建設業の有効求人倍率は5.22倍。深刻な人手不足の解決策として、外国人採用に注目する企業が急増しています。
しかし在留資格の種類や複雑な手続き、法的リスクへの不安から、一歩踏み出せない担当者も多いのが現状です。
この記事では、在留資格の選び方から採用手続きの流れ・注意点まで、建設業の外国人採用に必要な知識をわかりやすく解説します。
- 建設業で活用できる在留資格の種類と自社に合った選び方
- 特定技能採用に必要な手続きの流れと企業側の準備事項
- 外国人採用で陥りがちな法的リスクと現場トラブルの回避策
1.建設業界が外国人採用に踏み切る背景

感情論ではなく、データと制度の両面から「なぜ今、外国人採用が必要なのか」を見ていきます。
人手不足と高齢化が止まらない現実
建設業の就業者数は、2002年の618万人から2022年の479万人へと、20年間で約139万人減少しました。これは単なる景気変動ではなく、少子高齢化による構造的な労働力不足の結果です。
参考:総務省 労働力調査 長期時系列データ(産業別就業者数)
建設業では高齢化が急速に進んでおり、国土交通省の統計では60歳以上の就業者が25.7%(令和3年)を占めています。これは全産業平均を大きく上回る水準で、今後10〜15年で大量のベテラン層が引退期を迎えることが確実です。

一方、厚生労働省の職業安定業務統計では、建設関連職種の有効求人倍率が依然として高水準で推移しており、国内だけでは人材確保が難しい状況が続いています。
こうした背景から、建設業界では外国人材の活用がますます重要になっています。
働き手が減り続ける中で仕事量だけが増えていくという構造的なミスマッチが、建設業界を外国人採用へと駆り立てている根本的な理由です。
2024年の「時間外労働上限規制」が採用課題をさらに加速させた
2024年4月、建設業にも「時間外労働の上限規制」が適用され、年間960時間を超える残業が原則禁止となりました。
同じ工期・同じ品質で仕事をこなすには、現場に配置できる人員を純粋に増やすしかない局面も生まれています。
参考:厚生労働省 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)
日本人の中途採用市場は売り手市場が続いており、即戦力の職人を確保するだけでも一苦労です。
建設業務の経験を持つ外国人特定技能人材の採用は、即効性のある解決策として注目度が高まっており、規制強化が外国人採用を「いつかやること」から「今すぐやること」へと変えた側面は否定できません。
建設業は「特定産業分野」として国が優遇しています
特定技能制度が指定する16の分野のうちの一つが建設業であり、国土交通省が所管する「特定産業分野」として位置づけられています。
- 特定技能外国人の受け入れを支援する「JAC(建設技能人材機構)」
- 技能者の就労履歴を一元管理する「CCUS(建設キャリアアップシステム)」
- 受入計画の適正履行を確認する「FITS(国際建設技能振興機構)」
などが連携して機能しており、外国人を適切に受け入れるための仕組みが業界全体で整っています。制度の枠組みをきちんと理解して活用すれば、建設業は他業種より安全かつ確実に外国人採用を進められる環境にあります。
2.建設業で外国人を採用できる在留資格の種類と選び方

外国人を雇用する際に最初の壁となるのが在留資格です。建設業で正社員として働ける在留資格は限られており、自社のニーズに合ったものを選ぶことが重要です。
建設業界における在留資格 比較表
人材の特性と目的に合わせた最適な採用区分の確認
特定技能1号
(土木・建築・ライフライン設備の3区分)
特定技能2号
(現場責任者クラスの熟練技能)
技能実習
(現場作業を通じた学び)
技・人・国
(ホワイトカラー・技術職)
永住者・定住者等
(すべての現場業務・管理業務)
特定技能(1号・2号)は即戦力採用の主流です
特定技能は2019年に創設された在留資格で、建設分野の特定技能在留外国人は2024年12月時点で約3万9,000人と急増しています。
建設分野:特定技能1号・2号の比較
取得要件
日本語能力試験(N4以上)および、建設分野の特定技能1号評価試験に合格した外国人が対象となります。
特徴
取得要件
班長・職長クラスの熟練技能者を対象とした上位資格です。高度な技能と現場管理能力が求められます。
特徴
建設分野の業務区分は2022年8月の改編により、土木区分・建築区分・ライフライン設備区分の3区分に整理されています。なお、建設分野で特定技能を活用するには、
- 建設業許可の取得
- CCUS登録
- JAC加入
- 国土交通省による「建設特定技能受入計画」の認定
という4つの企業側の義務をすべてクリアする必要があります。
技能実習は人材育成を目的とした長期的な受け入れ制度です
技能実習制度は発展途上国への国際貢献を目的として設けられた制度で、最長5年間の雇用が可能です。
建設業では22職種33作業が認められており、技能実習2号を良好に修了した外国人は試験免除で特定技能1号へ移行できるため、技能実習を「特定技能への入口」として活用している企業も多くあります。
ただし、この制度は2027年に廃止され「育成就労制度」へと移行することが決定しています。現在技能実習生を受け入れている企業は早急に制度移行の準備を進める必要があります。
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2027年までに技能実習制度は廃止され、新制度「育成就労」へと移行します。転籍制限の緩和など、建設業界の採用戦略を根本から変える変更点を、こちらの記事を参考に今のうちに詳しく確認しておきましょう。
技術・人文知識・国際業務(技人国)は施工管理・設計職向けです
「技人国」は専門的な知識やスキルを活かす職種に就く外国人のための在留資格で、施工管理・建築設計・CADオペレーター・積算・法人営業などの業務が対象です。
現場の直接作業には対応していませんが、大学・専門学校での専攻分野と業務内容の整合性が認められれば取得でき、在留期間は最長5年で更新が可能です。
「現場作業員ではなく管理・設計職として外国人を採用したい」という企業には、特定技能ではなく技人国ビザが適した選択肢となります。
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専門職の採用では、自社雇用だけでなく「派遣」という選択肢もあります。ただし、技人国の派遣には特有の法的リスクや注意点が存在します。こちらの内容を理解してトラブルを未然に防ぎ、安全に活用するためのポイントを確認しておきましょう。
身分系在留資格(永住者・定住者等)は制限なく採用できます
永住者・日本人の配偶者等・定住者といった「身分系」の在留資格を持つ外国人は、業務内容や労働時間に一切の制限がなく、日本人と全く同じ条件で採用できます。
在留カードで資格の種類と有効期限を確認するだけで基本的に就労可能で、建設業許可やJAC加入などの特別な要件も不要です。「まず外国人採用を試してみたい」という企業にとって、最もハードルが低い入口となります。
3.建設業で外国人を採用する具体的な手続きの流れ

ここでは最も手続きが複雑な特定技能「建設」を軸に、採用準備から就業開始までの流れを時系列で整理します。
採用前に企業側が整備すべき4つの要件
特定技能「建設」で外国人を受け入れるには、採用活動を始める前に企業側が以下の4つの要件をクリアしておく必要があります。
企業側がクリアすべき要件
建設業許可の取得
金額・規模を問わず、建設業法第3条の許可取得が必須です。許可の種類は問いません。
CCUSへの登録
受入企業および外国人労働者本人の両方の登録が必要で、完了まで時間がかかる場合があるため早めの手続きをお勧めします。
JACへの加入
JACの正会員団体の会員になるか、JACに直接、賛助会員として加入する必要があります。すでにJAC正会員の建設業団体に所属している場合は改めての登録は不要です。
「建設特定技能受入計画」の申請・認定
国土交通省へのオンライン申請が必要で、審査期間は2ヶ月程度かかります。書類不備による修正対応も多いため、余裕を持ったスケジュールで準備することが重要です。
採用活動から雇用契約までの流れ
採用ルートは主に、海外送出機関経由・国内在留外国人(技能実習修了者や留学生)・ハローワーク等の3つです。
選考プロセスは「書類選考→一次面接→最終面接→内定」程度のシンプルな設定を推奨します。海外では採用スピードが速い国が多く、複雑な選考フローは途中辞退リスクを高めます。
重要な注意点として、在留カードの確認は内定後に行うのが正しい手順です。選考段階での確認は、国籍等による差別防止の観点から不適切とされています。
また、雇用契約書・重要事項説明書は外国人が理解できる言語(母国語)で作成・交付することが義務付けられています。
入国・在留資格の申請から就業開始まで
国内在留中の外国人(技能実習生からの移行等)の場合は、出入国在留管理庁への在留資格変更許可申請を経て、許可が下りれば就労開始となります。
海外在住者を新規招聘する場合は、在留資格認定証明書の取得後、本国の日本大使館・領事館でのビザ申請・入国という流れになります。
在留資格の申請は「建設特定技能受入計画の認定後」でなければ行えない点に注意が必要です。
就業開始後は「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出することも忘れてはなりません。届出を怠った場合は1名につき30万円の罰金が科せられます。
4.建設業で外国人を採用するメリットと想定されるコスト

採用のメリットとコストの実態を、現実的な視点で整理します。
人手不足解消・若手確保・職場活性化という3つのメリット
外国人採用がもたらすメリットは主に3つです。
- 若年労働力の確保
- 人員計画の安定化
- 職場の活性化
①若年労働力の確保
来日する外国人労働者は「20〜29歳」が最も多く、若手入職が滞る建設業において貴重な戦力となります。即戦力として現場で活躍しながら、中長期的な技術承継の担い手にもなり得る存在です。
日本人の若手採用が年々難しくなっている中で、外国人採用は安定的な若手確保の手段として有効です。
②人員計画の安定化
日本人の中途採用は競争が激しく、採用できるかどうかが読めないケースも多くあります。一方、特定技能人材は送出機関や支援機関を通じた計画的な採用が可能なため、工期や事業規模に応じた人員計画が立てやすくなります。
急な欠員が出た際の補充にも、採用ルートが確立されていればスピーディーに対応できます。
③職場の活性化
就労意欲の高い外国人が加わることで、周囲の日本人従業員にも良い刺激が生まれます。「この外国人が真面目に頑張っているのに、自分がさぼれない」という健全な緊張感が生産性の底上げにつながることもあります。
また、異なる文化や価値観を持つ人材が加わることで、職場のコミュニケーションが活性化し、組織全体の柔軟性や適応力が高まる効果も期待できます。
特定技能採用にかかる費用の目安を把握しておきましょう
建設業での特定技能採用は、他業種と比較してもコスト負担が大きい点を事前に認識しておく必要があります。
特定技能採用にかかる費用の目安
⚠️ 「安く外国人を雇える」という誤解は禁物です。日本人と同等以上の給与に加え、これらの受入コストが発生することを前提に計画を立てましょう。
ただし2040年には現状の2.8倍の労働需要拡大が必要になる予想のため、日本人採用の難しさと比較すれば、十分に合理的な投資となるケースも多くあります。
5.建設業の外国人採用で絶対に押さえるべき5つの注意点

知らなかったでは済まされない罰則が存在し、現場の安全にも直結する問題が潜んでいます。以下の5点は、採用前に必ず確認しておいてください。
在留資格と従事業務のミスマッチが不法就労につながります
在留資格には従事できる業務の範囲が厳密に定められています。
就労資格を持たない外国人を雇用してしまった場合、雇用者には「不法就労助長罪」として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます(入管法第73条の2)。
第七十三条の二
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。1 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
2 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
3 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
「知らなかった」では免責されず、不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が科されるリスクがあります。
在留カードの確認はもちろん、在留資格の種類・期限・業務範囲との整合性を必ず確認し、不明点があれば出入国在留管理庁や専門家に照会する習慣を持ちましょう。
外国人雇用状況の届出を怠ると罰金が発生します
外国人を雇い入れた場合・離職させた場合には、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が義務付けられており、怠った場合は1名につき30万円の罰金が科せられます。
届出のタイミングは雇入れ・離職の翌月10日までが原則です。外国人の入退社のたびに確実に手続きが行われているか、担当者がチェックできる体制を整えておきましょう。
現場の安全管理には多言語対応が欠かせません
建設現場は高所作業・重機操作など危険と隣り合わせの環境です。安全ルールが正確に伝わらないと重大事故につながります。
例えば、現場監督の指示を外国人作業員が誤解し、未完成の型枠にコンクリートを流し込んでしまったという事例も実際に起きています。
安全教育は言語に頼らない方法を積極的に採り入れることが重要です。安全手順書の多言語化・図解や動画を使ったビジュアル教育・指差し確認シートの活用・翻訳アプリの現場導入など、具体的な対策を講じてください。
雇用契約書は外国人が理解できる言語で作成する義務があります
特定技能外国人を雇用する際には、労働条件通知書・雇用契約書・重要事項説明書を母国語で作成・交付することが法的に義務付けられています。
特に「給与から社会保険料が引かれることを知らなかった」というトラブルは頻発しており、厚生年金・健康保険・雇用保険・所得税の控除内容と概算手取り額を事前に書面で丁寧に説明しておくことが重要です。
受け入れ後の定着支援がなければ早期離職につながります
来日直後の外国人が直面する最大の課題は「仕事」ではなく「生活」です。銀行口座の開設・住民登録・住宅の確保・携帯電話の契約など、日本語が不自由な外国人にとってはすべてが大きなハードルです。
こうした生活立ち上げ支援を怠ると早期離職につながりやすいため、登録支援機関を活用した入国後サポートの整備を強くお勧めします。
さらに2027年以降は育成就労制度の移行により外国人の転籍が認められるようになります。今から「選ばれる企業」としての環境整備を進めることが、長期的な人材確保の鍵となります。
6.技能実習から育成就労制度への移行と今後の展望

2027年に迫った制度改革は、建設業の外国人採用の根幹を変える可能性があります。内容を正確に把握しておくことが経営上の必須事項です。
2027年に技能実習制度は廃止され「育成就労」へ移行します
2024年の法改正により、技能実習制度は廃止され2027年を目途に「育成就労制度」へと移行します。新制度は「特定技能1号への移行を前提とした人材育成・確保」を正面から掲げており、就労期間は最長3年です。
大きな変化が「転籍の自由化」です。現行制度では原則として転籍が認められていませんでしたが、育成就労制度の運用方針案から新制度では同一分野・同一業務区分内での転籍が、一定の制限期間(転籍制限2年など)経過後に認められるようになります。
これまで当然だった人材の囲い込みが制度的に担保されなくなるため、現在技能実習生を受け入れている企業は受け入れ体制と処遇水準の見直しを早急に進める必要があります。
外国人に「選ばれる企業」になるための受け入れ体制を整えましょう
転籍が自由化される時代においては、企業側から外国人に選ばれる必要があります。外国人が職場を選ぶ際に重視するポイントは、
- 競争力のある給与水準
- 明確なキャリアパス
- 日本語教育支援
- 生活支援や住居提供
- 文化や宗教への配慮
の5点に整理できます。
日本建設業連合会が推進する「建設分野の特定技能外国人 安全安心受入宣言」も参考にしながら、外国人が長く働きたいと思える職場づくりを地道に進めていきましょう。
7.建設業で外国人採用を進める際に活用すべき機関・サービス
適切な機関・専門家を活用することが、スムーズかつ法令遵守の採用を実現する最短経路です。
JAC(建設技能人材機構)は特定技能受け入れの唯一の窓口です

JACは特定技能「建設」の受け入れに関わる中核機関で、建設業での特定技能採用を検討するなら最初に接触すべき組織です。JACへの加入は「義務」でありまた、受入計画の認定にはJAC加入とCCUS登録が必須です。
受入計画申請のサポート・技能評価試験の運営・職業紹介・巡回指導の調整など幅広い役割を担っています。
問い合わせ先は0120-220-353(平日9:00〜17:30)です。特定技能での採用を検討している段階から、早めに相談することをお勧めします。
登録支援機関・行政書士・送出機関を上手に活用しましょう
登録支援機関は入国後の生活支援(住居確保・役所手続き・日本語学習支援等)を代行する機関で、費用は月3〜5万円/人程度が相場です。初めて外国人を採用する企業には特に有効です。
行政書士は在留資格申請の専門家で、書類作成・申請代理を委託することでミスリスクを大幅に下げられます。
海外送出機関は現地での人材募集・選定・日本語教育を担うパートナーで、海外在住の人材を採用する際には必ず関わる存在です。複雑な手続きをすべて自社で抱え込もうとすると担当者の負荷が増大しミスも起きやすくなります。
最初は専門家のサポートを借りながら経験を積み、慣れてきた段階で内製化を検討するという進め方が現実的です。
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8.まとめ
建設業の外国人採用は、在留資格の理解・適切な手続き・定着支援の3つが成功の鍵です。制度は複雑に見えますが、正しく理解すれば人手不足解消への有効な手段となります。
2027年の育成就労制度移行も見据え、今から体制を整えることが長期的な競争力につながります。不安な点は専門機関やサポートサービスを積極的に活用しながら、一歩ずつ進めていきましょう。