バングラデシュは世界第8位、1億7,356万人の人口を誇る人口大国です。日本の約1.4倍の人口が日本の4割の国土に暮らし、都市国家を除けば世界一の人口密度を記録しています。
平均年齢27歳という若さと、7,305万人の豊富な労働人口が特徴です。本記事では、なぜ今、日本企業がバングラデシュ人材に注目しているのか、最新データで解説していきます。
- バングラデシュの最新人口データと世界ランキングでの位置づけ
- 人口密度世界一がもたらす労働力確保の優位性と採用市場としての魅力
- フィリピン・ベトナムとの比較から見る人材供給源としての可能性
1.バングラデシュの人口は世界第8位の1.7億人超

バングラデシュの人口は、2024年時点で1億7,356万人に達しており、世界第8位の人口大国です。
この数字は、南アジアではインド、パキスタンに次ぐ第3位の規模であり、東南アジアのインドネシアに次ぐアジア第4位の人口を誇ります。
企業の人事担当者にとって、この1.7億人という人口規模は、豊富な労働力供給源としての可能性を示す重要な指標です。
2024年現在の最新人口は1億7,356万人
世界銀行の最新データによると、バングラデシュの総人口は2024年に1億7,356万人(173,562,364人)を記録しました。
前年2023年の1億7,147万人から約209万人増加しており、年間増加率は約1.22%です。
世界人口ランキング(2024年)
| 順位 | 国名 | 人口 |
| 1位 | インド | 約14億人 |
| 2位 | 中国 | 約14億人 |
| 3位 | アメリカ | 約3億4,000万人 |
| 4位 | インドネシア | 約2億7,700万人 |
| 5位 | パキスタン | 約2億4,000万人 |
| 6位 | ナイジェリア | 約2億2,300万人 |
| 7位 | ブラジル | 約2億1,600万人 |
| 8位 | バングラデシュ | 約1億7,356万人 |
この人口規模は、日本の総人口約1億2,000万人と比較すると約1.4倍に相当します。
また、アジア圏で外国人材の受入れ実績が多いフィリピン(約1億1,600万人)やベトナム(約9,800万人)と比べても、1.7倍近い人口規模を持っています。
年間約209万人(1日あたり約5,700人)の人口増加は、労働市場に継続的に新規参入者が供給されることを意味します。
これは、日本企業が長期的に安定した人材確保を行う上で、非常に重要なポイントです。
日本の約1.4倍の人口が日本の4割の国土に暮らす
バングラデシュの国土面積は14万7,000平方キロメートルであり、これは日本の国土面積37万8,000平方キロメートルのわずか約39%(約4割)に過ぎません。
イメージとしては、北海道(8万3,000㎢)と東北地方(6万7,000㎢)を合わせた程度の広さです。
日本とバングラデシュの比較表
| 項目 | バングラデシュ | 日本 | 比較 |
| 人口 | 1億7,356万人 | 約1億2,000万人 | 約1.4倍 |
| 国土面積 | 14万7,000㎢ | 37万8,000㎢ | 約0.4倍 |
| 人口密度 | 1,237人/㎢ | 約340人/㎢ | 約3.6倍 |
| 平均年齢 | 27歳 | 48歳 | 21歳若い |
| 労働人口 | 7,305万人 | 約6,900万人 | 約1.06倍 |
この限られた国土に、日本の1.4倍もの人口が暮らしているという事実は、バングラデシュの人口密度の高さを物語っています。
JICA(国際協力機構)の公式サイトによれば、バングラデシュの人口規模は「タイとベトナムを足した規模に匹敵する」と表現されており、南アジア地域における人口集中の象徴的な国と言えるでしょう。
採用市場としての意味
- 限られた地域に多くの人材が集中しているため、採用活動の効率が高い
- 工場や事業所の近隣に十分な労働力が存在する
- 送出機関を通じた人材紹介がスムーズに行える
- 地域ごとに特色ある人材プールが形成されている
2.都市国家を除けば世界一のバングラデシュ人口密度

バングラデシュの最大の特徴は、その驚異的な人口密度にあります。
1平方キロメートルあたり1,237人という数字は、シンガポールやモナコなどの都市国家を除けば世界最高水準です。
この高密度な人口分布が、労働力確保の容易さという点で、採用市場としての大きな優位性を生んでいます。
1平方キロメートルあたり1,237人という驚異的な密度
バングラデシュの人口密度は1平方キロメートルあたり1,237人です。
これは日本の人口密度(約340人/㎢)の約3.6倍に相当し、人口1,000万人以上の国としては世界一の数値となっています。
世界の人口密度ランキング(人口1,000万人以上の国)
| 順位 | 国名 | 人口密度(人/㎢) | 人口 |
| 1位 | バングラデシュ | 1,237人 | 1億7,356万人 |
| 2位 | 韓国 | 約530人 | 約5,100万人 |
| 3位 | ルワンダ | 約500人 | 約1,300万人 |
| 4位 | オランダ | 約420人 | 約1,700万人 |
| 5位 | インド | 約380人 | 約14億人 |
| – | 日本 | 約340人 | 約1億2,000万人 |
※シンガポール(約8,000人/㎢)、モナコ(約19,000人/㎢)などの都市国家は除外
この高い人口密度が意味するのは、企業が人材を採用したい時に、地理的に近い場所から多くの候補者にアクセスできるという点です。
製造業や縫製業において、工場の徒歩圏内に十分な労働力が存在するため、通勤の利便性が高く、採用コストを抑えられるというメリットがあります。
実際、JETROの報告によれば、バングラデシュ進出日系企業からは以下のような声が聞かれています。
現地企業の評価
- 「人を採用したい時にいつでも採用可能」
- 「工場の立地によっては、ほとんどの採用者が徒歩通勤の距離に住んでいる」
- 「豊富な人口や高い人口密度から、労働力確保に困ることがない」
バングラデシュの人口密度は、人口1000万人を超える国としては、インドネシアのジャワ島と比較されることがあります。
ただし、バングラデシュは山地が少なく耕作可能面積率が非常に高いため、実質的な可住地域での人口密度はさらに高いと言えます。
首都ダッカは人口密度世界最高水準の2,000万人都市
バングラデシュの首都ダッカは、人口約2,000万人を抱える巨大都市です。
その人口密度は1平方キロメートルあたり3万〜4万人に達し、東京23区(約1万5,000人/㎢)の2倍以上という世界最高水準を記録しています。
バングラデシュの主要都市人口密度ランキング
| 都市名 | 人口 | 世界順位 | 特徴 |
| ダッカ | 約2,000万人 | 世界1位 | 金融街、IT企業集積地 |
| シレット | 約50万人 | 世界5位 | 北東部の商業都市 |
| チッタゴン | 約500万人 | 世界13位 | 南部の港湾都市 |
ダッカ以外にも、北東部の都市シレットが人口密度世界5位、南部のチッタゴンが13位にランクインするなど、バングラデシュには超過密都市が複数存在します。
これは、農村部から都市部への人口流入が加速している結果であり、バングラデシュ統計局によれば、都市部の人口比率は31.5%で、2011年より8.2ポイント上昇しています。
都市部への人口集中の背景
この都市部への人口集中は、IT人材や高度人材の集積にもつながっており、日本企業が求める技術者や管理職候補を効率的に採用できる環境が整っています。
ダッカには約4,500社のIT企業が集まっており、年間1.5万〜3万人のIT関連学科卒業生が労働市場に参入しています。
特に首都ダッカは、2020年時点で2000年の2倍以上の人口に成長しており、今後も都市化が進むと予測されています。これは、都市部での高度人材の採用機会がさらに拡大することを意味しています。
外国人労働者の受け入れ制度の種類や特徴、必要な受入条件と手続きについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
3.バングラデシュ人口の推移と今後の予測

バングラデシュの人口は、過去40年間で急速な増加を遂げてきました。
1980年の8,300万人から2024年には1億7,356万人へと約2.1倍に増加しています。
この人口増加は、経済発展と生活水準の向上を背景としており、今後も2040年代まで続く人口ボーナス期が、経済成長と労働力供給を支えると予測されています。
1980年8,300万人から2024年1.7億人への増加推移
バングラデシュの人口は、1980年に約8,300万人でしたが、1988年には1億人を突破しました。その後も順調に増加を続け、2024年には1億7,356万人に達しています。
バングラデシュ人口の推移(主要年)
| 年 | 人口 | 10年間の増加数 | 備考 |
| 1960年 | 4,801万人 | – | 統計開始 |
| 1980年 | 8,300万人 | – | 基準年 |
| 1988年 | 1億人突破 | – | 1億人の節目 |
| 2000年 | 約1億3,000万人 | 約4,700万人 | 貧困率50% |
| 2010年 | 約1億4,800万人 | 約1,800万人 | 経済成長加速 |
| 2020年 | 約1億6,900万人 | 約2,100万人 | 年間増加ピーク |
| 2024年 | 1億7,356万人 | – | 最新データ |
この44年間で人口が2.1倍になった背景には、以下の要因があります。
特筆すべきは、人口増加のピークだった2020年には、前年比で約437万人もの人口が増加したという点です。
これは、1年間で静岡県の人口(約360万人)を上回る規模の増加であり、労働市場への新規参入者の多さを物語っています。
1960年から2024年の人口変化
バングラデシュの人口は、1960年の4,801万人から2024年には1億7,356万人へと大きく増加しました。
64年間で約3.6倍に増加しており、特に1970年代から2000年代にかけての増加が顕著でした。
この人口爆発の背景には、高い出生率(1970年時点で6.95)、経済発展による生活改善、医療・公衆衛生の向上がありました。現在は出生率が2.1まで低下し、人口増加ペースは緩やかになっています。
2040年代前半まで続く人口ボーナス期の恩恵
バングラデシュは現在、人口ボーナス期の真っ只中にあります。人口ボーナス期とは、生産年齢人口(15〜64歳)の比率が高まり、経済成長が加速する期間を指します。
Wikipediaによれば、バングラデシュの人口ボーナス期は2040年代前半まで続くと予測されています。これは、日本がすでに人口減少・高齢化社会に突入しているのとは対照的です。
人口ボーナス期の特徴
| 項目 | 内容 | 採用市場への影響 |
| 生産年齢人口比率 | 65〜68%と高水準 | 豊富な労働力供給 |
| 従属人口比率 | 32〜35%と低水準 | 働く意欲の高い人材 |
| 経済成長率 | 年率6〜7%台を維持 | 賃金上昇が緩やか |
| 若年層の割合 | 平均年齢27歳 | 新技術への適応力 |
人口ボーナス期がもたらすメリット
- 豊富な労働力: 毎年約150万人が新規に労働市場に参入
- 消費市場の拡大: 1.7億人の消費者が存在し、所得向上に伴い中間層が拡大
- 人件費の競争力: 豊富な労働力により、適正な人件費水準を維持
- 海外送金の増加: 海外で働くバングラデシュ人からの送金が経済を支える(年間約210億ドル)
- イノベーションの促進: 若年層が多いため、新しい技術やビジネスモデルの導入がスムーズ
ただし、合計特殊出生率は1992年の4.18から2011年には2.11まで低下しており、人口増加のペースは緩やかになっています。
今後の人口予測では、2053年頃に約1億9,278万人でピークを迎え、その後は緩やかに減少に転じると見られています。
4.平均年齢27歳という若さを誇る人口構成

バングラデシュの最大の強みは、その人口構成の若さにあります。
平均年齢27歳(一部データでは27.6歳)という数字は、少子高齢化が進む日本(平均年齢48歳)とは対照的であり、今後20年間にわたって豊富な若年労働力を供給できる基盤となっています。
生産年齢人口比率の上昇が経済成長を後押し
バングラデシュの生産年齢人口(15〜64歳)比率は現在上昇を続けており、総人口の約65〜68%を占めています。
これは、経済成長に最も貢献できる年齢層が人口の中核を成していることを意味します。
年齢構成の比較(バングラデシュ vs 日本)
| 年齢区分 | バングラデシュ | 日本 | 差異 |
| 年少人口(0-14歳) | 約28% | 約12% | 2.3倍多い |
| 生産年齢人口(15-64歳) | 約67% | 約59% | 1.1倍多い |
| 高齢者人口(65歳以上) | 約5% | 約29% | 5.8分の1 |
| 平均年齢 | 27歳 | 48歳 | 21歳若い |
平均年齢27歳という若さが意味すること
- 労働意欲が高い: 20代〜30代の若年層が中心で、新しい技術やスキルの習得に積極的
- 適応力が高い: 異文化環境や新しい職場環境への適応が早く、日本の職場文化にも馴染みやすい
- 長期的な雇用が可能: 日本で働き始めた場合、20年以上の長期雇用が期待できる
- デジタルネイティブ世代: スマートフォンやITツールの使用に慣れており、DX化に対応しやすい
- 体力的な強さ: 製造業や建設業など、体力を要する業種でも活躍できる
対照的に、日本の平均年齢は48歳で、生産年齢人口比率は約59%まで低下しています。この20歳以上の平均年齢の差が、労働市場における決定的な違いを生んでいます。
バングラデシュの人口ピラミッドは、2023年時点でも20代以降がピラミッド型をとっており、若年人口層がいまだ厚い状態が続いています。
これは、1990年代以降に迎えた生産年齢人口比率が上昇する人口ボーナス期が2040年代前半まで続くことを示しています。
労働人口7,305万人が豊富な人材供給源に
外務省の基礎データによれば、バングラデシュの労働人口は7,305万人、そのうち雇用人口は7,047万人に達しています。これは日本の労働力人口(約6,900万人)を上回る規模です。
参考元:外務省「バングラデシュ人民共和国」
バングラデシュの労働市場の規模
| 項目 | 人数 | 割合 |
| 労働人口 | 7,305万人 | 総人口の42.1% |
| 雇用人口 | 7,047万人 | 労働人口の96.5% |
| 失業人口 | 258万人 | 労働人口の3.5% |
| 失業率 | 3.6% | – |
産業別の就業人口の内訳(2022年バングラデシュ統計局)
| 産業 | 割合 | 推定人数 | 特徴 |
| 農業 | 45.4% | 約3,200万人 | 農村部の主要産業 |
| サービス業 | 37.6% | 約2,650万人 | 都市部で拡大中 |
| 工業/製造業 | 17.0% | 約1,200万人 | 縫製業が中心 |
特に注目すべきは、工業・製造業に従事する約1,200万人の存在です。
縫製業を中心に、すでに製造業での就労経験を持つ人材が豊富に存在することは、日本の製造業が即戦力を採用できる可能性を示しています。
労働市場の成長トレンド
- 2016/2017年調査: 労働人口6,350万人
- 2022年調査: 労働人口7,341万人
- 増加率: 約16%(5年間で約990万人増加)
- 年間増加: 約150万人〜200万人
この数字は、継続的な人材供給が可能であることを意味しています。毎年150万人以上の新規労働者が市場に参入しているため、日本企業が長期的に安定した採用を行う基盤が整っています。
5.1.7億人のバングラデシュ人口が支える経済成長

バングラデシュの1.7億人という巨大な人口は、単なる数字ではなく、持続的な経済成長を支える原動力となっています。
年率6〜7%台の高い経済成長率は、豊富な労働力と若年人口による消費拡大によって実現されており、「アジア最後の新興国」「NEXT11の一角」として世界から注目を集めています。
年率6〜7%台の高い経済成長率を維持
バングラデシュは、2019年度にGDP成長率8.15%という過去最高を記録し、新型コロナ禍を経ても2022年度には7.1%の成長率を達成しました。
JICA(国際協力機構)の公式サイトによれば、過去10年間(2005〜2015年)の平均経済成長率は6.2%であり、安定した高成長を続けています。
バングラデシュの経済成長率の推移
| 年度 | GDP成長率 | 主な要因 |
| 2015年度 | 約6.5% | 縫製業の拡大 |
| 2017年度 | 約7.3% | 輸出増加 |
| 2019年度 | 8.15% | 過去最高を記録 |
| 2020年度 | 約3.5% | コロナ禍の影響 |
| 2021年度 | 約6.9% | 回復傾向 |
| 2022年度 | 7.1% | 安定成長に復帰 |
この高成長を支えているのが、1.7億人という人口規模がもたらす以下の要因です。
世界銀行によれば、バングラデシュの2022年のGDPは3,055億ドルであり、後発開発途上国(LDC)から2026年に卒業予定です。
これは、経済発展の一つの節目を意味し、今後さらなる成長が期待されています。
豊富な労働力が「世界の工場」としての地位を確立
バングラデシュは、その豊富な労働力を背景に、縫製品輸出で世界第3位(一時は第2位)の地位を確立しています。
外務省のデータによれば、2023年度の輸出額約373億ドルのうち、縫製品が86.5%を占めています。
参考元:外務省「バングラディシュ人民共和国」
バングラデシュの主要輸出品目(2023年度)
| 品目 | 輸出額割合 | 特徴 |
| 縫製品(ニット含む) | 86.5% | 世界第3位の輸出量 |
| 繊維類 | 2.1% | 縫製の原材料 |
| 皮革・皮革製品 | 3.0% | 成長産業 |
| 魚介類 | 0.9% | エビなど |
| その他 | 7.5% | – |
主要な輸出先国(2023年度)
(スペイン、フランス、イタリア)
ユニクロ、ZARA、H&Mなど世界的なファストファッションブランドがバングラデシュに生産拠点を持ち、約400万人が縫製産業で雇用されていると推定されています。
「世界の工場」としての優位性
- 豊富な労働力: 7,305万人の労働人口から継続的に人材確保が可能
- 人件費の競争力: 中国やタイと比較して30〜50%低い人件費水準
- 高い人口密度: 工場の徒歩圏内に十分な労働力が存在し、採用が容易
- 製造業経験者の多さ: すでに約1,200万人が工業・製造業に従事
- 後発開発途上国特恵: EU、アメリカなど主要市場で特恵関税の恩恵
JETROの調査によれば、「バングラデシュでは、人を採用したい時にいつでも採用可能で、工場の立地によっては、ほとんどの採用者が徒歩通勤の距離に住んでいる」という高密度人口ならではの優位性があります。
この「世界の工場」としての実績は、日本企業が製造業人材を採用する際の安心材料となります。
すでに国際的な品質基準での生産経験を持つ人材が豊富に存在するため、即戦力としての活躍が期待できます。
実際、ユニクロはバングラデシュでの人材育成プログラムを実施し、現地スタッフを店長に起用するなど、バングラデシュ人材の能力を高く評価しています。
6.日本企業がバングラデシュの1.7億人市場に注目する理由

1.7億人という人口規模は、単なる労働力供給源としてだけでなく、日本企業にとって多面的な魅力を持っています。
親日国としての文化的親和性、高い英語力とIT技術、そして日本での就労への強い希望という3つの要素が、バングラデシュを理想的な人材供給国として位置づけています。
親日国として日本での就労を強く希望する人材が豊富
バングラデシュは、世界有数の親日国として知られています。
その背景には、日本がバングラデシュ独立以来、約50年にわたって提供してきた経済・技術支援があります。
日本の累計支援額は約201億4,000万米ドルに達し、世界で最も多くの支援を行っている国です。
日本とバングラデシュの友好関係の歴史
| 年 | 出来事 | 内容 |
| 1971年 | バングラデシュ独立 | 日本が独立を世界で最初に承認 |
| 1972年〜 | インフラ支援開始 | 道路、橋梁、港湾整備への支援 |
| 1980年代〜 | 農業・教育支援 | 食糧増産、学校建設への協力 |
| 2000年代〜 | IT・産業支援 | IT教育、産業育成への投資 |
| 現在 | 総合的パートナーシップ | 累計201億ドル以上の支援実績 |
この親日感情は、バングラデシュ人の日本就労への強い憧れとして表れています。
実際、バングラデシュの国旗は緑の背景に赤い丸というデザインで、日本の日の丸と酷似していますが、これは偶然ではなく、実際に日本の国旗を参考にデザインされたと言われています(背景の緑は豊かな自然、赤丸は独立のために流された血を意味)。
日本が選ばれる理由
①圧倒的な給与差
- バングラデシュの平均年収: 約15万円
- 日本での平均年収: 300万円以上
- 約20倍の収入格差
②安定した生活環境
- 治安の良さ(世界トップクラスの安全性)
- 充実したインフラ(交通、通信、医療)
- 高品質な医療・教育サービス
③技術習得の機会
- 日本の高度な製造技術
- ビジネス慣習やマナーの習得
- 品質管理の考え方を学べる
④キャリアアップの可能性:
- 日本での就労経験が母国での高評価につながる
- 帰国後の起業や管理職への道が開ける
- 後輩への奨学金として還元する文化
マイナビグローバルの調査によれば、多くのバングラデシュ人にとって日本就職は「LIFE TIME DREAM(生涯の夢)」と表現されるほどの憧れの対象です。
特に、ダッカ大学やダッカ工科大学などの国立トップ校出身者は、日本で稼いだお金を母国の家族への仕送りだけでなく、母校の後輩たちの奨学金として寄付する文化があり、真面目で責任感の強い人材が多いことが特徴です。
バングラデシュ人材の性格的特徴
バングラデシュ人材は、以下のような性格的特徴を持っています。
これらの特徴は、日本企業が求める「真面目で長く働いてくれる人材」像と非常にマッチしています。
年間1.5万〜3万人のIT関連卒業生と高い英語力
バングラデシュの人口1.7億人の中でも、特に注目すべきはIT人材の豊富さです。
国内には約4,500社のIT企業が存在し、政府がIT立国を目指して積極的に投資を行っています。
バングラデシュのIT産業の規模
| 項目 | 数値 | 備考 |
| IT企業数 | 約4,500社 | 急速に増加中 |
| IT関連卒業生 | 年間1.5万〜3万人 | 大学・専門学校 |
| 大学のIT学部倍率 | 30〜80倍 | ダッカ工科大学など |
| IT産業への政府支援 | 免税措置・優遇措置 | 国家予算に組み込み |
| IT人材の平均年齢 | 27歳 | 若く、最新技術に精通 |
IT人材のスキルレベル(マイナビ調査)
| 対象 | ITスキルテスト平均点 | 比較 |
| 日本人(新卒) | 36点 | 基準値 |
| バングラデシュ人(新卒) | 85点 | 日本の2.4倍 |
| バングラデシュ人(就労経験3年以上) | 99点 | 日本の2.8倍 |
この驚異的なITスキルの高さの背景には、以下の要因があります。
IT人材が豊富な理由
- 若者に大人気のIT分野
- 人口の年齢中央値27歳という若さ
- 大学の情報工学科への志望者で溢れている
- IT関連の試験導入や教育費が国家予算に組み込まれている
- 充実した教育環境
- ダッカ大学(バングラデシュの東大)のコンピューターサイエンス学部
- ダッカ工科大学のIT関連学部
- 多数の私立大学・専門学校でのIT教育
- 実践的なスキル
- アメリカやヨーロッパのIT企業でも採用実績
- オフショア開発の経験者が多い
- 最新のプログラミング言語に精通
さらに、バングラデシュは英語教育が充実しており、イギリス統治の歴史から英語が事実上の公用語として機能しています。
バングラデシュの言語環境
| 言語 | 状況 | 特徴 |
| ベンガル語 | 公用語 | 国民の98%が話す |
| 英語 | 事実上の公用語 | 官公庁、教育機関で使用 |
| ヒンディー語 | 隣国インドの影響 | 理解できる人が多い |
この英語力とIT技術の組み合わせは、グローバル展開を目指す日本企業にとって非常に魅力的です。
外国人材を採用する際の言語の壁が低く、即戦力としての活躍が期待できます。
実際の採用メリット
- 海外取引先との英語でのコミュニケーションが可能
- 技術文書(英語)の理解が早い
- グローバルIT企業の開発手法に精通
- 日本語習得も比較的早い(英語ができるため第二外国語の習得が得意)
実際、バングラデシュのIT人材は自国だけでなく、その技術の高さからアメリカやヨーロッパ諸国の企業でも重宝されています。
しかし、親日感情の強さから、給与面で欧米より低くても日本を選ぶ人材が多いというのが、日本企業にとっての大きなメリットとなっています。
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7.他のアジア諸国とバングラデシュ人口を比較

外国人材の採用を検討する際、多くの日本企業がフィリピンやベトナムを候補に挙げます。
しかし、人口規模で比較すると、バングラデシュはこれらの国々を大きく上回る1.7倍の人材プールを持っており、長期的な人材確保の観点から優位性があります。
フィリピン・ベトナムの約1.7倍の人口規模
アジア主要国との人口比較を見ると、バングラデシュの優位性が明確になります。
アジア主要国の人口比較(2024年)
| 順位 | 国名 | 人口 | バングラデシュとの比較 | 日本での外国人労働者数 |
| 1位 | インド | 約14億人 | 8.1倍 | 約20万人 |
| 2位 | 中国 | 約14億人 | 8.1倍 | 約38万人 |
| 3位 | インドネシア | 約2億7,700万人 | 1.6倍 | 約5万人 |
| 4位 | バングラデシュ | 約1億7,356万人 | 1.0倍(基準) | 約1.8万人 |
| 5位 | パキスタン | 約2億4,000万人 | 1.4倍 | 約2万人 |
| 6位 | フィリピン | 約1億1,600万人 | 0.67倍 | 約21万人 |
| 7位 | ベトナム | 約9,800万人 | 0.56倍 | 約52万人 |
| 8位 | タイ | 約7,000万人 | 0.40倍 | 約6万人 |
| 9位 | ミャンマー | 約5,400万人 | 0.31倍 | 約5万人 |
バングラデシュの人口は、フィリピンの約1.5倍、ベトナムの約1.8倍に相当します。JICAの表現によれば、「タイとベトナムを足した規模に匹敵する人口」がバングラデシュには存在します。
人口規模から見る採用市場の可能性
バングラデシュの1.7億人という人口規模は、採用市場として以下のような可能性を秘めています。
採用の選択肢が豊富
- 特定のスキルや経験を持つ人材を見つけやすい
- より多くの候補者の中から最適な人材を選べる
- 複数の送出機関から比較検討できる
長期的な供給安定性
- フィリピン・ベトナムは既に多くの日本企業が進出
- バングラデシュはまだ競争率が低く、優秀な人材を確保しやすい
- 特定国への依存リスクを分散できる
年間供給人数の違い
- バングラデシュ: 年間約150万人が新規労働市場に参入
- フィリピン: 年間約100万人
- ベトナム: 年間約80万人
- 継続的な人材供給が可能
未開拓市場としての魅力
- 日本での外国人労働者数(2023年時点)
- ベトナム: 約52万人(全体の30%)
- フィリピン: 約21万人(全体の12%)
- バングラデシュ: 約1.8万人(全体の1%)
- 今後の伸び代が大きい
JETROの進出日系企業数(2014年時点)
- タイ: 5,444社
- ベトナム: 1,500社以上
- インドネシア: 1,400社以上
- フィリピン: 1,400社以上
- バングラデシュ: 181社(過去4年で2倍に増加)
この数字は、バングラデシュがまだ「ブルーオーシャン市場」であることを示しています。
競争が激化しているフィリピンやベトナムと比較して、優秀な人材を確保しやすい環境が整っています。
人口密度の高さが労働力確保を容易にする優位性
単なる人口規模だけでなく、人口密度の高さもバングラデシュの大きな優位性です。
アジア主要国の人口密度比較
| 国名 | 人口密度(人/㎢) | バングラデシュ比 | 特徴 |
| バングラデシュ | 1,237人 | 1.0倍(基準) | 世界一(都市国家除く) |
| 韓国 | 約530人 | 0.43倍 | 東アジアで高密度 |
| フィリピン | 約370人 | 0.30倍 | 島嶼国家 |
| 日本 | 約340人 | 0.27倍 | 先進国で高密度 |
| ベトナム | 約313人 | 0.25倍 | 南北に長い |
| インド | 約380人 | 0.31倍 | 広大な国土 |
| 中国 | 約150人 | 0.12倍 | 沿岸部に集中 |
| インドネシア | 約151人 | 0.12倍 | 島嶼国家 |
| タイ | 約135人 | 0.11倍 | 農業国 |
| ミャンマー | 約83人 | 0.07倍 | 山岳地帯多い |
この高い人口密度は、人材の紹介・採用活動の効率性に直結します。
また、バングラデシュの人口は世界第8位であり、南アジアではインド(14億人)、パキスタン(2億4,000万人)に次ぐ第3位の規模を誇ります。
NEXT11(次世代の経済大国候補11カ国)の一つにも数えられており、今後の経済発展が期待されています。
NEXT11とは
NEXT11(ネクスト・イレブン)とは、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に続いて、21世紀に大きな経済成長が期待される11カ国のグループです。
NEXT11(ネクスト・イレブン)とは?
加盟国(11カ国)
NEXT11の主要な特徴
巨大な市場を形成する人口規模と、生産年齢人口を支える若年層が豊富です。
近年、平均して高いGDP成長率を記録しており、世界経済を牽引する可能性があります。
未だ発展途上の段階にあり、インフラ整備や消費市場の爆発的な拡大が期待されます。
バングラデシュは、このNEXT11の一角として国際的に注目されており、2021年にはBRICs運営の新開発銀行(NDB)にも加盟しました。 豊富な労働人口と政治的な安定を背景に、「アジア最後の新興国」として、今後さらなる経済発展が期待されています。

採用担当者へのアドバイス
フィリピンやベトナムは既に多くの日本企業が進出しており、優秀な人材の獲得競争が激化しています。一方、バングラデシュは、
- 人口規模がフィリピン・ベトナムの1.7倍
- 人口密度が3〜4倍高く、採用効率が良い
- まだ競争率が低く、優秀な人材を確保しやすい
- 親日感情が強く、定着率が高い
- IT人材など高度人材も豊富
今がバングラデシュ人材採用の絶好のタイミングと言えるでしょう。
今後5〜10年で、フィリピンやベトナムと同様に競争が激化する前に、採用ルートを確立することをお勧めします。
8.バングラデシュ人口1.7億人が開く新たな人材戦略

バングラデシュは1.7億人の人口、世界一の人口密度、平均年齢27歳という若さを持つ理想的な人材供給国です。
2040年代まで続く人口ボーナス期により、今後20年間は安定した労働力確保が可能です。
親日国として日本就労を強く希望する人材が豊富で、IT技術と英語力を兼ね備えています。
フィリピン・ベトナムの1.7倍の人口規模を持ちながら、まだ競争率が低い今こそ、採用ルート確立の絶好のタイミングです。