「台湾人は英語が話せるのか?」——外国人採用を検討する際に、このような疑問が寄せられるケースがあります。
結論から言えば、台湾人の英語力は日本人とほぼ同程度だと言われています。しかし、政府主導の「2030年バイリンガル国家計画」により、若い世代を中心に英語力は急速に向上しています。
本記事では、データに基づいた台湾人の英語力の実態から、採用時に押さえるべきポイント、人材活用法まで網羅的に解説します。
- 台湾人の英語力の実態と日本人との違い
- 採用時に台湾人の英語力を正しく評価する方法
- 台湾人材の語学力を活かしたグローバル戦略
1.台湾人の英語力はどのくらい?データで見る実態

台湾人の英語力を評価する際、まず客観的なデータを確認することが重要です。
ここでは、国際的な英語能力指標や統計データを基に、台湾人の英語力の実態を解説します。
EF英語能力指数から見る台湾の英語レベル
世界最大級の語学教育機関EF(Education First)による最新の調査(EF EPI 2025)では、日本が123カ国中96位と「非常に低い」水準に留まる中、台湾は近年まで「中程度」から「低い」英語能力の境界に位置してきました。
最新版のランキングに台湾は含まれていませんが、歴史的には日本と同等か、やや上回るスコアで推移しており、アジアの中では平均的な水準にあると言えます。
ただし、現在は政府主導の「2030年バイリンガル国家計画」によって急速な英語教育の改革が進んでおり、数値以上のポテンシャルを持つ人材が増えています。
参考:Education First The world’s largest ranking of countries and regions by English skills
英語が話せる台湾人の割合は15〜20%
では、実際にどのくらいの台湾人が英語を話せるのでしょうか。各種調査によると、英語でコミュニケーションが取れる台湾人の割合は全人口の15〜20%程度とされています。
この数字は決して高いとは言えませんが、「英語が話せる」の定義によっても変わってきます。簡単な日常会話やメールのやり取りができるレベルであれば、都市部の若年層を中心にさらに多くの人が該当します。
一方、ビジネスレベルで流暢に英語を使いこなせる人材となると、この割合はさらに下がります。
採用活動においては、求める英語レベルを明確にした上で、候補者の実際のスキルを確認することが重要です。
都市部と地方で大きく異なる英語力の格差
台湾人の英語力を語る上で見逃せないのが、地域による格差です。
首都・台北では英語が問題なく通じるケースが多く、特に大学生や若いビジネスパーソンは比較的流暢に英語を話します。
国際的なビジネス環境やインターナショナルスクールが多い台北では、英語に触れる機会が豊富なためです。
格安のホテルでさえ英語対応可能なスタッフが常駐していることも珍しくありません。
一方、高雄など南部の都市や地方では、英語が通じにくい傾向があります。ローカルな商店や年配の方が経営する店舗では、北京語(中国語)のみの対応となるケースがほとんどです。
採用候補者の出身地や居住歴を確認することで、英語環境への慣れ具合をある程度推測できるでしょう。
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台湾人の英語力を支える背景には、彼ら独自の国民性や文化的な気質も大きく影響しています。採用を成功させるためには、語学力だけでなく性格や価値観を理解することが不可欠です。こちらの記事で詳しく解説しています。
2.台湾の英語教育の特徴と「2030年バイリンガル国家計画」

台湾人の英語力を理解するためには、その背景にある教育制度を知ることが欠かせません。
また、台湾政府が推進する野心的なバイリンガル政策は、今後の台湾人材の英語力向上を予測する上で重要な要素となります。
小学校から始まる英語教育の現状
台湾では2001年から小学校での英語教育が必修化されました。当初は5・6年生が対象でしたが、2005年からは3年生から英語の授業が始まるようになりました。
日本と比較すると、より早い段階から体系的な英語教育が行われていることがわかります。
特筆すべきは、台湾の大学では教科書のほとんどが英語版を使用しているという点です。理工系や医学系はもちろん、文系学部でも英語の教科書を用いた授業が一般的です。
そのため、大学卒業者は少なくとも学術的な英語の読解力を身につけていることが多いです。
また、台湾では「補習班」と呼ばれる塾文化が根付いており、多くの子どもたちが放課後に英語塾に通っています。
都市部では幼児期からネイティブ講師による英会話教室に通わせる家庭も珍しくありません。
政府主導の「Bilingual 2030」政策とは
台湾政府は2018年に「2030年バイリンガル国家計画(Bilingual 2030)」を発表しました。
これは、2030年までに台湾を中国語と英語のバイリンガル国家にするという野心的な国家目標です。
この政策では、以下の6つの目標が掲げられています。

| 目標 | 内容 |
|---|---|
| ① 高等教育のバイリンガル化 | 大学での英語による授業の拡充 |
| ② 初中教育の環境整備 | バランスの取れたバイリンガル教育環境の構築 |
| ③ デジタルラーニング | オンライン英語学習の推進 |
| ④ 英語能力検定の整備 | 統一された評価基準の確立 |
| ⑤ 公務員の英語力向上 | 行政サービスの英語対応強化 |
| ⑥ 専門行政機関の設立 | 政策推進のための組織体制構築 |
この政策の特徴は、「エリート学生の養成」と「全国民の英語コミュニケーション能力向上」という二つの目標を同時に追求する「dual-track(二軌道)」アプローチを取っている点です。
今後の台湾人材の英語力向上が期待できる理由
Bilingual 2030政策の推進により、今後の台湾人材の英語力は着実に向上していくと予測されます。その理由として、以下の点が挙げられます。
まず、政府・企業・教育機関が一体となった取り組みが進んでいます。政府は予算を投じて英語教師の研修や海外からの英語教師招聘プログラム(Taiwan Foreign English Teacher Program)を実施。
金融機関や観光業界でも英語対応の強化が進んでいます。
また、デジタルラーニングの活用も加速しています。オンライン英会話やアプリを活用した自主学習が浸透しており、地方と都市部の教育格差を縮小する効果が期待されています。
採用担当者としては、今後5〜10年で台湾人材の英語力が全体的に底上げされる可能性を視野に入れておくとよいでしょう。
3.台湾人の英語の特徴と日本人との違い

台湾人の英語には、言語的・文化的背景に根ざした独自の特徴があります。
採用面接や入社後のコミュニケーションを円滑に進めるために、これらの特徴を理解しておくことが役立ちます。
「台湾英語」と呼ばれる独特の発音と表現
台湾人が話す英語は、しばしば「台湾英語(Taiwanese English)」と呼ばれ、いくつかの特徴的な傾向があります。
最も顕著なのは、中国語(華語)や台湾語の影響を受けた発音です。中国語には声調(四声)があるため、台湾人は英語を話す際にも抑揚をつける傾向があります。
これにより、日本人の平坦な英語と比べると、よりメリハリのある発音に聞こえることがあります。
また、LとRの発音については、日本人が苦手とするのに対し、台湾人は比較的正確に区別できます。
これは中国語にL音が存在するためです。一方で、子音の連続(cluster)や語尾の子音の発音には課題を持つ人もいます。
表現面では、中国語からの直訳による独特のフレーズが見られることがあります。
例えば、中国語の言い回しをそのまま英語に置き換えた表現を使うケースがあり、ネイティブスピーカーには違和感を与えることもあります。
読み書きは得意だがスピーキングに課題がある傾向
台湾の英語教育は、日本と同様にテスト中心の傾向があります。そのため、多くの台湾人は英語の読解力や文法知識は比較的高いレベルにあります。
特に大学教育を受けた人材は、英語の学術論文や技術文書を読む能力を持っていることが多いです。
一方で、スピーキングやリスニングについては個人差が大きいのが実情です。
日常生活で英語を使う機会が限られているため、「読めるけど話せない」という人も少なくありません。これは日本人の英語学習者と共通する課題といえるでしょう。
採用面接では、履歴書のTOEICスコアだけでなく、実際の会話を通じてコミュニケーション能力を確認することをおすすめします。
英語学習への積極性と心理的ハードルの低さ
台湾人の英語学習において特筆すべきは、外国語を話すことへの心理的ハードルの低さです。
台湾は多言語環境で知られており、多くの人が北京語(中国語)と台湾語を日常的に使い分けています。
一部の人は客家語や原住民族の言語も話します。このような言語的多様性の中で育った台湾人は、新しい言語を学ぶことに対する抵抗感が比較的少ない傾向があります。
また、日本人が英語を話す際に「間違えたら恥ずかしい」と感じやすいのに対し、台湾人は間違いを恐れずに積極的にコミュニケーションを図ろうとする傾向があります。
完璧な文法よりも意思疎通を優先する姿勢で、ジェスチャーなども交えながらコミュニケーションを取ります。
この積極性は、グローバルなビジネス環境において大きな強みとなります。語学力そのものは同程度でも、実践の場では台湾人のほうがコミュニケーションを円滑に進められるケースも少なくありません。
4.台湾人採用で知っておくべき英語力の5つのポイント

ここまで台湾人の英語力の実態や特徴を見てきました。
では、実際に台湾人材を採用する際、英語力をどのように評価し、活用すればよいのでしょうか。採用担当者が押さえておくべき5つのポイントを解説します。
ポイント1:学歴・経歴による英語力の差を確認する
台湾人の英語力は、学歴や職歴によって大きく異なります。採用時には以下の点を確認することで、候補者の英語レベルをある程度推測できます。
学歴による英語力の目安
Education Background vs English Proficiency
大学卒業
Basic
基本的な読み書き、簡単なビジネスメール対応
海外大学卒業・留学経験あり
Business
ビジネスレベルの英語力(会議・商談等)
大学院卒(英語圏)
Advanced
高度な専門英語、プレゼンテーション可能
また、外資系企業や国際部門での勤務経験がある候補者は、実践的な英語コミュニケーション力を持っていることが多いです。
IT業界やグローバル企業での経験は特に参考になります。
ポイント2:マルチリンガル人材が多いことを活かす
台湾人材の大きな強みの一つが、複数言語を操れるマルチリンガルが多いという点です。
日本で働く台湾人の多くは、中国語(北京語・繁体字)をネイティブレベルで話し、日本語も高いレベルで習得しています。これに英語力が加わると、「中国語+日本語+英語」のトリリンガル人材となります。
日本最大級のグローバル人材転職サイトのDaijob.comの登録者データによると、登録している台湾人材の多くが「マルチリンガル」として紹介されています。
この強みを活かし、以下のような役割への配置を検討してみてください。
- 中華圏(中国・香港・台湾)との取引窓口
- 多言語カスタマーサポート
- 海外拠点との連携業務
- 翻訳・通訳のサポート
ポイント3:英語面接で実践的なコミュニケーション力を測る
台湾人候補者の英語力を正確に評価するためには、TOEICなどのスコアだけに頼らず、実際の会話を通じて確認することが重要です。
書類選考の段階でTOEICスコアは参考になりますが、前述のとおり台湾人は「読み書きは得意だがスピーキングは苦手」という傾向があります。
そのため、面接では以下のような方法で実践的な英語力を測ることをおすすめします。
英語面接の実施方法
- 自己紹介や志望動機を英語で話してもらう
- 業務に関連したシチュエーションでのロールプレイ
- 英語の質問に対して即座に回答する形式
- リスニング力を確認するためのヒアリングテスト
読み書きの能力とスピーキング能力は分けて評価し、業務で実際に必要となる英語スキルとのマッチングを確認しましょう。
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英語力を確認するだけでなく、自社のカルチャーにマッチするかを見極めるのが面接の役割です。外国人採用に特化した効果的な質問項目や、候補者の本音を引き出すための評価シートの活用法についてこちらの記事で解説しています。
ポイント4:入社後の英語研修の必要性を見極める
採用時点での英語力が業務に必要なレベルに達していない場合でも、入社後の研修で補うことができます。採用の判断にあたっては、以下の点を考慮してください。
まず、業務で必要な英語レベルと候補者の現在の英語力のギャップを明確にします。日常的な英語メールの読み書きで十分なのか、海外クライアントとの交渉レベルが必要なのかによって、判断基準は変わってきます。
ギャップがある場合は、以下のような研修オプションを検討できます。
おすすめ研修プログラム
- ビジネス英語研修プログラムの提供
- オンライン英会話サービスの福利厚生導入
- 業界特有の専門用語研修
- 英語でのプレゼンテーション研修
台湾人は前述のとおり英語学習への意欲が高い傾向があるため、適切なサポートがあれば短期間で英語力を向上させる可能性があります。
ポイント5:英語ネーム文化を理解してコミュニケーションを円滑に
台湾には、英語名(イングリッシュネーム)を持つ文化があります。この文化を理解し、適切に対応することで、台湾人社員とのコミュニケーションを円滑にできます。
台湾では、小学校の英語授業で先生が生徒一人ひとりに英語名をつけることが一般的です。「David」「Jessica」「Kevin」といった名前を幼少期から使い続け、パスポートにも通称として記載できるほど定着しています。
職場では、以下の点に配慮することをおすすめします。

- 入社時に本名と英語名のどちらで呼ばれたいか確認する
- 社内システムやメールアドレスに英語名を使用することを許可する
- 国際的なミーティングでは英語名の使用が自然
英語名を持っていることは、外国人とのコミュニケーションに慣れている証拠でもあります。
グローバル環境での自己紹介もスムーズに行えるため、国際的な業務への適性を判断する一つの材料にもなりえます。
ポイント6:法的トラブルを未然に防ぐ「準拠法」と「裁判管轄」の合意
台湾人材の採用は、国を跨ぐ「国際労働契約」の側面を持ちます。採用時には、語学力や業務スキルの確認だけでなく、万が一の紛争発生に備えた契約条項の整備が不可欠です。
具体的には、雇用契約書内で以下の2点を明文化しておくことが重要となります。
準拠法(Governing Law)
契約の解釈や有効性をどの国の法律に基づいて判断するかを定めます。日本国内で雇用する場合、通常は「日本法を準拠法とする」旨を合意します。
国際裁判管轄(Jurisdiction)
紛争が生じた際に、どの国の裁判所で審理を行うかを定めます。例えば「東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」といった条項を設けることで、遠方の外国で訴訟に対応せざるを得なくなるリスクを回避できます。
台湾と日本では労働法規や商習慣に差異があるため、契約関係を明確にしておくことは、企業と労働者双方の安心に繋がります。
これらの条項(ボイラープレート条項)を適切に盛り込むことで、法的な予見可能性を高め、円滑なグローバル採用を実現する基盤となります。
5.台湾人材の英語力を活かしたグローバル戦略

台湾人の英語力は、単なる語学スキルにとどまらず、企業のグローバル展開を推進する戦略的資産となりえます。
ここでは、台湾人材の語学力を最大限に活かすための具体的な方策を解説します。
アジア圏のブリッジ人材としての活躍
台湾人材の最大の強みは、中華圏と日本をつなぐ「ブリッジ人材」としての役割を果たせることです。
中国語(北京語)をネイティブレベルで話し、日本語も堪能な台湾人は、中国・香港・台湾といった中華圏市場と日本の本社をつなぐ架け橋となります。
ここに英語力が加わることで、欧米圏との連携も可能となり、真の意味でのグローバル人材として活躍できます。
具体的な活用シーンとしては、以下が挙げられます。

- 中華圏の現地法人・パートナー企業との連絡窓口
- 中国語・日本語・英語の3言語が飛び交う国際会議での調整役
- 海外出張や駐在の際の通訳・サポート
- アジア地域の市場調査やビジネス開発
日本企業がアジア市場への展開を強化する中、このような多言語人材の価値はますます高まっています。
英語を活かせる職種と配置のポイント
台湾人材の英語力を効果的に活用するためには、適切な職種への配置が重要です。

配置の際は、候補者の英語力のレベル(読み書き中心か、スピーキングも含むか)と業務で必要とされる英語スキルのマッチングを意識することが重要です。
台湾人材を活かした社内の国際化推進
台湾人材の採用は、単なる人員補充にとどまらず、社内の国際化を推進する契機にもなります。
多様な言語・文化背景を持つ社員がチームに加わることで、組織全体の国際感覚が磨かれます。
台湾人社員が日常的に英語や中国語を使う姿を見ることで、日本人社員の語学学習への意欲が高まるケースも少なくありません。
また、以下のような役割を台湾人社員に担ってもらうことで、組織の国際化を加速できます。
台湾人社員に任せたいポジション
- 英語ミーティングの導入・ファシリテーション
- 海外人材採用時のロールモデル
- 異文化コミュニケーション研修の講師
- 海外拠点とのオンライン会議の進行役
台湾人材を「外国人社員」としてではなく、「グローバル化推進の戦略的パートナー」として位置づけることで、その価値を最大限に引き出すことができるでしょう。
グローバルな活躍を期待する場合も、日本国内で勤務する際は労働基準法等の上限規制が適用されるため、適切な労務管理が前提となります。
6.まとめ:台湾人の英語力|正しい理解に基づく採用への活用
台湾人の英語力は日本人と同程度ですが、個人差・地域差が大きいため、採用時には学歴や経験を踏まえた実際のコミュニケーション力の確認が重要です。
また、台湾人材は中国語・日本語・英語を操るマルチリンガルとして、企業のグローバル化に大きく貢献できる存在です。
政府のバイリンガル政策により今後さらなる英語力向上が期待される台湾人材を、自社の成長戦略に活かしてみてはいかがでしょうか。