評価試験」に合格すること、または「自動車整備士2級」の国家資格を取得することです。

2号の要件には「熟練した技能」が求められ、現場での監督者としての役割が期待されます。

特に2号の試験では、単なる点検整備だけでなく、複雑な故障原因を特定する「故障診断」や、より高度な修理技術、さらにはチームをまとめる管理能力に近い知見が問われます。

このレベルに到達するためには、1号の5年間のうちに、現場でのOJTを通じて段階的に難易度の高い業務を経験させ、本人のスキルアップを会社としてバックアップする姿勢が欠かせません。

1号の3〜4年目あたりで「2号移行を目指すための研修計画」を本人と共有し、具体的な目標を持たせることが非常に有効です。

高度な技能を身につけた外国人材は、他社からも魅力的な人材に見えるため、自社で挑戦できるキャリアパスを明確に示すことが、優秀な人材の流出を防ぐ最強の引き止め策となります。

技術習得のプロセスを可視化し、合格した際の手当や役職などを事前に提示しておくことで、本人のモチベーションは飛躍的に高まります。

家族帯同と在留期間更新の上限撤廃がもたらす定着効果

特定技能2号を取得することで得られる最大のメリットは、外国人本人の「生活の安定」と、それに伴う「企業への長期定着」です。

2号には在留期間の更新制限(上限)がなく、要件を満たし続ける限り日本で働き続けることができます。

さらに、1号では認められていなかった「家族(配偶者と子)の帯同」が可能になる点は、本人にとって大きな心理的安心感をもたらします。

多くの外国人材にとって、異国の地で一人で働き続けることの最大の不安は家族との離別です。

家族と一緒に暮らせるようになることは、彼らにとって「日本を第二の故郷にする」という決意を促し、結果として離職率の劇的な低下につながります。

また、将来的に「永住権」の申請を検討する道も開かれるため、企業にとっては、10年、20年と現場を支えてくれる中核人材を確保できることになります。

2号への移行によって義務的な生活支援計画の策定からは解放されますが、家族を含めた地域社会への適応支援など、より深い次元での信頼関係構築が求められるようになります。

2号移行を成功させた企業は、単なる労働力の受け皿ではなく、多様な人材が共生し、成長し続ける「選ばれる職場」へと進化していくことができるのです。

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6.要件確認は「法務」と「キャリア」の両輪で進めよう

特定技能「自動車整備」の受け入れ要件は、認証工場の確認から協議会加入、報酬設定、そして高度な試験合格まで、多岐にわたります。

これらの要件を一つずつ確実にクリアすることは、入管法を守るという「法務」の側面だけでなく、外国人材が安心して長く働ける環境を整えるという「キャリア支援」の側面も持っています。

制度を正しく理解し、計画的に2号への移行をサポートすることで、外国人材は整備工場の持続可能な成長を支える、重要なパートナーとなります。

複雑な手続きや労務管理、キャリア開発について不安がある場合は、専門家の知見を活用しながら、一歩ずつ着実に進めていきましょう。

記事を書いた人
butterfly-effect
行政書士法人バタフライエフェクト
行政書士法人バタフライエフェクトは、外国人の就労ビザ取得、相談のエキスパートです。上場企業様から小規模の会社様まで、これまで10,000件以上の案件を支援。就労ビザを踏まえた外国人雇用のコンサルティングも行っており、年間実績1,500件、ビザの専門家が多数在籍しています。
https://kigyosapri.com/visa/

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