在日ネパール人の急増に伴い、多くの日本企業が注目するネパール人材。しかし「どのような国民性なのか?」「自社に適応できるのか?」という疑問を持つ採用担当者も少なくありません。
本記事では、ネパール人の7つの特徴と実践的なマネジメント手法を解説し、優秀な人材確保と長期雇用を実現する具体的方法をご紹介します。
- ネパール人の国民性7つの特徴と職場での活かし方
- 採用面接で確認すべきポイントと宗教的配慮の方法
- 時間管理問題の解決策と長期雇用につなげる実践術
1.ネパール人材が注目される背景

近年、日本企業におけるネパール人材への注目度が急激に高まっています。
在日ネパール人人口の爆発的増加と、彼らが持つ独特の文化的背景について、データと事実に基づいて詳しく解説します。
在日ネパール人の急増と雇用ニーズ
出入国在留管理庁の統計によると、在日ネパール人の数は2022年末の約14万人から2023年末には約18万人、2024年末には約23万人へと急激に増加しています。
特に2022年以降の増加率が顕著で、新型コロナウイルスの影響による一時的な減少から回復し、大幅な増加傾向を示しています。
ネパール人材は、特に 技術・人文知識・国際業務(技人国) や 特定技能 の在留資格で来日するケースが多く、IT業界・製造業・サービス業 など幅広い分野で活躍しています。
出入国在留管理庁の統計でも、20〜30代前半の若年層が中心であることが示されており、日本語学習にも積極的です。
さらに、家族を支える目的で来日する動機が強いため、就労に対して責任感が高い点も特徴です。
参考:出入国在留管理庁 令和6年末現在における在留外国人数について
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ネパール人材の多くが取得する「特定技能」ビザについて、より深く理解しませんか。こちらの記事では対象となる12分野や採用要件、手続きの流れなどを具体的に解説しており、受け入れ準備を万全に進めるための知識が得られます。
多民族国家の文化的多様性
ネパールは100以上の民族が共存する多民族国家です。
主要民族にはチェトリ族(16.6%)、バフン族(12.2%)、マガル族(7.1%)、タル族(6.6%)などがあり、それぞれ異なる文化的背景を持ちます。
このような多様性の中で育ったネパール人は、異文化への理解力と適応能力が高く、日本の職場環境にも比較的スムーズに溶け込むことができます。
宗教面では約81%がヒンドゥー教徒、約9%が仏教徒で、宗教的寛容性も高いため、日本の多様な価値観を受け入れる柔軟性を持っています。
また、ネパール語以外にも英語教育が普及しており、国際的なコミュニケーション能力も備えているため、グローバル展開を目指す日本企業にとって貴重な人材となっています。
2.ネパール人の国民性:採用で知るべき7つの特徴

ネパール人を効果的に採用・活用するには、彼らの国民性を正しく理解する必要があります。
家族への責任感から時間感覚まで、職場で重要となる7つの特徴を具体的な事例とともにご紹介します。

家族を最優先する強い責任感
ネパール人の国民性で最も特徴的なのは、家族に対する強い責任感と献身性です。
多くのネパール人が家族の経済的支援を目的として来日しており、月収の3分の1から半分を本国の家族に送金することも珍しくありません。
この家族優先の価値観は、仕事に対する強いモチベーションとして現れ、簡単に転職や退職をしない安定性をもたらします。
採用面接では、家族構成や経済的責任について質問することで、その人の責任感の強さを測ることができます。
家族のために頑張りたいという明確な動機を持つネパール人は、長期雇用においても高い成果を発揮する傾向があります。
ただし、家族の緊急事態(病気や冠婚葬祭)には一時帰国の必要性も理解し、柔軟な対応を心がけなければいけません。
年長者への深い敬意と礼儀
ネパール社会では年長者を敬う文化が根強く、これは職場での上司や先輩との関係にも良い影響をもたらします。
ネパール人従業員は上司の指示に素直に従い、礼儀正しい態度で接することが多く、日本の縦社会にも自然に適応します。
「ナマステ」という挨拶は単なる「こんにちは」ではなく、「あなたの中の神性を敬います」という深い敬意を表す言葉です。
このような文化的背景から、ネパール人は職場での人間関係を大切にし、協調性を重んじる傾向があります。
管理職にとっては扱いやすい部下となることが多く、チームワークを重視する日本企業には適した人材といえるでしょう。
真面目で勤勉な労働姿勢
ネパール人の勤勉さは、厳しい自然環境と経済状況で培われた特性です。
山岳地帯での農業や厳しい労働環境に慣れ親しんできたため、日本の職場でも粘り強く取り組む姿勢を見せます。
特に単純作業や繰り返し作業に対しても集中力を保ち、品質の高い仕事を継続する能力があります。
また、向学心も旺盛で、仕事に必要なスキルや日本語の習得に積極的に取り組みます。
休憩時間や帰宅後も自主的に学習する姿が多く見られ、長期的な成長が期待できる人材です。企業側も研修制度や学習支援を提供することで、さらなる能力向上を促進できます。
チームワークを重んじる協調性
ネパールの「バンダ」(共同体意識)という文化は、職場でのチームワークに良い影響をもたらします。
個人の成果よりもチーム全体の成功を重視し、困っている同僚を積極的にサポートする文化があります。これは日本企業の「和」を重んじる企業文化と非常に相性が良い特性です。
プロジェクトワークや共同作業において、ネパール人は自分の役割を理解し、他のメンバーとの連携を大切にします。
また、対立を避ける傾向があるため、職場の雰囲気を悪くするようなトラブルは起こりにくく、安定した職場環境の維持に貢献します。
控えめで謙虚なコミュニケーション
ネパール人のコミュニケーションスタイルは基本的に控えめで謙虚です。自分の意見を強く主張することは少なく、相手の立場を尊重した話し方をします。
これは日本人の間接的なコミュニケーション文化と共通点があり、職場での衝突を避けやすい特性といえます。
ただし、この控えめな性格により、問題や困りごとがあっても声に出さない場合があります。管理者は定期的な面談や相談しやすい雰囲気作りを心がけ、積極的にコミュニケーションを取ったほうがいいでしょう。
また、良い成果を上げても自分から報告しない傾向があるため、適切な評価と認識のためのシステム構築が必要です。
独特な時間感覚「ネパリタイム」
ネパール人の時間感覚は日本人と大きく異なる場合があります。「ネパリタイム」と呼ばれる現象で、約束の時間に15-30分遅れることが一般的とされています。
これはネパールの文化的背景と社会インフラの状況に起因するもので、決して責任感の欠如ではありません。
日本企業で働く際は、この時間感覚の違いが最大の課題となる可能性があります。しかし、適切な指導と習慣化により改善は十分可能です。
時間の重要性を説明し、具体的な到着時間の目標設定、アラーム活用の提案など、実践的なサポートを提供することで問題を解決できます。
文化的背景を理解しつつ、日本のビジネス慣行に適応してもらう指導が効果的です。
高い適応力と多文化への寛容性
多民族国家で育ったネパール人は、異なる文化や価値観を受け入れる柔軟性を持っています。
この特性により、日本の企業文化や業務慣行にも比較的スムーズに適応することができます。また、英語を含む多言語能力を活かし、国際的な業務にも対応可能です。
さらに、困難な状況に直面しても諦めずに解決策を見つける粘り強さがあります。これは厳しい自然環境で生活してきた経験から培われた特性で、予期せぬトラブルや変化にも柔軟に対応できる貴重な能力です。
グローバル化が進む現代のビジネス環境において、この適応力は企業にとって大きなアドバンテージとなります。
3.ネパール人雇用の具体的メリット

ネパール人材を雇用することで、企業はどのような具体的なメリットを得られるのでしょうか。
若い労働力の確保から長期雇用の実現まで、人事戦略に直結する価値を詳しく解説します。
若い労働力と旺盛な学習意欲
出入国在留管理庁の在留外国人統計によると、在日ネパール人は若年層中心の構成となっており、企業にとって貴重な若手労働力となります。
彼らは体力的にも充実しており、シフト制の勤務や体力を要する業務にも積極的に取り組むことができます。
また、デジタルネイティブ世代として、新しい技術やシステムの習得も早く、IT関連業務への適応力も高いのが特徴です。
特筆すべきは、彼らの学習意欲の高さです。日本での成功を強く願っているため、業務に必要なスキル習得に対して非常に積極的です。
日本語検定の受験、専門資格の取得、業界知識の習得など、自己投資を惜しまない姿勢が見られます。
企業が提供する研修制度や教育機会を最大限に活用し、短期間で戦力として成長する可能性が高い人材群といえるでしょう。
長期雇用への強いコミットメント
ネパール人従業員の大きな特徴の一つが、長期雇用への強いコミットメントです。
家族を経済的に支えるという明確な目的があるため、安定した収入を得られる職場に長く留まりたいという強い意志を持っています。
また、日本での永住権取得や家族の呼び寄せを目標とするネパール人も多く、これらの目標達成には安定した雇用が不可欠です。
そのため、転職率が低く、企業にとって重要なナレッジやスキルの社内蓄積にも貢献します。
特に技術職や専門職において、継続的なスキル向上と長期的な業務経験の蓄積により、企業の競争力強化に大きく寄与する人材となります。
4.宗教的配慮とタブーの理解

ネパール人の多くがヒンドゥー教徒であり、職場での宗教的配慮が重要になります。
食事制限から文化的タブーまで、円滑な職場関係を築くために知っておくべき知識をまとめました。
タブー項目 | 理由・背景 | 職場での配慮方法 |
---|---|---|
牛肉の摂取 | 牛は神聖な動物とされるため | 社員食堂でのメニュー選択肢提供 |
左手の使用 | 左手は不浄とされるため | 握手・物の受け渡しは右手で |
頭部への接触 | 頭部は神聖な部位 | 軽々しく頭に触れることを避ける |
カースト話題 | 社会的に敏感な問題 | 出身地や家族職業の詮索を避ける |
5.現在のネパール政治情勢と採用への影響

2025年9月、ネパール国内ではSNS利用制限への抗議に端を発した大規模デモが発生し、首相が辞任する事態となりました。
このデモは主に10~20代のZ世代を中心とした若者が参加し、政府の汚職問題や雇用不足への不満が背景 にありました。
参考:
Japan External Trade OrganizationNikkei
不公平への怒り、政権崩壊導く ネパール、雇用不足に苦しむZ世代―南アジアで「革命」連鎖:時事ドットコム
デモ期間中は外出禁止令が発令され、空港閉鎖も発生しましたが、9月12日夜に暫定首相が就任し、翌13日正午時点では外出禁止等の行動制限は出されていません。
カトマンズのトリブバン国際空港も9月10日午後3時30分に閉鎖が解除され、状況は徐々に安定に向かっています。
これ等を踏まえて、ネパール人材を検討する上で経営者や採用担当者への影響と留意点について知っておきましょう。
ネパールの治安情勢やバンダ文化への影響と懸念
採用担当者が特に理解すべきは、ネパールの治安情勢や「バンダ」(ゼネラルストライキ)文化への影響です。
2025年9月のデモから派生した暴力行為が延長して25か所の刑務所が襲撃され、10日までに1万5千人以上の受刑者が脱走しています。
参考:朝日新聞 ネパールで刑務所25カ所襲撃、1万5千人脱獄 殺人など凶悪犯も
そして過去、バンダと呼ばれる大規模なストライキが散発的に実施され、各種交通機関の麻痺及びこれに乗じた暴力行為が発生しました。今後もバンダが実施される可能性は否定できない状況です。
今回のデモが収束したとはいえ、政治的不満が根本的に解決されたわけではありません。今後、ネパール人従業員の家族が事故や犯罪に巻き込まれるリスクが高まる可能性があります。
このような状況下では、ネパール人従業員が家族の安全確認を最優先に考えることは当然であり、企業側の理解と配慮が重要となります。
職場での配慮事項
- 家族との連絡を取るための時間的配慮(特に緊急時)
- 本国情勢に関する不安を相談できる環境の整備
- バンダやデモ発生時の家族への送金ニーズの理解
- 長期化する政治不安が心理的負担となる可能性への配慮
ネパールの政治情勢は、日本で働くネパール人の心理状態や仕事への集中度に直接的な影響を与える要因として、継続的な関心を払わなければいけません。
6.採用成功のための実践的アプローチ

理論的理解だけでは採用は成功しません。面接での質問項目から時間管理の指導方法まで、実際の現場で使える具体的なテクニックとノウハウを実践的に解説します。
面接で確認すべき重要ポイント
ネパール人材の面接では、一般的な質問に加えて文化的背景を考慮した質問項目を設けることがポイントです。
確認項目 | 質問例 | 評価ポイント |
---|---|---|
来日目的・将来設計 | 「なぜ日本で働きたいのですか?」「5年後の目標は?」 | 長期就労意欲と企業戦略との適合性 |
宗教的制約 | 「食事制限はありますか?」「宗教的な休暇は必要ですか?」 | 職場環境への適応可能性 |
日本語能力 | 「専門用語の理解度は?」「実際の会話テスト」 | 業務遂行に必要な語学力 |
時間管理意識 | 「前職で遅刻経験は?」「時間管理の工夫は?」 | 改善への取り組み姿勢 |
時間管理スキル向上の具体的手法
ネパール人従業員の時間管理スキル向上には、段階的で実践的なアプローチが効果的です。
時間概念の説明
アラーム活用
継続的向上
重要なのは、文化的背景を否定せず、改善への努力を適切に評価することです。
3ヶ月程度の改善期間を設け、達成度に応じて段階的な目標設定を行うことで、確実なスキル向上が期待できるでしょう。
積極的な意見を引き出すコツ
ネパール人の控えめな性格を理解し、心理的安全性の高い環境作りから始めましょう。
「どんな意見でも歓迎する」姿勢を明確に示し、1対1面談を定期的に実施します。漠然とした質問より「AとBではどちらが効率的?」など選択肢を提示する質問が効果的です。
また、チャットやアンケートでの意見収集も有効で、必ずフィードバックを行うことで段階的な発言促進につなげられます。
7.課題解決と職場環境づくり

ネパール人材活用で生じやすい課題を事前に把握し、適切な対策を講じることが成功の鍵です。時間管理問題と文化的誤解という2大課題の解決方法を具体的にご紹介します。
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外国人材を雇用する際に注意すべき点を、こちらの記事で募集・面接・採用後の3つのステップで具体的に解説します。文化的な誤解を未然に防ぎ、円滑な受け入れを実現するための実践的なチェックリストとしてご活用ください。
時間管理問題の根本的対策
ネパール人従業員の時間管理問題解決には、個人努力と組織的サポートの両方が必要です。
理解促進の取り組み
- 企業理念レベルでの時間厳守重要性の説明
- お客様信頼・チームワーク向上・業務効率化の理由明示
- 文化的背景を理解した上でのルール説明
システム面での対策
- ICカードやアプリを活用した勤怠管理システム導入
- 出退勤時間の正確な記録と客観視環境の構築
- 月次フィードバック面談での具体的改善点指摘
評価・定着の仕組み
- 時間管理改善者への人事評価加点
- 表彰制度による努力の適切な評価
- 継続的な向上意欲の維持促進
このリスト化により、対策の全体像が把握しやすくなり、実践時のチェックリストとしても活用できます。
文化的誤解を防ぐ職場環境づくり
多様な文化背景を持つ従業員が共に働く職場では、文化的誤解を防ぐための環境整備が極めて重要です。
8.ネパール人材活用成功へのロードマップ

ネパール人材の採用成功には、彼らの国民性を正しく理解し、文化的多様性を企業の強みとして活用することが重要です。
家族への責任感、協調性、適応力といった特性を活かし、適切なマネジメント手法を実践することで、優秀で安定した戦力を確保できます。
今後も増加が見込まれるネパール人材を戦略的に活用し、グローバル化時代に対応した強い組織づくりを進めていきましょう。
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