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特定技能でベトナム人を採用|5つのステップと雇用後のポイント

人材不足が深刻化する日本において、ベトナム人特定技能労働者の採用が注目されています。

2024年の外国人労働者数は約230万人で過去最多を更新し、その中でもベトナム人が24.8%と最多です。

本記事では、ベトナム人材が増加している背景から、特定技能での採用ステップ、注意点、定着化のポイントまで、企業が知っておくべき情報を詳しく解説します。

この記事を読んでわかること
  • 特定技能でベトナム人を採用するための5つのステップと各段階での具体的な準備事項
  • ベトナム特有のDOLAB規制や送出機関との関わり方、適切な労働条件設定など採用時の注意点
  • ベトナム人材の価値観や文化的背景を考慮した効果的な定着化戦略とリスク管理方法

1.特定技能でのベトナム人採用が注目される背景

特定技能でのベトナム人採用が注目される背景

特定技能は、特定産業における技能を持つ外国人が取得できる在留資格です。

人材不足が深刻化している日本では、特定技能を持つ外国人労働者の人数が年々増加しています。

その中でも、ベトナム人は国の政策や国民性などのさまざまな背景から、現在日本の多くの企業で採用されています。

増加するベトナム人特定技能従事者の現状

少子高齢化により労働者不足が進む日本では、現在外国人材の雇用拡大が続いています。

厚生労働省が発表した「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」によると、2024年(令和6年)の外国人労働者数は約230万人で、過去最多を更新しました。

増加するベトナム人特定技能従事者の現状

外国人労働者の国籍で最も多かったのがベトナムの24.8%(約57万人)です。2番目に多いのは中国の17.8%(約40万人)、3番目がフィリピンの10.7%(約25万人)でした。

かつて労働者数が多かった中国人労働者数を超え、その1.4倍もの人数になっているほどベトナム人労働者数は急増しています。

参照元:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)

なぜ今ベトナム人材の採用なのか

これまで日本で働く外国人労働者の多くは中国人でした。

ところが、中国は経済発展により国民の所得が増加したため、日本に来る技能実習生や留学生、就労ビザを取得して働く中国人は減少傾向にあります。

中国人とは反対に、技能実習生、就労ビザを取得して働く労働者、特定技能労働者などが増加しているのがベトナム人です。

ベトナムは、政府が国内の失業や貧困解消に向けて、国民の海外での労働を促進しています。技能実習制度や日本での就労を希望する人を支える取り組みを行っている背景が、ベトナム人材の増加につながっています。

また、ベトナムは日本製品や文化に馴染みが深い親日国です。そのため、日本に親近感を持つ人が多いほか、学習意欲が高く、日本の技術を学び働きたい若者が多いことも、ベトナム人材の採用が増加している大きな理由です。

2.特定技能のベトナム人材を雇用するメリットとは

特定技能のベトナム人材を雇用するメリットとは

特定技能でベトナム人材を採用することは、人手不足に悩む日本企業にとって多くのメリットがあります。

少子高齢化が進む日本の労働市場において貴重な戦力です。以下では、ベトナム人材雇用の主な利点を3つの観点から解説します。

勤勉で真面目な国民性

ベトナム人は一般的に勤勉で真面目な国民性を持ち、日本の働き方との相性が良いとされています。

若年層が多いベトナムからの人材採用は、少子高齢化による日本の労働力不足を補う大きな役割を果たしています。

高い日本語習得能力

ベトナム人材の日本語学習への意欲は高く、漢字が使われていた歴史もあって比較的習得が早い傾向があります。

特定技能の資格保持者は日本語能力試験と技能試験に合格しているため、一定レベルのコミュニケーション能力と専門知識を持っている点も魅力です。

協調性と柔軟な勤務地選択

国民性としてベトナム人は協調性の意識が高く、チームワークを重視するため、職場環境に馴染みやすいという特徴があります。

ベトナム国内採用であれば地方での勤務も厭わない傾向があり、大都市圏以外の企業にとっても貴重な人材となります。親日国であるベトナムからの人材は、長期的な雇用関係の構築も期待できるでしょう。

3.特定技能でベトナム人を採用するための5つのステップ

特定技能でベトナム人を採用するための5つのステップ

特定技能でベトナム人を採用するには、さまざまな手続きを行わなければなりません。

自社の受け入れ要件、採用方法、必要書類などをあらかじめ確認して、適切なステップで進めることが重要です。

ステップ1:自社の受け入れ要件の確認

特定技能でベトナム人を採用するには、企業側と本人の両方が要件を満たしていなければなりません。

自社の受け入れ要件の確認01

一方で本人側も各種条件を満たす必要があります。

自社の受け入れ要件の確認02

ステップ2:採用方法の選択(国内採用 or 海外採用)

特定技能でベトナム人を採用するには、国内採用と海外採用の2種類の方法があります。

国内採用は、すでに日本に在留している留学生や技能実習修了者を採用する方法です。在留者の採用は、日本の文化に慣れているため職場環境に適応しやすいメリットがあります。

一方海外採用は、自国で特定技能試験に合格した人材を採用する方法です。

政府認定の送出機関を通じた契約が必要で、海外からの人材の受け入れに手続きや費用がかかります。ただし海外採用は人材の幅を広げられるメリットがあります。

ステップ3:必要な書類と手続きの準備

採用方法を確定させ、面接をして採用者が決まった際に必要な書類と手続きの準備をします。

国内採用の場合

特定技能に関する雇用契約の締結、推薦者表の交付申請、在留資格変更許可申請などを行うため、契約締結や申請に使用する書類をそろえます。

海外採用の場合

現地の送出機関との労働者提供契約の締結、推薦者表の交付申請、在留資格認定証明書の交付申請、ビザ申請などの手続きをしなければなりません。

スムーズに採用するためにも、契約やそれぞれの手続きで使用する書類を準備しておきます。

ステップ4:面接と採用の実施

採用した人材と雇用契約を結ぶ前に、現地の送出機関との労働者提供契約の締結も定められています。

国内採用の場合

ハローワークや求人広告、SNS募集、日本語学校との提携、人材紹介会社の活用などの方法で人材の募集が可能です。紹介会社などを活用すると、求める人材を絞り、採用業務の効率化が期待できます。

海外採用の場合

ベトナムの「派遣契約によるベトナム人労働者海外派遣法」で定められているため、ベトナム政府が認定する送り出し機関を通じて求人を行わなければなりません

ステップ5:入社後の支援体制の構築

採用後には、入社後の生活基盤を整えるための支援体制の構築が重要です。

住居の確保や銀行口座の開設、携帯電話の日常生活に必要な契約などのサポートを行い、日本で社会生活を送るための情報を学べる生活オリエンテーションを実施します。

また日本語学習の機会の提供や、日本人との交流促進など、幅広いサポートが求められます。

特定技能1号の外国人にはさまざまな義務的支援を行い、生活や就業環境をサポートしなければなりません。これらの支援を自社で行うことが難しい場合は、登録支援機関に委託することも可能です。

特定技能1号について特定技能2号との違いや、それぞれの制度の特徴を詳しく知りたい方は「特定技能1号とは?」の記事をご覧ください。

特定技能1号とは?在留期間や要件など重要ポイントを徹底解説
特定技能1号とは?在留期間や要件など重要ポイントを徹底解説
深刻化する人手不足を背景に、2019年4月に創設された在留資格「特定技能1号」。
介護や建設など12の産業分野で外国人材の受け入れが可能なこの制度は、多くの企業の人材確保の選択肢として注目されています。
本記事では、特定技能1号の基本的な内容から取得要件まで、企業の人事担当者が知っておくべき重要なポイントを解説します。
https://back-end.co.jp/media/contents/specific-skill01/

4.ベトナム人材採用時の注意点

ベトナム人材採用時の注意点

ベトナム人材を採用する場合には、DOLABや送出機関を理解した上で適切な採用手続きを取り、労働者との契約、労働条件などの注意点に配慮しなければなりません。

DOLABと送出機関に関する規制の理解

DOLABとは、「ベトナム労働・傷病兵・社会問題省海外労働管理局」の略称です。

ベトナムには国が運営する送出機関は存在せず、ベトナム人を採用する場合にはDOLABに認定された送出機関を通さなければなりません。

認定送出機関を探し、送出機関との労働者提供契約を締結してから、労働者と適切な労働契約を結びます。

一方ベトナム人は、認定送出機関を通してDOLABに「推薦者表」の取得申請をしなければ日本の在留資格認定証明書交付申請ができません。

これら他国にはない規制がある点を理解して、人材の採用手続きを行います。

参考:外国人技能実習機構 外国政府認定送出機関一覧:ベトナム

適切な給与設定と労働条件の確保

ベトナムの給与水準は日本と比べて低いとされています。ただし、ベトナム人材を採用する場合でも日本人労働者と同等以上の給与・賞与を支払わなければなりません

また、所定労働時間も日本人労働者の労働時間に基づいて決定します。支給する手当や福利厚生施設の利用などにも日本人と同等の扱いになっている雇用契約を結ぶことが重要です。

賃金などが記載される雇用条件書はビザの申請時にチェックされるので、申請許可に影響するため注意が必要です。

在留資格変更時の留意事項

先述したように、ベトナム人が特定技能の在留資格を申請する場合には、「推薦者表」を提出しなければなりません。

「推薦者表」はDOLABから承認を得た書類です。認定送出機関を通じてベトナム人本人が受け取ります。

すでに特定技能の在留資格を持っている場合でも、他の会社で就労する場合には出入国在留管理局に在留資格変更許可申請の手続きを行います。申請後許可が下りるまでは、新しい会社への入社ができません。

5.ベトナム人採用後の定着化とリスク管理

ベトナム人採用後の定着化とリスク管理

ベトナム人労働者には若手人材が多いなどのメリットがあります。

採用したあとに長く働いてもらうためには、適切な管理が求められます。

価値観や商慣習の違いを考慮すること

ベトナム人は、仕事よりも家族との時間を重視する傾向があります。したがって、採用する際には、家族の用事を優先できる柔軟な対応が求められます。

例えば、旧正月(テト)などの伝統的な祝日は特に重要視されており、この時期の長期休暇の希望には配慮が必要でしょう。

さらに、ベトナム人の働き方には昇給やキャリアアップを重視し、残業がほとんどないという傾向があるため、その文化的背景に配慮することが大切です。

ベトナム社会では「面子(メンツ)」を重んじる文化もあり、公の場での叱責は避け、個別に丁寧にフィードバックすることが信頼関係構築には効果的です。

また、ベトナム人は集団主義的な価値観を持ち、チームワークを重視する傾向があるため、個人よりもグループでの成果を評価する仕組みも効果的でしょう。

コミュニケーション支援体制の整備

ベトナム人は職場の同僚とのコミュニケーションを大切にします。社内での交流会などを定期的に開催すると、お互いの文化交流の機会になり、信頼関係の構築にもつながります。

また、ベトナム人のコミュニティを尊重して、同じベトナム人労働者で一緒に仕事ができる職場環境を整えるなど、働きやすさへの配慮も重要です。

また、日本人社員にも異文化理解研修を実施し、相互理解を促進することが大切です。定期的な個別面談の機会を設け、仕事や生活面での悩みを聞く体制を整えることで、早期の問題解決につながります。

労務管理のポイント

ベトナムでの安全や衛生に対する概念は、日本とは異なる傾向があります。業種や職場によってはルールを守らないと労働災害が発生する場合もあるため、従業員の安全や衛生に関する意識の向上が重要です。

安全衛生の概念を高めるためには、定期的に研修を実施します。

健康管理面では、日本の気候への適応や食生活の変化によるストレスに注意しましょう。

トラブル防止のための事前対策

日本とは文化や習慣が異なるベトナム人労働者がトラブルなく働くためには、業務上の悩みを共有して、適切にアドバイスやサポートを行うのがおすすめです。

面談を実施して、ベトナム人労働者と話し合う時間を取り、有効なアドバイスで問題の改善を図ることで、トラブル防止が期待できます。

6.特定技能ベトナム人採用の費用と準備すべき予算

特定技能ベトナム人採用の費用と準備すべき予算

特定技能ベトナム人を採用するには、採用する際の初期費用と、継続的費用がかかります。

採用を検討している場合には、目安となる予算額を確認することも重要です。

初期費用の詳細と概算

初期費用には、各機関への手数料や収入印紙代、加入費などがかかります。また、採用したベトナム人に対して支払う費用には、渡航費や健康診断料、給与などがあります。

初期費用の詳細と概算

継続的にかかる費用の内訳

「登録支援機関の支援委託費用」は、採用時だけでなく、特定技能ベトナム人材を採用したあとにも毎月発生します。

これはすべての分野に共通しており、費用は毎月約2〜3万円が目安です。さらに特定技能外国人の在留期間更新時には、行政書士などに更新手続きを委託するための費用が約4~8万円かかります。

7.特定技能ベトナム人材の活用|成功と定着のカギ

特定技能ベトナム人材の活用|成功と定着のカギ

特定技能でのベトナム人採用は、日本の人材不足解消に貢献する有効な手段です。しかし成功には、適切な採用手続きの遵守と文化的背景への理解が不可欠です。

DOLABや送出機関との適切な連携、日本人と同等の労働条件の確保、そして採用後の支援体制構築によって、ベトナム人材の定着と活躍を促進することができます。

効果的な外国人材の活用は、企業の持続可能な成長への鍵となるでしょう。

記事を書いた人
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行政書士法人バタフライエフェクト
行政書士法人バタフライエフェクトは、外国人の就労ビザ取得、相談のエキスパートです。上場企業様から小規模の会社様まで、これまで10,000件以上の案件を支援。就労ビザを踏まえた外国人雇用のコンサルティングも行っており、年間実績1,500件、ビザの専門家が多数在籍しています。
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