人手不足に悩む企業にとって、外国人労働者の受け入れは単なる応急処置ではなく、競争力向上の重要な戦略です。
2024年の外国人労働者数は230万人を突破し、多くの企業がその重要性を実感しています。
本記事では、外国人雇用がもたらす7つの具体的メリットを最新統計と企業事例で詳しく解説し、成功に導くポイントをご紹介します。
- 外国人労働者受け入れによる7つの企業メリットと具体的効果
- 業界別の成功事例と経済的インパクトの実際
- 外国人雇用を成功させるための実践的なポイントと始め方
1.各社、「外国人労働者のメリット」を実感している

人手不足が深刻化する日本で、外国人労働者の受け入れを検討する企業が急速に増えています。
「本当に外国人を雇うメリットはあるのか?」「リスクの方が大きいのではないか?」そんな疑問を抱く経営者や人事担当者の方も多いでしょう。
実際、2024年10月末時点で日本の外国人労働者数は230万人を突破し、過去最高を更新し続けています。
これは単なる人手不足の応急処置ではなく、企業が外国人雇用に明確なメリットを見出している証拠です。
出典元:厚生労働省 外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
2.外国人労働者受け入れの最新動向(2025年版)

2025年の外国人労働者数(統計)
既述しました厚生労働省の最新データによると、2024年10月末時点の外国人労働者数は230万2,587人に達し、前年同期比25万3,912人(12.4%)の大幅増となりました。この数字は届出義務化以降、11年連続で過去最高を更新しており、外国人雇用の需要が確実に高まっていることを示しています。
特定技能・高度人材制度の拡大トレンド
在留資格別では、「専門的・技術的分野」が20.6%増と最も高い伸び率を記録しました。特に注目すべきは、2023年に対象分野が拡大された特定技能2号の影響です。従来の建設業・造船業に加え、介護以外の11分野が新たに対象となり、長期雇用を前提とした外国人材の確保が可能になりました。

人手不足業界での実需
国別では、ベトナム(24.8%)、中国(17.8%)、フィリピン(10.7%)が上位を占める一方、インドネシア(39.5%増)、ミャンマー(61.0%増)、ネパール(28.9%増)の伸び率が顕著です。
産業別では製造業(26.0%)が最多ですが、建設業(24.1%増)、医療・福祉(22.2%増)の伸び率が高く、深刻な人手不足業界での外国人依存度が高まっています。
3.外国人労働者受け入れの7つの企業メリット

外国人労働者の受け入れは、人手不足解消だけでなく企業の総合的な競争力向上をもたらします。
ここでは、多くの企業が実感している7つの主要メリットを詳しく解説します。各メリットがどのように企業価値向上に貢献するかをご確認ください。
① 人手不足解消と人材確保
外国人労働者受け入れの最大のメリットは、根本的な人手不足解消です。有効求人倍率が1.24倍の売り手市場において、求職者の母数を大幅に拡大できることは企業にとって決定的な優位性となります。
特に地方や特定職種では、日本人のみでは採用が困難な状況が続いています。
外国人材を対象に含めることで、従来は採用できなかった優秀な人材との出会いが可能になり、安定的な人材確保を実現できます。
② 即戦力スキル人材の獲得
特定技能制度により、一定の専門性と技能を有する即戦力人材の獲得が可能になりました。
技能試験と日本語試験の合格が要件となっているため、基本的なコミュニケーション能力と実務スキルを兼ね備えた人材を確保できます。
エンジニアや技術者といった専門職では、海外の大学で高度な教育を受けた優秀な人材を採用できる機会が増加しています。
日本人では確保困難な高度人材の獲得により、技術力向上と競争力強化を同時に実現できます。
③ 多言語対応・国際感覚の向上
訪日外国人旅行者数が年間3,000万人を超える中、多言語対応能力は企業の重要な競争要素となっています。
外国人従業員の母語能力を活用することで、英語をはじめとした多言語での顧客対応が可能になり、インバウンド需要の取り込みが期待できます。
また、外国人従業員が持つ国際感覚や文化的知識は、グローバル市場での事業展開において貴重な資産となります。
現地の商習慣や消費者ニーズを理解した戦略立案により、海外展開の成功確率を大幅に向上させることができます。
④ 採用コスト最適化と助成金利用
長期間の求人募集により膨らんだ採用コストを、外国人材の採用により効率化できます。求職者の母数拡大により採用サイクルが短縮され、求人広告費や採用関連費用の削減が可能です。
さらに、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」をはじめとした各種助成金の活用により、受け入れに要する費用を軽減できます。
国だけでなく自治体独自の助成金制度も充実しており、制度を活用することで費用対効果を最大化できます。
参考:厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
⑤ グローバル展開・海外進出の促進
海外市場への進出を検討する企業にとって、現地出身の外国人従業員は強力な戦力となります。
言語の壁、法律・規制の違い、商習慣の理解といった海外進出の主要課題を、内部人材で解決できる体制を構築できます。
現地ネットワークの活用により、市場調査から販路開拓、現地パートナーとの関係構築まで、海外展開のあらゆる段階でサポートを得ることができます。
これにより、海外進出のリスクを大幅に軽減し、成功確率を向上させることが可能です。
⑥ 組織の多様化・活性化
多様な文化的背景を持つ外国人従業員の参加により、組織の創造性とイノベーション創出力が向上します。
異なる価値観や発想を持つメンバーの相互作用により、従来にない新しいアイデアや解決策が生まれやすくなります。
また、高い意欲を持って来日した外国人従業員の働く姿勢は、日本人従業員にとって良い刺激となります。組織全体のモチベーション向上と生産性改善につながる相乗効果が期待できます。
⑦ 企業ブランド・競争力の向上
外国人材の積極的な採用と活用は、ダイバーシティ経営を実践する先進企業としてのブランドイメージ向上に寄与します。国際的な視点を持つ企業として、取引先や顧客からの評価向上が期待できます。
グローバル人材の確保により、国際競争力を強化し、同業他社との差別化を図ることができます。多様性を活かした企業文化の構築により、優秀な日本人人材の採用においても競争優位性を発揮できます。
4.メリットを最大化した業界別成功事例3選

外国人労働者受け入れのメリットを最大限活用し、具体的な成果を上げている企業の実例をご紹介します。
製造業、サービス業、IT業界それぞれの取り組み方と成功要因を分析し、自社での活用ヒントを探っていきましょう。
田中産業株式会社(静岡県三島市):技能伝承と品質向上の実例
田中産業株式会社は、2008年にベトナム人技能実習生の受け入れを開始し、2010年からは高度人材の採用を進め、2019年には特定技能制度も活用しています。
現在、全従業員65名のうち約45%にあたる29名がベトナム人スタッフで、技能実習生、高度人材、特定技能の各在留資格で活躍中です。
同社では、外国人スタッフの技能向上を支援するため、技能検定や日本語能力試験の取得を奨励し、昇給や手当の対象としています。
例えば、入社12年目のベトナム人スタッフが技能検定1級を取得し、部長に昇進するなど、外国人スタッフのキャリアアップを積極的に支援しています。
このような取り組みにより、技能伝承の効率化や現場の活性化が進み、企業全体の生産性向上にも寄与しているのです。
アパホテル:多言語対応と温もりある接客で顧客満足度向上
全国に多数のホテルを展開するアパホテルでは、訪日外国人客の増加に対応するため、外国人スタッフの採用と多言語対応を強化しています。
フロントには英語や中国語などを話せるスタッフを配置し、多国籍の宿泊者との円滑なコミュニケーションを実現。客室には多言語対応タブレットや案内表示を導入し、サービスの利便性と満足度を向上させました。
結果、観光地では宿泊客の80%以上が外国人となり、口コミ評価やリピート率も大幅に改善。外国人雇用によるインバウンド対応力の強化が、売上拡大にもつながっています。
参考元:WIP Japan Corporation アパホテルに見るインバウンド成功事例
株式会社AutoMagic:インドの高度人材と連携した先端技術開発
株式会社AutoMagicは、日本とインドを結ぶオフショア開発会社で、インドの最高峰大学(IITなど)出身のエンジニアを積極的に採用しています。
AIやIoTなどの先端技術を活用したシステム開発を得意としており、インドのZoai Technologies, LLPと協力体制を築いています。
日本人プロジェクトマネージャーを日本とインドの両方に配置し、言語や文化の壁を克服しながら、柔軟な対応を実現しています。
参考元:株式会社AutoMagic
5.企業にとっての経済的メリットとは?

外国人雇用がもたらす経済的メリットも多くあります。企業の収益性向上につながる要素を整理してご紹介します。
採用コスト比較(外国人材 vs 日本人材)
外国人採用は初期コストが高いとされがちですが、中長期的には大幅なコスト削減効果があります。
日本人の採用が困難な職種では、求人広告費が月額数十万円かかるケースも珍しくありません。外国人材紹介サービスを活用した場合、初期費用は高めですが、確実性が高く、結果的に採用単価を抑制できます。
売上への波及効果
多言語対応による売上向上効果は業界を問わず報告されています。
小売業では外国語対応スタッフの配置により外国人客の利用が増加し、レストラン業界でも母語での接客により顧客満足度が向上、SNSでの口コミ拡散効果も期待できます。
助成金活用で費用対効果アップ
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」では、就労環境整備費用の2/3(上限57万円)が支給されます。
また、「キャリアアップ助成金」の正社員化コースでは、有期雇用から正社員への転換で1人当たり57万円の助成金を受給可能です。
これらの制度を活用することで、外国人受け入れに伴う初期投資を大幅に軽減し、投資回収期間を短縮できます。
参考:厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
6.外国人労働者の定着に不可欠な3つの工夫

外国人労働者のメリットを継続的に享受するには、高い定着率の実現が不可欠です。
多くの企業が直面する離職問題を防ぎ、長期的な活躍を促進するための3つの重要なポイントを、成功企業の取り組み事例とともに解説します。
受け入れ体制と教育整備
外国人従業員の定着には、包括的な受け入れ体制の構築が不可欠です。
入社前オリエンテーションでは、労働条件だけでなく、日本の労働文化や社内ルールを丁寧に説明します。また、メンター制度を導入し、経験豊富な日本人従業員が業務指導と生活サポートを一体的に提供する体制を整備しましょう。
日本語研修プログラムの充実も重要な要素です。業務に必要な専門用語や敬語表現を含む実践的な日本語教育により、コミュニケーション能力の向上を支援します。
定期的な面談を通じて習得状況を確認し、個人のレベルに応じたサポートを提供することで、着実なスキルアップを促進できます。
異文化理解と社内コミュニケーション
多様な文化的背景を持つ従業員が円滑に働けるよう、日本人従業員向けの異文化理解研修も重要です。
宗教的配慮、コミュニケーションスタイルの違い、働き方に対する価値観などを理解することで、職場での摩擦を最小限に抑えることができます。
社内コミュニケーションでは、視覚的な情報伝達手段を活用し、言語の壁を克服する工夫が効果的です。
図表やイラストを多用した業務マニュアルの作成、多言語対応の社内システム導入により、情報共有の精度を向上させることができます。
キャリアパスの提示と成長支援
外国人従業員のモチベーション維持には、明確なキャリアパスの提示が欠かせません。昇進・昇格の条件を明文化し、公正な評価制度を確立することで、長期的な成長への期待を醸成できます。
また、日本国内でのキャリア形成だけでなく、母国での活用可能性も含めたキャリア設計支援により、双方にとってメリットのある関係を構築できます。
専門スキル向上のための研修機会提供や資格取得支援も、定着率向上に直結します。企業の投資として捉え、従業員の成長を積極的に支援する姿勢を示すことで、組織への帰属意識を高めることができます。
7.リスクを避けるための最低限の準備

外国人労働者受け入れのメリットを最大化するには、事前の「土台整備」が決定的に重要です。
法令遵守は最優先事項であり、労働基準法、最低賃金法、雇用対策法などの関連法規を確実に理解し、適切な運用体制を構築しましょう。
法令遵守・就労資格確認
就労資格の確認は不法就労防止の観点から極めて重要です。以下の内容を適切に実施する必要があります。
確認項目 | 具体的な対応 |
---|---|
関連法規の理解 | ・労働基準法 ・最低賃金法 ・雇用対策法の適切な運用体制構築 |
在留カード確認 | ・真正性確認 ・在留期限管理 ・就労可能業務範囲の把握 |
更新手続き | 定期的な在留資格更新手続きの適切な実施 |
労働環境整備
労働環境整備では、安全衛生管理の充実、適切な労働時間管理、公正な賃金設定を確実に実施します。
必須対応項目
- 安全衛生管理の充実
- 適切な労働時間管理体制の構築
- 公正な賃金設定(最低賃金法遵守)
- 就業規則の多言語化対応
生活基盤整備支援
また、生活基盤の整備支援も欠かせません。
サポートが必要な手続き
- 住居確保の支援
- 銀行口座開設のサポート
- 各種行政手続きの案内
- 携帯電話契約等の生活インフラ整備
これらの準備を怠ると、せっかくのメリットが台無しになるリスクがあるため、受け入れ前の入念な準備が成功の鍵となります。
8.外国人雇用の始め方|導入フローの簡単解説
外国人雇用を検討しているものの、「何から始めればよいかわからない」という企業も多いでしょう。
ここでは、初めての外国人採用でも安心して進められる基本的な導入フローと、効率的なスタート方法を分かりやすく解説します。
在留資格の種類と概要
外国人雇用では在留資格の理解が出発点となります。就労系資格には「技術・人文知識・国際業務」「技能」「特定技能」などがあり、それぞれ従事可能な業務範囲が定められています。
自社の業務内容に適した在留資格を事前に確認し、採用戦略を立案しましょう。
就労ビザの種類や申請の流れに関しては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
就労ビザの所得方法に関しては、こちらの記事がおすすめです。
登録支援機関/紹介会社の使い方
初回の外国人採用では、専門機関の活用が効率的です。登録支援機関は特定技能外国人の支援を専門とし、受け入れから定着まで包括的なサポートを提供します。
人材紹介会社では、企業のニーズに適した人材の紹介から在留資格申請支援まで、ワンストップサービスを利用できます。
登録支援機関のサービスについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をおすすめします。
スモールスタートの進め方
大規模な受け入れではなく、まずは1-2名からの小規模導入をお勧めします。
社内体制の整備、運用ノウハウの蓄積、課題の把握と改善を段階的に進めることで、リスクを最小限に抑えながら外国人雇用の効果を検証できます。
成功事例を積み重ねることで、組織全体の理解と協力を得やすくなり、本格的な展開への基盤を築くことができるでしょう。
9.外国人雇用は企業成長のチャンスに

外国人労働者の受け入れは、人手不足解消を超えた企業成長の戦略的投資です。
適切な受け入れ体制と異文化理解の促進により、人材確保・技術力向上・グローバル化対応を同時に実現できます。
早期の取り組みが優秀な人材確保の鍵となるため、まずはスモールスタートで自社最適な外国人雇用モデルの構築を始めることをお勧めします。
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