台湾の総人口は約2,331.7万人(2025年11月時点、内政部発表)、高い教育水準と親日感情から、日本企業にとって有望な採用市場です。
しかし、日本を上回るスピードで少子高齢化が進行しており、労働市場は大きく変化しています。
本記事では、最新の人口統計データをもとに、年齢構成や地域分布、労働力人口の動向を解説。
さらに、台湾人材を採用する際の給与相場、在留資格の手続き、採用競争の実態まで、経営者・人事担当者が知っておくべき情報を網羅的にお伝えします。
- 台湾の人口構成・労働力人口の最新データと将来予測
- 台湾人材の給与水準・日本語能力・採用市場の競争環境
- 在留資格(就労ビザ)の種類と取得手続きの流れ
1.台湾人口の最新統計データ(2024年)

台湾の総人口は約2,340万人(2024年1月、外務省発表)で、2019年の約2,360万人をピークに減少傾向にあり、2020年以降は死亡数が出生数を上回る自然減が続いています。
参考:Georank Taiwan Population: current counter, charts, ranking
台湾の国土面積は約3.6万平方キロメートルで、日本の九州よりやや小さい規模です。限られた土地に2,340万人が暮らしているため、人口密度は世界的にも高水準にあります。
国家発展委員会(國發會發布)の予測によれば、台湾の人口は2019年の約2,360万人をピークに、既に減少フェーズに入っています。
2049年には2,000万人を割り込むとの試算もあり、人口減少対策は喫緊の課題となっています。

人口構成を男女別に見ると、男性は全体の約49.5%、女性は約50.5%を占めており、一般的に女性の方が長寿であることから、女性比率がやや高くなっています。
台湾では共働きが一般的で、多くの女性が社会で活躍している点も特徴的です。
参考:Population Projections for the R.O.C. (Taiwan)
2.台湾の年齢別人口構成と将来予測

台湾は日本を上回るスピードで少子高齢化が進行しています。
ここでは、労働人口の割合や高齢化の進行速度、出生数の推移など、年齢別の人口構成と将来予測を詳しく解説します。
労働人口(15-64歳)は全体の約70%
2024年の台湾における年齢別人口構成は、14歳以下(年少人口)が約274万人(約11.7%)、15〜64歳(生産年齢人口)が約1,617万人(約69.1%)、65歳以上(高齢者人口)が約449万人(約19.2%)となっています。
2024年 台湾の年齢別人口構成
総人口:約2,340万人(2024年1月時点)
14歳以下
15〜64歳
65歳以上
生産年齢人口の比率は約70%で、日本の約60%と比較すると依然として高い水準です。しかし、この比率は2015年をピークに年々低下しています。
台湾の年齢中央値は44.8歳で、日本(48.7歳)よりやや若い人口構成ですが、少子高齢化により今後は上昇が見込まれます。
参考:內政部戶政司全球資訊網
少子高齢化が日本以上のスピードで進行
台湾の少子高齢化は日本以上に急速です。
2024年時点で65歳以上の割合は19.18%ですが、国家発展委員会の予測では2025年には65歳以上の人口比率が20%を超え、『超高齢社会』へ突入することが見込まれています。
さらに将来予測では、65歳以上の割合は2034年に27.19%、2044年に34.22%、2054年には40.06%に達し、「10人に4人が高齢者」という社会構造になります。
フランスでは高齢者割合が7%から14%に増えるまで115年を要しましたが、台湾ではわずか25年でこの変化が起きており、世界でも類を見ないスピードです。
この急速な変化により労働市場は大きな影響を受けており、台湾政府は外国人労働者を40万人増やす目標を掲げています。
出生数は9年連続減少で13万人台に

台湾の少子化は深刻です。2024年の出生数は13万4,856人で、9年連続の減少となりました。
最新の月次統計では、出生数が死亡数を下回る『デッドクロス』の状態が常態化しており、合計特殊出生率は0.89と世界最低水準にあります。
華人社会では辰年は縁起が良く出生数が増える傾向がありますが、辰年の2024年でさえ前回の寅年より4,130人少なく、文化的要因でも減少を食い止められない状況です。
背景には、物価高や住宅費高騰といった経済的要因があります。
30〜34歳女性のうち子どもを産んでいるのはわずか4割で、経済的に安定する頃には出産適齢期を過ぎてしまうケースが多いと指摘されています。
台湾国内で若年労働力の確保が難しくなる一方、日本企業にとっては台湾人材獲得のベストタイミングともいえます。
参考:Population Projections for the R.O.C. (Taiwan)
3.台湾人材の採用市場としての魅力

台湾は高い教育水準と日本語人材の豊富さから、日本企業にとって魅力的な採用市場です。
ここでは、労働市場の特徴、高学歴人材の実態、日本語能力を持つ人材の規模について解説します。
労働人口は約1,600万人で転職市場が活発
台湾の労働力人口は約1,600万人で、労働参加率は約59%、失業率は約3.5%と安定しています。
台湾の労働市場の特徴は転職市場の活発さです。能力給が基本で、学生は給与を重視する傾向があり、より良い条件を求めて転職することへの抵抗感は日本より低いとされています。
就職活動のスタイルも日本とは異なります。台湾の大学は9月始まりで6月卒業。3月に大学内でジョブフェアが実施されることが多く、卒業後に仕事探しを始めることも一般的です。
近年、台湾では日本企業が採用イベントを開催したりと、採用競争は激化しています。メルカリや楽天などの日系企業のほか、Google、Amazon、Microsoftなど欧米メジャーTech企業も台湾でエンジニア採用を活発に行っています。
参考:行政院主計総処 Manpower Survey Results、マイナビ国際派就職
大卒以上の高学歴人材が豊富
台湾は「超」がつくほどの高学歴社会です。高校卒業者の大学・専門学校への進学率は約95%以上で、日本の約58%を大幅に上回ります。
2022年の就業者のうち、大学・専門学校卒以上は約621万人で全就業者の55%以上を占めます。毎年約30万人の卒業生が輩出され、うち5万人以上が修士・博士の学位を取得しています。
台湾には約159校の大学があり、国立台湾大学は世界大学ランキング(QS)で68位にランクイン。国立清華大学や国立成功大学も理系分野で優秀な人材を輩出しています。
技術系大学は実務応用を重視した教育を行い、即戦力人材を育成。GoogleやAmazonが台湾にR&D拠点を設ける背景には、こうした高度な技術教育を受けた人材の存在があります。
参考:台湾教育部(Ministry of Education)、World Bank Gross Enrollment Ratio
日本語能力を持つ台湾人は推定20〜30万人
台湾人材の大きな魅力が日本語能力の高さです。電通の調査によれば、日本語を学習している台湾人(18〜64歳)は175万〜240万人と推定されています。
教育機関で日本語を学ぶ台湾人は約14万3,632人で、英語に次いで学習者が多い外国語です。4年制大学40校に日本語学科が設置されており、専門的に学ぶ環境が整っています。
日本語能力試験(JLPT)の受験者数は約3万3,000人で、アジア地域で2番目の多さを誇ります。
日本語力が高い背景には、1895年から1945年までの日本統治時代の影響に加え、アニメやドラマなど日本のポップカルチャーへの関心があります。
日本語学習経験者は訪日経験率も高く、60%以上が「日本で日本語を使いたい」という意欲を持っています。
参考:WACOCA NEWS
▼あわせて読みたい
台湾人材の日本語能力を客観的に評価するには、検定試験の活用が不可欠です。主要な試験の種類やスコアの見方、採用基準への取り入れ方を詳しく解説したこちらのガイドを、選考時のミスマッチ防止にお役立てください。
4.台湾人材を採用する際のポイント

台湾人材の採用を成功させるには、ターゲット層の設定や競合環境の把握が重要です。
ここでは、狙い目となる年齢層、IT人材の採用競争の実態、日台の給与比較について解説します。
狙い目は20代後半〜40代前半の中堅層
台湾人材の採用では、20代後半〜40代前半の中堅層が狙い目です。
この年齢層は社会人経験と専門スキルのバランスが取れており、家庭の事情などで身動きが取りにくくなる前の段階で、海外就労にも柔軟に対応できる傾向があります。
また、この世代は日本のポップカルチャーに親しんで育ち、日本への関心や親しみが特に強いとされています。日本語学習経験者も多く、コミュニケーション面でのアドバンテージがあります。
台湾の新卒初任給は大卒で平均約3.6万台湾元(約17万3,400円)、大学院卒で約4.0万台湾元(約19万2,600円)。
日本の大卒初任給(約22万円)より低いですが、台湾の物価は日本の約1/2のため実質的な生活水準に大きな差はありません。
採用時はキャリアアップや技術習得など、日本で働くメリットを明確に伝えることが重要です。
IT・エンジニア職は採用競争が激化
台湾のIT・エンジニア人材は世界的に注目を集め、採用競争が激化しています。国内のITエンジニア数は約35万人で、年間約2万人ペースで増加中です。
しかし優秀なエンジニアの獲得競争は熾烈です。特に2025年には労働力人口が27万人不足するとの試算もあり、インドとの労働者受入MOU締結など、政府レベルでの対策も進んでいます。
2018年以降、Microsoft、Amazon、Google、IBMがAI研究開発拠点を台湾に開設。2017年にはGoogleがHTCのスマートフォン部門を買収し、約2,000人が転籍しました。
参考:DIGI Why Google, IBM & Microsoft Are All Expanding In Taiwan This Year
台湾エンジニアの平均年収は約230万〜360万円ですが、外資系の進出で上昇傾向にあり、開発経験5年以上では450万〜600万円、トップエンジニアには700万〜900万円のオファーも珍しくありません。
以前は日本企業も人気でしたが、台湾国内で最先端のグローバルな仕事ができるようになり、日系企業の人気は相対的に後退しています。待遇面以外の動機づけが重要です。
日本の給与水準は台湾より高く競争力あり
日本での就労を検討する台湾人にとって、給与水準は重要な判断材料です。
台湾の平均年収は約333万〜346万円に対し、日本は約445万〜460万円と約100万円の差があり、日本は依然として競争力を持っています。
地域差も重要です。半導体産業が集積する新竹市・新竹県の平均年収は約720万円で、台北市(約600万円)を上回ります。
新竹のエンジニア採用では、日本企業の提示額が必ずしも魅力的に映らない可能性があり、福利厚生やキャリアパスを含めた総合的なパッケージ提示が重要です。
注意点
台湾の平均年収額については留意点もあります。台湾は社会保険や税金が安く、物価も日本の約1/2程度のため、実質的な可処分所得で考える必要があります。
また業種による差も大きく、金融・保険業の管理職は月収約54.7万円と高水準ですが、宿泊・飲食業では最低賃金に近い水準です。
5.台湾人材採用のメリットと注意点
台湾人材には高い教育水準や文化的親和性といったメリットがある一方、採用手続きには注意点もあります。
ここでは、採用のメリットと言語能力、在留資格の手続きについて解説します。
高い教育水準と文化的親和性がメリット
台湾人材の最大のメリットは、高い教育水準と日本との文化的親和性です。
大学進学率は約95%と高く、理系分野では物理学、数学、工学、コンピューターサイエンスなどで高度な教育を受けた人材が豊富です。製造業とサービス業で長年にわたる技術・管理の蓄積があり、質の高い人材が揃っています。
文化的親和性もメリットです。2024年度の対日世論調査では81%が「日本に親しみを感じる」と回答。日本の食文化や観光地への関心が高く、日本での生活・就労への心理的障壁が低いといえます。
参考:日本台湾交流協会 2024 年度台湾における対日世論調査
台湾人の国民性は明るくフレンドリーで、親切で助け合いの精神が強いとされています。
共働きが一般的で女性の社会進出も進んでおり、男女賃金格差は15.8%と日本(30.6%)より小さく、多様性を重視する企業にととても適しています。
言語面では日本語・英語の両方に対応可能
台湾人材の言語能力は日本企業にとって大きなメリットです。
日本語については、教育機関で約14万人、独学を含めると175万〜240万人が学習中。JLPT受験者数はアジア地域で2番目に多く、N1・N2レベルの取得者も多数います。
アニメやドラマへの関心から始めた学習をビジネスレベルまで高めている人材も少なくありません。
参考:国際交流基金 Survey on Japanese-Language Education Abroad 2024
英語については、幼少期から学校教育で重要視されており、若い世代を中心に基本的なコミュニケーション能力を持つ人が多い傾向です。
注意点
台湾人の英語力については世界ランキングでは88カ国中48位と個人差があるため、採用時に必要な語学力を確認することが重要です。
公用語の台湾華語に加え、台湾語や客家語を話す人材もいます。中華圏市場への展開を考える企業にとって、中国語と日本語を操れる「ブリッジ人材」として活躍が期待できます。
在留資格の選択と手続きに注意が必要
台湾人材を日本で雇用するには、適切な在留資格の取得が必要です。最も一般的なのは「技術・人文知識・国際業務」(技人国ビザ)で、在留台湾人約5万7,000人のうち約1万3,000人が取得しています。
取得要件は、大学卒業または日本の専門学校卒業、業務内容と学歴・職歴の関連性、日本人と同等以上の報酬です。
台湾から招へいする場合、まず企業担当者が入管で「在留資格認定証明書」を申請します。審査期間は通常1〜3カ月で、繁忙期は倍かかることも。
許可後、証明書を本人に郵送し、本人が日本台湾交流協会でビザを申請します。証明書の有効期間は3カ月のため、期限内の入国が必要です。
留学生を採用する場合は在留資格変更が必要で、12月〜5月は繁忙期のため早めの申請が推奨されます。
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6.まとめ
台湾の総人口は約2,331.7万人という数字の背景には、日本以上に急速な少子高齢化の進行と、それに伴う労働市場の変化があります。
生産年齢人口(15〜64歳)は全体の約70%と依然として高い水準にありますが、今後は減少が加速する見込みです。
台湾は人口2,340万人、労働人口約1,600万人を擁し、大学進学率95%超という高学歴社会です。
日本語学習者は推定200万人以上、81%が親日感情を持つなど、日本企業との親和性は最良といえます。一方で、IT人材はGoogleやAmazonとの獲得競争が激化しており、採用には戦略が求められます。
在留資格の取得には1〜3カ月を要するため、計画的な採用活動が不可欠です。