人手不足が深刻化する中、外国人材の採用を検討する企業が増えています。
特にベトナム人の採用競争が激化し、「応募が集まらない」「コストが高騰している」という声も多く聞かれます。そこで今注目されているのがインドネシア人材です。
平均年齢29歳と若く、送り出し機関不要でコストを抑えられ、親日的で日本文化への関心も高い。本記事では、インドネシア人採用の方法から費用、成功のポイントまで徹底解説します。
- インドネシア人採用が注目される理由と他国との違い
- 国内採用・海外採用の具体的な手順と費用の全体像
- 文化・宗教への配慮方法と採用を成功させるポイント
1.インドネシア人採用が今、注目される3つの理由

特定技能外国人でベトナムに次ぐ第2位の規模
出入国在留管理庁の最新データ(2024年6月末時点)によると、特定技能で在留するインドネシア人は44,298人で、全体の約17%を占めています。これはベトナム人に次いで2番目に多い数値です。
特に注目すべきは、その増加率の高さです。厚生労働省の「外国人雇用状況」によると、対前年増加率でインドネシアがトップに位置し、前年比47.5%増という大幅な伸びを記録しています。
この背景には、ベトナム人や中国人の採用競争が激化していることがあります。
これまで多くの企業がベトナム人採用に注力してきましたが、競争の激化により「応募が集まらない」「採用コストが高騰している」といった課題に直面するようになりました。
その結果、次のターゲットとしてインドネシア人材に注目が集まっているのです。
引用元:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」厚生労働省「外国人雇用状況」
平均年齢29歳の若手労働力を確保できる
日本が直面する最大の課題の一つが少子高齢化です。日本の平均年齢が47.9歳であるのに対し、インドネシアの平均年齢は29歳と非常に若いのが特徴です。
インドネシアは人口約2.7億人を抱える世界第4位の人口大国であり、15〜64歳の生産年齢人口が豊富です。
さらに、2040年まで「人口ボーナス期」が続くと予測されており、長期的に若手労働力の供給源として期待できます。
日本では若手人材の確保が年々困難になっていますが、インドネシアからの採用により、組織の若返りと活性化を図ることができます。
若くて意欲的な人材は、新しい技術の習得も早く、長期的な雇用も期待できるため、企業の成長にとって貴重な戦力となるでしょう。
送り出し機関が不要でコストを抑えられる
特定技能制度で外国人を採用する際、多くの国では「送り出し機関」を通すことが必須とされており、その分の手数料が発生します。
例えば、ベトナムやフィリピンでは送り出し機関の利用が義務付けられているケースが多く、採用コストの上昇要因となっています。
一方、インドネシアでは送り出し機関の利用が必須ではありません。
インドネシア政府が管理する「IPKOL(労働市場情報システム)」という無料のオンラインシステムを通じて、企業が直接求人を出し、インドネシア人求職者と接触することが可能です。
この仕組みにより、送り出し機関への手数料を削減でき、採用コストを大幅に抑えることができます。
人材紹介会社を利用する場合でも、送り出し機関の手数料が不要な分、ベトナムなどと比較して総額を抑えやすいのが大きなメリットです。
2.インドネシア人の特徴と企業が知っておくべき文化・価値観

真面目で協調性が高く日本企業との相性が良い
インドネシアには「ゴトンロヨン(Gotong Royong)」という言葉があります。これは「相互扶助の精神」を意味し、インドネシア社会に深く根付いている価値観です。
インドネシアは多民族・多宗教国家でありながら、お互いの価値観を尊重し、助け合うという文化があります。
この精神は職場でも発揮され、誰かが困っていたら見て見ぬふりをせず、率先して協力してくれる傾向があります。
また、インドネシア人は一般的に素直でおおらかな性格の方が多く、「何とかなるさ」というポジティブな精神を持っています。
そのため職場でも笑顔が絶えず、明るい雰囲気を作り出してくれます。
さらに、インドネシアは親日国としても知られています。高校では第2言語として日本語を選択できるため、多くの学生が日本語を学んでおり、日本語学習者数は世界第2位を誇ります。
日本のアニメ、漫画、J-POPなどのポップカルチャーへの関心も高く、日本で働くことに憧れを持っている若者も多数います。
宗教(イスラム教)への配慮が必要
インドネシア国民の約87%がイスラム教徒であり、宗教が生活の中心にあります。
企業がインドネシア人を採用する際には、この宗教的背景への理解と配慮が不可欠です。
主な配慮事項
| 内容 | 配慮事項 |
|---|---|
| 礼拝時間 | 1日5回の礼拝が義務。1回約10分。近年は柔軟化し、夕方にまとめて実施する方も増加 |
| ハラール食 | 豚肉とアルコールの摂取が禁止。社員食堂や懇親会での配慮が必要 |
| ラマダン | 年1度、約4週間の断食月。日の出から日没まで飲食不可 |
| 礼拝スペース | 簡易的でも良いので、清潔で静かな礼拝場所の確保が望ましい |
礼拝時間の調整例
- 本来60分のお昼休憩を50分に短縮
- 15時から10分間の休憩を追加し、この時間に礼拝
このような柔軟な対応により、宗教的な配慮と業務効率の両立が可能です。
仕事とプライベートを明確に分ける価値観
インドネシア人は仕事よりも宗教・家庭を優先する傾向があります。
仕事はあくまで、家庭や宗教を含めたプライベートを豊かにするための手段と考えています。
日本のように「仕事優先」「長時間労働」という価値観とは異なるため、企業側も柔軟な働き方を認める姿勢が求められます。
ただし、契約範囲内では真面目に働いてくれる方が多いため、明確な労働条件を提示し、お互いの理解を深めることが重要です。
インドネシア人を雇っていくために事前に理解しておきたい、インドネシア人の特徴や文化についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
3.インドネシア人を採用する5つのメリット

若手人材を安定的に確保できる
日本で最も不足しているのが15〜34歳の若手人材です。
国内での採用が困難な中、平均年齢29歳のインドネシアは貴重な若手労働力の供給源となります。
若手人材を採用するメリット

特定技能制度では最長5年間の雇用が可能であり、将来的には特定技能2号への移行も視野に入れることができます。
採用コストを他国より抑えられる
インドネシア人採用の大きなメリットが、コスト面での優位性です。
他国との費用比較
| 項目 | ベトナム | フィリピン | インドネシア |
|---|---|---|---|
| 送り出し機関手数料 | 必要(高額) | 必要 | 不要 |
| 人材紹介手数料 | 50〜100万円 | 40〜80万円 | 30〜80万円 |
| 採用総額(初年度) | 80〜150万円 | 70〜120万円 | 50〜100万円 |
IPKOLという無料のシステムを活用できるため、送り出し機関への手数料が発生しません。この点が、ベトナムやフィリピンと比較した際の大きなコスト優位性となっています。
日本語学習意欲が高く教育しやすい
インドネシアは日本語学習者数が世界第2位を誇り、約70万人が日本語を学んでいます。
高校では第2言語として日本語を選択できるため、基礎的な日本語能力を持つ人材が豊富です。
日本文化への関心
- アニメ・マンガの人気⇒「ドラえもん」「ナルト」「ワンピース」などが広く親しまれている
- J-POPへの関心⇒日本の音楽やアイドル文化にも人気が高い
- 日本の伝統文化⇒歴史や観光地にも興味を持つ人が多い
このような親日的な背景があるため、日本語の習得意欲が高く、入社後の教育もスムーズに進めやすい環境が整っています。
インドネシア政府の積極的なサポートがある
インドネシア政府は日本への労働者送り出しを国策として推進しており、二国間協力の枠組みが整備されています。
政府のサポート内容
- IPKOL(労働市場情報システム)の運営
- SISKOP2MI(海外労働者管理システム)による労働者保護
- 駐日インドネシア大使館による各種サポート
- トラブル発生時の相談・仲介体制
透明性の高い採用システムが構築されているため、企業としても安心して採用を進めることができます。
また、万が一トラブルが発生した際も、インドネシア政府のサポートを受けられる体制が整っています。
介護・製造業など特定分野で高い適性
インドネシア人は特定の分野で特に高い適性を発揮します。
分野別の在留者数(2024年6月末時点)
| 分野 | 人数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 農業 | 5,330人 | 最多。根気強く真面目に作業 |
| 介護 | 5,229人 | 全体の約20%。相互扶助の精神が活きる |
| 製造業 | 4,929人 | チームワークを重視し協調性が高い |
| 飲食料品製造 | 4,503人 | 丁寧な作業が評価される |
「ゴトンロヨン(相互扶助)」の精神が根付いているため、人を助けることに喜びを感じ、介護の仕事に適性があります。
また、真面目で協調性が高い国民性は、チームワークが求められる製造業や、根気が必要な農業での作業にも適しています。
4.インドネシア人採用の2つのルートと具体的な手順

国内採用ルート:日本在住のインドネシア人を採用する
対象者
国内在住のインドネシア人を採用する場合、主に以下の方が対象となります。
対象となる人
- 技能実習2号修了者: 技能実習を良好に修了し、そのまま日本で働き続けたい方
- 日本の教育機関卒業の留学生: 大学や専門学校を卒業した方
- 既に特定技能の資格を持つ人材: 他社で特定技能として働いている方、または試験に合格している方
メリット
【国内採用の主なメリット】

採用の流れ(6ステップ)
- 求人募集
⇒人材紹介会社を利用するか自社ネットワークで募集。既存外国人社員からの紹介(リファラル採用)も効果的 - 書類選考・面接
⇒履歴書、在留カード確認。日本語能力、技能レベル、勤務態度を確認 - 雇用契約の締結
⇒日本人と同等以上の報酬を設定 - 在留資格変更許可申請(必要な場合)
⇒現在の在留資格が「特定技能」でない場合、地方出入国在留管理局へ申請。
手数料6,000円(オンライン5,500円) - SISKOP2MI登録(推奨)
⇒インドネシア政府管理のシステムへ登録。トラブル時の保護を受けられる - 入社・支援開始
⇒支援計画に基づく支援を開始。登録支援機関に委託する場合は契約締結
費用の目安(国内採用)
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 人材紹介手数料 | 20〜50万円 |
| 在留資格変更申請 | 6,000円(オンライン5,500円) |
| 登録支援機関委託料 | 月額2〜3万円 |
| 初年度合計 | 約48〜86万円 |
海外採用ルート:インドネシアから直接採用する
対象者
海外からの採用では、以下のような方が対象となります。
- インドネシア国内の特定技能試験合格者
- 日本語能力試験N4以上合格者
- 帰国した元技能実習生
メリット・デメリット
【メリット】
【デメリット】
採用の流れ:直接採用の場合(8ステップ)
- IPKOL(労働市場情報システム)への登録
⇒インドネシア政府管理のオンラインシステムに企業として登録。
無料だが英語またはインドネシア語での入力が必要 - 求人情報の掲載
⇒IPKOLに求人掲載。職種、給与、労働条件を明記 - 応募者との面接
⇒オンラインまたは現地面接。日本語能力、技能レベル、人柄を確認 - 雇用契約の締結
⇒双方合意後、契約締結。契約書はIPKOLに電子登録が必要 - 在留資格認定証明書(COE)の申請
⇒地方出入国在留管理局へ申請(無料)。交付後、インドネシア人に郵送 - SISKOP2MI(海外労働者管理システム)への登録
⇒インドネシア人がオンライン登録。完了後、ID番号が発行される - ビザ申請
⇒インドネシア人がCOEとSISKOP2MIのID番号を持って、在インドネシア日本国大使館で申請 - E-PMI(移住労働者証)取得・渡航
⇒ビザ取得後、SISKOP2MIに情報登録し、出国前オリエンテーション参加。E-PMI発行後、来日
採用の流れ:P3MI利用の場合
P3MIとは?
インドネシア政府から許可を得た職業紹介事業者。技能実習の送り出し機関とは異なる。
利用の流れ
【注意点】
- P3MIを利用しても、最終面接は受入機関が必ず実施
- P3MIが独自に候補者を選考することはできない
- 雇用契約書は駐日インドネシア大使館に提出し、確認が必要
費用の目安(海外採用)
| 費用項目 | 金額 |
|---|---|
| 人材紹介手数料 | 30〜80万円 |
| 在留資格認定申請 | 無料 |
| 渡航費(航空券) | 5〜10万円 |
| 住居手配・初期費用 | 10〜30万円 |
| 登録支援機関委託料 | 月額2〜3万円 |
| その他(健康診断等) | 2〜5万円 |
| 初年度合計 | 約75〜145万円 |
どちらのルートを選ぶべきか
| 判断基準 | 国内採用 | |
|---|---|---|
| 採用期間 | 1〜2ヶ月 | 3〜6ヶ月 |
| コスト | 低い | やや高い |
| 候補者数 | 限定的 | 豊富 |
| 日本語能力 | 高い | N4レベル |
| 生活適応 | 済んでいる | 時間が必要 |
国内採用がおすすめ
⇒できるだけ早く人材を確保したい、採用コストを抑えたい、日本語でのコミュニケーションを重視したい企業
海外採用がおすすめ
⇒より多くの候補者から選びたい、若手人材を確保したい、時間と予算に余裕がある企業
5.インドネシア人採用にかかる費用の全体像

国内採用と海外採用の費用比較
採用ルートによって費用が大きく異なります。以下の比較表で全体像を把握しましょう。
| 費用項目 | 国内採用 | 国外採用 |
|---|---|---|
| 初期費用 | ||
| 人材紹介手数料 | 20〜50万円 | 30〜80万円 |
| 在留資格申請 | 6,000円 | 無料 |
| 渡航費 | 不要 | 5〜10万円 |
| 健康診断 | 1〜2万円 | 1〜2万円 |
| 住居手配・初期費用 | 不要※ | 10〜30万円 |
| 年間継続費用 | ||
| 登録支援委託料 | 24〜36万円 | 24〜36万円 |
| 初年度合計 | 48〜86万円 | 75〜145万円 |
※国内採用でも、自社で住居を手配する場合は費用が発生
採用後の継続的なコスト
採用時の初期費用だけでなく、継続的に発生するコストも把握が必要です。
給与(日本人と同等以上)
特定技能制度では、日本人と同等以上の報酬を支払うことが義務づけられています。
業種別の給与目安

※地域や経験年数により変動
その他の継続コスト
- 社会保険⇒健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険(日本人と同様)
- 登録支援機関への委託料⇒月額2〜3万円/人、年間24〜36万円/人
- 在留資格更新費用⇒更新申請手数料6,000円(オンライン5,500円)、行政書士委託料4〜10万円
コストを抑えるための3つの工夫
1. 自社で登録支援を行う(要件を満たす場合)
条件を満たせば、登録支援機関に委託せず自社で支援を行うことが可能です。年間24〜36万円のコスト削減が実現できます。
自社支援の要件
- 2年以内に中長期在留者の受入れ実績がある
- 外国人が十分理解できる言語で情報提供・相談対応ができる
- 支援責任者および支援担当者を選任している
- 支援計画を適切に実施できる体制がある
2. リファラル採用の活用
既に雇用している外国人社員からの紹介を活用することで、人材紹介手数料を大幅に削減できます(20〜80万円の削減)。
メリット
- 紹介者が職場の雰囲気を事前に伝えてくれる
- 定着率が高い傾向がある
- 入社後のサポートを紹介者が手伝ってくれる
3. 監理団体・登録支援機関の比較検討
登録支援機関によって、サービス内容や料金が異なります。複数の機関を比較検討しましょう。
6.特定技能制度でインドネシア人を採用するための要件

企業側が満たすべき5つの要件
特定技能外国人を受け入れるには、企業側が以下の要件を満たす必要があります。
1. 労働関係法令・社会保険の適正運用
労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働関係法令を遵守し、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの社会保険に適切に加入していることが求められます。
2. 日本人と同等以上の報酬
特定技能外国人に対しては、同等の業務に従事する日本人と同等以上の報酬を支払う必要があります。「外国人だから安い賃金で雇える」という考えは認められません。
3. 支援計画の作成
1号特定技能外国人に対しては、以下の内容を含む支援計画を作成し、確実に実施する必要があります。


自社で支援を行うか、登録支援機関に委託するかを選択できます。
4. 出入国・労働法令違反がないこと
過去1年以内に出入国または労働に関する法令に違反していないことが条件です。
【具体例】
- 不法就労助長罪に該当する行為がない
- 労働基準法違反がない
- 入管法違反がない
5. 分野別協議会への加入(4ヶ月以内)
特定技能外国人を受け入れた後、4ヶ月以内に当該分野の協議会に加入する必要があります。
協議会は分野ごとに設置されており、適正な受入れを図るための情報共有などが行われます。
労働者側が満たすべき要件
インドネシア人が特定技能として日本で働くためには、以下の要件を満たす必要があります。
基本要件
| 要件 | 詳細 |
|---|---|
| 年齢 | 18歳以上であること |
| 技能 | 特定技能評価試験に合格、または技能実習2号を良好に修了 |
| 日本語能力 | 日本語能力試験N4以上(または国際交流基金日本語基礎テスト合格) |
| 健康状態 | 健康診断を受診し、業務に支障のない健康状態 |
| 登録 | IPKOL(海外採用の場合)・SISKOP2MI(すべての場合)への登録 |
日本語能力試験N4レベルとは?
- 基本的な日本語を理解することができる
- 日常的な場面でのゆっくりとした会話であれば、内容がほぼ理解できる
- 基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中で身近な話題の文章を読んで理解できる
IPKOL・SISKOP2MIへの登録
これらのシステムへの登録により、インドネシア政府が労働者を保護し、トラブル発生時のサポートを提供する体制が整えられています。
インドネシア人特定技能者の採用から雇用までの具体的なステップと、宗教・文化面での配慮ポイントなどもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
7.インドネシア独自の採用システム完全理解

インドネシア人を採用する際には、インドネシア政府が管理する独自のシステムへの対応が必要です。これらのシステムは、労働者保護と透明性の高い採用を目的として運用されています。
IPKOL(労働市場情報システム)とは
IPKOLの概要
IPKOL(Informasi Pasar Kerja Online)は、インドネシア政府が管理するオンラインの求人・求職マッチングシステムです。
登録方法
雇用契約締結後は締結した雇用契約書を電子データでIPKOLに登録する必要があります。
注意点
- システムは英語またはインドネシア語のみ対応
- 日本語が使えないため、通訳や翻訳ツールの活用が必要
SISKOP2MI(海外労働者管理システム)とは
SISKOP2MIの概要
SISKOP2MI(Sistem Informasi Pelindungan Pekerja Migran Indonesia)は、海外で働くインドネシア人労働者を保護するためのシステムです。
登録が必要なタイミング
- 海外採用の場合: 在留資格認定証明書(COE)を取得した後、ビザ申請の前
- 国内採用の場合: 雇用契約締結後(推奨)
ID番号の発行
SISKOP2MIへの登録が完了すると、インドネシア政府からID番号が電子的に発行されます。
このID番号は以下の3つの時に必要となります。
- ビザ申請時に必要
- 駐日インドネシア大使館での手続きに使用
- トラブル発生時の連絡に使用
労働者保護の仕組み
E-PMI(移住労働者証)とは
E-PMIの概要
E-PMI(Electronic-Pekerja Migran Indonesia)は、インドネシア人が海外で働く際に必要な電子証明書です。
出国前に取得が必要
海外採用の場合、以下の手順でE-PMIを取得します。
- ビザ取得
- ビザ情報をSISKOP2MIにオンライン登録
- 出国前オリエンテーションへの参加
- その他の必要な手続き完了
- E-PMIが発行される
出国前オリエンテーション
出国前オリエンテーションは、インドネシア人が海外で働く前に、インドネシア国内で必ず受講しなければならない研修プログラムです。
ビザ取得後、E-PMI(移住労働者証)発行前に受講します。この研修を修了しないと、E-PMIが発行されず出国できません。
通常1〜2日程度で、インドネシア政府が指定する施設で実施されます。
このオリエンテーションは、労働者が海外で安全に働けるようインドネシア政府が実施する保護策の一つです。
- インドネシア国内で実施
- 海外での生活・労働に関する情報提供
- 権利と義務の説明
- 参加は必須
システム全体の流れ(海外採用)
これらのシステムは複雑に見えますが、インドネシア政府が労働者保護を重視している証でもあります。
登録支援機関や人材紹介会社を利用すれば、これらの手続きをサポートしてもらえるため、初めての採用でも安心です。
8.インドネシア人採用を成功させる3つのポイント

採用前の準備:受け入れ環境を整える
インドネシア人を採用する前に、受け入れ環境をしっかり整えておくことが、定着率向上の鍵となります。
社内での外国人雇用の合意形成
まず、社内で外国人雇用についての理解と合意を形成しましょう。
取り組むべきこと
- 経営層・管理職への説明と同意取得
- 現場社員への事前説明会の実施
- 外国人雇用のメリットと注意点の共有
- 質疑応答の時間を設け、不安や疑問を解消
日本人社員の理解と協力がなければ、外国人材の定着は困難です。特に、直接一緒に働く現場社員には丁寧な説明が必要です。
礼拝スペースの検討
イスラム教徒の従業員が安心して働けるよう、礼拝スペースの確保を検討しましょう。
【必要な設備】
- 静かで清潔な小部屋(会議室の一部でも可)
- 礼拝マット
- 方角の表示(メッカの方向)
- 手足を洗える場所(洗面所で可)
大がかりな設備は不要です。「配慮してくれている」という姿勢を示すことが重要です。
日本人社員への事前研修
日本人社員に対して、インドネシアの文化や宗教についての研修を実施しましょう。
【研修内容の例】

相互理解が深まることで、円滑な職場環境が生まれます。
面接時の見極め:適性を正しく評価する
面接では、スキルだけでなく、価値観や適性も確認しましょう。
宗教観・価値観の確認
イスラム教の実践度合いは人によって異なります。以下の点を確認しましょう。
【確認すべき項目】

これらは採用の可否を決めるためではなく、受け入れ準備をするための情報収集です。本人の価値観を尊重した上で、職場環境を整えましょう。
日本での就労目的の明確化
なぜ日本で働きたいのか、明確な目的を持っているか確認します。
【良い例】
- 「日本の技術を学んで母国で活かしたい」
- 「日本の製造業の品質管理を習得したい」
- 「将来は日本とインドネシアをつなぐ仕事がしたい」
【注意が必要な例】
- 目的が曖昧
- 給与のことしか話さない
- 他の国の方が給与が高いと知ったら辞めそう
明確な目的を持つ人材は、困難があっても頑張れる傾向があります。
コミュニケーション能力の確認
日本語能力試験N4合格が要件ですが、実際のコミュニケーション能力も確認しましょう。
完璧な日本語は不要です。意思疎通の意欲と基礎的な能力があれば、入社後に向上します。
文化の違いを乗り越える:トラブル予防策
文化の違いによるトラブルを防ぐため、以下の点に注意しましょう。
指導方法の工夫
インドネシア人は人前で叱られることに慣れていません。指導する際は以下を心がけましょう。
効果的な指導方法
- 1対1で指導する⇒他の社員がいる前では避ける
- 感情的にならない⇒冷静に、具体的に伝える
- 改善方法を示す⇒「ダメ」だけでなく「こうしてほしい」と伝える
- 良い点も伝える⇒できていることを認めた上で改善点を指摘
- 理由を説明する⇒なぜそうする必要があるのか丁寧に説明
宗教的配慮の具体例
日常業務の中で、以下のような配慮を実践しましょう。
| 場面 | 配慮内容 |
|---|---|
| 礼拝時間 | 15時頃の礼拝に対応するため、休憩時間を調整(例: 昼休み50分+15時に10分休憩) |
| 食事 | 社員食堂で豚肉不使用のメニュー提供、懇親会ではハラール対応の店を予約、アルコールの飲酒を強要しない |
| ラマダン期間 | 食事に誘わない、体調に配慮し必要に応じて作業内容を調整、日没後の食事時間を確保 |
残業・休日出勤の説明方法
インドネシア人は契約範囲内で働くという意識が強いため、残業や休日出勤については明確な説明が必要です。
【NGな対応】
- 「日本ではみんな残業している」と同調圧力をかける
- 突然「今日残業して」と当日に指示
- サービス残業を求める
- 断った場合に不利な扱いをする
文化の違いを「障壁」ではなく「多様性」として捉え、お互いに歩み寄る姿勢が成功の鍵です。
9.インドネシア人採用で人手不足を解決しよう

インドネシア人の採用は、深刻な人手不足に悩む日本企業にとって有力な選択肢です。
若くて意欲的な人材を、他国と比較して抑えたコストで採用できることは大きな魅力です。
ただし、イスラム教への配慮や時間感覚の違いなど、文化的な違いへの理解も不可欠です。これらの違いを「障壁」ではなく「多様性」として捉え、お互いに歩み寄る姿勢が成功の秘訣です。
まずは自社の受け入れ体制を確認し、必要に応じて登録支援機関や人材紹介会社のサポートを活用しながら、計画的に採用を進めていきましょう。