インドネシア人の採用を検討している日本企業にとって、彼らの英語力は重要な検討ポイントです。
本記事では、インドネシア人の英語力の実態やデータ、採用メリット、そして効果的な評価方法までを徹底解説します。
グローバル人材としてのインドネシア人の可能性と、彼らを活かした企業成長戦略について理解を深めましょう。
- インドネシア人の英語力の実態(国際指標での位置づけや都市部/地方の格差、若年層の学習熱)
- インドネシア人を採用する5つのメリット(言語スキル、勤勉さ、多文化理解力、親日性、若い労働力)
- インドネシア人材の効果的な採用プロセスと英語力評価方法
1.インドネシア人の英語力は高い?データ・教育背景から検証

インドネシア人の英語力について正確に理解するには、客観的なデータや現地の教育事情を知ることが重要です。
ここでは、国際的な指標や地域差、若年層の英語学習事情について詳しく見ていきましょう。
国際的な英語力指標でみるインドネシア人の英語レベル
EF English Proficiency Index(EF EPI)によると、インドネシアの英語力は「中程度」と評価されており、2019年の調査では100カ国中61位にランクインしました。アジア諸国の中では中間よりやや下の位置づけです。
インドネシア人全体の英語力は「劇的に高い」とは言えませんが、教育水準の高い層では十分な英語コミュニケーション能力を持つ人材が増加傾向にあります。
都市部と地方でこんなに違う!インドネシア人の英語力
インドネシアは17,000以上の島々からなる世界最大の島国で、約2.77億人の人口を持ち、この地理・人口からくる多様性は英語力の地域間格差にも表れています。
ジャカルタ、バンドン、スラバヤなどの大都市では、英語教育の質が高く、外国企業も多数進出しているため、英語を使用する機会が比較的多くあります。
中流以上の家庭の子どもたちは幼少期から英語に触れる環境で育つことも珍しくありません。
一方、地方や遠隔地では英語教育のリソースが限られており、日常生活で英語を使う機会もほとんどないため、実践的なスキルが身につきにくい状況です。
そのため、インドネシア人の英語力を評価する際には、出身地や教育背景を考慮しなければなりません。
2.日本で活躍するインドネシア人労働者の英語力は?

日本に来るインドネシア人労働者は多様なバックグラウンドを持っていますが、彼らの英語力はどの程度なのでしょうか。
また、実際の職場ではどのように英語が活用されているのかを見ていきましょう。
特定技能・エンジニア人材の英語レベル
日本で働くインドネシア人の中でも、IT技術者やエンジニアは比較的英語力が高い傾向にあります。
これは、インドネシアの工学部や情報技術学部では教科書や資料の多くが英語であること、また国際的な規格やドキュメントが英語で提供されることが多く、職業上の必要性から英語を習得するモチベーションが高まるためです。
実際のデータによると、日本で働くインドネシア人エンジニアの約70%は、基本的な業務コミュニケーションが可能な英語力(TOEIC 550点以上相当)を持っています。
インドネシア人以外の外国人エンジニアでも採用を考えている方はこちらの記事をおすすめします。
一方、特定技能制度で来日する技能実習生の場合は英語力にばらつきがありますが、彼らは来日前に日本語研修を受けることが多いため、職場では主に日本語でコミュニケーションを取るのが一般的です。
技能実習生から特定技能に切り替える手順に関しては、こちらの記事で詳しくまとめています。
3.インドネシア人を採用する5つのメリット

インドネシア人を採用することで、日本企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。英語力だけでなく、彼らの持つ様々な強みについて見ていきましょう。
言語スキルを活かした国際業務での活躍
インドネシア人の最大の強みの一つは、複数言語を操るマルチリンガルとしての能力です。
多くのインドネシア人は、母国語のインドネシア語に加え、地域の言語(ジャワ語、スンダ語など)、そして学校教育で学んだ英語というように、複数の言語に触れながら成長します。
これにより、言語習得の適応力が高く、日本語の学習にも比較的柔軟に対応できる傾向があります。
実際に来日するインドネシア人の多くは、基本的な日本語研修を受けてから渡航するため、日本語と英語の両方でコミュニケーションが可能なケースが多いです。
このような言語スキルは、以下のような場面で特に価値を発揮します。
言語スキルが活きる場面 | 具体的なシチュエーション |
---|---|
外国人顧客との対応 | 日本を訪れる外国人観光客や顧客への対応 |
海外拠点とのコミュニケーション | アジア各国に展開する日本企業の拠点間連携 |
多言語資料の作成 | 製品マニュアルや企業案内の多言語化 |
国際会議やミーティングでの通訳補助 | 正式な通訳ではなくとも、円滑なコミュニケーション支援 |
特にASEAN地域でのビジネス展開を考える企業にとって、インドネシア人材の採用は東南アジア市場への橋渡し役として大きな意味を持ちます。
インドネシア語はマレー語と近い関係にあるため、マレーシアやシンガポールでのビジネスにも応用が利きます。
真面目で勤勉な労働姿勢
インドネシア人は、一般的に勤勉で責任感が強いという特性を持っています。
特にジャワ島出身者は「和」を重んじる文化を持ち、集団での協調性や忍耐強さが日本の職場文化と親和性が高いと言われています。
実際に日本企業で働くインドネシア人の評価では、以下のような点が高く評価されています。

これらの特性は、インドネシアの主要宗教であるイスラム教の勤労観とも関連しています。
イスラム教では「誠実な労働は祈りの一種」とされ、仕事に対する真摯な姿勢が重視されています。
日本の「和」を重んじる職場文化と、インドネシアの協調性を重視する文化には共通点が多く、その結果、多くのインドネシア人従業員は日本の職場環境に比較的スムーズに適応することができています。
多文化理解能力の高さ
インドネシアは300以上の民族と700以上の言語が存在する多民族国家です。この環境で育ったインドネシア人は、異なる文化や価値観を理解し尊重する姿勢が自然と身についています。
この多文化理解能力は、グローバル化が進む日本企業において大きな強みとなります。異文化コミュニケーション能力や柔軟な対応力に優れ、多国籍チームの中で「文化的仲介者」としての役割を果たすことができます。
実際に、グローバル企業で働くインドネシア人従業員は、日本人スタッフと外国人スタッフの間の「文化的架け橋」となり、チーム全体の連携強化に貢献しています。
親日家が多く日本文化への適応が早い
インドネシアは世界有数の親日国として知られており、多くのインドネシア人が日本の文化や技術に高い関心と敬意を持っています。この親日的な姿勢は職場への適応にもプラスの影響を与えています。
背景としては、アニメやマンガなどの日本のポップカルチャーがインドネシアで非常に人気があることが挙げられます。
マーケティング調査会社ampdのデータによると、2022年のインドネシアにおける視聴数トップ10のうち、『SPY×FAMILY』と『進撃の巨人』の2作品がアニメとしてランクインしました。特に『進撃の巨人』は、視聴時間が8億3,000万分に達し、同年のFIFAワールドカップ(8億分)を上回る視聴時間を記録しています。
また、日本の経済発展や技術力に対する尊敬の念が強いこと、そして「和」を重んじる集団主義的な価値観など日本文化との共通点が多いことが挙げられます。
これにより、インドネシア人従業員は時間厳守、整理整頓、報告・連絡・相談などの日本的な職場ルールや上下関係への理解など、日本の企業文化や社会規範に比較的速やかに適応する傾向があります。
4.インドネシア人の採用プロセスと英語力の見極め方
インドネシア人候補者の英語力を正確に評価するためには、単なる英語テストのスコアだけでなく、実践的なコミュニケーション能力を見極めることが重要です。

これらのテクニックを組み合わせることで、より実践的なコミュニケーション能力を評価することができます。
英語以外のコミュニケーション能力も重視する
インドネシア人材を評価する際、英語力だけでなく、より広い意味でのコミュニケーション能力を評価することが重要です。
言語を超えた理解力や適応力は、実際の職場での活躍に直結します。
コミュニケーション能力の判断材料 | チェックポイント |
---|---|
非言語コミュニケーション能力 | 表情やジェスチャー、姿勢などの非言語的な要素からも情報を読み取り、発信する能力は国際的な環境で重要です。面接時にはアイコンタクトの適切さや表情の豊かさなどに注目しましょう。 |
異文化適応能力と柔軟性 | 「異文化の中で困難を感じた経験とその対処法は?」「日本の職場文化について知っていることは?」などの質問から、候補者の柔軟性や問題解決能力を評価できます。 |
学習意欲と成長マインドセット | 日本語学習への取り組み姿勢や過去の自己啓発活動の経験などから、学習意欲の高さを見極めることが大切です。入社時点での言語力が多少不足していても、学習意欲が高ければ短期間で成長する可能性があります。 |
チームワークと協調性 | インドネシア文化は協調性が高い傾向にありますが、過去のチーム経験についての質問やグループディスカッションなどで具体的に評価しましょう。 |
これらの多角的な評価を通じて、総合的なコミュニケーション能力の高い人材を見出すことができます。
5.インドネシア人採用で注意すべきポイントと対応策

インドネシア人材の採用には多くのメリットがある一方で、いくつかの注意点も存在します。
ここでは、採用時に考慮すべきポイントと、それに対する効果的な対応策について解説します。
英語力には個人差が大きいこと
インドネシア人の英語力は、教育背景や出身地域、職業経験によって大きく異なります。同じ学歴や年齢であっても、英語力に顕著な差がある場合があります。
個人差が生じる主な要因
教育機関の質の差
インドネシアでは、学校や大学によって英語教育の質に大きな差があります。国際的なカリキュラムを採用している私立学校の出身者は、英語力が高い傾向にありますが、地方の公立学校では英語の授業時間や教育の質が限られていることがあります。
都市部と地方の格差
ジャカルタやスラバヤなどの大都市出身者は英語に触れる機会が多く、観光業やグローバル企業が集中しているため、実践的な英語力を身につけている人が多いです。一方、地方出身者は英語を使用する環境が限られている場合があります。
業界や職種による差
IT、観光、国際ビジネス、教育などの分野では、英語の使用頻度が高いため、これらの業界での就業経験がある人材は実用的な英語力を持っていることが多いです。

英語力の個人差を前提として、柔軟な採用基準と育成計画を立てることで、優秀なインドネシア人材を見逃すリスクを減らすことができます。
また、英語力だけでなく、技術力や適応能力、学習意欲なども総合的に評価することが重要です。
日本語教育の必要性とサポート方法
英語力があるインドネシア人材であっても、日本企業での長期的な活躍のためには日本語習得が重要です。
以下にその理由と効果的なサポート方法を紹介します。

効果的な日本語教育サポート方法
段階的な言語目標設定
職種や役割に応じた日本語レベルの目標を設定します。例えば入社3ヶ月で挨拶と自己紹介、1年で簡単な会議での意見表明など。
社内日本語クラスの開催
業務に関連する専門用語や表現に焦点を当てた日本語クラスを定期的に開催します。
言語交換パートナー制度
インドネシア人と日本人社員をペアにして互いの言語を教え合う制度は、言語学習だけでなく社内の人間関係構築にも役立ちます。
オンライン学習ツールの提供
自己学習用のオンライン日本語学習ツールやアプリの利用をサポートします。
日本語使用環境の創出
「日本語デー」の設定など、学んだ日本語を実践する機会を意図的に作ります。
これらのサポート方法を組み合わせて実施することで、インドネシア人従業員の日本語習得を効果的に促進し、職場への適応と長期的な活躍を支援することができます。
これらの他にも外国人採用に関する注意点はいくつかあります。詳しい内容はこちらの記事でご紹介しています。
6.インドネシア人採用前チェックリスト

以下のチェックリストを活用することで、インドネシア人材の採用における重要ポイントを網羅的に確認できます。
適切な人材選考と採用後のサポート体制構築に役立ててください。
チェック項目 | 詳細/確認ポイント |
---|---|
英語力の評価 | ・TOEIC、IELTSなどの公式スコア ・実務に即した会話テスト ・段階的な英語レベル確認 ・文書作成能力のチェック |
出身地域・教育背景 | ・都市部出身か地方出身か ・通っていた学校のタイプ(公立/私立/国際) ・大学での専攻分野 ・英語での教育経験の有無 |
職歴と実務経験 | ・英語を使用する業務経験の有無 ・IT/観光/国際ビジネスなど英語使用頻度の高い業界での経験 ・海外勤務経験 ・日系企業での勤務経験 |
日本語学習意欲 | ・日本語学習の経験や意欲 ・基本的な日本語理解度 ・長期的な学習計画への姿勢 |
多文化対応能力 | ・異文化での就労経験 ・異文化コミュニケーション能力 ・多様な環境への適応能力 ・「文化的仲介者」としての素質 |
仕事への姿勢 | ・時間厳守の意識 ・チームワーク能力 ・指示への従順さ ・長期的コミットメントへの意欲 |
宗教・文化への配慮 | ・礼拝時間などの宗教的配慮の必要性 ・食事制限の有無 ・休暇に関する文化的配慮事項 |
求める技術スキル | ・職種に応じた専門的スキル ・ITスキル(該当職種の場合) ・業界知識 |
採用後のサポート計画 | ・日本語学習支援体制 ・住居サポート ・生活オリエンテーション計画 ・メンター制度の有無 |
ビザ・在留資格 | ・適切な在留資格の確認 ・査証申請のサポート体制 ・在留期間の更新計画 |
7.インドネシア人材の英語力を活かした企業成長戦略

インドネシア人材の採用は、単なる人手不足解消ではなく、企業のグローバル競争力強化への戦略的投資です。
彼らの英語力、多言語スキル、文化的架け橋としての役割を最大限に活かすことで、ASEANビジネスの拡大や組織の活性化につながります。
適切な評価と継続的なサポートを通じて、インドネシア人材と共に成長する企業文化を構築していきましょう。