グローバル化を進めたい企業にとって、英語力の高い人材確保は重要な課題です。その中でフィリピン人は約9割が英語を話せ、TOEIC平均749点とアジアトップクラスの英語力を誇ります。
本記事では、客観データに基づくフィリピン人の英語力、高い理由、ビジネスでの実用性、採用時の注意点まで、人事・採用担当者が知るべき情報を徹底解説します。
採用を成功させるための実践ガイドもご紹介します。
- フィリピン人の英語力の実態(EF指数アジア2位、TOEIC平均749点などの客観データ)
- 9割が英語を話せる5つの理由(歴史、教育制度、社会構造など)
- 採用成功のポイント(見極め方、活躍できる職種、定着支援の具体策)
1.フィリピン人の英語力はアジアトップクラス|データで見る客観的な実力

フィリピン人の英語力について「なんとなく高い」というイメージをお持ちの方は多いかもしれません。
しかし、採用判断を行うには、客観的なデータに基づいた確かな情報が必要です。ここでは、国際的な英語能力評価指標を用いて、フィリピン人の英語力の実態を明らかにします。
EF英語能力指数でアジア2位・世界20位という高評価
国際教育機関EFエデュケーションファーストが毎年発表している「EF英語能力指数」は、世界各国の英語力を測る最も信頼性の高い指標の一つです。
2023年版の調査結果によると、フィリピンは111カ国中20位にランクインしており、「高い英語力」カテゴリーに分類されています。
特に注目すべきは、アジア地域での順位です。フィリピンはシンガポール(2位)に次いでアジア第2位の英語力を誇ります。
順位 | 国名 | 地域 | カテゴリー |
---|---|---|---|
2位 | シンガポール | アジア1位 | 非常に高い |
20位 | フィリピン | アジア2位 | 高い |
80位 | 日本 | 低い |
日本は80位と、フィリピンとは60ランクもの差があります。この数字は、フィリピン人の英語力が非英語圏の国々の中でも際立って高いことを示しています。
この高評価の背景には、後述する教育制度や歴史的背景がありますが、まず押さえておきたいのは、フィリピン人の英語力が国際的に認められた客観的事実であるということです。
TOEIC平均749点|日本人の561点を大きく上回るビジネス英語力
ビジネスシーンでの英語コミュニケーション能力を測る指標として広く認知されているTOEIC。
国際ビジネスコミュニケーション協会が発表している2022年のデータによると、フィリピンの平均スコアは749点です。これは日本の561点を188点も上回る結果となっています。
TOEIC 749点というスコアは、ビジネスシーンで必要とされる英語力を十分に満たすレベルです。具体的には、以下のようなコミュニケーションが可能な水準です。
TOEIC 750点レベルでできること
- ✅ 英語でのメールや報告書の作成
- ✅ 会議やプレゼンテーションへの参加
- ✅ 電話や対面での顧客対応
- ✅ ビジネス文書の読解と理解
- ✅ 契約書などの専門文書の基本的な理解
採用担当者にとって重要なのは、フィリピン人の多くが「即戦力」として期待できる実用的な英語力を持っているという点です。
入社後に一から英語研修を行う必要がなく、採用直後から英語を使った業務を任せられる人材が多いのです。
約9割の国民が英語を話せる驚異的な普及率
フィリピンの人口は約1億人ですが、そのうち約55〜92%、つまり約9,200万人が英語を話すことができます。
これは英語人口で見ると、アメリカ、インドに次いで世界第3位という膨大な数です。
この高い普及率が採用市場においてどのような意味を持つのか。それは、「英語力の高い人材プールが非常に豊富である」ということです。
つまり、企業が求める英語レベルや専門スキルを持った人材を見つけやすく、選択肢が多いのです。
採用市場でのメリット
ただし、後述しますが「9割が話せる」と言っても、その英語力には個人差があります。都市部と地方、教育レベルによって差があることは理解しておく必要があります。
とはいえ、適切な採用基準を設ければ、優秀な人材を確保できる可能性は極めて高いと言えるでしょう。
2.なぜフィリピン人はこれほど英語が堪能なのか?5つの理由を徹底解説

前章でフィリピン人の英語力の高さを客観的データで確認しました。では、なぜフィリピン人はこれほど英語が堪能なのでしょうか。
その背景には、歴史、教育、社会構造など、複合的な要因があります。ここでは5つの理由を詳しく解説します。
理由①:アメリカ植民地時代に形成された英語文化の基盤
フィリピン人の高い英語力を理解する上で、歴史的背景を知ることは欠かせません。
1898年から1946年までの約48年間、フィリピンはアメリカの統治下にありました。この植民地時代が、現在のフィリピンにおける英語文化の基盤を形成したのです。
アメリカ統治時代、フィリピンの教育制度は大きく変革されました。
教育改革の内容
- 小学校から大学まで、すべての授業が英語で実施
- アメリカ式の教育システムの導入
- 英語の公用語化
- 政府機関の公式文書もすべて英語化
1946年にフィリピンは独立を果たしますが、独立後も英語は公用語として継続されました。
教育省令25号「フィリピン語と英語による二言語併用教育政策」が発令され、英語はタガログ語と並んで公式な言語としての地位を維持しています。
この歴史的背景が意味するのは、フィリピンの英語文化は一時的な流行ではなく、100年以上にわたって築かれてきた強固な基盤の上に成り立っているということです。
これは、採用後も長期的に安定した英語力を期待できることを意味します。
理由②:小学校から大学まで英語で学ぶ教育システム
フィリピンの教育制度の最大の特徴は、「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」点にあります。
国語(フィリピノ語)と歴史を除く、数学、理科、社会など、ほぼすべての科目が英語で教えられています。
【フィリピンの英語教育の特徴】
項目 | フィリピン | 日本 | 差 |
---|---|---|---|
英語学習開始年齢 | 3歳から | 小学4年生(10歳) | 7年早い |
小学校の英語授業時間 | 1,746時間(6年間) | 約100時間(3年間) | 約17倍 |
授業の実施言語 | 英語で授業 | 日本語で授業 | – |
教科書 | ほとんどが英語 | ほとんどが日本語 | – |
フィリピン教育省の資料(2010年)によれば、公立学校における小学校6年間の英語総授業時間数は1,746時間に達します。
一方、日本の小学校では4年生から英語教育が始まり、年間約35時間程度。小学4年生から6年生までの3年間を合計しても約100時間程度です。
つまり、フィリピンの子どもたちは日本の約17倍もの時間を英語に費やしているのです。
【英語教育の流れ】
英語に触れ始める
1,746時間の英語授業
引き続き英語で授業
専門科目も英語で学習
英語が日常的なコミュニケーション言語に
さらに重要なのは、フィリピンでは3歳から英語に触れ始めるという点です。
幼児期から英語環境に身を置くことで、自然な発音やリズム、イントネーションを習得します。教科書もほとんどが英語で書かれているため、読み書きの能力も同時に高まります。
もっとも脳が柔らかい時期に、15倍以上も英語に触れていることを考えると、成人してからの語学力の違いもかなり大きなものになることが想像できるでしょう。
この教育システムによって、フィリピン人にとって英語は「外国語」ではなく、「日常的に使う言語」として身についているのです。
理由③:80以上の言語が存在する多言語国家での共通語の必要性
フィリピンは7,000以上の島々から構成される群島国家です。その地理的特性から、国内には約80の地域言語が存在しています。
【主要な地域言語】
言語名 | 話される地域 | 特徴 |
---|---|---|
タガログ語 | マニラ首都圏 | 公用語の一つ |
セブアノ語 | セブ島周辺 | 話者数が最も多い方言 |
イロカノ語 | 北部ルソン島 | 北部で広く使用 |
ヒリガイノン語 | ビサヤ諸島西部 | 西部地域の主要言語 |
このような多言語環境において、異なる地域出身者同士がコミュニケーションを取るためには、共通語が必要です。その役割を果たしているのが英語なのです。
公用語はタガログ語と英語の2つですが、実質的には英語が全国共通のコミュニケーション言語として機能しています。
なぜ英語が共通語として選ばれたのか
フィリピンで英語が共通語として選ばれた理由は以下の通りです。
- アメリカ統治の影響:1898年から約48年間のアメリカ統治により、既に英語が広く浸透していた
- タガログ語の限界:公用語のタガログ語は主にマニラ周辺の言語で、全国民が理解できるわけではなかった
- 国際的な実用性:英語は国際ビジネスでも使えるため、経済発展に有利
- 教育システムの確立:既に英語ベースの教育システムが確立されており、変更するコストが高かった
- 中立性:80以上の地域言語がある中で、どの地域にも偏らない「中立的な言語」として機能
つまり、歴史的経緯と実用性の両面から、英語が最も合理的な選択だったということです。
理由④:日常生活のあらゆる場面に英語が浸透している環境
フィリピンでは、英語は学校だけでなく、日常生活のあらゆる場面に浸透しています。
街を歩けば、店の看板、道路標識、レストランのメニュー、商品のパッケージなど、至る所で英語表記を目にします。
【英語に触れる日常的な場面】
メディア・エンターテインメント
テレビ番組や映画も、多くが英語のまま放送されています。
日本では海外の映画やドラマは日本語に吹き替えられるか字幕がつけられますが、フィリピンでは英語のまま視聴することが一般的です。
音楽やエンターテインメントコンテンツも、アメリカやイギリスの作品が多く流通しており、幼い頃から英語の音やリズムに親しんでいます。
アメリカ文化の影響
アメリカ文化の影響も色濃く残っています。
- ファストフード文化(McDonald’s、Jollibeeなど)
- ホームパーティーのスタイル
- クリスマスなどの祝い方(12月から盛大に祝う)
- スポーツ(バスケットボールが国民的人気)
- 音楽・映画(アメリカのポップカルチャー)
この文化的な親和性も、英語を自然に使いこなす環境を作り出しています。
このように、フィリピンでは英語が「特別な場面でだけ使う言語」ではなく、「日常の一部」として機能しているのです。
理由⑤:英語力が収入・キャリアに直結する社会構造
フィリピンでは、英語力が個人の収入やキャリアに直結する社会構造があります。この経済的インセンティブが、国民全体の英語学習意欲を高める強力な動機となっています。
また仕事でも英語が話せることで得られる機会があります。
【英語が話せることで得られる仕事】
英語が話せることで得られる仕事
1. コールセンター・BPO産業
2. 英語教師
3. 海外就労 (OFW)
4. IT・エンジニア
英語が話せることで得られる仕事やチャンスも大きくなるので、英語学習の意欲はかなり高まっています。
社会的背景
フィリピンの貧困率は2022年時点で18.1%と、まだ多くの人々が経済的に厳しい状況にあります。
【貧困と英語力の関係】
「英語力 = 貧困からの脱出手段」という認識が強く、子どもの頃から英語学習に真剣に取り組む家庭が多いのです。
家族を養うため、より良い生活を実現するため、フィリピン人にとって英語は単なるコミュニケーションツール以上の意味を持っています。
- 子どもの英語力は、家族を養っていくためにも重要
- 貧困層から抜け出すための手段
- 幼少期から英語をしっかり勉強する動機
- 経済成長は順調だが物価も上昇し、苦しい生活をしている人が多い
また、フィリピンでは英語を話せることが、高収入につながる切符のようなものです。
英語話者はコールセンター、英語教師として、フィリピン国内でも給与水準の高い職につけます。一方で英語が話せなければ、収入の高い職につくことは難しく、比較的低い賃金での労働になりがちです。
この強い動機づけが、フィリピン人の高い英語力を支える最も重要な要因の一つと言えるでしょう。
フィリピン人の高い英語力は、フィリピンの英語教育にくわえて、このような社会的背景が後押ししていると考えられます。
2023年末時点、日本在留のミャンマー人は86,546人と前年比53.9%の急増を記録しているミャンマー人の英語力はどのくらいなのか詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
3.ビジネスで通用する?「フィリピン英語」の特徴と実用性

フィリピン人の英語力が高いことは理解できても、「訛りが強いのでは?」「ビジネスで本当に使えるのか?」という疑問を持つ採用担当者は少なくありません。
ここでは、フィリピン英語の特徴と、実際のビジネスシーンでの実用性について解説します。
アメリカ英語ベースで聞き取りやすい発音|訛りはあるが実務に支障なし
フィリピン英語の発音は、アメリカ統治時代の影響を強く受けており、基本的にはアメリカ英語がベースとなっています。
イギリス英語やオーストラリア英語とは異なる、アメリカ式の発音やイントネーションが特徴です。
【フィリピン英語の発音的特徴】
特徴 | 内容 | ビジネスでの影響 |
---|---|---|
リンキングが少ない | 単語を一つひとつクリアに発音 | 聞き取りやすい |
音節のリズム | タイミングを合わせて話す | 理解しやすい |
比較的ゆっくり | ネイティブより話速が遅い | 日本人にも分かりやすい |
/ɪ/と/iː/の区別が薄い | “ship”と”sheep”が似て聞こえる | 文脈で理解可能 |
FとPの曖昧さ | 時々混同することがある | 実務上問題なし |
聞き取りやすさの理由
ネイティブスピーカーの英語は、リンキング(単語と単語の音が連結する現象)が多く、早口で聞き取りにくいと感じる日本人も多いでしょう。
適切な教育を受けたフィリピン人の英語は、ビジネスシーンで十分に通用するレベルです。訛りはあっても、意思疎通に問題が生じることはほとんどありません。
国際ビジネスの現実
実際、世界中の英語話者の約8割は非ネイティブです。様々な国の訛りがある中で、フィリピン英語は比較的標準的で、国際ビジネスの場で広く受け入れられています。
インド英語、シンガポール英語、中国英語など、各国に独特の訛りがありますが、それでもグローバルビジネスは成立しています。
フィリピン英語も同様に、国際的に認められた「World English」の一つなのです。
文法的に正確でスラングが少ない教科書的な英語
フィリピン人の英語のもう一つの大きな特徴は、文法的な正確さです。
彼らは英語を第二言語として学んでいるため、文法ルールをしっかりと理解し、正確に使う傾向があります。
【フィリピン英語の言語的特徴】
特徴 | 内容 | ビジネスメリット |
---|---|---|
文法的に正確 | 第二言語として学んだため、ルールに忠実 | フォーマルな場面に適切 |
スラングが少ない | 教科書的で丁寧な表現 | ビジネス文書作成に強い |
フォーマルな表現 | 礼儀正しい言葉遣い | 顧客対応に適している |
直訳的な表現 | タガログ語からの影響 | 理解しやすい |
フィリピン英語のビジネスでの強み
フィリピン人の英語は、教科書的で丁寧な表現が中心です。
スラングや俗語が少なく、フォーマルな場面に適した言葉遣いをします。これは、ビジネスシーンにおいては大きなメリットです。
【ビジネスシーン別のメリット】
フォーマルな文体
文書作成
明確な説明
親切な接客
使用
日本人にとって、ネイティブのカジュアルすぎる英語よりも、フィリピン人の丁寧で分かりやすい英語の方が理解しやすく、ビジネスコミュニケーションが円滑に進むケースが多いのです。
欧米企業のコールセンターが証明する国際ビジネスでの実績
フィリピン英語の実用性を最も強く証明しているのが、フィリピンが世界有数のBPO(Business Process Outsourcing)大国であるという事実です。
アメリカ、イギリス、オーストラリアなど、英語圏の大手企業が次々とコールセンター業務をフィリピンにアウトソーシングしています。
なぜ欧米企業はフィリピンを選ぶのか?
・高い英語力: ネイティブ顧客ともスムーズに電話対応ができる
・ホスピタリティ: 親切で丁寧なカスタマーサービスを提供する
・文化的親和性: アメリカ文化への深い理解がある
・コストパフォーマンス: 高品質なサービスを適正価格で利用できる
・豊富な人材: 教育水準の高い人材がたくさんいる
・時差の活用: 24時間体制のサポートを実現できる
フィリピンのBPO産業の規模
フィリピンのBPO産業は、国の主要産業の一つとなっています。
- 従事者数: 約130万人以上
- 産業規模: GDP貢献度が約9%
- 主要クライアント: 米国企業が約70%を占める
- 成長率: 年間5-8%で継続的に成長
【フィリピン人が活躍している業務】
業務分野 | 具体的な内容 |
---|---|
カスタマーサポート | 24時間体制のグローバル電話対応、メール対応 |
テクニカルサポート | IT製品のトラブルシューティング、技術相談 |
バックオフィス業務 | データ入力、経理、人事業務の処理 |
コンテンツモデレーション | SNSやWebサイトのコンテンツ監視・管理 |
医療事務 | 医療記録の転記、保険請求処理 |
オンライン販売サポート | ECサイトの顧客対応、注文処理 |
グローバル企業の評価
世界的な企業がフィリピン人の英語力を認めています。
【フィリピンに拠点を置く主要企業(一部)】
- Amazon
- Microsoft
- Apple
- Accenture
- IBM
- HP
- Dell
これらの実績が示すのは、フィリピン人の英語力が「教室の中だけの英語」ではなく、実際のビジネスの現場で通用する実用的な英語力であるということです。
欧米企業が自社の顧客対応をフィリピンに任せているという事実こそが、フィリピン英語のビジネスでの実用性を最も強く証明しています。
4.全員が話せるわけではない|採用時に知っておくべき英語力の個人差

ここまでフィリピン人の英語力の高さを解説してきましたが、採用担当者として認識しておくべき重要な点があります。
それは、「すべてのフィリピン人が高い英語力を持っているわけではない」ということです。ここでは、英語力の個人差と、優秀な人材を見極めるポイントを解説します。
都市部と地方、教育レベルによる英語力の格差
フィリピン国内には、英語力に関して大きな地域格差と教育格差が存在します。
【部と地方の格差】
地域 | 英語教育環境 | 英語力レベル |
---|---|---|
マニラ首都圏 | インフラ充実、インターナショナルスクール多数 | 非常に高い |
セブ | 観光都市、語学学校も多い | 高い |
ダバオ | 都市部、教育水準が高い | 高い |
地方都市 | 教育インフラは存在 | 中程度 |
農村部 | 教育機会が限定的 | 低い場合も |
離党 | 学校に通えない子供も存在 | 個人差大 |
【都市部の特徴】
- ✅ 教育インフラが整っている
- ✅ 質の高い英語教育を受ける機会が豊富
- ✅ インターナショナルスクールも多数
- ✅ 幼少期から英語中心の環境で育つ子どもも増えている
- ✅ ビジネス英語に触れる機会が多い
【地方・農村部の特徴】
- ⚠️ 英語教育の機会が限られている
- ⚠️ 学校に通えない子どもも存在
- ⚠️ 教師の質にばらつきがある
- ⚠️ 英語を使う実践機会が少ない
- ⚠️ 十分な教育を受けられないまま大人になるケースも
教育レベルによる英語力の差
フィリピンでは、教育レベルと英語力が強く相関します。
教育レベル | 英語力の目安 | 特徴 |
---|---|---|
大学卒業 | ビジネスレベル | 高度な読み書き、プレゼン能力 |
有名大学卒 | ネイティブに近い | 専門的な議論も可能 |
高等学校卒 | 日常会話〜中級 | 基本的なビジネス会話は可能 |
中等教育まで | 基礎レベル | 簡単な会話、読み書き |
学校未通学 | ほとんど話せない | 教育機会がなかった層 |
「9割が英語を話せる」の実態
「9割が英語を話せる」という統計は事実ですが、そのレベルには大きな幅があることを理解しておく必要があります。
英語力のレベル分布(イメージ)
- ビジネスレベル(TOEIC 750点以上相当): 約30-40%
- 中級レベル(日常会話〜ビジネス初級): 約30-40%
- 基礎レベル(簡単な会話): 約20-30%
- ほとんど話せない: 約10%
つまり、採用において重要なのは、「フィリピン人だから全員英語ができる」と思い込むのではなく、個々の候補者の英語力を適切に見極めることです。
ビジネスレベルの英語力を持つ人材を見極める3つのポイント
では、どのようにしてビジネスレベルの英語力を持つ人材を見極めればよいのでしょうか。採用時に確認すべき3つのポイントを紹介します。
ポイント①:学歴の確認
学歴は英語力を推測する重要な指標です。
【学歴チェックリスト】
4年制大学卒業以上
16年間英語で教育を受けている
有名大学出身
教育水準が高い
IT、ビジネス、英語教育、国際関係など
英語使用頻度が高い専攻
GPA 3.0以上(4.0満点)
学業に真面目に取り組んだ証
インターナショナルスクール出身
ネイティブレベルの可能性
【特に注目すべき大学】
- フィリピン大学(University of the Philippines)
- デ・ラサール大学(De La Salle University)
- アテネオ大学(Ateneo de Manila University)
- サント・トマス大学(University of Santo Tomas)
ポイント②:職歴・業務経験
過去の職歴は、実務での英語使用経験を示します。
評価の高い職歴
職種・業界 | 英語使用度 | 評価ポイント |
---|---|---|
コールセンター・BPO | ★★★★★ | 英語での顧客対応経験あり、実践的 |
外資系企業 | ★★★★★ | 日常的に英語を使用する環境 |
英語教師 | ★★★★★ | 英語教授の専門知識と高い英語力 |
海外就労(OFW) | ★★★★☆ | 実践的な英語コミュニケーション能力 |
営業・貿易業務 | ★★★★☆ | 英語での交渉・書類作成経験 |
IT・エンジニア | ★★★☆☆ | 技術英語、グローバルプロジェクト |
職歴で確認すべきポイント
【コールセンター・BPO経験者の場合】
- どこの国の顧客対応をしていたか(米国、英国など)
- 勤務期間(3年以上なら十分な経験)
- 担当業務(テクニカルサポート、カスタマーサービスなど)
- 昇進歴(チームリーダー、トレーナーなど)
【外資系企業経験者の場合】
- 企業名(グローバル企業の経験は高評価)
- 使用言語(業務の何割が英語だったか)
- 役職・責任範囲
- 海外出張や国際プロジェクトの経験
ポイント③:英語資格の有無
客観的な英語力の証明として、資格スコアは有効です。
【主要な英語資格と目安スコア】
資格 | ビジネスレベルの目安 | 測定内容 |
---|---|---|
TOEIC | 750点以上 | ビジネス英語のリスニング・リーディング |
TOEFL iBT | 80点以上 | アカデミック英語の4技能 |
IELTS | 6.5以上 | 実践的な英語の4技能 |
TESOL/TEFL | 資格保有 | 英語教授法(講師採用の場合) |
Cambridge English | FCE以上 | 総合的な英語能力 |
【スコアレベルの解釈】
TOEIC | レベル | できること |
---|---|---|
900点以上 | 非常に高い | ネイティブに近いコミュニケーション |
800-895点 | 高い | 複雑なビジネス交渉も可能 |
750-795点 | ビジネスレベル | 通常のビジネス業務に対応可能 |
650-745点 | 中上級 | 基本的なビジネスコミュニケーション |
600点未満 | 要確認 | ビジネスレベルには不十分な可能性 |
注意点
フィリピン人の場合、英語が日常的に使える環境にあるため、資格を持っていないケースも多くあります。資格の有無だけで判断せず、実際のコミュニケーション能力を確認することが重要です。
面接時に必ず確認すべき4技能のチェック方法
履歴書や資格だけで判断せず、面接時に実際の英語力を確認することが最も重要です。英語の4技能(聞く・話す・読む・書く)を具体的にチェックする方法を紹介します。
英語4技能の確認方法
1. リスニング(聞く力)のチェック
チェック方法 | 具体的な実施内容 |
---|---|
英語での質問 | 面接の一部を英語で実施し、質問に正確に答えられるか |
複雑な指示 | 複数のステップを含む指示を理解できるか |
ビジネス用語 | 専門用語を含む会話の理解度 |
聞き返しの頻度 | 何度も聞き返すようなら理解力に課題 |
2. スピーキング(話す力)のチェック
チェック方法 | 評価ポイント |
---|---|
自己紹介 | 流暢さ、論理的な構成 |
職務経験の説明 | 具体的に説明できるか |
想定業務に関する質問 | 専門用語を使えるか |
発音の明瞭さ | 訛りではなく、聞き取れるかどうか |
語彙の豊富さ | 適切な単語選択ができるか |
文法の正確さ | 基本的な文法ミスはないか |
【評価のポイント】
- ✅ スムーズに話せる(流暢さ)か
- ✅ クリアで理解しやすい発音か
- ✅ 豊富で適切な語彙選択ができるか
- ✅ 文法が正確であるか
3. リーディング(読む力)のチェック
チェック方法 | 評価内容 |
---|---|
ビジネスメールを読む | 要旨を正確に理解できるか |
資料の要約 | 読んだ内容を簡潔にまとめられるか |
契約書などの専門文書 | 複雑な文書の理解度 |
読解スピード | 適切な速さで読めるか |
4. ライティング(書く力)のチェック
チェック方法 | 評価基準 |
---|---|
ビジネスメールの作成 | 形式、敬語、内容の適切さ |
報告書のサンプル作成 | 論理的な構成、文法 |
文法の正確さ | スペル、時制、前置詞など |
ビジネス文書としての適切さ | フォーマルな表現 |
【評価ポイント】
- ✅ 適切な件名(Subject line)
- ✅ 丁寧な挨拶(Dear Mr./Ms. ~)
- ✅ 変更理由の説明
- ✅ 代替日程の提案
- ✅ 謝罪と感謝の表現
- ✅ 適切な結びの言葉(Best regards, Sincerely, など)
- ✅ 文法・スペルの正確さ
【総合評価のポイント】
面接時の英語力チェックでは、「完璧な英語」を求めるのではなく、「業務遂行に必要な英語コミュニケーションができるか」という視点で評価することが重要です。
5.フィリピン人の英語力を最大限活かせる職種と採用メリット

フィリピン人の高い英語力を理解したところで、実際にどのような職種で活躍できるのか、そして採用することでどのようなメリットがあるのかを具体的にみていきましょう。
英語力が特に活きる5つの職種と業務内容
フィリピン人の英語力を最大限に活かせる職種を、具体的な業務内容とともに紹介します。
1. カスタマーサポート・コールセンター業務
フィリピン人が最も活躍している分野の一つがカスタマーサポートです。
【主な業務内容】
業務 | 詳細 |
---|---|
電話対応 | 海外顧客からの問い合わせ対応 |
メール対応 | 英語でのカスタマーサポート |
チャットサポート | リアルタイムでの顧客対応 |
テクニカルサポート | IT製品のトラブルシューティング |
クレーム対応 | 不満を持つ顧客への丁寧な対応 |
24時間サポート | グローバル対応(時差の活用) |
なぜフィリピン人が適しているのか?
- ✅ 丁寧で親切な対応(ホスピタリティ精神)
- ✅ 聞き取りやすい発音
- ✅ 忍耐強い性格
- ✅ 笑顔で明るい接客
- ✅ アメリカ文化への理解
2. 貿易事務・海外営業
グローバルビジネスの最前線で活躍できる職種です。
【主な業務内容】
業務 | 詳細 |
---|---|
海外取引先との交渉 | メール、電話、オンライン会議 |
輸出入書類の作成 | インボイス、パッキングリスト、B/Lなど |
英文契約書の確認 | 契約内容のチェック、修正提案 |
海外展示会対応 | 通訳、商談サポート |
マーケット調査 | 海外市場の情報収集・分析 |
新規顧客開拓 | 海外への営業活動 |
【必要なスキル】
(ビジネスレベル)
(経験者なら尚可)
(Excel, Word, PowerPoint)
3. 通訳・翻訳業務
言語の専門家としての活躍が期待できます。
【主な業務内容】
逐次通訳 | ビジネス会議、商談、工場見学 |
同時通訳 | セミナー、カンファレンス(高度) |
ビジネス文書翻訳 | 契約書、提案書、プレゼン資料 |
技術文書翻訳 | マニュアル、仕様書、技術資料 |
Webサイト翻訳 | コーポレートサイト、ECサイト |
動画字幕作成 | プロモーション動画、研修動画 |
英語→日本語の翻訳
日本語能力(JLPT N2以上)も必要となりますが、バイリンガル人材は非常に貴重です。
【英語のみの翻訳業務】
英語→英語のリライト、編集、校正などの業務もあります。
- ビジネス文書のネイティブチェック
- Webコンテンツの英文校正
- マーケティング資料の英語化
4. IT・エンジニア(グローバルプロジェクト)
IT業界では英語力と技術力の両方が求められます。
主な業務内容
業務分野 | 具体的な内容 |
---|---|
ソフトウェア開発 | Webアプリ、モバイルアプリ開発 |
インフラ構築 | クラウド環境の設計・構築(AWS、Azure) |
オフショア開発連携 | 海外開発チームとのブリッジSE |
プロジェクトマネジメント | グローバルチームの進行管理 |
技術文書作成 | 仕様書、設計書の英語作成 |
システム説明 | 海外クライアントへのプレゼン |
【求められるスキル】
(Java, Python, JavaScript等)
(あれば尚可)
5. ホテル・観光業のインバウンド対応
観光立国日本において、インバウンド需要への対応は重要課題です。
【主な業務内容】
職種 | 業務内容 |
---|---|
ホテルフロント | チェックイン/アウト、予約対応、観光案内 |
コンシェルジュ | VIP対応、特別なリクエスト対応 |
ツアーガイド | 観光地の案内、文化の紹介 |
レストランスタッフ | オーダー取り、料理説明、接客 |
旅行代理店 | ツアー企画、予約手配、顧客対応 |
【フィリピン人の適性】
- ✅ ホスピタリティ精神が高い
- ✅ 明るく親しみやすい性格
- ✅ 英語圏からの観光客対応
- ✅ サービス業への適性
- ✅ チームワークを大切にする
英語ネイティブと比較した5つの採用メリット
フィリピン人を採用することで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
英語ネイティブ(アメリカ人、イギリス人など)と比較しながら、5つの主要なメリットを解説します。
メリット①:大幅なコスト削減
最も分かりやすいメリットがコスト面です。
【給与水準の比較】
項目 | 欧米ネイティブ | フィリピン人 | 差額 |
---|---|---|---|
月給相場(目安) | 40〜60万円以上 | 20〜35万円程度 | 約30万円/月 |
年収換算 | 500〜800万円 | 250〜450万円 | 約300万円/年 |
採用コスト | 高額(紹介料100万円〜) | 比較的手頃(50万円程度) | 約50万円 |
ビザ取得難易度 | 高度人材要件が厳しい | 比較的取得しやすい | – |
【5年間の採用コスト試算(あくまでも一例です)】
メリット②:高い英語力と適正価格の両立
「安かろう悪かろう」ではなく、フィリピン人は高い英語力を持ちながらコストパフォーマンスに優れています。
【具体的な英語力】
- TOEIC平均749点という実証済みの英語力
- ビジネスシーンで即戦力として活躍
- ネイティブに近い発音とコミュニケーション能力
- 適正な人件費
つまり、質と価格のバランスが非常に優れており、投資対効果(ROI)が高いのです。
【ROI(投資対効果)の比較】
指標 | 欧米ネイティブ | フィリピン人 |
---|---|---|
初期投資 | 高い | 中程度 |
英語力 | 最高レベル | 高レベル |
費用対効果 | 中程度 | 非常に高い |
メリット③:第二言語学習者としての共感力
ネイティブスピーカーにはない、フィリピン人ならではの強みがあります。
【第二言語学習者の視点】
比較項目 | 英語ネイティブ | フィリピン人 |
---|---|---|
英語習得経験 | 母国語として自然に習得 | 努力して学習した経験あり |
学習者の気持ち | 理解しにくい | 深く理解できる |
教え方 | 感覚的 | 論理的・体系的 |
日本人への共感 | 低い | 高い |
実務での活用例
フィリピン人自身が英語を第二言語として学んできたため、英語学習者の気持ちを理解しています。
メリット④:親日的で日本文化への理解がある
フィリピンは世界有数の親日国です。
親日度の高さ
フィリピンは東南アジアで最も親日的な国の一つとして知られています。
各種調査の平均によると、国民の約85%が日本に対して好意的な感情を抱いており、これは非常に高い水準です。
その背景には、日本製品の品質の高さや、アニメ、漫画、日本食といった日本文化への強い関心があります。
【親日的な理由】
- 日本のアニメ、マンガ、J-POPの人気
- 日本製品(車、電化製品)への信頼
- 日本人の勤勉さへの尊敬
- 戦後の経済協力への感謝
- 文化交流の歴史
採用面でのメリット
- 就労意欲:日本で働きたいと思う人が多い
- 適応力:日本のビジネス文化への適応が早い
- 定着率:長く働きたいと考える人が多い
- 学習意欲:日本語を学びたい人が多い
メリット⑤:豊富な人材プール
約9,200万人という膨大な英語話者人口から、企業のニーズに合った人材を見つけやすいのも大きなメリットです。
【人材の豊富さ】
項目 | 詳細 |
---|---|
英語話者人口 | 約9,200万人 |
労働人口 | 約4,500万人 |
大学卒業者 | 年間約50万人 |
IT人材 | 約20万人以上 |
看護師資格者 | 約100万人 |
また様々な専門分野の人材や日本語能力を持つ人材も増加していたり、人材の年齢層も幅広く非常に選択肢が多いことから、自社に最適な人材を見つけられる可能性が高まります。
6.採用成功の鍵|フィリピン人雇用で失敗しないための実践ガイド

フィリピン人の英語力と採用メリットを理解したところで、実際に採用を成功させるための実践的なポイントを解説します。
ここで紹介する方法を実践することで、採用後の定着率を高め、長期的に活躍してもらうことができます。
英語力だけでなく日本語力も考慮した採用戦略の立て方
フィリピン人採用において、英語力に注目が集まりがちですが、日本語力をどう考えるかも重要な戦略ポイントです。
業務内容による言語要件の設定
まず、採用する職種・ポジションで必要な言語スキルを明確にしましょう。
【3つの採用パターン】
パターン | 英語要件 | 日本語要件 | 適した職種 |
---|---|---|---|
①英語特化 | 必須(高) | 不要 | 海外顧客対応、翻訳 |
②バイリンガル | 必須(中〜高) | N3〜N2 | 営業サポート、社内SE |
③育成前提 | 必須(中) | 入社後習得 | 将来のリーダー候補 |
パターン①:英語特化ポジション(日本語不問)
海外顧客対応や翻訳業務など、日本語が必要ない職種の場合。
メリット
- ✅ 採用候補者の幅が広がる
- ✅ 即戦力として活用可能
- ✅ 高い英語力を持つ人材を確保しやすい
【準備が必要なこと】
パターン②:バイリンガルポジション(両方必須)
社内外で両言語を使う職種の場合。
メリット
- ✅ 幅広い業務に対応可能
- ✅ 日本人社員とのコミュニケーションが円滑
- ✅ 顧客対応の幅が広い
【注意点】
- ⚠️ 候補者が限られる
- ⚠️ 給与水準が高くなる傾向
- ⚠️ 採用に時間がかかる可能性
【求めるレベル】
- 英語: ビジネスレベル(TOEIC 750+)
- 日本語: N2以上推奨
パターン③:将来的な日本語習得前提
入社時は英語のみで、入社後に日本語研修を提供。
メリット
- ✅ 優秀な人材を確保しやすい
- ✅ 長期的な育成により定着率向上
- ✅ 社員の成長をサポートできる
- ✅ 会社への帰属意識が高まる
【サポート体制の例】
サポート内容 | 具体例 |
---|---|
日本語学習支援 | オンラインレッスン費用補助(月1-2万円) |
学習時間の確保 | 週2時間の学習時間を業務時間に含める |
目標設定 | 1年後N3、2年後N2取得を目標に |
インセンティブ | JLPT合格時に報奨金(N3: 3万円、N2: 5万円) |
成功事例としては、入社時は日本語ゼロでしたが、2年間の日本語研修支援により、現在はN2を取得し、日本人社員とも日本語で会話している企業もあります。
文化的背景を理解したマネジメントの3つのポイント
フィリピン人を効果的にマネジメントするには、文化的背景の理解が欠かせません。
ポイント①:フィリピン文化の特徴を理解する
1. 家族重視(Family-oriented)の価値観
フィリピン人にとって、家族は最優先事項です。そのためにも対応策をしっかり考えておくことが大切です。
【対応例】
- 家族の緊急時には休暇を柔軟に対応
- 家族の写真を飾ることを認める
- 家族の話に興味を持って聞く
- ビデオ通話の時間を確保できる環境
2. 宗教観(カトリック文化)
国民の83%がカトリック教徒です。
宗教的行事 | 重要度 | 配慮のポイント |
---|---|---|
日曜日のミサ | ★★★★★ | 日曜日の午前中は避ける |
クリスマス | ★★★★★ | 12月は最も重要な時期 |
イースター | ★★★☆☆ | 復活祭への理解 |
聖週間 | ★★★★☆ | 3-4月の宗教行事 |
【マネジメント上の配慮】
- 日曜日のシフト調整(午後からなら可能な場合も)
- クリスマス休暇への配慮(12月下旬)
- 宗教的行事の尊重
- お祈りの時間への理解
3. ホスピタリティ精神
フィリピン人は明るく、人を助けることを好む国民性です。
ポイント②:コミュニケーションスタイルの違いを認識する
【ハイコンテクスト文化 vs ローコンテクスト文化】
項目 | 日本(ハイコンテクスト) | フィリピン(ローコンテクスト) |
---|---|---|
表現方法 | 間接的、暗黙の了解 | 直接的、明示的 |
察する文化 | 言わなくても察する | 言葉で明確に伝える |
意思決定 | 空気を読む | 明確な指示が必要 |
フィードバック | 婉曲的 | ストレートに |
【効果的な指示の出し方】
✅ 具体的に⇒「この資料を、Excelで、A4サイズ、2ページ以内で作成してください」
✅ 期限を明確に⇒「明日の15時までにメールで提出してください」
✅ 優先順位を示す⇒「1番重要なのは〇〇、次に△△、最後に□□です」
✅ 完成イメージを共有⇒「こんな感じのものを作ってください」(サンプルを見せる)
✅ 質問の機会を作る⇒「分からないことがあれば、いつでも聞いてください」
長期定着を実現する受け入れ環境の整備チェックリスト
採用後の定着率を高めるため、受け入れ環境を整備しましょう。以下のチェックリストを活用してください。
採用前の準備
【法的手続き関連】
□ 在留資格の確認(技術・人文知識・国際業務、技能など)
□ ビザ申請に必要な書類の準備
□ 行政書士など専門家との連携体制
□ 採用スケジュールの確認(ビザ取得に2-3ヶ月)
【業務環境の整備】
□ 業務マニュアルの英語版作成
□ 業務フローの可視化
□ 職場環境の多言語対応(標識、システムの言語設定)
□ PCやメールアカウントの準備
□ デスク、備品の用意
【組織の準備】
□ 既存社員への異文化理解研修の実施
□ フィリピン文化についての勉強会
□ 受け入れ体制の説明
□ メンター候補者の選定
【生活サポートの準備】
□ 住居探しのサポート体制構築
□ 不動産会社との連携
□ 生活に必要な情報の英語版リスト作成
□ 近隣の教会、フィリピンコミュニティの情報収集
採用時
【契約関連】
□ 雇用契約書の英語版準備
□ 就業規則の英語での説明
□ 給与・福利厚生の明確な説明
□ 税金、社会保険の仕組み説明
□ 有給休暇、特別休暇の説明
【初日の準備】
□ ウェルカムメッセージの用意
□ 初日のスケジュール作成
□ 社内案内の準備
□ 歓迎ランチの企画
入社後のサポート(初期:1-3ヶ月)
【オリエンテーション】
□ 会社のルール、文化の説明(英語で)
□ 組織図、関係者の紹介
□ 社内システムの使い方説明
□ セキュリティルールの説明
□ 緊急時の連絡先の共有
【業務のサポート】
□ メンター制度の導入(相談できる先輩社員の配置)
□ 業務の段階的な引き継ぎ
□ 毎日の振り返りミーティング
□ 週次での進捗確認
□ 質問しやすい雰囲気づくり
【生活面のサポート】
□ 銀行口座開設のサポート
□ 携帯電話契約の手伝い
□ 区役所での手続きサポート(住民登録など)
□ 病院の案内
□ 近隣の買い物スポット案内
□ 交通機関の使い方説明
継続的なサポート(3ヶ月以降)
【定期面談】
□ 月1回以上の1on1面談(英語で実施)
□ 業務の進捗確認
□ 困っていることのヒアリング
□ キャリアの相談
□ フィードバックの実施
【相談窓口】
□ 人事への相談窓口設置
□ 直属上司以外にも相談できる人の配置
□ メンターとの定期的な面談
□ 匿名の意見箱の設置
【スキルアップ】
□ 日本語学習支援(希望者向け)
- 日本語教室の費用補助
- 学習時間の確保(週2時間程度)
- JLPT受験費用の補助
- 合格時の報奨金制度
□ 専門スキル研修の提供
□ OJTの継続
□ 外部セミナーへの参加機会
【コミュニティ】
□ フィリピン人コミュニティとの接点提供
□ 文化的イベントへの参加機会
□ 社内イベントへの参加促進
□ 他のフィリピン人社員との交流(複数名採用の場合)
【休暇・帰国】
□ 定期的な帰国休暇の配慮(年1-2回推奨)
□ 家族の緊急時の特別休暇
□ クリスマス休暇への理解
□ 有給休暇の取得促進
【コミュニケーション環境】
言語対応
□ 社内の重要な連絡事項の英語版作成
□ 会議での通訳サポート(必要に応じて)
□ 英語でのドキュメント作成文化の推進
□ 英語での報告書フォーマット整備
安全に外国人材を採用するための5つのステップを詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
7.フィリピン人の高い英語力で、御社のグローバル化を実現しませんか

フィリピン人はアジアトップクラスの英語力(TOEIC平均749点)を持ち、約9割が英語を話せます。
歴史的背景と充実した英語教育により、ビジネスで即戦力となる実用的な英語力を備えています。
適切な採用基準と受け入れ体制を整えれば、コストを抑えながら優秀なグローバル人材を確保できます。本記事を参考に、フィリピン人材の採用で企業の国際競争力を高めましょう。