飲食店の深刻な人手不足を解決する手段として、外国人雇用が注目されています。しかし「どのビザを選べばいいの?」「不法就労が心配」という声も多く聞かれます。
この記事では、飲食店で使える就労ビザ7種類を徹底比較し、正社員・アルバイト別の選び方から申請手順、注意点まで完全解説。
初めて外国人雇用を検討する経営者・人事担当者の方でも、この記事を読めば自信を持って採用活動を進められます。
- 飲食店で使える就労ビザ7種類の違いと最適な選び方
- 正社員・アルバイト別の雇用ルールと申請手順
- 不法就労を避けるための3つの鉄則と在留カード確認方法
1.飲食店で外国人を雇用する前に押さえるべき基礎知識

外国人雇用の基本となる3つの重要ポイントを解説します。
在留資格(ビザ)とは何か|就労ビザとの違い
在留資格とは、外国人が日本に滞在し、活動するために必要な法的な許可のことです。一般的には「ビザ」と呼ばれることが多いですが、厳密には少し異なります。
ビザと在留資格の違い
| 項目 | ビザ(査証) | 在留資格 |
|---|---|---|
| 発給場所 | 海外の日本大使館 | 日本国内(入国後) |
| 目的 | 入国の推薦状 | 日本での活動許可 |
| 形式 | パスポートに貼付 | 在留カードとして交付 |
実務上は「ビザ」という言葉が広く使われるため、この記事でも「就労ビザ」と表現します。
在留資格の3つの分類
在留資格は大きく3つに分けられます。
週28時間以内で就労可能。
在留カードの見方と確認すべき4つのポイント
在留カードは、90日以上滞在する外国人に交付される身分証です。雇用時の確認が必須です。
【必ず確認すべき4つのポイント】
| 確認項目 | 確認場所 | 重要度 |
|---|---|---|
| ①在留資格の種類 | 表面中央 | ★★★ |
| ②在留期限 | 表面下部 | ★★★ |
| ③就労制限の有無 | 表面右側 | ★★★ |
| ④資格外活動許可 | 裏面(スタンプ) | ★★★ |
在留カードの見方
【表面】

【裏面】

注意:偽造カードのリスク
近年、在留カードの偽造が増加しています。
出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」で必ず番号を確認しましょう。
なぜ飲食店での外国人雇用は「難しい」と言われるのか
「飲食店では外国人の正社員雇用が難しい」
これはかつて事実でしたが、現在は状況が大きく変わっています。
難しいと言われた理由:単純労働の問題
最も一般的な就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」では、ホールでの接客やキッチンでの調理補助などの現場作業は「単純労働」とみなされ、就労が認められませんでした。
| 業務内容 | 技術・人文知識・国際業務ビザ |
|---|---|
| ホール接客 | ❌ 認められない |
| 調理・調理補助 | ❌ 認められない |
| 清掃 | ❌ 認められない |
| 店舗管理 | ✅ 認められる(条件あり) |
| マーケティング | ✅ 認められる |
2019年の転機:特定技能制度の創設
2019年4月に「特定技能」という新しい在留資格が創設され、外食業も対象分野に含まれました。
これにより、現場作業が正式に認められるようになりました。
| 時期 | 状況 |
|---|---|
| 2019年以前 | 現場作業は原則不可 |
| 2019年4月 | 特定技能制度創設、現場作業が可能に |
| 2020年 | 特定活動46号も追加 |
| 2024年 | 特定技能2号に外食業が追加 |
| 現在 | 適切なビザを選べば合法的に雇用可能 |
つまり、現在は適切な在留資格を選べば、飲食店でも合法的に外国人を正社員雇用できるのです。
2.【一覧表で比較】飲食店で使える就労ビザ7種類の全体像

飲食店で使える就労ビザを一覧表でわかりやすく比較します。
正社員雇用で使える就労ビザ5種類
飲食店で外国人を正社員として雇用する場合、以下の5種類の在留資格が使えます。
| No | 在留資格 | 従事可能業務 | 取得難易度 | 在留期間 | 該当人数 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | 特定技能(外食業) | 調理・接客・店舗管理など現場業務全般 | ★★☆ | 1号:通算5年2号:更新可 | 多い |
| ② | 技術・人文知識・国際業務 | 本社業務・店舗管理(現場作業不可) | ★★★ | 1/3/5年 | 中 |
| ③ | 特定活動46号 | 現場作業含む幅広い業務 | ★★★ | 6ヶ月/1年 | 少ない |
| ④ | 技能 | 外国料理の調理のみ | ★★★ | 1/3/5年 | 非常に少ない |
| ⑤ | 身分系 | 制限なし(日本人と同様) | ─ | 永住者:無期限 その他:1〜3年 | 中 |
【各ビザの主な要件】
| 在留資格 | 主な要件 |
|---|---|
| 特定技能 | 技能試験+日本語試験N4以上 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 大卒・専門卒または10年以上の実務経験 |
| 特定活動46号 | 日本の4年制大学卒+N1レベルの日本語能力 |
| 技能 | 母国で10年以上の調理実務経験 |
| 身分系 | 該当する身分であること |
アルバイト雇用で使える就労ビザ2種類
短時間勤務のアルバイトとして外国人を雇用する場合、以下の2種類の在留資格が主に使われます。
3.【正社員雇用】各就労ビザの詳細と選び方

正社員雇用で使える5種類のビザを詳しく解説します。
①特定技能(外食業)|飲食店の現場で働ける最もポピュラーなビザ
特定技能とは
2019年4月に創設された比較的新しい在留資格。外食業の人手不足解消のために作られました。飲食店で外国人を正社員雇用する際の第一選択肢です。
【特定技能1号と2号の違い】
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 通算5年まで | 更新可能(制限なし) |
| 家族帯同 | 不可 | 可能 |
| 取得条件 | 技能試験+日本語試験 | 1号修了+管理経験+試験 |
| 対象開始時期 | 2019年4月〜 | 2024年から外食業も対象 |
【従事できる業務】
従事できる業務
(ホールスタッフ)
つまり、飲食店の現場業務のほぼすべてを任せることができます。
【取得要件】
| 要件 | 詳細 |
|---|---|
| ①技能試験 | 外食業技能測定試験に合格 (接客・調理・衛生管理の3科目) |
| ②日本語試験 | 日本語能力試験N4以上 またはJFT-Basic |
| 試験免除 | 技能実習2号を良好に修了した場合は両試験免除 |
企業側の支援義務
特定技能外国人を雇用する企業には支援義務があります。


登録支援機関への委託可能
人材紹介会社などの登録支援機関に支援を委託できます。
【メリット・デメリット】
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ✅ 現場作業が可能 | ⚠️ 支援義務がある |
| ✅ 該当者が多く採用しやすい | ⚠️ 試験合格が必要 |
| ✅ 即戦力として活躍 | ⚠️ 1号は通算5年まで |
| ✅ 2号なら長期雇用可能 |
②技術・人文知識・国際業務|本社・管理業務なら可能
技術・人文知識・国際業務(技人国)とは
最も一般的な就労ビザですが、飲食店での雇用には制約があります。大学や専門学校で学んだ専門知識を活かす業務に従事することが前提です。
【認められる業務と認められない業務】
| 業務内容 | 可否 |
|---|---|
| 本社スタッフ(マーケティング・企画) | ✅ |
| 店舗管理業務(エリアマネージャー) | ✅ |
| メニュー開発・商品企画 | ✅ |
| 翻訳・通訳業務 | ✅ |
| ホールでの接客 | ❌ |
| キッチンでの調理・調理補助 | ❌ |
| 清掃 | ❌ |
| 単純な在庫管理 | ❌ |
以下のいずれかを満たす必要があります。
取得要件
①大学卒業(専攻分野と業務内容の関連性が必要)
②専門学校卒業(専攻分野と業務内容の関連性が必要)
③10年以上の実務経験があること
許可を得るための条件
技術・人文知識・国際業務ビザで飲食店の管理業務に従事する場合、以下の4つの条件を満たす必要があります。
管理業務に関する認定基準
企業規模
一定規模以上であること(複数店舗を運営している企業が望ましい。小規模な個人店では困難)
業務の専門性
管理業務が明確に定義されており、大学や専門学校で学んだ専門知識が必要な業務であること
専用デスク
独立した作業スペースがあり、管理業務に専念できる環境が整っていること(客席での作業は不可)
現場作業との分離
管理業務が業務の中心であること(「店長」名目でも実際は現場作業中心では不許可)
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ✅ 管理職・専門職を雇用できる | ⚠️ 現場作業は一切不可 |
| ✅ 在留期間が長い | ⚠️ 申請が複雑 |
| ✅ 転職も可能 | ⚠️ 小規模店では許可困難 |
③特定活動46号|日本の大卒で高い日本語力があれば現場作業も可能
特定活動46号とは
2020年に運用開始。日本の大学を卒業し、高い日本語能力を持つ外国人向けの在留資格です。
取得要件(非常に厳しい)
①日本の4年制大学卒業(短大・専門学校・外国の大学は対象外)
②日本語能力試験N1 または BJT480点以上(最高レベルの日本語能力)
【従事できる業務】
| 業務内容 | 可否 |
|---|---|
| 接客業務(ホールスタッフ) | ✅ |
| 調理業務 | ✅ |
| 店舗管理・運営補助 | ✅ |
| 通訳を兼ねた接客 | ✅ |
| 皿洗いや清掃のみ | ❌ |
日本語能力を活かした業務を含む必要があります。
特定技能との違い
特定技能とはどのように違うのでしょうか。
「特定活動46号」 vs 「特定技能」 比較
特定活動46号
特定技能
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ✅ 現場作業が可能 | ⚠️ 要件が極めて厳しい |
| ✅ 高い日本語能力で即戦力 | ⚠️ 該当者が非常に少ない |
| ✅ 日本の文化・慣習を理解 | ⚠️ 申請が複雑 |
④技能|外国料理の専門調理師を雇用できる
技能ビザとは
特殊な分野で熟練した技術を持つ外国人向けの在留資格。飲食業では外国料理の調理師が対象です。
取得要件
①母国で10年以上の実務経験
②タイ料理の場合はタイ政府認定証が必要
【従事できる業務】
| 業務内容 | 可否 |
|---|---|
| 調理業務 | ✅ |
| 調理補助 | ❌ |
| 皿洗い | ❌ |
| 清掃 | ❌ |
対象となる料理
料理に関しては、中華料理、フランス料理、イタリア料理、タイ料理、インド料理は大丈夫です。
ただし、 日本料理は対象外となっております。
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ✅ 本格的な料理を提供できる | ⚠️ 10年以上の経験必須 |
| ✅ ブランド価値向上 | ⚠️ 該当者が極めて少ない |
| ✅ 熟練の技術 | ⚠️ 調理以外の業務は不可 |
⑤身分系ビザ|就労制限なしで最も雇用しやすい
身分系在留資格とは
就労制限がなく、日本人と同様に雇用できる最も簡単なビザです。
【身分系在留資格の種類】
| 在留資格 | 説明 | 在留期間 |
|---|---|---|
| 永住者 | 日本への永住許可を得た外国人 | 無期限 |
| 日本人の配偶者等 | 日本人と結婚した外国人やその子 | 1〜3年 |
| 永住者の配偶者等 | 永住者と結婚した外国人やその子 | 1〜3年 |
| 定住者 | 日系人や難民など | 1〜3年 |
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ✅ 最も手続きが簡単 | ⚠️ 該当者との出会いは運次第 |
| ✅ 就労制限なし | ⚠️ 人数が限られる |
| ✅ 長期雇用可能 | |
| ✅ ビザ申請の手間なし |
法的リスクを回避しながら外国人正社員の採用から定着まで実現する5つのステップを、成功企業の事例とともに詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
4.【アルバイト雇用】留学・家族滞在ビザの雇用ルール

短時間勤務のアルバイト雇用で使える2種類のビザを解説します。
⑥留学|週28時間以内なら現場作業が可能
留学ビザとは
大学・専門学校・日本語学校などで学ぶ外国人の在留資格。資格外活動許可があればアルバイト可能です。
資格外活動許可の確認方法
在留カード裏面に以下のスタンプがあるか必ず確認してください。
「許可:原則週28時間以内(学則で定める長期休業期間にあっては、原則週40時間以内)風俗営業等の従事を除く」

就労可能時間
| 期間 | 就労可能時間 | 1日の上限 |
|---|---|---|
| 通常期間 | 週28時間以内 | 制限なし |
| 長期休暇期間 | 週40時間以内 | 1日8時間以内 |
従事できる業務
| 業務内容 | 可否 |
|---|---|
| ホールスタッフ | ✅ |
| キッチンスタッフ | ✅ |
| 清掃 | ✅ |
| 風俗営業等 | ❌ |
違反した場合のリスク
週28時間を超えて働かせた場合、留学生本人は在留資格取消や強制退去の対象となります。
企業側も不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)が科される可能性があります。知らなかったでは済まされず、企業の社会的信用も大きく損なわれます。
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ✅ 該当者が多く採用しやすい | ⚠️ 週28時間制限 |
| ✅ 若く意欲的な人材が多い | ⚠️ 厳密な勤怠管理が必須 |
| ✅ 長期休暇は40時間OK | ⚠️ 卒業後は在留資格変更必要 |
⑦家族滞在|留学と同様に週28時間以内で雇用可能
家族滞在ビザとは
就労ビザを持つ外国人の配偶者・子に与えられる在留資格。資格外活動許可があればアルバイト可能です。
就労条件
①週28時間以内
②資格外活動許可が必要(在留カード裏面で確認)
留学ビザとの違い
従事できる業務
留学ビザと同様、ホール・キッチン・清掃は可能ですが、風俗営業等は禁止となっています。
メリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ✅ 短時間勤務で雇用可能 | ⚠️ 週28時間制限 |
| ✅ 安定した勤務が期待できる | ⚠️ 長期休暇の特例なし |
| ⚠️ 該当者が留学より少ない |
特定活動(就職活動)|卒業後の留学生をアルバイトとして雇用
特定活動(就職活動)ビザとは
大学・専門学校卒業後、就職先が決まらなかった外国人が就職活動を続けるための在留資格です。
就労条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 就労可能時間 | 週28時間以内 |
| 資格外活動許可 | 必要 |
| 在留期間 | 最長1年間(6ヶ月ごとに更新) |
注意点
特定活動(就職活動)ビザには、いくつかの重要な注意点があります。
まず、このビザは長期雇用には向きません。6ヶ月ごとの更新が必要で、更新審査が厳しいため、不許可になるリスクが常にあります。
更新が認められなかった場合、その外国人は帰国しなければならず、雇用の継続ができなくなります。
また、正社員として採用が決まった場合は、特定技能や技術・人文知識・国際業務などの就労ビザへの変更申請が必要となります。
就職活動ビザのままでは正社員として働き続けることはできません。
5.【雇用形態×業務内容別】あなたの店に最適なビザの選び方

具体的なケース別に、最適なビザの選び方を解説します。
ケース①:ホール・キッチンスタッフを正社員で雇用したい
状況
飲食店の現場で働くスタッフをフルタイム正社員として雇用したいとき。
【最適なビザの優先順位】
| 優先順位 | ビザ | 理由 |
|---|---|---|
| 第一選択肢 | 特定技能(外食業) | 現場作業可能、該当者多い、最も現実的 |
| 第二選択肢 | 特定活動46号 | 現場作業可能、高い日本語能力(該当者少ない) |
| 第三選択肢 | 身分系ビザ | 最も雇用しやすい(出会いは運次第) |
ケース②:店舗管理者・本社スタッフを正社員で雇用したい
状況
複数店舗を統括する管理者や、本社でマーケティング・企画業務を行うスタッフを雇用したい。
【最適なビザの優先順位】
| 優先順位 | ビザ | 理由 |
|---|---|---|
| 第一選択肢 | 技術・人文知識・国際業務 | 管理業務・企画業務に最適 |
| 第二選択肢 | 特定活動46号 | 管理業務+必要に応じて現場サポートも可能 |
| 第三選択肢 | 身分系ビザ | 最も雇用しやすい |
ケース③:留学生アルバイトを卒業後に正社員化したい
状況
現在アルバイトとして働いている留学生を、卒業後に正社員として雇用したい。
【在留資格変更の選択肢】
| パターン | 変更先ビザ | 条件 | 業務内容 |
|---|---|---|---|
| A | 特定技能 | 試験合格+N4以上 | 現場作業可 |
| B | 特定活動46号 | 4年制大学卒+N1レベル | 現場作業可 |
| C | 技術・人文知識・国際業務 | 大卒・専門卒 | 管理業務のみ |
判断基準
現場で働いてもらいたいか?
4年制大学卒 & N1レベルか?
※以下が必要
上のチャートを使いながら最適な判断をしていきましょう。
6.飲食店で外国人を採用する手順を5ステップで解説

外国人採用の具体的な手順を5つのステップで解説します。
ステップ1:外国人の募集方法を決める
外国人の採用候補者を集める方法は主に6つあります。
【募集方法の比較表】
| 方法 | メリット | デメリット | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| ①人材紹介会社 | ビザ申請サポートあり、登録支援機関としても機能 | 費用がかかる | ★★★ |
| ②外国人専門求人サイト | 直接応募者と接触、コスト抑えられる | ビザ確認は自社で | ★★☆ |
| ③学校との連携 | 優秀な留学生と出会える | 時期が限定される | ★★☆ |
| ④ハローワーク | 無料、公的機関の信頼性 | 外国人特化ではない | ★☆☆ |
| ⑤SNS | 拡散力がある、無料 | 効果は不確実 | ★☆☆ |
多言語対応の求人票作成ポイント
外国人向けの求人票を作成する際は、まず英語または対象国の言語で記載することが基本です。日本語を使う場合は、漢字に必ずふりがなを付けましょう。
業務内容は写真付きで具体的に説明し、実際の仕事のイメージが伝わるようにします。給与や労働条件は曖昧にせず、明確に記載することが重要です。
また、応募に必要な在留資格(ビザの種類)を明記しておくと、応募者とのミスマッチを防げます。
さらに、会社や店舗の雰囲気が伝わる写真や動画を掲載し、すでに働いている外国人スタッフの声を紹介すると、応募者の安心感が高まります。
ステップ2:書類選考と面接を実施する
【書類選考での必須確認書類】
| 書類 | 目的 |
|---|---|
| 在留カードのコピー(表面・裏面) | 在留資格・期限の確認 |
| パスポートのコピー | 身元確認 |
| 履歴書 | 学歴・職歴の確認 |
| 卒業証明書 | 学歴の証明 |
| 資格外活動許可 | アルバイト雇用の場合必須 |
【在留カード確認チェックリスト】
| No | 確認項目 | 確認内容 | チェック |
|---|---|---|---|
| ① | 在留資格の種類 | 飲食店で働けるビザか | □ |
| ② | 在留期限 | 期限が切れていないか | □ |
| ③ | 就労制限の有無 | 「就労不可」でないか | □ |
| ④ | 資格外活動許可 | スタンプがあるか(留学・家族滞在) | □ |
| ⑤ | 番号照会 | 出入国在留管理庁サイトで確認 | □ |
面接で聞いてもよい質問・悪い質問
面接では、業務に直接関係する質問は問題ありません。
例えば、「日本語はどのくらい話せますか?」「飲食店での経験はありますか?」「在留資格は何ですか?」「週何時間働けますか?」といった質問は、雇用判断に必要な情報として聞いて構いません。
一方で、就職差別につながる質問は避けなければなりません。
「どこの国の出身ですか?」(業務に無関係な場合)、「宗教は何ですか?」、「結婚していますか?」「子供はいますか?」といった本人の適性や能力と関係のない質問は、就職差別とみなされる可能性があります。
家族の職業や資産状況なども聞くべきではありません。
ステップ3:雇用契約を締結する
【労働条件通知書の必須記載事項】
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 雇用期間 | 期間の定めの有無 |
| 就業場所 | 勤務地 |
| 業務内容 | 具体的な職務 |
| 労働時間 | 始業・終業時刻、休憩時間 |
| 休日 | 週休日、年間休日数 |
| 賃金 | 基本給、諸手当、計算方法、支払日 |
| 退職 | 退職に関する事項 |
特定技能の場合の追加要件
①報酬⇒日本人と同等以上であること
②一時帰国⇒希望時に休暇を取得させること
③派遣禁止⇒労働者派遣の対象としないこと
④差別禁止⇒外国人であることを理由とした差別的取扱いをしないこと
ステップ4:在留資格の申請を行う
申請方法の違い(国内・海外)
在留資格の申請方法は、外国人が国内にいるか海外にいるかで異なります。
すでに日本国内にいる外国人を雇用する場合(例:留学生を正社員化、転職者の受け入れ)は、「在留資格変更・更新許可申請」を行います。
申請は本人が出入国在留管理局へ出向くか、企業の担当者または行政書士が代理で行うことができます。
一方、海外にいる外国人を日本に招聘する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
この場合、日本国内の企業が出入国在留管理局に申請し、許可されると「在留資格認定証明書」が交付されます。
この証明書を海外の本人に郵送し、本人が母国の日本大使館・領事館でビザ(査証)を申請して入国する流れとなります。
【パターンA】国内にいる外国人の場合
| ステップ | 内容 | 期日 |
|---|---|---|
| ①必要書類準備 | 申請書類一式を準備 | 1〜2週間 |
| ②出入国在留管理局へ申請 | 本人または代理人が申請 | 1日 |
| ③審査 | 出入国在留管理局で審査 | 1〜3ヶ月 |
| ④許可・在留カード交付 | 新しい在留カードが交付される | 1日 |
【必要書類(特定技能の例)】
【パターンB】海外にいる外国人の場合の流れ
| ステップ | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| ①日本の企業が申請 | 在留資格認定証明書交付申請 | 1日 |
| ②審査 | 出入国在留管理局で審査 | 1〜3ヶ月 |
| ③証明書交付 | 在留資格認定証明書が交付される | 1日 |
| ④原本を海外へ郵送 | 本人に証明書を郵送 | 1週間 |
| ⑤母国で査証申請 | 日本大使館・領事館で申請 | 1週間 |
| ⑥査証発給 | ビザ(査証)が発給される | 数日 |
| ⑦日本に入国 | 空港で在留カード交付 | 1日 |
オンライン申請のメリット
出入国在留管理庁のオンライン申請システムを利用すると、いくつかのメリットがあります。
オンラインのメリット
時間節約:出入国在留管理局に出向く必要がなく、自宅やオフィスから申請できます
24時間対応:営業時間を気にせず、いつでも申請が可能です
進捗確認:審査状況をオンラインでリアルタイムに確認できます
ただし、事前に利用者情報登録が必要で、書類によっては電子署名が求められる場合もあります。
行政書士への依頼を検討すべきケース
以下のような場合は、行政書士への依頼を検討することをおすすめします。
- 初めての外国人雇用で不安がある場合
⇒手続きの流れや必要書類がわからず、不安を感じる場合 - 複雑なビザの申請
⇒技術・人文知識・国際業務や特定活動46号など、申請書類の作成難易度が高いビザ - 過去に不許可の経歴がある場合
⇒一度不許可になった場合、再申請には専門的な対応が必要 - 重要な採用で確実に許可を得たい場合
⇒事業に不可欠な人材の採用で、失敗が許されない場合
行政書士への依頼費用は、在留資格変更・更新で5〜15万円、在留資格認定証明書で10〜20万円、特定技能で15〜30万円が目安です。
ステップ5:就労開始と雇用後の手続き
就労開始のタイミング
国内の外国人⇒新しい在留カード交付日から
海外からの入国者⇒空港で在留カード交付日から
雇用後の必須手続き①:ハローワークへの届出
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出名 | 外国人雇用状況届出書 |
| 提出期限 | 雇用した翌月10日まで |
| 提出先 | 管轄のハローワーク |
| 罰則 | 届出を怠ると30万円以下の罰金 |
雇用後の必須手続き②:所属機関に関する届出
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 中長期在留者(特定技能、技術・人文知識・国際業務など) |
| 届出内容 | 契約機関に関する届出(雇用開始の事実) |
| 提出期限 | 雇用契約締結日から14日以内 |
| 提出先 | 出入国在留管理局 |
雇用後のサポート
外国人の定着率を高めるため、雇用後のサポートも重要です。
生活面では、住民登録の手続きや銀行口座の開設、携帯電話の契約などをサポートしましょう。また、ゴミ出しのルールなど日本での生活マナーについても丁寧に説明することが大切です。
仕事面では、業務マニュアルの整備(できれば多言語対応)やOJTでの丁寧な指導を行います。
日本語学習の機会を提供したり、定期的な面談を実施したりすることで、悩みや不安を早期に解決でき、長期的な雇用につながります。

7.飲食店で外国人を雇用する際の注意点とリスク回避策

不法就労のリスクを避けるための重要な注意点を解説します。
不法就労を絶対に避けるための3つの鉄則
不法就労助長罪の罰則

不法就労助長罪とは、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりする行為を罰する犯罪です。
例えば、在留資格を得ていないのに入国したり、オーバーステイ(在留期限切れ)していたり、働けない在留資格で就労したりすることが該当します。
懲役と罰金の両方が科される可能性もある厳しい罰則ですので、不法就労助長罪については、企業が非常に気を付けなければいけません。
在留カードの偽造を見抜く5つのチェックポイント
5つのチェックポイント
近年、在留カードの偽造が増加しています。偽造カードを見抜けずに雇用すると、企業も不法就労助長罪で罰せられる可能性があります。
以下の5つのチェックポイントで、在留カードの真贋を確認しましょう。
【チェックポイント一覧】
| No | チェック項目 | 確認方法 | 偽造の兆候 |
|---|---|---|---|
| ① | 番号照会 | 出入国在留管理庁の照会サイト | 失効情報が存在する |
| ② | ホログラム | カードを傾けて確認 | MOJ文字が見えない、色が変化しない |
| ③ | 写真 | 目視確認 | 貼り替えた跡がある、写真上のホログラムがない |
| ④ | ICチップ | 専用アプリで読み取り | 読み取り不可、情報が一致しない |
| ⑤ | カード品質 | 触って確認 | 薄い、印刷が粗い、フォントが不統一 |
チェック①:出入国在留管理庁の照会サイトで確認
最も確実な方法は、出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」を利用することです。
ウェブサイトで在留カード番号(12桁)と有効期限を入力し、「失効情報が存在します」と表示されれば偽造の可能性が高く、「失効情報が存在しません」なら有効なカードです。
チェック②:ホログラムの確認
本物の在留カードは、カードを傾けると「MOJ」の文字が浮かび上がり、ホログラムの色が変化します。
偽造カードはホログラムが貧弱か、全くありません。光に当てながらカードを傾けて確認しましょう。
チェック③:写真の確認
写真が不自然に貼り替えられていないか目視で確認します。
写真の周囲に剥がした跡がないか、写真の上に「MOJ」のホログラムがあるかをチェックしましょう。偽造カードは写真上のホログラムがないことが多いです。
チェック④:ICチップの確認
出入国在留管理庁の公式アプリ「在留カード等読取アプリケーション」をスマートフォンにダウンロードし、ICチップを読み取ります。
読み取った情報がカード表面の情報と一致するか確認しましょう。偽造カードは読み取れないか、情報が一致しません。
チェック⑤:カードの材質・印刷品質の確認
本物の在留カードは高品質なプラスチック製で、しっかりとした厚みと硬さがあります。
カードを手に取り、厚みや硬さ、印刷の鮮明さ、フォントの統一性を確認しましょう。偽造カードは薄かったり、印刷が粗かったりします。
技術・人文知識・国際業務ビザの「単純労働」の落とし穴
技術・人文知識・国際業務ビザは、飲食店での雇用において最も注意が必要なビザです。
このビザは専門的な業務に従事することが前提となっているため、現場作業をさせると不法就労になってしまいます。
よくある違反パターン
実際によくある違反パターンを理解しておくことが重要です。
【パターン①:名目と実態の不一致】
最も多い違反パターンは、申請時には「店舗管理業務」として申請したものの、実際にはホール接客や調理などの現場作業が業務の大半を占めているケースです。
たとえ「店長」という肩書きがあっても、実際の業務内容が現場作業中心であれば不法就労とみなされます。技術・人文知識・国際業務ビザは、管理業務が主である必要があります。
【パターン②:転職者の業務内容未確認】
転職者を雇用する際にも注意が必要です。
例えば、前職では大手チェーンの本社でマーケティング業務を担当していた外国人が、転職後は小規模店舗で現場作業が主になった場合、在留資格で認められた業務と実際の業務が不一致となり、不法就労のリスクが生じます。
転職によって業務内容が大きく変わる場合は、在留資格の変更が必要です。
対策:過去の申請書類を確認しよう!
転職者を雇用する場合は、以下の手順で確認しましょう。
- 本人から申請理由書を取り寄せる
- どのような業務内容で許可されたかを確認する
- 従事できる業務の範囲を把握する
- 業務内容が大きく変わる場合は在留資格変更を検討する
8.飲食店で外国人を雇用するメリット

外国人雇用がもたらす3つの大きなメリットを紹介します。
メリット①:深刻な人手不足を解決できる
飲食業界は深刻な人手不足に直面しています。
少子高齢化による労働人口の減少、長時間労働・低賃金という業界イメージ、若者の飲食業界離れなどが重なり、求人を出しても応募が来ないという状況が続いています。
【日本人採用の課題】
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 少子高齢化 | 労働人口の減少 |
| 業界イメージ | 長時間労働・低賃金のイメージ |
| 若者の業界離れ | 飲食業界を避ける傾向 |
| 採用難 | 求人を出しても応募が来ない |
【外国人雇用の強み】
外国人雇用を選択肢に入れることで、採用の可能性が大きく広がります。
日本の人口は約1.2億人ですが、世界の人口は80億人を超えています。
特にアジア諸国には日本で働きたいと考える意欲的な若者が多く、飲食業界でも真面目に働く人材を採用できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 採用母集団 | 日本1.2億人 → 世界80億人 |
| 意欲 | 日本で働きたい意欲的な若者が多い |
| 長期雇用 | 特定技能2号なら在留期間制限なし |
成功事例
実際に外国人雇用によって人手不足を解決した企業の事例を紹介します。
| 企業 | 課題 | 対策 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 居酒屋チェーンA社 | 人手不足で新規出店できない | 特定技能10名採用 | 1年で3店舗出店成功 |
| ラーメン店B店 | スタッフが定着しない | 留学生3名採用 | シフト安定、店長負担軽減 |
このように、外国人雇用は単なる人手不足の解決策だけでなく、事業拡大のチャンスにもなります。
メリット②:業務の仕組み化・マニュアル化が進む
外国人を雇用すると、業務のマニュアル化や仕組み化が自然と進むという意外なメリットがあります。
具体的な変化の例
日本人同士であれば、「なんとなく」「以心伝心」で通じていたことも、外国人に教える際は言語化・明文化が必要になります。この過程で、業務が体系化され、誰でも同じクオリティで作業できるようになります。
例えば、「適量」という曖昧な表現は「大さじ2杯」と具体的に数値化され、「いい感じに炒める」は「3分間炒める」と明確な指示に変わります。また、暗黙のルールは明文化されたマニュアルとして整備されます。
得られる効果
マニュアル化が進むことで、教育時間が短縮され、マニュアルを見れば理解できるようになります。作業が標準化され、人によるばらつきが減り、品質が安定します。
また、特定の人にしかできない仕事がなくなり、属人化が解消されます。さらに、業務の無駄が見える化され、改善点が明確になります。
| 効果 | 詳細 |
|---|---|
| 教育時間の短縮 | マニュアルを見れば理解できる |
| 作業の標準化 | 人によるばらつきが減る |
| 属人化の解消 | 特定の人にしかできない仕事がなくなる |
| 無駄の見える化 | 業務の改善点が明確になる |
成功事例
あるカフェでは、ベテランスタッフの暗黙知に頼っており、新人の教育に時間がかかっていました。
外国人スタッフの採用に合わせて、すべての業務をマニュアル化した結果、教育時間が半減し、新人がすぐに戦力になるようになりました。
| 企業 | 課題 | 対策 | 結果 |
|---|---|---|---|
| カフェC店 | ベテラン頼みで新人教育に時間がかかる | 外国人採用に合わせて全業務をマニュアル化 | 教育時間が半減 |
9.適切なビザ選びが外国人雇用成功の第一歩

飲食店で使える就労ビザは正社員用5種類、アルバイト用2種類の計7種類。現場スタッフなら特定技能、管理者なら技術・人文知識・国際業務、短時間アルバイトなら留学ビザが最適です。
不法就労を避けるには在留カードの確認が必須。外国人雇用は人手不足解消だけでなく、業務効率化やインバウンド対応など新たなビジネスチャンスも生みます。まずは自社に最適なビザを選ぶことから始めましょう。
失敗しない外国人採用エージェントの選び方や活用法を、もっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。