製造業で特定技能外国人を雇用する企業にとって、2025年12月26日以降はJAIM(一般社団法人工業製品製造技能人材機構)への入会が法的義務となります。
従来の協議会から民間主導の新組織への移行により、年会費負担や賃上げ義務など新たな要件が発生しますが、特定技能外国人の雇用を考えている企業はどのように対処したらいいのでしょう?。
本記事では、JAIMの役割から入会手続きの流れ、費用、そして雇用側が押さえるべき重要ポイントを詳しく解説します。
- JAIMへの入会が法的義務である理由と未加入時のリスク
- 年会費の詳細と中小企業・正会員団体割引の活用方法
- 大企業3.0%・中小企業1.5%の賃上げ義務と対応策
1.JAIMとは?工業製品製造技能人材機構の概要と設立背景

出典元:JAIM
製造業界に革命をもたらす新組織JAIM。2025年に特定技能制度の大幅拡充により誕生したこの機関が、なぜ業界の注目を集めているのか。
従来の官主導から民間主導への歴史的転換の背景には、どのような戦略的意図が隠されているのでしょうか。
JAIMはどんな団体?設立の目的と役割
JAIM(一般社団法人工業製品製造技能人材機構)とは、2025年4月に設立、同年6月25日に経済産業大臣の登録を受けた民間の一般社団法人です。
正式名称は「一般社団法人工業製品製造技能人材機構」で、英語では「Japan Association for Human Resources in Industrial Product Manufacturing」となります。
JAIMの意味を端的に表現すると、製造業分野における特定技能外国人の適正かつ円滑な受入れを実現する専門機関です。
具体的には以下の役割を担います。
主要な役割 | 具体的な内容 |
---|---|
制度運営 | 特定技能評価試験の作成・実施 |
相談・支援 | 受入れ事業所からの相談窓口運営 |
情報提供 | 制度の周知・啓発活動 |
品質管理 | 法令遵守の指導・監督 |
新サービス | 試験対策講座や申請セミナーの提供 |
これまで経済産業省が委託事業として実施していた業務を引き継ぎつつ、受入れ産業自身が主体となって運営に関わる新しい体制を構築しています。
製造業界の各種団体が協力して設立した組織であり、現場のニーズを反映したより実践的な支援が期待されているのです。
また、JAIMとは単なる手続き機関ではなく、製造業分野での人材確保を図り、工業製品製造業の健全な発展に資することを使命としています。
日本の製造業が長年培ってきた高い技術力を維持・発展させながら、少子高齢化による労働力不足という課題に対応するための重要な役割を果たします。
JAIMの意味を深く理解することで、企業は単なる義務対応を超えた戦略的活用が期待できるでしょう。
各特定技能について詳しく知りたい方は、「特定技能1号」「特定技能2号」の記事で詳しくご紹介しています。
JAIMが新設された背景
JAIMが新設された背景には、特定技能制度の大幅な拡充があります。2024年3月29日の閣議決定により、製造業分野における変化は劇的なものとなりました。

この大幅な拡充により、従来の経済産業省主導の「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」では、増大する業務量と多様化するニーズに対応することが困難になりました。

参考:経済産業省 製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(協議会)
これらの課題を解決するため、「官民連携から民間主導へ」という方針転換が図られ、製造業界自身が運営の主体となるJAIMが設立されました。
JAIMとは業界団体が協力して設立した組織であるため、現場の声を直接反映した制度運営が可能となり、より実効性の高い支援サービスの提供が期待されています。
この移行は、特定技能制度がより成熟した制度として発展していく過程で必要不可欠な変化といえるでしょう。
2.JAIMと特定技能外国人との関係とは

なぜJAIMへの入会が求められるのでしょうか?
ここではJAIM未加入の際のリスクから、気になる年会費の仕組み、そして経営者が気になる「賃上げ義務」までご紹介していきます。
JAIM入会はなぜ必須?未加入で起こる問題点
JAIMへの入会は、特定技能外国人を雇用する全ての製造業事業所にとって法的義務となっています。
これは単なる任意の業界団体への参加ではなく、2025年5月26日に改正・施行された上乗せ基準告示に基づく強制的な要件です。
JAIMの意味を正しく理解すれば、これが特定技能制度の中核を担う重要な機関であることが分かります。
入会が必須となる根拠
- 経済産業省の上乗せ基準告示による法的義務化
- 特定技能外国人の在留資格申請時の必要要件
- JAIMが経済産業大臣登録を受けた唯一の実施法人
未加入による具体的な問題点として以下の内容が懸念されます。
問題の種類 | 具体的な影響 | 発生時期 |
---|---|---|
在留資格申請の停止 | 新規外国人の受入れ不可 | 2025年12月26日以降 |
在留資格更新の拒否 | 既存外国人の雇用継続不可 | 同上 |
法的コンプライアンス違反 | 制度違反による行政処分リスク | 即時 |
業務停止命令 | 特定技能外国人雇用の全面停止 | 処分次第 |
特に重要なのは、2025年12月25日まではJAIMと協議会の両方の名簿が有効ですが、12月26日以降はJAIMの賛助会員名簿のみが在留諸申請時に有効となることです。
つまり、この日を境に未加入企業は一切の特定技能外国人関連業務ができなくなります。
現在特定技能外国人を雇用している企業が未加入のままでいると、既存の外国人労働者の在留資格更新ができず、結果的に雇用継続が不可能になります。
企業にとっては貴重な戦力を失うことになり、外国人労働者にとっては職を失うという深刻な事態です。
また、JAIMは単なる手続き機関ではなく、特定技能制度の適正運営を監督する役割も担っているため、未加入企業は制度違反として行政処分の対象となる可能性もあります。
気になる入会金・年会費はいくら?
JAIMの費用構造は、企業の負担を軽減するため年会費のみの設定となっています。
新規入会企業(パターンC)の場合、入会時期により年会費が調整される仕組みとなっています。
■新規入会企業(パターンC)の年会費(2025年度)
企業分類 | 正会員団体所属 | 正会員団体未所属 |
---|---|---|
中小企業 | 30,000円 又は 60,000円の月割額の安い方 | 31,500円 又は 63,000円の月割額の安い方 |
大企業 | 40,000円 又は 80,000円の月割額の安い方 | 41,500円 又は 83,000円の月割額の安い方 |
年会費の計算方法: 新規入会企業は、以下の2つの金額を比較して安い方を支払います。
- 2025年度特別料金(上記表の左側の金額)
- 2026年度年会費の月割額(上記表の右側を入会月で月割計算)
例:中小企業・正会員団体所属で9月入会の場合
- 2025年度特別料金:30,000円
- 2026年度年会費の月割:60,000円 ÷ 12か月 × 4か月(9月~12月)= 20,000円
- 支払額:20,000円(安い方を適用)
中小企業の定義(中小企業庁基準)
- 資本金3億円以下、または
- 常時使用従業員数300人以下
年会費には利用可能な以下の割引制度があります。
利用可能な割引制度 | 対象 | 証明方法 |
---|---|---|
中小企業割引 | 上記定義に該当する企業 | 資本金証明書類または従業員数証明書類 |
正会員団体割引 | JAIMの正会員である製造業団体に所属 | 年額1,500円 |
両方の割引制度は併用可能です。
この年会費により、特定技能評価試験の受験機会、相談窓口の利用、最新制度情報の提供、各種セミナーへの参加権などのサービスを受けることができます。
経営者が特に注意すべき「賃上げ」の義務化とその基準
JAIMの最も重要な要件の一つが、製造業分野特定技能外国人受入れ企業に対する賃上げ義務です。
これは単なる努力目標ではなく、継続的な会員資格維持のための必須要件となっています。JAIMの製造業における賃上げ基準を理解することは、経営戦略上極めて重要です。
賃上げの具体的基準
企業規模 | 必要賃上げ率 | 対象 | 提出時期 |
---|---|---|---|
大企業 | 年3.0%以上 | 従業員一人あたり給与支給額の対前年伸び率 | 毎年1月頃 |
中小企業 | 年1.5%以上 | 同上 | 同上 |
賃上げ基準を満たせない場合の対応
- 第一段階:追加対応の実施
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上に設定
- 以下の4項目から2つ以上の状況を提出
- 労働生産性の対前年伸び率の状況
- 当該年度の設備投資の状況
- 国内人材確保の取組の状況
- 特定技能外国人の定着・技能等向上の状況
- 第二段階:継続未達成時の処分
- JAIMからの除名等の措置
- 特定技能外国人雇用の停止

この賃上げ義務は、単なるコストアップではなく、外国人材の定着促進と日本の製造業全体の競争力向上を目的としています。
長期的には、質の高い人材の確保と企業成長につながる投資として捉える必要があります。
3.JAIMが提供する支援サービスと活用メリット

JAIMの支援サービスを戦略的に活用することで、加入コスト以上のリターンを生み出すことも可能です。
ここでは、JAIMの支援サービスと活用メリットについてご紹介していきます。
JAIMの具体的な支援内容
JAIMは従来の協議会から業務を引き継ぎつつ、民間組織ならではの柔軟性を活かした新たな支援サービスを提供しています。
これらのサービスは、特定技能外国人の受入れから定着まで、企業の実務を総合的にサポートします。
■基本サービス(協議会から継承)
サービス項目 | 内容 | 利用方法 |
---|---|---|
相談窓口運営 | 制度・手続きに関する専門相談 | 電話・メール対応 |
特定技能評価試験 | 1号・2号技能評価試験の実施 | 国内・海外で定期実施 |
制度情報提供 | 法令改正・運用変更の周知 | HP・メール配信 |
法令遵守指導 | 適正な受入れ実施の監督・指導 | 定期確認・助言 |
新規付加価値サービス
1. 試験対策講座
特定技能評価試験の合格率向上を目的とした実践的な講座を提供します。これまで企業が独自に行っていた外国人材の試験準備を、専門機関がサポートすることで効率化を図れます。
2. 申請セミナー
在留資格申請や更新手続きに関する実務セミナーを定期開催します。複雑な手続きを正確に理解し、申請ミスによる遅延や却下を防止できます。
3. 個別相談
企業の規模や業種に応じた個別相談に対応し、最適な外国人材活用戦略の策定をサポートします。
相談窓口の詳細情報
- 電話番号: 03-6838-0077
- 対応時間: 10:00~17:30(土日・祝日・年末年始を除く)
- メールアドレス: seizou_tokuteiginou_soudanmadoguchi@jaim-skill.or.jp
- 対応内容: 制度全般、手続き方法、法令解釈、実務相談
JAIMでは、制度変更や重要な情報をタイムリーに提供するため、複数のチャネルを通じて情報発信を行っています。
会員企業は常に最新情報にアクセスでき、制度変更に迅速に対応することが可能です。
経営者がJAIMのサービスを活用すべき理由
JAIMのサービス活用は、単なる法的義務への対応を超えて、企業の競争力強化と経営効率化に直結する戦略的な投資といえます。
JAIMサービス活用のメリット
1. リスク管理の徹底
専門機関による正確な情報提供により、法令違反や手続きミスによる事業停止リスクを大幅に軽減できます。一度の申請ミスが数か月の業務停止につながる可能性がある中、専門サポートの価値は年会費を大きく上回ります。
2. 業務効率化とコスト削減
- 社内での制度研究・手続き準備時間の大幅短縮
- 専門知識を持つ担当者の育成コスト削減
- 申請代行業者への依存度低下
3. 外国人材の質向上
試験対策講座の活用により、より技能レベルの高い外国人材を確保できます。これは長期的な生産性向上と人材育成コストの削減につながります。
4. 業界ネットワークの構築
JAIMを通じて他社の取組事例や成功パターンを学ぶことができ、自社の外国人材活用戦略の改善に活かせます。
5. 将来的な制度拡充への対応力
特定技能制度は今後も拡充が予想されます。JAIMとの継続的な関係により、新たな制度変更にもいち早く対応でき、競合他社に対する優位性を維持できます。
具体的な活用効果の試算
- 手続き時間短縮:月10時間 × 担当者時給3,000円 × 12か月 = 360,000円/年
- 申請ミス防止:リスク回避価値 = 200,000円/年
- 専門研修コスト削減:外部研修費用 = 100,000円/年
- 年間効果:約660,000円
年会費30,000~41,500円に対して、活用効果は15倍以上のROIを実現できる計算になります。
4.【Q&A】JAIMに関するよくある疑問を解消!

「今すぐ何をすべきか分からない」「手続きが複雑すぎる」「賃上げ基準を満たせるか不安」など、JAIMに関するよくある疑問について、Q&A形式でご紹介していきます。
Q:特定技能外国人を雇用済みの場合はどうすればいい?
現在特定技能外国人を雇用している企業は、必ずJAIMへの入会手続きが必要です。協議会への加入状況に関係なく、全ての企業が対象となります。
パターン別の対応方法
パターンA:協議会加入済の企業
- 2025年7月1日~22日に協議会へ情報移行同意書(様式1)を提出
- 同期間中にJAIMへの入会手続きを実施
- 8月下旬以降に年会費を支払い
パターンB:協議会入会手続き中の企業
- 協議会の審査と並行してJAIMへの手続きを実施
- 協議会の結果に関わらずJAIMへの入会が必要
重要な移行スケジュール
- 2025年12月25日まで: 協議会名簿とJAIM名簿の両方が有効
- 2025年12月26日以降: JAIM名簿のみが有効
既存の外国人労働者の在留資格更新時には、2025年12月26日以降はJAIM名簿の提出が必須となるため、期限内の入会が絶対条件となります。
Q:JAIMが登録支援機関の役割も果たすのか?それとも別途登録支援機関は必要か?
JAIMは登録支援機関ではありません。特定技能外国人への支援計画の実施については、従来通り自社で行うか、別途登録支援機関に委託する必要があります。
役割分担の明確化
- JAIM: 制度運営・評価試験・相談対応・法令遵守監督
- 登録支援機関: 個別の外国人への生活支援・相談対応・各種手続きサポート
企業は引き続き、登録支援機関との契約継続または新規契約が必要です。JAIMは制度全体の運営機関として、より上位の機能を担っています。
登録支援機関ではどのような支援が期待できるのか、こちらの記事で詳しく解説しています。
Q:入会手続きはどのように行うのか?
入会手続きは企業の状況に応じて3つのパターンに分かれており、それぞれ異なる手続きが必要です。

詳細な手続き方法や必要書類は、JAIMのWebページで確認できます。
Q:賃上げ基準を満たせない場合の対応策は?
賃上げ基準を満たせない場合でも、すぐに除名処分となるわけではありません。段階的な対応措置が設けられており、改善の機会が提供されます。
第一段階:代替対応の実施
- 最低賃金の引上げ: 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上に設定
- 改善取組の報告: 以下から2つ以上を選択して実施状況を報告
- 労働生産性の向上取組
- 設備投資の実施
- 国内人材確保の強化
- 特定技能外国人の定着・スキル向上施策
具体的な改善策の例
- 生産性向上: AI・IoT導入、作業効率化、品質改善活動
- 設備投資: 省力化設備導入、生産ライン改善
- 人材確保: 採用強化、働き方改革、福利厚生充実
- 外国人材育成: 日本語教育、技能研修、キャリア開発
これらの取組により、単純な賃上げではなく、総合的な企業力向上を通じた持続可能な改善が評価されます。重要なのは、一時的な対応ではなく、継続的な改善への取組姿勢を示すことです。
5.JAIMを理解し、特定技能外国人と共に成長する未来へ

2025年に新設されたJAIMは、製造業における特定技能外国人雇用の新たなスタンダードを確立しました。
JAIMとは何かを理解し、その意味を正しく捉えることで、企業は新たな成長機会を見出すことができます。
JAIMの仕組みを通じて、グローバルに競争力のある製造業企業として発展する未来を築いていきましょう。
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