自動車運送業界の深刻な人手不足に対応するため、2024年3月に特定技能制度に「自動車運送業」分野が新設されました。
今後5年間で最大2万4,500人の外国人ドライバー受入れが可能となり、トラック・タクシー・バス運送業で即戦力人材の確保が期待されています。
本記事では、企業が知るべき受入要件から採用手続きまでを5つのステップで詳しく解説します。
- 特定技能ドライバー制度の基本概要と企業の受入要件(認証制度・協議会加入等)
- 外国人に求められる要件(試験・免許・日本語能力)と採用フローの具体的手順
- 運転免許取得支援の方法と費用負担、採用時の注意点とリスク回避策
1.特定技能ドライバー制度の基本概要|2024年新設分野の全貌

特定技能自動車運送業とは
特定技能自動車運送業は、2024年3月29日の閣議決定により、少子高齢化により深刻化する労働力不足を解消するため、一定の技能と専門性を持った外国人材を即戦力として雇用する制度として新設されました。
この制度創設の背景には、自動車運送業界の構造的な人手不足があります。
業務の特性上労働時間が長く、さらにドライバーの高齢化が進む中、働き方改革関連法に基づく時間外労働の制限が追い打ちをかけ、人材確保が企業経営の大きな課題となっていました。
出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(平成30年法律第102号)により、中・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため
生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材に関し
就労を目的とした、在留資格「特定技能」が創設され、自動車運送業分野においては、
参照元:国土交通省「自動車運送業分野における特定技能外国人の受入れについて」
特定技能1号について受入れが可能な分野として定められています。
今後5年間で最大2万4,500人の外国人材受入れが予定されており、業界の人手不足28万8,000人のうち約8.5%を外国人材でカバーする計画です。
在留期間は特定技能1号の最大5年間で、現在のところ特定技能2号は対象外となっています。
雇用形態は直接雇用のフルタイムに限られており、派遣は認められていません。これは運転業務の特性上、適切な運行管理と安全確保が重要であることから設けられた制限です。
各業種で可能な業務内容と特徴
特定技能自動車運送業分野では、3つの業種で外国人ドライバーの受入れが可能です。
トラック運送業
運行管理者の指導・監督の下で、貨物自動車運送事業における運行前後の点検、安全な運行、乗務記録の作成、荷崩れを防止する貨物の積付け等の運行業務・荷役業務に従事できます。
主な業務は運行業務と荷役業務で、日本人ドライバーが通常業務として行う内容であれば、外国人ドライバーも従事することが可能です。
タクシー運送業
運行管理者の指導・監督の下で、一般乗用旅客自動車運送事業における運行前後の点検、安全な運行、乗務記録の作成、乗客対応等の運行業務・接遇業務に従事できます。訪日外国人観光客の増加に伴い、多言語対応可能な外国人ドライバーへの期待も高まっています。
バス運送業
運行管理者の指導・監督の下で、一般乗合旅客自動車運送事業(路線バス)、一般貸切旅客自動車運送事業(観光バス)、特定旅客自動車運送事業における運行前後の点検、安全な運行、乗務記録の作成、乗客対応等の業務が対象となります。
付随業務については、その会社に雇用されている日本人ドライバーが通常業務として行う内容であれば、外国人ドライバーも行うことができます。
従来の外国人雇用との違い
特定技能ドライバー制度は、従来の外国人雇用制度と比較して明確な特徴があります。
技能実習生との相違点として、特定技能外国人は即戦力性が前提となっています。技能実習生が研修を通じて技能を習得するのに対し、特定技能外国人は試験合格により一定の技能水準を証明済みです。
また、雇用期間は両制度とも最大5年ですが、特定技能では同一分野内での転職が可能である点が大きく異なります。
身分系在留資格(永住者・定住者・日本人の配偶者等)との比較では、身分系在留資格保有者は就労に制限がなく在留期間の制限もありませんが、特定技能は業務内容や雇用形態に制限があります。
ただし、特定技能制度では一定の技能水準と日本語能力が保証されているため、より計画的な人材活用が可能です。
直接雇用・フルタイム限定という制限は、運転業務の安全性確保と適切な労務管理を目的としており、派遣での受入れは認められていません。
これにより、受入れ企業は外国人ドライバーとの直接的な雇用関係を築き、責任を持った指導・管理を行うことが求められています。

2.【ステップ1】企業が満たすべき受け入れ要件|6つの必須条件
事業要件の確認
特定技能外国人を受け入れるためには、まず企業が適切な事業者であることを証明する必要があります。
道路運送法第2条第2項に規定する「自動車運送事業を経営する事業者」であることが前提条件となります。
具体的には
①一般貨物自動車運送事業②一般乗用旅客自動車運送事業③一般乗合旅客自動車運送事業④一般貸切旅客自動車運送事業⑤特定旅客自動車運送事業のいずれかの許可を取得している必要があります。
日本標準産業分類では「43道路旅客運送業」または「44道路貨物運送業」のいずれかに該当することが求められます。
これは「他人から依頼を受けて、運賃や手数料をもらい、貨物や旅客の輸送をする事業」を指し、自社の荷物のみを運ぶ自家用トラックは対象外となります。
運送業許可(一般貨物・旅客・貸切等)の取得状況も重要な確認事項です。運送業許可は取得に時間がかかるため、未取得の場合は特定技能外国人の受入れ前に必ず取得を完了させる必要があります。
運送業許可とは一般貨物自動車運送業を行うために必要な許可で、簡単に言えば「他人から依頼を受けて事業用トラックを使い、運賃をもらって貨物を運ぶための許可」のことです。
したがって、原則として自社以外の人から運賃をもらい貨物を運ぶ場合は、運送業許可を得ないと事業を行うことはできません。
引用元:行政書士法人シフトアップ「運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)とは?」
認証制度の取得が必須
受入れ企業は、運行管理と労務管理が適切であることを証明する認証制度の取得が義務付けられています。
働きやすい職場認証制度は、一般財団法人日本海事協会が実施する認証制度です。
職場環境改善に向けたトラック、バス、タクシー事業者の取り組みを「見える化」することで、求職者の運転者への就職を促進し、各事業者の人材確保の取組みを後押しすることを目的としています。
6分野の取組要件として、①法令遵守等②労働時間・休日③心身の健康④安心・安定⑤多様な人材の確保・育成⑥自主性・先進性等について、基本的な取組要件を満たすことで認証を取得できます。
認証レベルは一つ星から三つ星まであり、特定技能外国人の受入れには一つ星以上の取得が必要です。

申請スケジュールは年2回設定されており、2024年度の実績では4月16日~5月31日と7月1日~9月15日でした。
運送事業許可取得後3年以上経過していることが申請要件となり、有効期限があるため定期的な更新が必要です。
また安全性優良事業所(Gマーク)は、「安全性優良事業所」認定のシンボルマークとなっており、トラック事業者のみが選択可能な認証制度があります。


運送事業許可取得後3年以上経過に加え、「配置する事業用自動車の数が5台以上等」の要件もあります。Gマークは事業所単位での取得ですが、同一法人内であれば他事業所での保有も認められます。申請は年1回(7月)のみで、申請のタイミングを逃さないよう注意が必要です。
協議会への加入手続き
2025年1月17日から「自動車運送業分野特定技能協議会」の加入受付が開始されました。
自動車運送業分野特定技能協議会の役割と目的は、制度の適正な運用を図ることであり、構成員は国土交通省が行う調査や指導に協力する義務を負います。受入れ企業は在留資格申請前までに必ず加入する必要があります。
加入届出書の提出は
●事業者(特定技能所属機関)→第1号様式
●登録支援機関→第2号様式
をオンラインで提出します。加入をご希望の際は規約及び運営規程をご確認の上専用フォームより申請してください。
協議会に対する協力義務として、構成員は協議会に対し必要な協力を行うこと、国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うことが求められます。
登録支援機関に支援業務を委託する場合は、登録支援機関も別途協議会への加入が必要となります。
研修体制の整備
特定技能外国人に対する適切な研修体制の整備も受入要件の一つとなっています。
クシー・バス運送業 | 新任運転者研修の実施が義務付けられている |
トラック運送業 | 初任運転者研修の実施が義務付けられている |
新任運転者研修は旅客の安全確保と接遇サービスの向上を目的とした研修で、外国人ドライバーが日本の交通ルールや接客マナーを習得するために不可欠です。
また初任運転者研修においては、貨物の安全な輸送と荷役作業の研修カリキュラムと実施期間は各業界団体が定める標準的な内容に準拠し、外国人ドライバーが安全に業務を遂行できるよう体系的に構成されています。
研修修了の確認方法として、修了証明書の発行により研修完了を確認し、継続的なサポート体制を確保することが重要です。
3.【ステップ2】外国人に求められる要件|試験・免許・日本語能力

特定技能1号評価試験の詳細
外国人が特定技能ドライバーとして働くためには、「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」への合格が必須です。
実施機関は一般財団法人日本海事協会で、2024年12月4日から申請受付を開始し、12月16日から出張方式での試験が先行スタートしました。試験方式は以下の2つから選択できます。
試験方式
- 出張方式:申請人(法人)が希望する会場でペーパーテストを実施
- CBT方式:テストセンターにてコンピュータを使用して実施
試験内容は学科試験及び実技試験で構成され、業種別に異なります。
試験内容(業種別)
- トラック:運行業務・荷役業務等に関する内容
- タクシー:運行業務・接遇業務等に関する内容
(第二種運転免許の学科試験に準拠した内容については現地語を併記) - バス:運行業務・乗客対応等に関する内容
受験料は国内の場合5,000円(税抜)、海外の場合37米ドルです。合格証明書発行手数料は14,000円(税抜)となります。
出張試験の実施の場合、受験料に加え、申請者負担の出張費用(試験監督者1名分の旅費及び宿泊費)が発生します。
日本語能力の要求水準
業種によって求められる日本語能力レベルが異なることが、特定技能自動車運送業の特徴です。
業種 | 求められる日本語レベル |
---|---|
トラック運送業 | 日本語能力試験(JLPT)N4または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のいずれかに合格する必要がある |
タクシー・バス運送業 | 日本語能力試験(JLPT)N3(より高いコミュニケーション能力)が必要 |
N4認定の目安は「基本的な日本語を理解することができる」こととされています。
N3は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルで、乗客とのコミュニケーションを考慮してより高い日本語能力が求められています。業種によって必要なレベルが違うので、注意しましょう。
JFT-Basicは、250満点中200点以上(トラックのみ利用可能)であれば、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力」があると判定され、合格となります。
技能実習2号良好修了者の日本語試験免除(トラック分野のみ)の特例措置もあり、他の分野で技能実習2号を良好に修了した方も対象となります。
運転免許の取得要件
業務に応じて適切な運転免許の取得が必要です。
業種 | 必要な免許 |
---|---|
トラック運送業 | 第一種運転免許(普通・準中型・中型・大型) |
タクシー・バス運送業 | 第二種運転免許(普通二種・大型二種) |
トラック運送業では、各都道府県公安委員会が行う第一種運転免許試験を受験し、従事する業務にあわせて第一種普通または準中型、中型、大型特殊免許の試験を受験して取得します。
大型免許を取得したい場合は、21歳以上、運転経験が3年以上の状態で、大型一種免許試験に合格すれば取得できます。
タクシー・バス運送業では、各都道府県公安委員会が行う第二種運転免許試験を受験し、第二種運転免許の取得します。
タクシーの場合は教習所などに通い、第一種免許を取得してから通算3年以上が経過し、第二種運転免許の試験に合格すれば取得できます。
バスの場合は21歳以上で運転経験が3年以上の状態で、大型二種運許試験を受けて合格すれば取得できます。
受験資格特例教習による年齢・経験要件の緩和制度により、従来の年齢・経験要件を緩和できます。
大型・中型の第一種運転免許では、受験資格要件が「19歳以上・普通免許等保有1年以上」に引き下げられ、第二種運転免許でも同様に「19歳以上・普通免許等保有1年以上」に引き下げることができます。
2024年6月からは20言語対応の学科試験が開始され、タクシー・バスの運転手に必要な第二種運転免許の学科試験や、外国免許を切り替える際に行う知識確認問題にも対応しています。
4.【ステップ3】運転免許取得支援の実務|費用負担と取得方法

日本国内での免許取得パターン
日本国内で運転免許を取得する場合、主に2つの方法があります。
自動車教習所通学
通学教習25~35万円程度、期間2~3ヶ月が一般的です。学科教習と技能教習を並行して受講し、働きながらの受講も可能ですが、時間の調整が必要になります。追加で補習を受ける場合や、学科試験や卒業検定を再受験する場合には、追加費用がかかります。
合宿免許
20~30万円程度、期間2~3週間で取得が可能です。短期集中で効率的な取得が可能で、宿泊費・食費込みでコストパフォーマンスが良いのが特徴です。
費用負担の考え方について、出入国在留管理庁の運用要領では「運転免許の取得費用については、所属機関が負担することが望ましい」とされています。
ただし、外国人負担も可能(事前説明必須)であり、その場合は採用時等に受入れ外国人が十分に理解できる言語による説明を行うなど、丁寧な説明を心掛け、事前に受入れ外国人の了承を得る必要があります。
また、受入れ外国人の運転免許の取得費用は受け入れ機関が取得費用を賃金に含めて補填することも認められています。
外国免許切替による取得
海外の自動車運転免許を取得している場合、外免切替手続きにより日本の運転免許を取得できます。
外免切替の条件とは?
①有効な外国の運転免許証を所持していること
②外国免許証取得後、取得国での滞在が通算して3か月以上あることが必要
免除対象29カ国では、知識確認・技能確認が免除される特例があります。
これらの国で取得した免許は、日本の基本的交通ルールなどの知識確認や場内のコースの走行などの技能確認が免除されます。
知識確認、技能確認を免除する国等(29か国等)
アイスランド、アイルランド、アメリカ合衆国(オハイオ州、オレゴン州、コロラド州、バージニア州、ハワイ州、メリーランド州及びワシントン州に限る)、イギリス、イタリア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、ギリシャ、スイス、スウェ-デン、スペイン、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェ-、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、モナコ、ルクセンブルク、台湾
技能確認を免除する国等
アメリカ合衆国(インディアナ州に限る。)
警察庁「外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えるには」
逆に非免除国の手続きでは、知識確認・技能確認の実施(ベトナム・インドネシア・フィリピン・ミャンマー等)が必要です。外免切替の際は、原則、知識確認と技能確認が行われます。

東京都の場合、日本語以外の24言語による学科試験受験が可能になり、知識確認の試験は複数の言語などで受験可能です。
ただし、対応言語については、お住まいの地域を管轄する各都道府県警察の運転免許センターによって違うため、確認が必要です。
外免切替の手続きは予約制となっており、免許証を発行した国や取得状況等により必要書類が異なるため、必ず予約時に確認しましょう。
特定活動ビザによる準備期間
海外在住者や日本の運転免許を持たない外国人のために、特定活動ビザでの準備期間が設けられています。
在留期間は、バス・タクシードライバーは最長1年間、トラックドライバーは最長6カ月間です。
活動内容
1.外免切替等による運転免許の取得に係る諸手続(自動車教習所への通所を含む)
2.新任運転者研修の受講(タクシー運送業及びバス運送業の場合)
3.車両の清掃等の関連業務
雇用契約
特定技能1号の予定機関との契約必須となっています。特定自動車運送業準備外国人は、1号特定技能外国人としての活動を行う予定である機関との雇用契約に基づき、上記の活動を行うことができます。
免許取得後の速やかな特定技能1号への変更申請が重要です。特定活動の在留期間を延長することはできませんので、特定活動期間中に日本の自動車運転免許取得や新任運転者研修の受講を終える必要があります。
本特定活動の在留期間が残っている場合でも、運転免許の取得及び新任運転者研修を修了した場合は、速やかに「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行っていただく必要があります。
なお、本特定活動で在留した期間については、特定技能1号の通算在留期間に含まれません。
5.【ステップ4】採用フローと手続き|3つのパターン別対応

国内人材(運転免許あり)の採用フロー
既に日本の運転免許を保有している国内在住の外国人を採用する場合のフローです。

- 採用検討→人材紹介・登録支援機関相談→求人・選考→内定
- 協議会加入→在留資格申請→入社(約3~4ヶ月)
既存の身分系在留資格からの変更パターンでは、永住者・定住者・日本人の配偶者等からの変更や、他分野の特定技能からの転職などが該当し、このパターンは最も短期間での採用が可能です。
国内人材(運転免許なし)の採用フロー
日本在住だが運転免許を持たない外国人を採用する場合のフローです。

- 1.特定技能1号評価試験・日本語試験合格
- 2.特定活動ビザ申請→運転免許取得→新任運転者研修
- 3.特定技能1号への変更申請→入社(約6~12ヶ月)
免許取得期間が最大のボトルネックとなるため、計画的なスケジューリングが重要です。
海外在住者の受け入れプロセス
海外に在住している外国人を新規採用する場合のフローです。

- 海外での試験受験→在留資格認定証明書交付申請
- 査証手続き→入国→特定活動期間での準備
- 特定技能1号変更→本格就労開始(約6~12ヶ月)
海外からの受入れの場合、現地での面接体制や入国後の住居確保等、追加的な準備が必要になります。
雇用契約と必要書類
いずれのパターンでも、適切な雇用契約の締結と必要書類の準備が不可欠です。
特定技能雇用契約書(日本語・母国語併記)では、出入国在留管理庁指定の様式を使用し、労働条件の明確な記載(給与・労働時間・休日等)、特定技能外国人への支援計画の記載が必要です。
雇用条件書の作成(出入国在留管理庁様式活用)では、雇用契約書・雇用条件書には日本語と母国語を併記し、雇用契約書の形式は出入国在留管理庁の特定技能関係の申請・届出様式一覧に掲載してあるため、この様式を活用しましょう。
在留資格申請書類の準備と提出として、主な必要書類は以下の通りです
在留資格申請に必要な書類
- 在留資格認定証明書交付申請書または在留資格変更許可申請書
- 雇用契約書・雇用条件書
- 企業の登記簿謄本・決算書類
- 協議会構成員資格証明書
- 働きやすい職場認証またはGマーク認証書
- 外国人の各種証明書(試験合格証明書・運転免許証等)
書類作成の複雑さから、行政書士や登録支援機関への委託を検討する企業も多く、初回申請では専門家のサポートを受けることが成功の鍵となります。
6.【ステップ5】特定技能外国人への支援義務|10項目の法定支援

義務的支援の具体的内容
受入れ企業は、特定技能外国人に対して、職業生活上、日常生活上または社会生活上の支援を実施する義務があります。特定技能外国人に対して行う支援は、以下の10項目です。
◆受け入れ企業が特定技能外国人に実施する支援項目◆
- 事前ガイダンス
労働条件・活動内容・入国手続き等の説明を、入国前または在留資格変更前に実施 - 出入国送迎
空港・港での送迎支援、入国時の空港・港での送迎、帰国時の空港・港への送迎または交通手段の情報提供 - 住宅確保・生活契約支援
住居確保・ライフライン契約同行、住宅確保のサポート、生活に必要な契約支援 - 生活オリエンテーション
日本の生活ルール・公共サービス説明の実施 - 公的手続き同行
市役所・税務署・年金事務所等、公的手続きなどへの同行 - 日本語学習支援
学習機会の提供・情報提供、日本語学習機会の提供を支援 - 相談・苦情対応
24時間対応可能な体制整備 - 日本人との交流促進
地域行事参加・社内交流会開催 - 転職支援
受入機関都合の雇用契約解除時(受入れ側の都合で雇用契約を解除した場合) - 定期面談・行政機関通報
3ヶ月に1回以上・問題発生時の通報
これらの支援は、外国人が理解できる言語(通常は母国語)で支援を行う必要がありますので、外国人の言語に対応できるスタッフや通訳者を配置するなど、受入れ企業の支援体制の整備が重要となります。
登録支援機関の活用方法
特定技能外国人に対する支援は、外国人支援を専門に行う「登録支援機関」に委託することも可能です。
委託のメリット
専門性・多言語対応・コスト削減が主な理由としてあげられますが、一番は、外国人支援の専門知識・経験を活用でき、様々な言語に対応可能なスタッフの配置、自社での支援体制構築より効率的な運営、24時間対応や緊急時対応体制の確保、適切な支援実施による法的リスクの軽減が可能となることです。
委託範囲については、全支援業務または一部業務の選択可能です。例えば、住宅確保や日常的な相談対応は委託し、職場での指導は自社で実施するといった柔軟な対応が可能です。
選定基準として、実績・対応言語・費用・サポート体制を考慮する必要があります。
特定技能外国人の支援実績、採用予定の外国人の言語への対応、月額固定費・従量課金等の料金体系、緊急時対応・定期面談の実施方法、事業所との距離・アクセスの良さを総合的に判断しましょう。

登録支援機関も協議会加入が必須となるため、委託契約締結前に、協議会加入の有無を必ず確認することが重要です。
外国人の受け入れ実績がない場合や、社内で十分な支援体制が整備できない場合には、登録支援機関に委託することも検討しましょう。
登録支援機関についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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7.採用時の注意点とリスク回避|成功のための重要ポイント

費用と期間の現実的な計画
特定技能ドライバーの採用には、従来の採用活動とは異なる時間とコストがかかることを認識し、現実的な計画を立てることが重要です。
総期間としては、採用検討から就労開始まで6ヶ月以上(免許なしの場合12ヶ月以上)を見込む必要があります。
採用検討の開始から「特定技能1号」の在留資格を取得するまでは、通常6カ月以上かかりますので、人材紹介会社や登録支援機関の選定・相談は早めに行っておくと良いでしょう。
運転免許取得費用については、自動車運転免許を取得するためにかかる経費は、地域や教習所、免許の種類などによって異なりますが、一般的に通学教習の場合は25万円〜35万円程度、合宿免許の場合は20万円〜30万円程度かかります。
その他費用として、試験受験料・在留資格申請費用・登録支援機関委託費等を計上する必要があります。
人材紹介会社選定では、早期相談・実績確認・サポート体制の評価が重要です。自動車運送業分野での実績確認、協議会加入済みの登録支援機関との提携、アフターフォロー体制の充実度、費用体系の透明性を総合的に判断しましょう。
外国人ドライバーの教育・研修
外国人ドライバーが日本の道路環境に適応し、安全に業務を遂行するための教育・研修体制の整備が不可欠です。


段階的な業務割り当てとしては、近距離→中距離→長距離の段階的導入を行いましょう。最初から大きな業務をさせるのではなく、中長距離ではなく近い場所から走らせる、簡単な業務から行うなどのステップアップを計画してあげるとよいでしょう。
慣れ親しんだルートでの業務開始から、徐々に距離と時間を延長し、十分な経験を積んでから長距離・複雑ルートを担当させる段階的なアプローチを推奨します。
また継続的な安全運転指導として、定期的な研修・リスクマネジメント教育が重要です。
はじめは理解が不十分な場合もありますので、受入れ企業としては、入社後も継続的に安全運転に関する研修や指導を行い、運転技術の向上やリスクマネジメントの意識を高める取り組みが不可欠です。
労働関連法令の遵守
外国人労働者に対しても日本の労働関連法令が適用されるため、適切な労務管理が求められます。
労働基準法の適用により、外国人労働者も日本人と同等の処遇を受ける権利があります。
✔最低賃金の保障
✔適切な労働時間管理(2024年問題への対応)
✔年次有給休暇の付与
✔労働安全衛生法の遵守
これらをしっかり守っていく必要があります。
令和4年度に関しては技能実習制度での法令違反事例として、73.3%の事業所で違反(厚生労働省調査)が確認されています。
厚生労働省「令和4年の監督指導・送検の概要」
- 労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導を実施した9,829事業場(実習実施者)のうち7,247事業場(73.7%)。
- 主な違反事項は、(1)使用する機械等の安全基準(23.7%)、(2)割増賃金の支払(16.9%)、(3)健康診断結果についての医師等からの意見聴取(16.1%)の順に多かった。
労働関連法令は、外国人労働者にも適用されます。厚生労働省の調査によると主な違反内容は、最低賃金を下回る賃金支払い、違法な時間外労働、労働条件の相違、安全衛生措置の不備などです。
賃金や労働時間に関しては、労働同一賃金の徹底が必要です。企業は、外国人労働者も日本人と同様に、労働基準法に基づいて雇用しましょう。
長期雇用に向けた取り組み
特定技能1号の在留期間は最大5年間ですが、長期的な人材確保のためには以下の取り組みが重要です。
キャリアパスの明示として、昇進・昇格の可能性を示す必要があります。昇進・昇格の可能性と条件の明確化、技能向上に応じた処遇改善、日本語能力向上支援とその評価、将来的な管理職登用の可能性を示すことが重要です。
職場環境の改善として、多文化理解研修などを取り入れた多様性を受容する環境づくりと、コミュニケーション促進を図りましょう。特に宗教・文化的配慮(祈祷室設置・食事への配慮等)はかなり重要です。
また長期で働いてもらいやすいように地域社会との連携は大切です。積極的に生活支援・文化交流の推進を行いましょう。
地域の国際交流イベントへの参加支援、子どもの教育支援(日本語教室・学習塾の紹介)、医療機関との連携体制構築、文化交流の推進により、外国人ドライバーの定着率向上と企業の競争力強化を同時に実現できます。
8.特定技能ドライバー制度を活用した人手不足解消に向けて

特定技能ドライバー制度は、自動車運送業界の人手不足解消と企業の競争力強化を同時に実現する重要な制度です。
成功のポイントは早期準備、適切なパートナー選択、継続的なサポート体制の3点です。
2025年の本格運用を機に、登録支援機関を活用した戦略的な取り組みにより、優秀な外国人ドライバーを確保し、持続可能な事業成長を実現しましょう。
外国人ドライバー雇用の基礎から実践的なノウハウまでを詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。