介護業界は今、かつてない深刻な人手不足に直面しています。
2025年には約32万人の介護人材が不足すると予測される中、多くの介護施設が新たな人材確保策として外国人労働者の雇用に注目しています。
本記事では、外国人労働者の介護施設での雇用を成功に導くための実践的なノウハウをご紹介。
4つの在留資格の詳細比較から、具体的な採用フロー、定着率を高める実践ポイント、活用可能な補助金まで、制度理解から実践内容までを網羅的に解説いたします。
- 4つの在留資格(EPA・介護・技能実習・特定技能)の違いと最適な選び方
- 外国人労働者雇用で得られる3つの価値と直面する課題への対処法
- 定着率を高める5つの実践ポイントと活用できる補助金制度
1.介護分野における外国人労働者雇用の最新動向

深刻化する介護人材不足と2025年問題の実態
日本の介護業界は、これまでに経験したことのない深刻な人手不足に陥っています。
厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和6年2月分)」によると、介護サービス職業従事者の有効求人倍率は3.85倍に達し、全職業平均の1.20倍を大幅に上回る状況が続いています。
この数字が示すのは、求職者1人に対して約4つの求人があるという異常事態です。つまり、介護施設が4施設で人材を奪い合っている状況であり、従来の採用手法では人材確保が極めて困難になっていることを意味します。
さらに深刻なのは、いわゆる「2025年問題」です。厚生労働省の推計によると、2025年には約32万人の介護人材が不足すると予測されています。
団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となる2025年に向けて、介護需要は急激に増加する一方で、少子化による生産年齢人口の減少により、従来の人材確保策では限界があることが明らかになっています。
賃上げや処遇改善、ICT化推進などの対策も講じられていますが、根本的な人材不足の解決には至っておらず、多くの介護施設が新たな人材確保策として外国人労働者の雇用に活路を見出しています。
参照元:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年2月分)」
外国人介護人材の受入実績と急成長の背景
外国人介護人材の受入実績は、近年急激な成長を見せています。
「外国人雇用状況」の届出状況によると、2024年10月末現在、医療・福祉のうち社会保険・社会福祉・介護事業で働く外国人労働者は85,537人に達しています。
在留資格別の内訳を見ると、以下のような状況になっています。
- 特定技能:28,400人(2023年12月末時点)
- 技能実習:15,011人(2022年6月末時点)
- 特定活動(EPA介護福祉士):11,610人(2023年6月末時点)
- 在留資格「介護」:8,093人(2023年6月末時点)

特に注目すべきは特定技能外国人の急増です。2019年4月の制度開始から約5年で28,400人まで増加し、現在最も多くの外国人介護職員を占めています。
この急成長の背景には、技能実習と特定技能の新設により、外国人が介護分野で働きやすくなったことがあります。
従来のEPA介護福祉士は受入のハードルが高く人数も限られていましたが、技能実習や特定技能の要件難易度は相対的に低く、より多くの受入れを可能としました。
参照元:厚生労働省「外国人雇用状況」
政府による外国人介護人材受入環境の整備
政府は外国人介護人材の受入れを積極的に推進しており、制度面での環境整備を継続的に行っています。2019年4月の特定技能制度創設以降、段階的に制度の拡充が図られています。
特定技能制度では、介護分野において2024年4月から5年間で135,000人の受入れを目標として設定しています。これは従来の受入計画を大幅に上回る規模であり、政府の本気度を示すものです。
また、受入事業者向けの支援制度も充実してきています。
厚生労働省では介護施設等による留学生受入支援事業、EPA介護福祉士候補者受入支援事業、外国人技能実習制度受入支援事業などの補助事業を実施しており、受入環境の整備を財政面でもサポートしています。
2.外国人労働者が介護現場で働ける4つの在留資格を徹底比較

1、在留資格「介護」|長期雇用を実現する最高位の選択肢
在留資格「介護」は、外国人介護職員の中で最も専門性が高く、長期雇用を実現できる選択肢です。
この資格を取得するためには、介護福祉士の国家試験に合格することが前提条件となっており、高いスキルレベルが保証されています。
介護福祉士資格取得が前提の高いスキルレベル
介護福祉士の国家試験はすべて日本語で実施されるため、合格者は高い日本語能力を有しており、業務上のコミュニケーションに問題がないと考えられます。
また、介護に関する専門知識と技術を習得しているため、即戦力としての活躍が期待できます。
在留期間更新制限なし・家族帯同可能のメリット
在留資格「介護」の最大の特徴は、在留期間の更新に制限がないことです。5年ごとの更新は必要ですが、更新回数に制限がないため、本人が希望する限り永続的に日本で働くことができます。
また、「家族滞在」の在留資格で家族の帯同が可能であることも大きな特徴です。家族も一緒に日本にいることで、定住意向が高まり、長期的な活躍が期待できます。
人材確保の難易度と採用戦略のポイント
現在この資格を持つ外国人は約8,000人程度と少なく、人材確保の難易度は高いのが現状です。
採用戦略としては、介護福祉士養成校の外国人留学生や、技能実習・特定技能から移行予定の人材にアプローチすることが効果的です。
2、EPA介護福祉士|制度が確立された安心の受入制度
EPA(経済連携協定)介護福祉士は、日本とインドネシア、フィリピン、ベトナムとの二国間協定に基づく受入制度です。
インドネシア・フィリピン・ベトナムからの優秀人材

EPA(経済連携協定)に基づき、日本の介護施設で就労と研修をしながら、日本の介護福祉士の資格取得を目指す外国の方々を「EPA介護福祉士候補者」と言います。
EPA介護福祉士候補者は、あくまでも経済活動を通じた、国同士の連携強化を図ることが目的で、介護人材の不足を補充するための措置ではありません。
平成20年度よりEPA介護福祉士候補者の受け入れがスタート。令和1年度までの間で、累計で5,026名を受け入れており、その対象国としてインドネシア、フィリピン、ベトナムの3ヶ国があります。
引用元:日本福祉教育専門学校「EPA介護福祉士とは」
そのため、技能実習生と比較して即戦力としての活躍が期待できます。
10年以上の運用実績による確立されたスキーム
EPAの歴史は長く、インドネシア、フィリピンとの間には2008年、ベトナムとの間には2009年に協定が発効されています。10年以上の長きにわたって活用されている制度であるため、スキームが確立されており、初めて外国人介護士を受け入れる施設でも安心できるでしょう。
4年目国家試験合格による永続雇用への道筋
EPA候補者は入国から4年目に介護福祉士の国家試験受験が義務付けられており、合格すれば在留資格「介護」に移行して永続的な就労が可能になります。
受入施設には国家試験対策のサポートが求められますが、合格により長期雇用が実現できます。
3、技能実習制度|受入ハードルが低い導入しやすい制度
技能実習制度は、発展途上国への技能移転を目的とした制度で、比較的受入れのハードルが低く、初めて外国人を受け入れる施設でも導入しやすい特徴があります。
監理団体経由での比較的簡単な受入手続き
技能実習の大きなメリットは、監理団体を通じた受入れにより、施設側の手続き負担が軽減されることです。
監理団体が技能実習生の講習や生活指導、各種手続きをサポートしてくれるため、初めて外国人を受け入れる施設でも安心です。
最長5年間雇用→特定技能移行で10年活用可能
技能実習制度では、1号(1年)→2号(2年)→3号(2年)の最長5年間の実習が可能です。
また、技能実習2号または3号を良好に修了した場合、特定技能1号への移行が可能で、技能実習5年間+特定技能5年間の最長10年間の雇用が実現できます。

人員配置基準・夜勤制限などの注意点
技能実習生は一人夜勤が原則不可(N2以上合格者除く)、配属から6か月間は人員配置基準に算入不可などの制限があります。
また、1年後、3年後の技能検定受験が必須で、日本語能力についても入国時N4程度、1年後にN3程度への向上が求められます。
4、特定技能1号|即戦力として期待できる実践的制度
特定技能1号は、2019年に新設された人手不足対応のための在留資格で、介護分野においても多くの外国人が活躍しています。
配属初日から人員配置基準算入可能な即効性
特定技能外国人は、
①技能評価試験と日本語評価試験に合格しているか
②技能実習2号を良好に修了しているか
この2つが要件となっているため、一定のスキルレベルが保証されています。
技能実習生の場合、配属から6か月間は人員配置基準に算入できませんが、特定技能は配属初日から算入可能で、即座に戦力として活用できます。
一人夜勤対応・幅広い業務従事のメリット
特定技能は一人での夜勤も可能で、即戦力としての活躍が期待できます。
また、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の「介護保険3施設」および認知症グループホーム、特定施設、通所介護、通所リハビリテーション、認知症デイサービスでの業務に携わることができるなど、業務制限が少ないのが魅力です。
最長5年雇用期間の効果的活用方法
特定技能1号の在留期間は最長5年ですが、介護分野では特定技能2号の設定がないため、より長期的な雇用を希望する場合は、介護福祉士資格取得による在留資格「介護」への移行支援が重要になります。
また、転職が自由であるため、労働条件や職場環境の改善により定着率向上を図ることが重要です。
3.外国人労働者雇用で介護施設が得られる3つの価値

慢性的な人手不足を根本解決し施設運営を安定化
外国人労働者の雇用による最も直接的で重要な価値は、慢性的な人手不足の根本的解決です。

厚生労働省の調査によると、外国人介護職員を受け入れている施設の78.9%が「今後も受け入れを継続したい」と回答しており、その効果の高さが実証されています。
地方施設でも採用成功する条件とアプローチ
日本人の応募が集まりにくい地方の施設でも、外国人材の場合は勤務地よりも就労条件や職場環境を重視する傾向があり、条件次第で採用成功率が高くなります。
特に、住居提供や生活支援を充実させることで、地方でも優秀な外国人材を確保できています。
若い労働力で職場に活気をもたらし生産性向上
外国人労働者の多くは20-30代の若い世代であり、その意欲的な姿勢と新鮮な視点が職場に活気をもたらしています。
45.6%の事業所が実感する「職場の活気向上」効果
令和4年度の調査では、外国人労働者を受け入れている事業所の45.6%が「職場に活気が出る」と評価しており、その効果は数値にも表れています。
外国人介護職員の特徴として、明確な目的意識を持っていることが挙げられます。母国の家族を支えるため、日本の介護技術を学ぶため、将来のキャリア形成のためなど、強いモチベーションを持って働いています。
日本人職員のモチベーション向上・スキルアップ促進
この姿勢が日本人職員にも良い刺激を与え、職場全体のモチベーション向上につながっています。
外国人職員への指導を通じて、日本人職員も自身の介護技術や指導方法を見直す機会が増え、結果的にスキルアップにつながるという副次的効果も報告されています。
人材獲得競争で優位に立つ差別化要因の確立
外国人雇用の実績は、人材獲得競争において重要な差別化要因となります。
外国人雇用実績による採用力強化
外国人職員の受入実績があることで、多様性を重視する日本人求職者からの評価も高まり、採用力全体の強化につながっています。
実際に、外国人職員が活躍している施設では、「グローバルな環境で働きたい」「多様性のある職場で成長したい」という日本人求職者からの応募も増加しています。
多様性推進企業としての地域・業界での評価向上
利用者や家族からも「国際的な施設」として高い評価を受けるケースが多く、施設の社会的信頼度向上にも寄与しています。
また、「介護の技術や先進的な考え方を母国に持ち帰りたい」という想いを持つ外国人採用は、国際貢献へとつながり、施設のブランディング効果も期待できます。
将来の人材確保戦略における先行者優位
外国人雇用のノウハウを蓄積することで、将来的により多くの外国人材を受け入れる際の基盤となり、持続的な人材確保戦略の核となります。
介護業界全体で外国人雇用が拡大する中、早期に取り組みを開始した施設ほど、優秀な人材を確保しやすくなる傾向があります。
4.外国人労働者雇用で直面する課題と実践的解決策

言語・コミュニケーションの壁を効果的に乗り越える方法
外国人労働者雇用で最も頻繁に指摘される課題が、言語とコミュニケーションの問題です。
日本語能力レベル別の段階的指導アプローチ
海外現地から採用する場合、日本語のスキルは高いとは言い切れず、意思疎通がうまくできないことは往々にしてあります。
介護現場では専門用語が多用され、利用者の微妙な変化を察知する必要があるため、レベル別の段階的なアプローチが重要です。
N4-N5レベル | 基礎的日本語強化、毎日30分の日本語学習時間確保 |
N3レベル | 介護専門用語習得、業務別用語集の作成・活用 |
N2以上 | 高度なコミュニケーション、記録作成・家族対応の段階的指導 |
専門用語理解促進のための視覚的ツール活用
写真付きマニュアルの作成、介護技術のビデオ教材活用、イラストを用いた説明資料などにより、言葉だけでは伝わりにくい内容を視覚的に補完できます。また、QRコードを活用した動画マニュアルの導入も効果的です。
「伝わる日本語」を使った効果的コミュニケーション術
日本人職員向けの「伝わる日本語」研修も重要です。
早口を避ける、専門用語を分かりやすい言葉に置き換える、確認を徹底するなど、外国人とのコミュニケーションを改善するテクニックを職員全体で共有することが効果的です。
法的手続きと継続的管理を確実に実施する仕組み
外国人雇用には、在留資格の更新やハローワークへの届出など、日本人雇用とは異なる法的手続きが必要です。
在留資格更新・ハローワーク届出の管理方法
在留資格の更新は期限の3か月前から申請可能で、余裕を持った準備が必要です。また、外国人を雇用している企業は、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が雇用・離職時に義務付けられています。
効率的な管理のために、在留期限管理表の作成や、専門家(行政書士等)との連携体制構築が推奨されます。
労働条件設定時の注意点と適正賃金の考え方
労働条件設定では、日本人が同様の職務に従事する場合と同等以上の報酬を受けることが必要です。これは、外国人労働者の権利を保護し、公平な労働環境を確保するための重要な要件です。
外国人雇用状況管理の効率化ツール活用
外国人雇用管理システムの導入により、手続きの漏れを防ぎ、効率的な管理が可能になります。
特定技能の場合は10項目の支援義務があり、これらを確実に実施するための管理体制の構築が重要です。
義務的支援は以下の10項目となります。
引用元:キャリアリンクファクトリー「特定技能の義務的支援と任意的支援の内容を紹介」
- 義務的支援10項目
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
離職防止と定着促進を実現する組織的取り組み
外国人労働者の離職理由を分析すると、「人間関係」「労働条件への不満」「キャリアアップの機会不足」が主要因として挙げられます。
転職理由分析に基づく予防的アプローチ
海外では日本と違って転職が当たり前の文化でありポジティブなこととして認識されているため、あっさりと転職をしてしまうこともあります。
しかし、定着して長く働き続ける外国人も多く、定着の秘訣は就労条件の満足度を高めることにあります。
そのためには、1対1の支援担当者を配置するメンター制度の導入や、月1回の個別面談で課題の早期発見、昇進・昇格の機会を明確化することで、外国人職員のモチベーション維持と定着促進を図ることが大切です。
また良好な人間関係を続けていくためにも、相互理解を深める取り組みが不可欠です。定期的な交流イベントの開催や、外国人職員の文化や特技を紹介する機会を設けることで、職場全体の結束力向上につながります。
就労条件の満足度を高めるために実践できること
1.1対1の支援担当者を配置するメンター制度の実施
2.月1回の個別面談実施(課題の早期発見、昇進・昇格の機会を明確化)
3.定期的な交流イベントの開催(良好な人間関係作り)
5.定着率を高める5つの実践ポイント

ポイント1:受入前の組織準備で成功の土台を構築
外国人労働者の受入成功は、事前準備が8割を決めると言われています。
日本人職員の意識改革と協力体制づくり
同じ職場で働くことになる日本人職員に、日本人の採用は非常に難しいこと、外国人職員を雇用することで自分たちが働きやすい環境を前向きに作っていくことができるということを伝え、納得してもらいましょう。
これは外国人雇用を行う上で一番最初に必要な対策です。
現状共有として人手不足の深刻さと外国人雇用の必要性を説明し、メリット説明では職場環境改善や負担軽減効果を具体的に提示します。
各職員の役割と協力体制を明確に定義し、よくある懸念事項への回答と対策を共有することで不安解消を図ります。
住居確保・生活支援の事前準備チェックリスト
受入前の準備として以下の項目を確実に実施します。

受入マニュアルでは、生活ルール、業務手順、緊急時連絡先などを網羅的に記載し、外国人職員が安心してスタートできる環境を整備しておくことが大切です。
ポイント2:段階的オリエンテーションで円滑なスタート実現
入職初期の段階的研修プログラムにより、外国人職員の不安を解消し、スムーズな職場適応を促進します。
業務マニュアルでは、文字だけでなく写真やイラストを多用し、言語の壁を超えて理解しやすい内容にします。また、QRコードを活用した動画マニュアルの導入も効果的です。
メンター職員は、コミュニケーション能力が高く、外国人への理解があり、指導経験豊富な職員を選定します。
メンター向けの研修では文化的違いへの理解、効果的な指導方法、問題発生時の対応方法などを習得させます。
ポイント3:継続的な日本語教育で専門性向上を支援
日本語能力の向上は、業務の質向上と定着率向上の両方に直結します。
OJT・Off-JTを組み合わせた日本語スキルアップ
OJT(On-the-Job Training)とOff-JT(Off-the-Job Training)を組み合わせた体系的なアプローチが重要です。
Off-JT | 日本語教室・eラーニング(週2回・1時間) |
OJT | 業務中の指導・確認(毎日) |
自習支援 | 学習教材提供・環境整備(随時) |
介護専門用語習得のため業務別用語集の作成(食事介助、入浴介助、移乗介助など)、ロールプレイング形式での会話練習、利用者との日常会話を通じた自然な習得、介護記録作成の段階的指導を実施します。
学習時間の確保、模擬試験の実施、合格者によるメンター制度など、組織全体で資格取得を支援することで、長期雇用への道筋を作ることができます。
ポイント4:文化的多様性を活かした職場環境の構築
外国人職員の文化的背景を理解し、それを職場の強みに変える取り組みが定着率向上の鍵となります。
相互理解促進のための定期的交流イベント
月1回の国際交流会では、各国の文化・料理・行事の紹介を行います。また、言語交換プログラムとして、外国人職員が母国語を教え、日本人職員が日本語を教える相互学習の機会を設けます。
外国人職員の特技・文化を活かす機会創出
マッサージなど母国の技術を介護に活用したり、利用者との会話で外国の話を紹介したりすることで、外国人職員の価値を高めます。
例えば、1日に何度かお祈りをすることが定められている宗教の外国人を採用する場合、該当する時間帯には持ち場を離れることができるよう、みんなで協力する環境を作ります。
多国籍チームでの効果的な業務分担方法
異なる国籍の職員でチームを構成し、それぞれの特性を活かした業務分担を行います。多様性を活かしたチーム編成により、新しい視点やアイデアが生まれ、介護の質向上につながります。
ポイント5:中長期的キャリア支援で定着率向上を図る
外国人職員の将来設計を支援し、組織への帰属意識を高めることが長期定着の鍵となります。
昇進・昇格の機会均等と評価制度の透明化
能力・実績に基づく公平な評価制度を構築し、リーダー職・主任職への登用機会を提供します。日本人職員と同等の研修参加機会を確保し、昇進・昇格の機会を均等に提供することで、モチベーション向上を図ります。
在留資格変更支援による永続雇用への道筋
介護福祉士資格取得支援として学習時間確保や受験費用補助を行います。技能実習→特定技能→在留資格「介護」への段階的移行支援や、必要書類準備・申請手続きのサポートを実施します。

6.外国人労働者雇用の具体的な採用フローと手続き

採用準備段階での必須確認事項
外国人労働者の採用を成功させるためには、事前の準備が極めて重要です。
受入可能性の事前診断(施設要件・体制チェック)
まず、自施設が外国人受入れの要件を満たしているかの確認から始めます。
施設要件として適切な業務内容・労働条件の設定、体制要件として指導体制・住居確保の準備状況、財務要件として採用・支援費用の予算確保、人的要件としてメンター職員・通訳体制の整備が必要です。
在留資格別必要書類と申請期間の整理
在留資格により必要書類と申請期間が異なります。
在留資格 | 必要書類 | 申請期間 |
---|---|---|
特定技能1号 | 雇用契約書、支援計画書等 | 1-3か月 |
技能実習 | 技能実習計画認定申請等 | 3-6か月 |
EPA | 受入希望申込書等 | 6-12か月 |
在留資格「介護」 | 雇用契約書、資格証明書等 | 1-2か月 |
予算計画と採用スケジュール策定のポイント
初期費用(採用費、研修費、住居準備費)と継続費用(支援費、通訳費、教育費)を見積もり、採用から就労開始までの詳細スケジュールを作成します。
特定技能1号の資格を有した外国人材が国内在住であるか海外在住であるかによって期間が変わり、前者は勤務開始までに約3〜4か月、後者は約5〜7カ月を要します。
効果的な募集・選考・採用決定の進め方
人材紹介会社の選定基準と活用方法
人材紹介会社の選定では以下の基準で評価します。
人材紹介会社の選定基準
- 実績と専門性:介護分野での紹介実績、在留資格への理解度
- サポート体制:入職後支援、緊急時対応の充実度
- 料金体系:明確な料金設定、追加費用の有無
- 人材の質:事前研修の内容、日本語能力レベル
面接での重要確認ポイントと評価軸
面接では以下の項目を重点的に確認します。

内定後の入職準備支援と期待値調整
内定後は住居確保、生活必需品準備、各種手続き(携帯電話、銀行口座等)のサポートを行い、円滑な就労開始を支援します。
また、業務内容や職場環境について詳細に説明し、期待値の調整を図ります。
入職後の定着支援と継続的フォロー体制
最初の90日間の重点サポート内容
入職後の最初の90日間を3つの期間に分けて重点的にサポートします。
第1-30日(生活基盤確立期)
- 生活環境の調整・改善
- 基本業務の習得支援
- 日本人職員との関係構築
- 週1回の個別面談実施
第31-60日(業務習熟期)
- 独立業務の範囲拡大
- 専門技術の向上支援
- 利用者・家族との関係構築
- 2週間に1回の面談実施
第61-90日(安定化期)
- 夜勤業務への参加(可能な場合)
- チームでの役割明確化
- 今後の目標設定
- 月1回の定期面談移行
定期面談による課題早期発見・対応方法
定型的な質問項目を設定し、業務面・生活面・人間関係面での課題を体系的に把握します。問題の早期発見により、離職を防ぎ、満足度向上を図ります。
また3か月・6か月・1年の節目で総合的な評価を実施し、成長を実感できる仕組みを構築します。評価結果に基づく個別の成長支援計画を策定し、継続的なスキルアップを促進します。
7.活用できる補助金・支援制度の最大限活用法

外国人介護人材受入関連補助金の全体像
厚生労働省を中心に、外国人介護人材の受入れを支援する各種補助事業が実施されています。
厚生労働省による各種補助事業の詳細
主要な補助事業として以下があります。
介護施設等による留学生受入支援事業 | 住居費、学習支援費(年額240万円上限) |
EPA介護福祉士候補者受入支援事業 | 研修費、生活支援費(年額180万円上限) |
外国人技能実習制度受入支援事業 | 環境整備費(施設改修費の1/2) |
特定技能外国人受入支援事業 | 日本語教育、生活支援(年額120万円上限) |
申請条件・支給額・手続き方法の整理
申請には以下の基本要件を満たす必要があります。
申請条件
- 介護保険法に基づく指定を受けた事業所であること
- 適切な労働条件と受入体制が整備されていること
- 過去に補助金の不正受給歴がないこと
採択率向上のための申請書作成のコツ
- 具体的な計画書作成
⇒受入人数、研修内容、支援体制を詳細に記載すること - 地域貢献性の強調
⇒地域の介護人材不足解消への貢献を明記すること - 継続性の担保
⇒補助期間終了後の自立的な運営計画を提示しておくこと - 成果指標の設定
⇒定着率、技能向上度など具体的な目標を設定すること
研修・教育費用を軽減する支援制度活用
外国人職員の日本語教育や介護技術研修にかかる費用についても、各種支援制度を活用できます。
日本語教育支援の具体的利用方法
地域日本語教育事業 | 自治体が実施する日本語教室の活用 |
オンライン日本語学習システム | 厚生労働省提供の無料学習コンテンツ 「介護の日本語」テキストの活用 |
企業内日本語研修助成 | 人材開発支援助成金の活用 |
人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)では、有期雇用労働者等への職業訓練に対し、訓練経費の60%、賃金助成1時間当たり760円が支給されます。
キャリアアップ助成金(人材育成コース)では、非正規雇用労働者への訓練に対し、訓練経費の実費相当額が助成されます。
受入環境整備への財政支援制度
外国人職員の受入環境整備についても、各種支援制度を活用して費用負担を軽減できます。
住居確保支援・ICT導入支援の詳細
社会福祉施設職員宿舎借り上げ支援事業(自治体事業)では、建設・改修費の1/2(1戸当たり200万円上限)が補助されます。
外国人材受入環境整備事業では、外国人専用住居の整備費用の1/3が補助されます。
ICT導入支援事業では、介護記録、情報共有システム等の導入費用の1/2(上限100万円)が補助され、多言語対応システム導入支援として翻訳アプリ、多言語マニュアル作成費用の助成もあります。
職場環境改善助成の申請・活用方法
職場環境改善に関する助成制度を活用し、外国人職員が働きやすい環境整備を進めます。具体的には、休憩室の整備、多言語対応設備の導入、文化的配慮のための設備改修などが対象となります。
多くの自治体が独自の外国人材受入支援制度を設けています。
自治体のホームページを確認したり、商工会議所への相談、行政書士・社会保険労務士への相談、介護事業者団体への参加により積極的に情報収集を行い、効果的に活用していきましょう。
8.外国人労働者雇用で介護施設が得られる真の価値

外国人労働者の雇用は、人手不足解消を超えた組織変革の機会です。
適切な在留資格の選択、段階的な受入体制の構築、継続的な支援により、多様性を活かした質の高い介護サービスを実現できます。
早期の取り組み開始が競争優位につながるため、本記事の実践ポイントを参考に、まずは第一歩を踏み出すことをおすすめします。
特定技能「介護」の概要から取得要件、業務範囲、受け入れ施設の条件、他の在留資格との違い、さらには長期的なキャリアパスまで制度を活用するために必要な情報をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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