フィリピン人の特徴を徹底解説!雇用成功の8つのポイントまで

人手不足が深刻化する中、フィリピン人材の活用が注目されています。

約30万人が日本に在留し、介護や接客業を中心に活躍中です。しかし、時間管理や家族優先の価値観など、文化の違いを理解しないとトラブルになることも。

本記事では、フィリピン人の性格・国民性から、雇用のメリット・注意点、成功のための8つのポイントまで解説します。

1．フィリピンの基本情報と日本での雇用状況

フィリピン人を雇用する前に、まずはフィリピンという国の基本情報と、日本での雇用状況について理解しておきましょう。

フィリピンの人口・地理・文化的背景

フィリピンは東南アジアに位置する島国で、人口は約1億1,000万人です。

最大の特徴は平均年齢が約25歳と非常に若いことで、日本の48.9歳と比較すると、若い労働力が豊富です。

温暖な気候が陽気で楽観的な国民性を育み、約400年にわたるスペイン統治の影響を強く受けたことから国民の約83%がカトリックという宗教的背景が価値観に大きく影響しています。

日本で働くフィリピン人の現状

現在、日本には約30万人のフィリピン人が在留しており、外国人労働者としては中国人（約82万人）、ベトナム人（約56万人）、韓国人（約41万人）に次いで4番目に多い国籍です。

日本に在留する外国人全体の約1割を占める規模となっています。

出典：出入国在留管理庁【令和５年末現在における在留外国人数について】

フィリピン人が日本で働く主な制度は以下の通りです。

在留資格・制度	概要
特定技能	2019年に創設された制度。2023年12月末時点で約2万1,364人のフィリピン人が特定技能で就労
EPA（経済連携協定）	2008年から開始された看護師・介護福祉士の受入制度。2023年時点で約2,680人が就労
技能実習	技能実習生の国籍別内訳は発表されていないが、過去の傾向からフィリピンは技能実習生の主要な送り出し国の一つであり、数万人規模で在留していると推定。
技術・人文知識・国際業務	約38,000人が専門職として就労（2018年時点）

出典：出入国在留管理庁 令和6年6月末現在における在留外国人数について

特に注目すべきは、介護分野でのフィリピン人の活躍です。

2017年の調査では、外国人介護労働者の国籍別で最も多かったのがフィリピン人で、全体の41.4%を占めていました。

これは、フィリピン人のホスピタリティ精神の高さと、年上への敬意を重視する文化が、介護業務に適しているためです。

OFW（海外出稼ぎ労働者）と家族を支える強い想い

フィリピンには「OFW（Overseas Filipino Workers）」と呼ばれる、海外で働く出稼ぎ労働者の文化が深く根付いています。

現在、世界各国で約1,200万人のフィリピン人が働いており、これは総人口の約10%に相当します。

参考：Philippine Statistics Authority (PSA) – フィリピン統計局

この出稼ぎ文化が発達した背景には、フィリピン国内と海外の給与格差があります。

フィリピンの平均月収は約2万円程度で、日本との給与格差は約7～10倍にもなります。地方部では月収1万円程度の仕事も珍しくなく、大学卒業者でも初任給は月額2～3万円程度というのが現実です。

フィリピン政府も海外就労を積極的に推進しており、2021年には在外フィリピン人からの送金額が349億ドル（約5兆2,350億円）に達し、これがGDPの約10%を占めています。

多くのフィリピン人にとって、海外で働くことは家族の生活を支える重要な手段となっているのです。

日本がフィリピン人の出稼ぎ先として選ばれる理由は以下の通りです。

このような背景から、フィリピン人は海外就労への準備と覚悟を持って来日するケースがほとんどで、真面目に働く姿勢を持っている人材が多いと言えます。

▼あわせて読みたい

記事内で紹介した「特定技能」は、人手不足が深刻な分野で外国人材を受け入れるための在留資格です。こちらの記事では対象となる分野や在留期間、企業が満たすべき要件など、制度の全体像をこちらの記事で詳しく解説しています。

2．フィリピン人の性格・国民性【7つの特徴】

フィリピン人を雇用する上で、彼らの性格や国民性を理解することは非常に重要です。

ここでは、フィリピン人の代表的な7つの特徴について詳しく解説します。

明るくフレンドリーで社交的（アジアのラテン系）

フィリピン人は明るくフレンドリーで社交的です。南国の温暖な気候の影響もあり、初対面の人にも気さくに話しかけ、職場でもムードメーカー的存在になります。

「アジアのラテン」とも呼ばれ、歌やダンスを好む人も多く、日本人スタッフとのコミュニケーションを活性化させます。

さらに、フィリピン人は写真を撮ることが大好きで、特に自撮り（セルフィー）が人気です。

2014年の米国タイム誌の調査では、「自撮りの人気が最も高い都市」ランキングで、マカティ（マニラ首都圏）が1位に選ばれたほどです。

参考：TIME Magazine　The Selfiest Cities in the World: TIME’s Definitive Ranking

職場においても、このフレンドリーな性格は大きなメリットとなります。

日本人はコミュニケーションに消極的な傾向がありますが、フィリピン人から積極的に話しかけてくれることで、結果的に仕事が円滑に進むことが多いのです。

ホスピタリティ精神が非常に高い

フィリピン人は思いやりの心を持ち、誰にでも丁寧に接するホスピタリティ精神が非常に高いことで知られています。

初対面の人に対しても明るく笑顔で接し、困っている人がいれば手を差し伸べることを躊躇しません。

この特性は、人と人とのつながりを重視するフィリピンの文化から生まれたものです。

この高いホスピタリティ精神が、フィリピン人が介護や接客業で活躍する大きな理由となっています。

実際、日本の介護業界では多くのフィリピン人が活躍しており、高齢者からも「明るくて優しい」と高い評価を得ています。

家族を何よりも大切にする

フィリピン人にとって家族は最も大切な存在です。

フィリピン文化では家族が生活の中心であり、昔から家族を大切にする文化が根付いています。多くの若者が家族のために海外に出稼ぎに行き、仕送りをしています。

日本の働き方との大きな違いとして、フィリピン人は家族が体調を崩したときなど、仕事よりも家族の看病を優先する傾向があります。

この価値観を理解せずに拒むと、信頼関係が崩れかねません。価値観の違いを知り、お互いに歩み寄る気持ちを持つようにしましょう。

カトリック信仰が生活と価値観の中心

フィリピンは国民の約83%がカトリックというアジアでは珍しいキリスト教国家です。

この宗教的背景は、フィリピン人の価値観や行動に大きな影響を与えています。

キリスト教の教えにより、フィリピン人は勤勉さと誠実さを重視し、困っている人を助ける精神や、年上の人を敬う文化が根付いています。

特に、年長者に対しては敬語を使い、意思決定においては年上の人の意見を尊重する傾向があります。日曜礼拝が重要なため、宗教行事への配慮が必要です。

英語力が高く国際適応力がある

フィリピンでは英語が公用語として扱われており、英語が話せる人が多いのも大きな特徴です。

現在、フィリピンの教育制度が整い、ミドルクラスの教育を受けた英語堪能な人材が数多く存在します。

多言語・多文化の中で育まれた柔軟な対応力により、フィリピン人は国際的な適応力が非常に高いと言えるでしょう。

世界で最も海外に出稼ぎに出る人口が多い国であり、ビザの取得が容易だったり賃金が高かったりする中東の国へ出稼ぎに行くことが多いですが、日本でも多くのフィリピン人が活躍しています。

時間にルーズな傾向(フィリピンタイム)

フィリピン人の特徴として注意が必要なのが、時間にルーズな傾向です。

これは「フィリピンタイム」という言葉があるほど、フィリピン独特の文化として認識されています。

これは、フィリピンでは時間通りに行くと相手がまだ準備できていないケースが多いため、時間を守る方が失礼になってしまうことがあるという文化的背景によるものです。

この背景には、厳しい交通渋滞が常態化している社会事情や、『今この瞬間を楽しむ』ことを重視する楽天的な国民性が影響していると言われています。

単なる『時間にだらしない』のではなく、人間関係やその場の雰囲気を、厳格な時間管理よりも優先する価値観の表れと考えたほうがいいでしょう。

このあたりは文化の違いとも言えるので、理解するしかありません。仕事で待ち合わせ時間や締め切りなどを伝える場合は、伝え方について注意が必要です。

長期計画より「今」を楽しむ

フィリピン人は、長期的な計画を立てることを苦手としている方が多く見られます。陽気で楽観的な性格から、「今を楽しむ」ことを大切にする傾向があるためです。

そのため、短期的な仕事を任せるのに向いていると言えます。例えば、先週伝えた内容でも翌週には忘れてしまうことが多いです。

長期的な仕事を任せる場合、何度も念押しをしなければ覚えてもらえない可能性もあるので、注意しましょう。

3．特徴の背景：歴史と文化が育んだ国民性の「なぜ」

フィリピン人の特徴的な性格や国民性は、どのように形成されたのでしょうか。

ここでは、その背景にある歴史と文化を解説します。

約400年のスペイン統治とカトリックの影響

フィリピンは1521年から約400年間、スペインの統治下にありました。

この長期統治により、国民の約83%がカトリックというアジアでは珍しいキリスト教国家となりました。

「困っている人を助ける」「年上の人を敬う」「勤勉さと誠実さを重視する」といった価値観が根付いたのはこのためです。

また、スペイン文化の影響で陽気で情熱的な性格が育まれ、「アジアのラテン」と呼ばれるほど明るくフレンドリーな国民性が形成されました。

歌やダンスを好む文化も、この時代の影響です。

アメリカ統治がもたらした英語力と教育システム

1898年からアメリカの統治が約50年間続き、英語を公用語とする教育システムが確立されました。

アメリカは公教育制度を整備し、英語での教育を推進した結果、現在のフィリピンでは多くの国民が高い英語力を持っています。

この英語力が、フィリピン人が世界中で働ける大きな強みとなっています。

また、アメリカ式の教育システムは国際適応力を高め、多様な文化や価値観を受け入れる柔軟性を育てました。

温暖な気候と大家族主義が育んだ価値観

年間平均気温26～27℃という温暖な気候が、フィリピン人の陽気で楽観的な性格を育んでいます。

厳しい冬がなく一年中温暖な環境では、リラックスした生活を送ることができ、「今を楽しむ」価値観やフィリピンタイムのような時間感覚を生み出しました。

また、伝統的な大家族主義により、「家族を何よりも大切にする」「コミュニティを重視する」「チームワークを大切にする」価値観が形成されました。

大家族の中で多くの人とコミュニケーションを取りながら成長するため、見知らぬ人とも気さくに話せるフレンドリーな性格が育まれるのです。

4．フィリピン人を雇用する5つのメリット

フィリピン人を雇用することには、企業にとって多くのメリットがあります。

ここでは、特に重要な5つのメリットについて詳しく解説します。

若くてモチベーションの高い人材を確保できる

フィリピンの平均年齢は約25歳と若く、日本との給与格差が7～10倍あるため、強い就労意欲を持って来日します。

家族のために働くという動機から、真面目に働く姿勢が見られます。

多くのフィリピン人にとって、日本就労は人生を変える大きなチャンスと捉えられており、強い就労意欲を持って来日します。

このハングリー精神は、仕事をする上で非常に重要な要素となります。

高いコミュニケーション能力で職場を明るくする

フィリピン人はフレンドリーな性格により早期に職場に溶け込めるのが大きな強みです。初対面の人とでもすぐに打ち解け、常に笑顔を絶やさないのがフィリピン人の特徴です。

また、フィリピン人はチームワークを重視する文化を持っています。家族愛が強いことから、職場でも仲間意識が強いのが特徴です。

このフレンドリーさは職場でも発揮され、チームの雰囲気を良くする効果があります。

日本人スタッフが緊張している場面でも、フィリピン人スタッフの明るさによって場が和むことが多く、職場のコミュニケーション活性化に大きく貢献します。

日本人との相性も良いため、比較的早く職場になじめるでしょう。

介護・接客などサービス業への高い適性

フィリピン人はホスピタリティ精神と年上への敬意が非常に高いため、介護や接客などのサービス業での適性が極めて高いと言えます。

介護業界での実績を見ると、2017年の調査では外国人介護労働者の国籍別で最も多かったのがフィリピン人でした。

EPAによる受入実績も豊富で、2023年3月時点で約2,680人のフィリピン人介護福祉士候補者が就労しています。

参考：
厚生労働省 介護分野の外国人受入実績
JICWELS　EPA外国人看護師・介護福祉士受入れのあらまし

真面目で単純作業にもコツコツ取り組む

フィリピン人は家族のために働く動機の強さから、真面目にコツコツと働く姿勢を持っています。また、フィリピン人は単純作業がとても得意という特徴があります。

長時間同じことをしていても飽きずに、最後まで作業をしてくれます。この特性は、製造業や工場などでの作業において大きなメリットとなります。

失踪率が低く安定した雇用が期待できる

フィリピン人労働者の大きな特徴として、他国籍と比較して失踪率が極めて低いことが挙げられます。出入国在留管理庁による「技能実習生の失踪者数の推移」によると、国籍別失踪者数は以下の通りです。

出典：出入国在留管理庁　技能実習生の失踪者数の推移

これは、フィリピン政府が海外労働者の保護に力を入れているためです。

フィリピンには独自の海外労働者保護制度があり、DMW（海外雇用庁）やMWO（海外労働事務所）といった機関が、フィリピン人労働者の権利を守るための仕組みを整えています。

正規のルートでの就労が徹底されているため、企業は長期的な人材育成が可能となり、安定した事業運営につながります。

5．フィリピン人を雇用する際の4つの注意点

フィリピン人の雇用には多くのメリットがある一方で、文化や価値観の違いから注意すべき点もあります。

ここでは、特に重要な4つの注意点について解説します。

時間管理：「フィリピンタイム」への具体的な対策

「フィリピンタイム」により、時間に対する認識が日本と異なります。具体的な時間・期日を明確に伝え、定期的にリマインドすることが重要です。

家族の事情：「仕事より家族」の価値観への理解

家族優先の価値観から、家族の緊急事態時には仕事を休むことが一般的です。事前のルール設定と柔軟な対応により、信頼関係を築けます。

プライドの尊重：人前での叱責は絶対に避ける

人前で怒ることは大きなタブーです。改善点は個別に伝え、ポジティブなフィードバックから始めることが効果的です。

金銭感覚の違い：貸し借りは明確なルール設定を

お金を借りることへの抵抗が少ない文化です。金銭の貸し借りは明確に断り、就業規則で禁止を明記することが重要です。

▼あわせて読みたい

フィリピン人と並び、日本で働く方が多いのがベトナム人です。同じ東南アジアでも、国民性や仕事に対する価値観は大きく異なります。こちらの記事で両国の違いを理解することで、より多角的な視点から外国人採用を検討できます。

6．フィリピン人雇用を成功させる8つのポイント

ここまで解説してきたフィリピン人の特徴や注意点を踏まえて、実際に雇用を成功させるための8つの実践的なポイントをご紹介します。

▼あわせて読みたい

雇用成功のポイントを実践する上で、在留資格の申請など専門的な手続きは避けて通れません。これらの複雑な手続きは専門家である行政書士に相談することで、担当者の負担を大幅に軽減し、スムーズな受け入れが可能になります。こちらの記事を参考にしてください。

7．フィリピン人の特徴と文化への深い理解が、企業の成長を加速させる

人手不足が深刻化する中、フィリピン人材は企業の成長を支える重要なパートナーとなり得ます。

本記事で解説した特徴と成功のポイントを参考に、フィリピン人が活躍できる職場環境を整え、多様性ある組織づくりを実現してください。

文化の違いを理解し、互いに尊重し合うことで、フィリピン人材の能力を最大限に引き出し、企業の成長と持続可能な人材確保を実現できるでしょう。