建設業界の深刻な人手不足が続く中、外国人労働者の雇用が急速に広がっています。
2023年には14.5万人の外国人が建設業で働き、過去10年間で9倍の増加を記録しました。しかし、在留資格の確認ミスや適切な支援体制の不備により、法的リスクを抱える企業も少なくありません。
本記事では、建設業での外国人雇用を成功させるための具体的な手順から注意点、費用対効果まで、実践的なノウハウを詳しく解説します。
- 建設業で雇用可能な在留資格3タイプ(特定技能・技能実習・身分系)の違いと選び方
- 外国人雇用の5ステップと各段階で必要な手続き・準備事項
- 初期費用36~58万円、年間50万円の支援費用など具体的なコスト構造
1.建設業界と外国人労働者の現状

建設業界は現在、極めて深刻な人手不足に直面しています。
少子高齢化の影響で建設就業者の4人に1人が60歳以上という高齢化が進む一方、若手労働者の確保は困難を極めています。
この状況を打開する解決策として注目されているのが外国人労働者の雇用です。
まずは業界の現状と外国人材活用の実態を詳しく見ていきましょう。
深刻化する人手不足の実態
建設業界では、従業員の高齢化が進行しており、若年層の割合が低いことが指摘されています。
国土交通省の報告によると、建設業就業者のうち55歳以上が34%、29歳以下が11%を占めています。
これは全産業平均(55歳以上が31.2%、29歳以下が16.6%)と比較しても高齢化が進んでいることを示しています 。

出典元:国土交通省 建設産業の現状と課題
この背景には、日本全体の少子高齢化の影響があります。
建設業界では特に「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージが根強く、若者離れが加速している状況です。帝国データバンクの調査では、人手不足倒産の約3件に1件が建設業という深刻な数字も報告されています。
さらに、2030年までには建設技術者が4.5万人、技能工が17.9万人不足すると予測されており、業界全体として抜本的な対策が急務となっています。
参考:帝国データバンク 人手不足倒産の動向調査(2024年)
外国人就業者の増加と制度の後押し
こうした状況を受け、建設業界では外国人労働者の存在感が急速に高まっています。
2023年10月時点で、建設業で働く外国人労働者は14.5万人に達し、過去10年間で9倍以上の急激な増加を記録しました。これは建設業就業者全体の約3%に相当し、もはや業界にとって欠かせない労働力となっています。
国別ではベトナム出身者が最多の42.8%を占め、続いてインドネシア、フィリピン、中国と続きます。これら4カ国で建設業で働く外国人材の約8割を占めている状況です。
政府も2019年に「特定技能」制度を創設するなど、制度面での後押しを強化しています。建設分野では19業種すべてで特定技能外国人の受け入れが可能となり、企業にとって外国人雇用の選択肢が大幅に広がりました。
特に2022年の業務区分再編により、建設関係の技能実習職種を含む全ての作業が新区分に分類され、業務範囲がさらに拡大しています。
2.外国人労働者を建設業で雇用できる主な在留資格3タイプ

建設業で外国人労働者を雇用する際、最も重要なのが在留資格の正確な理解です。
在留資格によって就労可能な業務内容、雇用期間、必要な手続きが大きく異なるため、企業のニーズに合った資格を選択することが成功の第一歩となります。
ここでは建設業で活用できる主要な3つの在留資格タイプについて、それぞれの特徴と違いを詳しく解説します。
特定技能
特定技能は建設業における外国人雇用の主力となっている在留資格です。
2019年の制度創設以来、即戦力となる外国人材の受け入れが可能となり、建設業界の人材不足解決の切り札として注目されています。
特定技能には1号と2号の2種類があります。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
在留期間 | 通算最長5年 | 期間制限なし |
業務範囲 | 建設分野19業種すべて | 建設分野19業種すべて |
家族帯同 | 不可 | 可能 |
建設分野で認められている19業種
型枠施工、左官、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、屋根ふき、電気通信、鉄筋施工、鉄筋継手、内装仕上げ、表装、とび、建築大工、配管、建築板金、保温保冷、吹付ウレタン断熱、海洋土木
特定技能外国人を雇用するメリットは、技能実習のような業務制限がなく、建設業のあらゆる作業に従事できることです。
ただし、取得要件として「建設分野特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験N4級以上」の合格、または技能実習2号の良好修了が必要です。
建設分野特定技能1号評価試験の試験要件や対策法などを詳しく知りたい方はこちらの記事で詳しく解説しています。
技能実習・身分系資格との違い
技能実習制度は国際貢献を目的とした制度で、開発途上国への技術移転が主な目的です。建設業界における技能実習の特徴は以下の通りです。
技能実習の特徴
- 対象国限定: 開発途上国の人材のみ
- 期間制限: 1号(1年)→ 2号(2年)→ 3号(2年)の最長5年
- 業務制限: 技術指導が目的のため、単純作業は不可
- 転職制限: 原則として同一事業所での就労
技能実習生は2023年時点で建設業外国人労働者の約6割を占めていますが、2024年に予定されている制度改革により「育成就労」制度への移行が検討されています。
■技能実習と特定技能の違いをさらに深掘りした記事はこちらになります。
身分系在留資格には以下の種類があります。
身分系在留資格の種類
- 永住者・定住者: 在留期間・業務内容に制限なし
- 日本人の配偶者等: 日本人と結婚している外国人
- 永住者の配偶者等: 永住者と結婚している外国人
身分系資格は最も制約が少なく、雇用期間・業務内容ともに制限がありません。ただし、該当者数は限定的で、安定的な人材確保の観点では特定技能の方が現実的な選択肢となります。
その他の在留資格
- 資格外活動許可: 留学生等が週28時間まで就労可能
- 技能: 特殊な技能(ゴシック建築等)を持つ外国人向け
3.外国人雇用の基本5ステップ

外国人労働者の雇用は、募集から定着支援まで段階的なプロセスが必要です。各ステップで適切な手続きを踏まなければ、法的リスクや早期離職につながる可能性があります。
ここでは、外国人雇用を成功させるための基本的な5つのステップを、具体的な方法と注意点とともに順を追って解説します。初めて外国人を雇用する企業でも安心して進められる実践的な手順をご紹介します。
① 募集・採用と適性確認
外国人労働者の募集には、一般的な求人とは異なるアプローチが必要です。主な募集方法は以下の3つです。

募集時には、求める技能レベル・日本語能力・経験年数を明確に設定し、応募者の適性を事前にスクリーニングすることが重要です。
② 面接・選考と雇用契約の作成
面接時の確認ポイント
確認項目 | 具体的な内容 |
---|---|
日本語能力 | 基本的なコミュニケーション、安全指示の理解度 |
技能レベル | 建設作業の経験、特定技能試験の合格状況 |
就労意欲 | 日本での長期就労意思、キャリア目標 |
文化適応性 | 日本の労働文化への理解、チームワーク |
雇用契約書の作成では、必ず外国人の母国語での契約書を用意します。特に以下の項目は詳細に記載が必要です。
- 職務内容と勤務地
- 労働時間と休日
- 賃金の詳細(基本給・諸手当・支払方法)
- 社会保険の加入
- 住居の提供や生活支援の内容 など
③ 在留資格確認と届出手続き
在留資格の確認は最重要項目です。確認すべき点は以下の通りです。
- 在留資格の種類
- 在留期間の満了日
- 就労制限の有無
- 資格外活動許可の内容(該当する場合)

外国人雇用状況届出の提出は雇用開始後の必須手続きです。
- 提出先:管轄のハローワーク
- 提出期限:雇用した日の属する月の翌月末日まで
- 怠った場合の罰則:1名につき30万円以下の罰金
外国人雇用状況届出書の書き方と手続き内容、提出方法に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
④ 入社前の生活支援準備
外国人労働者が来日後、スムーズに生活を開始できるよう、事前準備が重要です。

⑤ 雇用後の定着サポート体制
継続的な支援体制の構築が長期雇用成功の鍵となります。
定期面談の実施
- 月1回の個別面談
- 仕事の悩みや生活上の困りごとのヒアリング
- キャリア目標の確認と支援
日本語教育の提供
- 業務に必要な専門用語の指導
- 日本語能力向上のための研修機会提供
- 日本語検定受験の支援
文化的配慮の実施
- 宗教的な配慮(礼拝時間、食事制限等)
- 本国の祝日や文化的行事への理解
- 多文化共生の職場環境づくり
在留手続きのサポート
- 在留期間更新許可申請の支援
- 必要書類の準備サポート
- 申請スケジュールの管理
4.建設業特有の注意点と法的リスク対策

建設業における外国人雇用では、一般的な雇用管理に加えて業界特有の規制や安全管理が求められます。
建設業許可やCCUS登録との関係、労働災害リスクへの対応、不法就労助長罪の回避など、見落とすと重大な法的リスクを招く要素が数多く存在します。
ここでは建設業特有の注意点と、企業を守るための具体的なリスク対策について詳しく解説します。
建設業許可・CCUS登録との関係
建設業で外国人労働者を雇用する際は、建設業特有の許可・登録要件を満たす必要があります。
建設業許可の必要性 特定技能外国人を受け入れる場合、一般建設業許可または特定建設業許可の取得が必須要件となります。これは元請け・下請けを問わず適用される重要な条件です。
建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録
- 事業者登録が義務: 受入れ企業はCCUSへの事業者登録必須
- 外国人労働者の技能者登録: 個人単位での登録も必要
- 現場入場時の確認: CCUSカードによる入退場管理
国土交通省への届出義務
- 受入れ報告: 特定技能外国人の在留資格許可後、速やかに報告
- 外国人建設就労者等現場入場届出書: 現場配置前の届出必須
- 定期報告: 受入れ状況の継続的な報告
安全教育・就労環境整備の重要性
建設業は労働災害リスクが高い業界のため、外国人労働者への安全教育は特に重要です。
多言語での安全教育実施
教育内容 | 実施方法 | 頻度 |
---|---|---|
基本安全ルール | 母国語マニュアル+通訳者 | 入社時必須 |
現場特有の危険 | 実地指導+安全体験研修 | 配置前 |
緊急時対応 | ロールプレイング+連絡体制確認 | 月1回 |
厚生労働省が提供する外国人労働者向け教材の活用も効果的です。ベトナム語・中国語・インドネシア語等での動画教材やテキストが無料で利用できます。
FITS(国際建設技能振興機構)の義務 特定技能外国人を受け入れる場合
- 受入後講習: 受入れから3ヶ月以内の受講義務
- 巡回指導: 年1回のFITSによる現場確認
- 計画的な技能向上: 体系的な技能習得プログラムの実施
不法就労回避と現場体制の整備
不法就労助長罪のリスク回避は経営リスク管理の観点から極めて重要です。

現場レベルでの管理体制
在留カード管理の徹底
- 毎日の入場時確認
- 在留期限の一元管理
- 偽造カード発見のための研修実施
下請業者への指導強化
大手建設現場では、下請業者の外国人作業員についても厳格な就労資格チェックが実施されています。
元請企業として…
- 下請業者への外国人雇用ガイドライン配布
- 定期的な就労資格確認の義務化
- 違反発見時の即座の対応体制構築
社内体制の整備
- 外国人雇用管理責任者の配置
- 多文化共生研修の実施: 日本人従業員向け
- 通訳体制の確保: 緊急時対応含む
- 相談窓口の設置: 外国人労働者が気軽に相談できる環境
宗教・文化への配慮
建設現場では以下の配慮が重要です。
- 礼拝時間への配慮(イスラム教徒等)
- 食事制限への対応(ハラル食品等)
- 宗教的祝日の理解
- 作業服装の文化的配慮
これらの体制整備は、外国人労働者の定着率向上だけでなく、企業の社会的責任を果たす観点からも重要な投資といえます。
5.雇用コストと費用対効果

外国人労働者雇用を検討する際、経営判断として最も重要なのがコスト構造と投資効果の正確な把握です。
初期費用、年間ランニングコスト、活用可能な助成金など、具体的な数字を基にした収支計算が必要不可欠です。
ここでは外国人雇用にかかる実際の費用相場から、ROI算出方法、費用対効果を最大化するポイントまで、経営者が知っておくべき情報を詳しく解説します。
初期費用・年間コストの相場
外国人労働者雇用にかかる具体的なコストを正確に把握することは、経営判断において極めて重要です。
初期費用の内訳(特定技能1名あたり)
費用項目 | 金額相場 | 備考 |
---|---|---|
人材紹介手数料 | 20~30万円 | 紹介会社利用の場合 |
在留資格申請費用 | 5~10万円 | 行政書士費用含む |
受入れ支援費用 | 10~15万円 | 住居確保・生活支援 |
各種登録・届出費用 | 1~3万円 | CCUS登録等 |
合計初期費用 | 36~58万円 | – |
年間ランニングコスト(1名あたり)
費用項目 | 年間金額 | 内容 |
---|---|---|
費用項目 | 年間金額 | 内容 |
登録支援機関委託費 | 20~40万円 | 義務的支援の委託費 |
日本語教育費 | 5~10万円 | 研修・教材費 |
安全教育費 | 3~5万円 | 多言語教材・研修 |
各種手続き代行費 | 2~5万円 | 在留更新等 |
年間支援費用 | 30~60万円 | 給与は別途 |
給与・社会保険費用 外国人労働者についても同一労働同一賃金の原則が適用されるため、日本人と同等の給与水準が必要です。
給与・社会保険費用
外国人労働者についても同一労働同一賃金の原則が適用されるため、日本人と同等の給与水準が必要です。
- 建設作業員平均年収: 350~450万円
- 社会保険料企業負担: 年収の約15%(52~68万円)
- 年間総人件費: 400~520万円
助成金活用とROIの考え方
活用可能な助成金制度
人材開発支援助成金(外国人労働者コース)
- 対象: 外国人労働者への職業訓練
- 助成率: 訓練費用の最大75%
- 上限額: 年間100万円
キャリアアップ助成金
- 対象: 有期雇用から無期雇用への転換
- 助成額: 1人あたり28.5~72万円
地域雇用開発助成金
- 対象: 過疎地域等での雇用創出
- 助成額: 設備投資額の最大25%
ROI(投資対効果)の算出例
外国人労働者1名雇用によるROI試算
投資額(年間): 430~580万円
- 人件費:400~520万円
- 支援費用:30~60万円
効果額(年間): 600~800万円
- 売上貢献:500~650万円
- 残業代削減効果:50~80万円
- 日本人採用コスト削減:50~70万円
ROI: 約40~80%の投資効果
中長期的なメリット
- 技能向上による生産性向上: 2年目以降20~30%の効率改善
- 定着による採用コスト削減: 年間100~200万円の節約
- 企業イメージ向上: 多様性推進による企業価値向上
費用対効果を高めるポイント
- 継続雇用による単価削減: 3年以上の雇用で初期費用を回収
- 複数名同時受入れ: スケールメリットによる単価削減
- 社内での技能伝承体制: 先輩外国人による後輩指導システム
- 助成金の積極活用: 年間50~100万円の支援費用削減
適切な計画と管理により、外国人労働者雇用は確実に投資効果を生む人材戦略となります。
6.事例に学ぶ成功と失敗の分かれ道

外国人雇用の成否は、企業の取り組み方によって大きく左右されます。
同じ業界・規模でも、継続雇用を実現し業績向上につなげる企業がある一方、早期離職や法的トラブルに悩む企業も存在します。
ここでは実際の成功事例と失敗事例を比較分析し、明暗を分ける要因を具体的に解説します。他社の経験から学び、自社の外国人雇用戦略に活かしましょう。
成功事例:外国人材による技能継承と現場改善の好循環
協和プレス工業株式会社(製造業・和歌山県・従業員数約100名)
成功要因
技能実習から特定技能への継続雇用体制
ベトナム人技能実習生を受け入れた後、特定技能1号へ移行する仕組みを構築。育成コストや教育の手間を抑えつつ、長期雇用を実現。
ベテラン職人によるマンツーマン指導
日本人職人が外国人社員に直接指導し、その過程で技能の言語化・体系化を推進。社内の技術標準化にも貢献。
多言語マニュアルや研修制度の整備
日本語が十分でない外国人社員でも理解できる視覚的マニュアルを活用し、教育の効率を向上。
具体的成果
外国人社員の定着率:95%以上
技能実習から特定技能へ移行した人材が長期的に活躍し、高定着率を維持。
生産性15%向上
外国人社員が熟練技能を継承し、現場の効率と品質が同時に向上。
社内意識改革の波及
日本人社員が外国人に技能を教える過程で「なぜその作業を行うか」を言語化し、作業のムダを見直す文化が定着。
協和プレス工業の担当者は「外国人材は一時的な人手不足の補完ではなく、現場改革と人材育成の起爆剤です」と語り、多国籍チームによる成長型ものづくりを今後も推進していく姿勢を示しています。
成功事例:高度外国人材の活用でグローバル開発体制を強化
カシオ計算機株式会社(製造業・東京都・従業員数約2,800名)
成功要因
高度外国人材の計画的採用と活用
グローバル市場を視野に、外国人エンジニアを新卒・中途問わず計画的に採用。母国語・英語・日本語のトリリンガル人材を活かし、現地市場への対応力を強化。
日本人社員とのペア開発体制の構築
製品開発では、外国人と日本人がペアを組み、双方向でのアイデア共有や設計レビューを実施。多様な視点からの提案力が製品の付加価値向上につながる。
言語・文化を超えたチーム運営
社内の英語公用語化はしていないが、外国人社員がスムーズに活躍できるよう、OJTや社内報・マニュアルの多言語対応を徹底。文化交流イベントも定期開催し、相互理解を促進。
具体的成果
開発スピードの向上と海外市場への適応強化
外国人エンジニアの提案が海外市場のニーズと合致し、現地販売戦略との連動がスムーズに。製品開発から市場投入までの期間を約20%短縮。
多国籍人材の活躍による社内の活性化
異なる視点の議論が新たなアイデア創出につながり、イノベーションの土壌が形成。若手日本人社員のグローバル志向も強化された。
離職率の低さと長期雇用の実現
日本語教育や生活支援、社内ネットワークの整備により、外国人社員の定着率は非常に高く、5年以上勤続する人材も多数。
カシオの人事担当者は「単に“外国人を雇う”のではなく、“共に価値を創造する仲間”として迎え入れることが、持続可能なグローバル人材戦略につながります」と語り、多様性を力に変える企業文化の定着を目指しています。
失敗例:短期雇用と文化ギャップへの無対策
【失敗事例C社】建設会社(従業員40名)
失敗要因
- 単発的な雇用:人手不足の際のみの一時的雇用
- 最低限のサポート:住居提供のみで生活支援は放置
- 日本人従業員への事前説明不足:文化摩擦が頻発
結果
- 1年以内の離職率:80%以上
- 採用コスト回収前の退職により投資回収不能
- 現場の人間関係悪化
【失敗事例D社】土木工事会社(従業員60名)
失敗要因
- 安全教育の軽視:日本語マニュアルのみで実地指導なし
- 同一労働同一賃金の未遵守:外国人のみ低賃金設定
- 在留資格管理の不備:更新手続きサポート不足
重大な結果
- 労働基準監督署の是正勧告
- 外国人労働者の不法就労状態発生
- 建設業許可への影響リスク
成功と失敗の分かれ道
要素 | 成功パターン | 失敗パターン |
---|---|---|
雇用姿勢 | 長期的な人材投資として位置づけ | 短期的な労働力補完として利用 |
支援体制 | 生活・仕事両面の継続サポート | 最低限の住居提供のみ |
社内環境 | 多文化共生の意識醸成 | 日本人従業員への説明不足 |
教育制度 | 体系的な技能・安全教育 | 場当たり的な指導 |
管理体制 | 専任担当者による一元管理 | 各現場任せの分散管理 |

7.今後の展望と採用戦略のアップデート

建設業における外国人労働者雇用は、適切な手順と継続的な支援体制があれば確実に投資効果を生む人材戦略です。
在留資格の正確な理解、7ステップの着実な実行、そして短期的な労働力補完ではなく長期的な人材投資として捉えることが成功の鍵となります。
2030年に向けてさらなる人材不足が予想される中、今から外国人雇用の体制整備に取り組む企業こそが、持続的な事業成長を実現できるでしょう。