今日本に働きにきている外国人実習生が増えている中、インドネシアはベトナムに次いで2番目に多い国となっています。
この記事ではインドネシア人を雇っていくために事前に理解しておきたい、インドネシア人の特徴や文化について詳しく解説します。
インドネシア人との共創こそが人手不足を解消させるとともに、これからの企業を大きく成長させる鍵になるかもしれません。
- インドネシアの基本情報と国民性
- インドネシア人を雇用するためのポイントとメリット
- インドネシア人の長期的に活用し定着させるための方法
1.インドネシア人の基本情報と国民性

インドネシアってどんな国?基本データを解説
インドネシア共和国は東南アジアに位置する島国で、2025年のインドネシアの総人口は約2億8,000万人と推定されており、世界第4位の人口大国です。
面積は約192万平方キロメートルで日本の約5倍という広大な国土を持ちます。
首都はジャカルタで、公用語はインドネシア語です。

赤道直下に位置し、通年27~28度の高温多湿の熱帯性気候で、乾季(4月~9月)と雨季(10月~3月)があります。
国の経済は東南アジアでは最大規模で、G20のメンバーでもあります。
天然資源が豊富で、農業、製造業、サービス業などが主要産業となっています。
インドネシア人の国民性:温和で協調性が高い
インドネシア人の特徴としては一般的に温和で穏やかな性格の持ち主が多いと言われています。
「ゴトン・ロヨン(※)」と呼ばれる相互扶助の精神を重んじ、協調性が高く、集団での作業や共同作業を大切にする傾向があります。
(※)大インドネシア語辞典(KBBI)によると、
ゴトン・ロヨンとは、協力し合い、助け合い、支援し合う活動のことです。
また、「ジャムカレット(ゴムの時間)」という概念があり、時間に対してやや緩やかな感覚を持っていることも特徴です。
日本の時間に正確な文化とは異なる部分もありますが、仕事に対する責任感は強く、任された仕事はしっかりと遂行する傾向があります。
イスラム教とインドネシア人の生活習慣
インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を持つ国で、
国民の約87%がイスラム教を信仰しています。ただし、国教として定められているわけではなく、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教なども公認されています。
イスラム教の信仰に基づき、一日5回の礼拝(サラート)を行うことや、断食月(ラマダン)には日の出から日没まで断食を行うなどの宗教的習慣があります。
また、豚肉やアルコールの摂取を避ける食事制限もあります。インドネシア人の多くは信仰心が厚く、宗教が日常生活に深く根付いているため宗教的習慣への配慮が重要になります。
2.職場で活きるインドネシア人の5つの特徴

温和で忍耐強い性格が職場の人間関係を円滑に
インドネシア人は一般的に温和で忍耐強い性格の持ち主が多く、この特性は職場の人間関係を円滑にする大きな強みとなります。
対立や衝突を好まず、問題が生じても穏やかに対応する傾向があります。また、ヒエラルキーを重んじる文化から、上司や先輩の指示に従順で指導を素直に受け入れる姿勢があります。
協調性が高く、チームワークに優れている
個人主義よりも集団の調和を重視する文化で育っています。このため、チームの一員としての自覚が強く、協力して業務に取り組む姿勢に優れています。
職場では、同僚との関係を大切にし、周囲と協力しながら仕事を進めたり、自分の成果よりもチーム全体の成功を重視する傾向があり、非常に協調性が高いです。
これは、チームプロジェクトや共同作業が多い職場環境で特に活きてくるでしょう。日本の「和」を重んじる企業文化とも親和性が高く、日本企業に馴染みやすい特徴と言えます。
日本語の習得が比較的早い
インドネシアでは高校での第二外国語の選択肢として日本語があり、来日前に基礎的な日本語を学んでいる場合があります。
また日本のアニメ・漫画・音楽などの文化が親しまれており、日本語や日本文化への関心が高い若者が多いです。
さらに、インドネシア語と日本語には文法構造に類似点があること(主語-目的語-動詞の語順など)、また発音面でも、日本語の音韻体系に近い音が多いため、比較的正確な発音を習得しやすい傾向があります。
ただし、来日当初は基本的な日本語の読み書きができる程度の場合が多いため、職場でのコミュニケーションをサポートする環境作りが重要です。
細やかな作業が得意で丁寧な仕事ぶり
インドネシア人は細部に気を配り、丁寧に作業を行う特性があります。
特に手先の器用さを活かした精密な作業において高い能力を発揮することが多く製造業や食品加工業などでは、細かい部品の組み立てや検品、繊細な調理作業などで評価されることが多くあります。
また、忍耐強い性格で同じ作業を長時間続ける必要がある業務にも適性があります。
この丁寧さと細やかさは、品質管理が重視される日本の製造業や、きめ細かなサービスが求められる接客業などで特に価値を発揮します。
イスラム教の信仰に基づく礼節と誠実さ
イスラム教では正直さや誠実さが重視され、これが職業倫理にも反映されています。約束を守ることや嘘をつかないことを重んじる傾向があり、信頼関係を築きやすい特性を持っています。
またイスラム教の礼拝の習慣は規律性と自己管理能力を養うことにもつながっており、時間管理や日常の行動において一定の規律を持って行動する傾向があります。
ただし、イスラム教の信仰を持つインドネシア人を雇用する際には、礼拝の時間や場所、ラマダン(断食月)への配慮など、宗教的習慣に対する理解と尊重が必要です。
3.インドネシア人材の雇用で知っておくべき文化的な違い

イスラム教の礼拝と断食への理解と配慮
インドネシア人の多くが信仰するイスラム教では、お祈りの仕方や飲食にルールがあります。このことをしっかり理解と配慮を示すことが大切です。
日の出前、正午過ぎ、午後、日没後、就寝前に5~10分短時間祈る。
職場では、礼拝の時間や断食の期間になったら業務の調整や簡単な休憩が取れるよう配慮することが重要です。
また食事提供の際には、イスラム法で許されている食品をしっかり把握し選択肢を用意することが望ましいでしょう。
コミュニケーションスタイルの違いと対応方法
インドネシア人の特徴としては一般的に「高コンテキスト文化」に属し、言葉以外の非言語コミュニケーションや文脈に頼る傾向と直接的な拒否や否定を避ける傾向があります。
効果的なコミュニケーションをとるためには
- 明確でシンプルな日本語を使用する
- 必要に応じて視覚的な補助(図や実演など)を活用する
- 指示や期待を具体的に伝える
- 理解度を確認するために質問を促す雰囲気を作る
- フィードバックは肯定的な内容から始め、改善点は建設的に伝える
ことが効果的です。
相互理解のためには、双方が文化的な違いを学び、歩み寄る姿勢を心掛けましょう。
時間感覚の違いとスケジュール管理のコツ
インドネシアでは時間に対して比較的柔軟な感覚を持っており、日本の「時間厳守」の文化とは対照的で、業務上の摩擦が生じることがあります。
例えば、インドネシア人にとって約束の時間が「10時」という場合、10時少し過ぎでも「ほぼ時間通り」と感じる傾向があります。これは怠慢ではなく、文化的な時間感覚の違いから生じるものです。
時間感覚の違いを理解した上で適切な指導と環境を整えてあげることで、インドネシア人従業員も日本企業の時間管理に適応していくことができます。
4.インドネシア人技能実習生の受け入れポイント

技能実習制度の基本と受け入れ条件
まず、受け入れ企業の業種・職種が技能実習対象職種であり、現在では農業、漁業、建設、食品製造、機械・金属、縫製、介護など多くの業種が対象となっています。






ただし、技能実習2号・3号への移行を考える場合は「移行対象職種」であるかどうかが重要です。「移行対象職種」は以下でチェックできます。
また技能実習生を受け入れる際には様々な条件を満たす必要があります。
技能実習生の受け入れ企業の条件
- 技能実習責任者・生活指導員の配置
- 技能実習日誌の作成(技能実習終了後1年以上保存)
- 雇用条件、社会保険・労働保険の加入
- 宿舎の確保
- 生活のための設備環境
- 給与は最低賃金以上
また受け入れには監理団体を通じた「団体監理型」での受け入れが一般的で、監理団体が実習計画作成支援や巡回指導などを行います。監理団体の選定も成功のカギとなります。
インドネシア人技能実習生の日本語能力
来日時点での日本語能力は簡単な挨拶や基本的な日常会話、ひらがな・カタカナの読み書きができる程度であることが多いです。ただし、インドネシア人は他のアジア諸国出身の技能実習生と比較して、日本語の習得が比較的早いと言われています。
だからこそ受け入れる側の持続的に日本語支援を続けていくことで、日本語能力がより身に付き、業務効率がアップしたり、実習生の心理的な安心感や定着率にも大きく影響します。
具体的にはこのようなものがあります。
◆日本語サポート対策◆
・日本語と母国語の対訳集や図解マニュアルの作成
・日本語学習アプリやオンライン教材の紹介
・日本人社員との交流の機会を増やす
・定期的な日本語学習会や勉強会の開催
コミュニケーションの壁が高いと感じると、ストレスから失踪や途中帰国につながるリスクもあるため、言語面でのサポート体制構築は重要な受け入れポイントです。
宿舎や生活環境の整備のポイント
適切な宿舎や生活環境の整備は彼らの生活の質と実習の成功に直結する重要な要素です。
サポート項目 | 支援内容 |
---|---|
宿舎設備 | ・一人当たりの居住スペースは4.5㎡以上確保する ・寝室は個室または少人数での共有 ・台所、浴室、トイレ、洗濯機などの生活設備を整える ・冷暖房設備を設置し、季節に応じた快適な環境を提供する ・インターネット環境を整える |
宗教の 配慮 | ・礼拝スペースの確保または確保しやすい間取りの工夫 ・調理設備は豚肉調理用と分けるか豚肉を使用しない配慮 ・ラマダン期間中の食事時間への配慮 (日没後の食事が可能な環境) |
生活 サポート | ・近隣の医療機関、買い物施設、公共交通機関などの情報提供 ・24時間いつでも緊急時対応の連絡体制の整備と母国語対応可能なホットラインの案内 ・地域コミュニティとの交流機会の創出 |
特にイスラム教の信仰を持つインドネシア人には、宗教的習慣に配慮した環境づくりが信頼関係構築の重要な要素となります。
外国人採用についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
5.インドネシア人材を活かす職場づくり5つのポイント

イスラム教に配慮した職場環境の整備
インドネシア人の多くはイスラム教徒であるため、彼らの宗教的習慣に配慮した職場環境を整備することは、働きやすさと定着率向上に直結します。
■イスラム教に配慮した職場環境のつくり方
礼拝スペースの確保
一日5回の礼拝のための清潔で静かなスペースを用意します。広さは畳一畳程度で十分ですが、礼拝の方角(メッカの方向)を示すと親切です。
礼拝時間への配慮
礼拝は各5~10分程度ですが、特に正午過ぎの礼拝が勤務時間と重なることが多いため、休憩時間の調整や交代制で対応します。
食事への配慮
社員食堂や社内イベントでは、豚肉・豚由来の食品やアルコールを使わない選択肢を用意します。
調味料にも豚由来成分が含まれることがあるため注意が必要です。
ラマダン期間中の配慮
断食月には、体力を使う作業の軽減や、日没後に食事ができるよう勤務時間の調整をしたりラマダン明けの祝祭(イドゥル・フィトル)は重要な行事なので、可能であれば休暇取得への配慮も検討します。
分かりやすい日本語でのコミュニケーション方法
インドネシア人従業員との効果的なコミュニケーションのためには、以下のような工夫が有効です。
- 曖昧な日本語ではなくなるべくシンプルで明確な日本語を使用する。
- 図形や写真、ジェスチャーなどを使って視覚的に理解できるようにする。
- 一方的に話さず、途中で質問を挟んだり質問しやすい雰囲気づくりを心がける。
- 肯定的な内容から始め、改善点は具体的に示す。フィードバックを習慣化させる。
お互いが歩み寄る姿勢と、理解し合おうとする誠意が、効果的なコミュニケーションの基盤となります。
日本の職場ルールや文化の丁寧な説明
日本の職場には独自のルールや文化が存在し、これらを初めから理解することは外国人にとって容易ではありません。
インドネシア人従業員が円滑に職場に適応できるよう、以下のポイントを丁寧に説明することが重要です。
基本的な勤務ルールの説明
①勤務時間、休憩時間、休日の規定
②遅刻・欠勤時の連絡方法
③残業や休日出勤の取り扱い
④有給休暇の取得方法
日本特有の職場文化の紹介
①報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)の重要性
②整理・整頓・清掃・清潔・躾(5S)の考え方
③チームワークと和を重んじる文化
④先輩・後輩関係や上下関係の基本
安全衛生教育の徹底
①作業における安全手順の説明
②保護具の正しい使用方法
③緊急時の対応手順
④災害発生時の避難経路や集合場所
文化への違いへの相互理解促進
①日本とインドネシアの文化的違いについての話し合い
②相互に質問や疑問を出し合える場の設定
③文化の違いによる誤解事例とその解決方法の共有
職場のルールや文化は、文書化して提供するだけでなく、このように実際の場面で具体的に示すことが効果的です。
インドネシア人の強みを活かした業務配置
インドネシア人従業員の特性や強みを理解し、それを活かした業務配置を行うことで、生産性向上と従業員満足度の両方を達成できます。
■協調性を活かしたチーム編成
インドネシア人の高い協調性を活かし、チームワークが重要な業務や、複数人での共同作業が必要な工程に配置することで、チーム全体のパフォーマンス向上が期待できます。
■細やかさと丁寧さを要する業務への配置
細部への注意力と丁寧な作業態度を活かし、精密な組立作業や品質検査、繊細な仕上げが求められる工程などに配置すると、高品質な成果が期待できます。
■対人スキルを活かした役割
温和で礼儀正しい特性を活かし、顧客対応や社内コミュニケーションの橋渡し役など、人間関係構築が重要な役割も適性があります。特に同じインドネシア出身の従業員が多い職場では、リーダーやメンター的役割も期待できます。
■個人の特性や希望も考慮
国民性による一般化だけでなく個人の技能、経験、希望も考慮した業務配置が重要です。定期的な面談を通じて、本人の希望や適性を把握し、適切な業務配置につなげましょう。
インドネシア人従業員の特性を理解した上で、個人の能力や希望も尊重し、会社と従業員の双方にとって最適な配置を考えることが重要です。
日本人社員との交流促進と相互理解
インドネシア人従業員と日本人社員の交流を促進し、相互理解を深めることは、職場の一体感醸成と業務効率向上の両面で重要です。以下に効果的な取り組みを紹介します。
定期的な交流 イベントの開催 | 社内食事会や季節の行事 (花見、忘年会など) スポーツイベントやレクリエーション活動 インドネシア文化紹介デーや料理交流会 |
メンター・バディ制度の導入 | インドネシア人従業員一人に対して日本人社員一人をメンターまたはバディとして割り当てる |
相互学習の促進 | 日本人社員によるインドネシア語や文化の学習会 インドネシア人従業員による日本語や日本文化の学習会 |
イベントでは、業務の話だけでなく、文化や習慣、個人的な興味などを共有する機会を作りましょう。
メンター・バディ制度では業務上の質問だけでなく、日常生活の相談にも応じられる関係を構築することができます。また定期的な面談は、問題の早期発見にもつながるので面談の機会は必ず設けましょう。
そして相互学習の促進をすることで、お互いの言語や文化を学び合うことができるので、相互理解の基盤ができいきます。交流促進の取り組みは日常的な関係構築につなげることが重要です。
6.インドネシア人材の長期的な活用と定着のために

技能実習から特定技能へのキャリアパス設計
インドネシア人材の長期的な活用には、技能実習から特定技能へのキャリアパス設計が重要です。
明確なキャリアパスを示すことで、優秀な人材の定着率向上につながります。

参照元:国際ビジネス情報協同組合
技能実習から特定技能への流れ
- 技能実習1号(1年目)
基本的な技能修得期間。
入国後8~9ヶ月後に技能検定基礎級試験に合格することが必要です。
- 技能実習2号(2~3年目)
より実践的な技能習得期間。
職種によっては技能検定3級の取得を目指します。
- 技能実習3号(4~5年目)
高度な技能習得期間。
一定の条件を満たした優良な実習実施者・監理団体のみが受け入れ可能です。
- 特定技能1号への移行
技能実習2号または3号を良好に修了することで、試験免除で特定技能1号へ移行できます。
在留期間は最長5年です。
キャリアパス設計のポイント
・技能実習期間中から、特定技能への移行を見据えた
計画的なスキルアップ支援を行う
・日本語能力向上のための継続的なサポートを提供
(特定技能では業務上必要な日本語能力が求められる)
・特定技能で求められる専門的知識・技能の習得支援
・将来のキャリアについて定期的な面談を実施し
本人の希望も考慮した長期計画を立てる
特定技能への移行メリット
・家族の帯同は認められていないが、母国への一時帰国がしやすくなる
・技能実習よりも一般的に高い賃金水準が期待できる
・長期的な視点で人材育成を行うことで、企業にとっては熟練した技能を持つ人材の確保につながる。またインドネシア人材にとっては安定したキャリア形成の機会になる
双方にとって有益な関係構築を目指しましょう。
特定技能についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
定着率を高める文化的サポートと生活支援
インドネシア人材の定着率を高めるには、業務面だけでなく、文化的なサポートや生活面での支援が重要です。
彼らが日本での生活に安心感を持ち、心理的な安定を得られる環境づくりを心がけましょう。
■生活サポート支援■
1・日常生活の基盤整備
・住居環境の快適性確保(冷暖房、プライバシー等)
・生活必需品の購入場所の案内
・交通手段の確保や利用方法の説明
2・健康・医療面のサポート
・多言語対応の医療機関情報提供
・健康保険の仕組みや利用方法の説明
・定期的な健康チェックの実施
3・行政手続きのサポート
・在留カード、住民登録などの手続き支援
・銀行口座開設や携帯電話契約のサポート
・税金や社会保険の仕組み説明
4・緊急時の対応体制
・24時間対応可能な相談窓口の設置
・災害時の対応方法の説明と訓練
・母国語での緊急連絡体制の整備
これらのサポートと支援は、単なる福利厚生ではなく、インドネシア人材が能力を発揮し長期的に活躍するための基盤づくりです。
彼らが「第二の故郷」として日本での生活に安心感を持てることが、定着率向上の鍵となります。