外国人採用は日本人採用と異なり複雑な手続きが必要で、手続きのミスは30万円以下の罰金や不法就労助長罪のリスクがあります。
そこで本記事では、手続き漏れを防ぎ、法的リスクを回避しながら安全に外国人材を採用するための5つのステップを詳しく解説します。
- 外国人採用の5ステップ手続き:採用前確認から継続管理までの全工程
- 法的リスクの回避方法:届出漏れや在留資格違反による罰則の防止策
- 実務で使えるチェックリスト:各段階で必要な手続きと期限の一覧
1.外国人採用手続きは全体像を把握することから

外国人採用は日本人採用と異なり、在留資格の確認から各種届出まで複雑な手続きが必要です。
手続き漏れを防ぎ、法的リスクを回避しながら安全に外国人材を採用するために全体像を把握しましょう。
外国人採用が複雑な理由
外国人採用が複雑とされる最大の理由は、在留資格に基づく法的制約と多段階にわたる手続きにあります。
日本人採用では不要な「在留資格の確認」「就労可能業務の制限チェック」「出入国在留管理庁への各種届出」など、専門知識を要する手続きが数多く存在します。
また、手続きを怠った場合のペナルティも深刻です。例えば、外国人雇用状況の届出を怠ると30万円以下の罰金、偽造在留カードでの雇用は不法就労助長罪で企業が処罰される可能性があります。
本記事の目的は、このような複雑な外国人採用手続きを5つのステップに整理し、人事担当者や経営者が迷うことなく安全に手続きを進められるよう実務的なガイドを提供することです。
5つのステップで押さえる採用手続きの流れ
外国人採用手続きは以下の5つのステップで体系的に進めることができます。

この5ステップは、外国人の現在の状況(転職・留学生・海外採用)に関わらず共通して必要な手続きを時系列で整理したものです。
各ステップを順序立てて実行することで、手続き漏れを防ぎ、効率的に外国人採用を進めることができます。
手続きにかかる期間と準備ポイント
外国人採用手続きにかかる期間は、採用する外国人の状況によって大きく異なります。
全体像が把握できたところで、次はステップごとにアクションを詳しく解説していきます。
2.外国人採用の手続きステップ1:採用前の確認【在留資格と雇用可否の見極め】

外国人採用の第一歩は、候補者の在留資格と就労可能性の正確な把握です。この段階での確認を怠ると、後の手続きで大きな問題となるため、慎重に進めなければなりません。
在留カード確認で見るべきポイント

在留カードで確認すべき最重要ポイントは2箇所です。
偽造在留カードを見抜く基本チェック
偽造在留カードでの雇用は不法就労助長罪に該当し、企業が刑事処罰を受ける可能性があります。
1. 在留カード等読取アプリの活用
出入国在留管理庁が提供する無料アプリでICチップの内容を読み取り、偽造・改ざんの有無を確認できます。
参考サイト:出入国在留管理庁 在留カード等読取アプリケーション サポートページ
2. 在留カード等失効情報照会の実施
出入国在留管理庁のWebサイトで、在留カード番号が失効していないかを確認します。
参考サイト:出入国在留管理庁 在留カード等番号失効情報照会
3. 目視による基本確認
- 写真と本人の同一性
- 券面の印字品質
- ICチップの有無と損傷状況
- ホログラムの有無と光の反射具合
参考サイト:法務省 「在留カード」の主な記載内容
在留資格ごとの就労制限の概要
在留資格によって就労可能な業務内容は大きく異なります。主要な就労系在留資格の制限を把握しておきましょう。

在留資格と業務内容の適合性に不安がある場合は、出入国在留管理庁への事前相談や、行政書士等の専門家への相談を強く推奨します。
3.外国人採用の手続きステップ2:雇用契約と書類準備【トラブル防止の基本】
内定決定後は、在留資格申請と並行して雇用契約の締結と必要書類の準備を進めます。
雇用契約書に記載すべき必須条件
外国人雇用における雇用契約書には、日本人雇用時には不要な特別な条項を記載する必要があります。
停止条件の明記
最も重要なのが停止条件の記載です。在留資格が許可されない場合に備え、以下のような条項を必ず含めましょう。
停止条件の記載例
本契約は、乙(外国人労働者)が就労可能な在留資格を取得することを停止条件とし、
在留資格認定証明書の交付または在留資格変更許可がなされた時点で効力を生ずる。
在留資格が不許可となった場合、本契約は自動的に無効となり、
双方に損害賠償責任は発生しないものとする。
在留資格関連条項
在留資格の管理と更新に関する責任分担を明確化します。
- 在留期間更新手続きの実施責任
- 企業による更新手続きサポートの範囲
- 更新不許可時の取扱い
労働条件通知書との違いと使い分け
外国人雇用では、労働条件通知書よりも雇用契約書の作成を強く推奨します。
項目 | 雇用契約書 | 労働条件通知書 |
---|---|---|
法的性質 | 双方合意の契約書 | 一方的な通知書 |
署名・押印 | 双方による署名必要 | 企業のみ |
証明力 | 合意内容の強い証明力 | 通知事実の証明のみ |
トラブル時の効力 | 契約違反として対応可能 | 限定的 |
企業側が事前に用意すべき主な書類
在留資格申請をスムーズに進めるため、企業側で事前に準備すべき書類を整理します。
基本的な企業関連書類
- 法人登記簿謄本(発行から3ヶ月以内)
- 決算書類(直近年度)
- 会社案内・事業内容説明資料
- 組織図・従業員数を示す資料 など
労働条件関連書類
- 雇用契約書または労働条件通知書
- 給与明細書のサンプル
- 就業規則
- 労働保険・社会保険の加入証明書 など
財政基盤証明書類
- 納税証明書(法人税・消費税等)
- 源泉徴収簿
- 労働保険料申告書控え
- 社会保険料納入証明書 など
特定の在留資格で必要な追加書類
技術・人文知識・国際業務の場合
- 業務に必要な技術・知識の詳細説明書
- 同職種の日本人従業員の給与水準資料
特定技能の場合
- 特定技能雇用契約書
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 登録支援機関との委託契約書(委託する場合)
企業内転勤の場合
- 転勤元事業所との関係を示す資料
- 転勤の必要性・合理性を説明する資料
これらの書類は在留資格申請時に必要となるため、内定決定と同時に準備を開始し、申請までに不備のない状態で揃えることが重要です。
書類の有効期限にも注意し、申請時点で有効な書類を提出しましょう。
4.外国人採用の手続きステップ3:在留資格申請【ケース別の実務ポイント】

在留資格申請は外国人の現在の状況によって手続きが大きく異なります。
転職・留学生・海外採用の3パターン比較
外国人採用における在留資格申請は、採用する外国人の現在の状況によって申請手続きと必要期間が大きく異なります。
採用パターン | 申請手続き | 申請期間 | 主な注意点 |
---|---|---|---|
転職者 | 就労資格証明書交付申請 | 1-3ヶ月 | 業務内容の適合性確認 |
留学生 | 在留資格変更許可申請 | 1-3ヶ月 | 学業から就労への変更 |
海外採用 | 在留資格認定証明書交付申請 | 2-4ヶ月 | 入国までの総期間管理 |
よくある書類不備と審査遅延の回避策
在留資格申請での書類不備は審査遅延の主要因です。
よくある不備パターンと対策を把握しておきましょう。

5.外国人採用の手続きステップ4:入社後の届出・加入手続き
在留資格が許可され雇用が開始した後も、法的義務として複数の届出や加入手続きが必要です。
外国人雇用状況の届出とその罰則
外国人雇用状況の届出は、外国人を雇用するすべての事業主に課せられた法的義務です。届出のタイミングと方法は雇用保険加入の有無によって異なります。
違反時の罰則
- 罰金額:30万円以下の罰金
- 適用条件:届出義務違反、虚偽届出
社会保険・雇用保険の加入義務
外国人労働者も日本人と同様に社会保険・雇用保険の加入対象となります。
出入国在留管理庁への届出
外国人の雇用に関して、出入国在留管理庁への届出義務も発生します。

中長期在留者の受入れに関する届出
中長期在留者の受入れに関する届出については、外国人雇用状況の届出を提出していれば原則として不要となります。ただし、一部の就労資格では例外的に必要なケースがあるため注意が必要です。
6.外国人採用の手続きステップ5:雇用継続管理【在留期限と法令遵守】

外国人の雇用は入社後も継続的な管理が必要です。
在留期間更新のスケジュール管理
在留期間の更新は外国人雇用において最も重要な継続手続きです。更新漏れは即座に不法滞在となるため、確実な管理が求められます。
業務変更時の在留資格の適合確認
人事異動や業務変更時は、新しい業務が現在の在留資格に適合するかの確認が必要です。
同一労働同一賃金・最低賃金の注意点
外国人労働者に対しても、日本人と同等の労働法令遵守が求められます。
7.外国人採用の手続きでよくある失敗と対策

外国人採用では、日本人採用では発生しない特有の失敗が数多く見られます。実際の失敗事例から学び、事前に対策を講じてリスクを最小化しましょう。
書類不備・手続き漏れによるリスク
よくある書類不備と影響
手続き漏れ防止のためにはチェックリストを活用しましょう。

在留資格と業務内容のミスマッチ対策
在留資格と実際の業務内容の不適合は、最も深刻な法的リスクをもたらします。
ミスマッチ防止の実務対策
ミスマッチを防ぐためには以下のことを意識しましょう。
8.外国人採用の手続きは支援サービスを活用して効率的に進めるのがおすすめ

外国人採用の複雑な手続きは、専門的な支援サービスを活用することで効率化と確実性を向上させることができます。
各種支援制度の特徴と活用方法を理解し、自社に最適なサポート体制を構築しましょう。
行政書士・登録支援機関の役割と使い方
外国人採用における専門的支援者として、行政書士と登録支援機関が重要な役割を果たします。
外国人雇用で行政書士に相談できる内容は、こちらの記事で詳しく解説しています。
登録支援機関がどのような機関なのかは、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
無料相談・支援制度の活用法
政府や公的機関が提供する無料支援制度を効果的に活用しましょう。
外国人雇用管理アドバイザー制度
- 企業訪問相談(無料)
- 雇用管理指導・助言
- 最寄りのハローワークに申込み
出入国在留管理庁の相談窓口
- 外国人在留総合インフォメーションセンター
- 地方出入国在留管理官署での事前相談
参考:出入国在留管理庁 外国人在留総合インフォメーションセンター等
9.外国人採用の手続きをするには安全で効率的な採用方法で取り組もう

外国人採用は適切な手続きを踏むことで、企業にとって大きな成長機会となります。
在留資格の確認から継続的な雇用管理まで、5つのステップと本記事のチェックリストを活用することで、法的リスクを回避しながら優秀な外国人材を安全に採用できます。
専門家との連携も活用し、グローバル人材の力で企業競争力を向上させましょう。
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