ネパール人の英語力は高いのでしょうか?TOEFL平均スコア74点(日本71点)、IELTS平均6.0(日本5.8)と、データを見ると日本人以上の英語力があるように見えます。
しかし重要なのは数値だけではありません。実際のビジネス現場での活用可能性、採用時の適切な評価方法、そして企業の競争力向上への貢献度を正しく理解することが、採用成功の鍵となります。
- ネパール人の英語力の客観的実態(TOEFLスコア等のデータと実用性評価)
- 企業が得られる5つの具体的メリット(コスト削減額と組織変革効果)
- 採用成功のための評価方法とサポート体制(面接手法と文化的配慮のポイント)
1.ネパール人の英語力の実態:日本人との比較で見る真実

ネパール人の英語力について、まずは客観的なデータから実態を把握していきましょう。
企業の採用担当者にとって最も重要なのは、感覚的な評価ではなく、具体的な数値に基づいた判断材料です。
TOEFL・IELTSスコアから見るネパール人の客観的英語力
国際的な英語能力測定試験の結果を見ると、ネパール人の英語力の高さが明確に現れています。
この表から分かるように、ネパール人の英語力は日本人を上回っています。
特にIELTS 6.0というスコアは、英語圏の大学入学に必要とされるレベルに相当し、実用的なビジネス英語として十分活用できる水準です。
注目すべきは、ネパールが英語圏の植民地だった歴史がないにも関わらず、これだけの英語力を維持していることです。これは後述する教育システムと社会的背景が大きく影響しています。
参考:Global Study TOEFL iBTとIELTSの各国平均スコア比較
ネパール人の英語に特徴的な「なまり」と実用性の評価
ネパール人の英語には確かに特徴的な訛りが存在しますが、実用性の面では大きな問題とはなりません。
ネパール英語の主な特徴
- R音の強調
River → “リバール”、Internet → “インタルネット” - S音の前に微音挿入
School → “ィスクール”、Study → “ィスタディ” - インド英語に近い発音パターン
実際に日本企業で働くネパール人と接した経験のある人事担当者の多くが「思ったより聞き取りやすい」と評価しています。
これは以下の理由によるものです。

むしろ、アメリカやイギリスのネイティブスピーカーよりも、日本人にとっては理解しやすい英語だという声も多く聞かれます。
訛りがあることで、逆に親しみやすさを感じる日本人スタッフも少なくありません。
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ネパール人の英語力の高さは注目に値しますが、他の国の人材はどうでしょうか。例えば、同じアジア圏のベトナム人は、ビジネスレベルの英語を話す人材が多いことで知られています。こちらの記事を読んで彼らの特徴や採用のポイントと比較検討してみましょう。
2.なぜネパール人は英語が得意なのか?背景にある3つの理由

ネパール人の英語力の高さには、単なる教育制度だけでは説明できない深い社会的・文化的背景があります。
これらの要因を理解することで、採用後の期待値設定や育成方針を適切に立てることができるでしょう。
小学校から始まる英語教育と出稼ぎ文化による実践的モチベーション
ネパールの英語教育は、日本とは根本的に異なるアプローチを取っています。

しかし、最も重要なのは「英語=生存手段」という切実な認識です。ネパールの最低賃金は月額約1-2万円と低く、人口の約20%(約695万人)が海外出稼ぎを行っています。
出稼ぎによる英語学習の動機
- 家族への仕送り責任(月5-10万円が一般的)
- より良い労働条件を求める必要性
- 国際的な労働市場での競争力確保
この背景から、ネパール人にとって英語学習は「教養」ではなく「生活必需品」となっており、実用性を重視した学習姿勢が自然と身についています。
多言語環境で培われる高い言語適応能力
ネパールは123の言語が使用される多民族国家であり、この環境が言語学習能力の向上に大きく寄与しています。
【多言語環境の特徴】
言語の種類 | ネパール国内で使われている言語 |
---|---|
公用語 | ネパール語(約44%が母語) |
地域言語 | マイティリー語、タルー語、ネワール語等 |
宗教言語 | ヒンディー語、サンスクリット語 |
国際語 | 英語 |
日常的に複数言語を切り替えて使用することで、以下の能力が自然と発達します。
言語適応能力の具体例
- 音韻認識力の向上
異なる言語の音の違いを敏感に察知 - 文法構造の理解力
語順の異なる言語間での思考転換 - 語彙習得の効率性
類似概念を複数言語で関連付けて記憶 - コミュニケーション柔軟性
相手の理解度に応じた表現調整
この能力は、日本語習得においても大きなアドバンテージとなります。
実際、ネパール語と日本語は語順(SOV)が同じで、敬語システムも類似しているため、ネパール人は比較的短期間で日本語をマスターする傾向があります。
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ネパール人の言語適応能力の高さは、日本語習得においても有利に働きます。外国人材の日本語レベルは、採用後のコミュニケーションや定着に大きく影響します。こちらの記事では日本語検定の各レベルで何ができるのかを具体的に把握しておきましょう。
3.企業が注目すべきネパール人英語力の5つの活用ポイント

ネパール人の英語力を単なる「コミュニケーション手段」として捉えるだけでは、その真の価値を見逃してしまいます。
戦略的に活用することで、企業の国際競争力向上に大きく貢献できる具体的なポイントを解説します。
国際的なビジネスコミュニケーションでの即戦力価値
ネパール人の英語力は、グローバルビジネスにおいて即座に活用可能なレベルと言っていいでしょう。
特に注目すべきは、ネパール人の英語が「実用性重視」である点です。
学術的な完璧さよりも、相手に確実に伝える技術に長けているため、ビジネス現場での実用性が高いのです。

英語研修コスト削減と社内グローバル化への貢献効果
ネパール人材の採用は、企業の英語研修コスト削減に直結します。
コスト削減効果の試算
項目 | 日本人社員の場合 | ネパール人材活用の場合 |
---|---|---|
英語研修費用 | 年間50万円/人 | 不要 |
外部通訳費用 | 月10万円 | 不要 |
英語資料作成外注 | 月15万円 | 内製化可能 |
年間削減効果 | – | 約320万円 |
さらに重要なのは、ネパール人材が社内の「英語使用の心理的ハードル」を下げることです。
英語を母語としない同僚が自然に英語を使用している環境では、日本人スタッフも英語使用に対する抵抗感が軽減されます。
多様性推進による組織全体の英語学習意欲向上
ネパール人材の英語力は、組織全体の学習文化形成に大きな影響を与えます。
学習環境改善の具体例
ピアラーニング効果
- 日本人社員が身近な同僚から英語を学ぶ機会
- 「完璧でなくても伝わる」英語の実践的学習
多文化コミュニケーションの促進
- 異なる文化背景を持つ同僚との協働経験
- グローバルマインドセットの自然な醸成
継続的学習環境の構築
- 日常業務での英語使用機会の増加
- 実践的な英語スキル向上の場の提供

これらの活用ポイントを戦略的に組み合わせることで、ネパール人材の英語力を単なる「個人のスキル」から「組織の競争優位」へと転換することが可能となります。
4.ネパール人の英語力を適切に評価する面接・選考のポイント

ネパール人の英語力を正確に評価するためには、従来の日本人向け英語評価とは異なるアプローチが必要です。
実務での活用可能性を適切に判断するための具体的な評価方法をご紹介します。
実務で必要な英語レベルの判断基準と面接での確認方法
まず、自社の業務で実際に必要とされる英語レベルを明確に定義することが重要です。

面接での具体的確認方法
評価時の注意点
- 完璧な文法よりも実用的な伝達力を重視
- ネパール特有の訛りを減点要素としない
- 日本のビジネスマナーとの組み合わせ能力も確認
英語力以外の言語適応能力を見極める選考のコツ
ネパール人の真の価値は、英語力だけでなく高い言語適応能力にあります。

実践的な評価方法
ケーススタディ面接
シナリオ:日本人の同僚が英語での説明を理解できずに困っている。
質問:「どのようにサポートしますか?」
この質問により以下が評価できます。
- 相手の理解レベルの把握能力
- 適切な言語選択(やさしい英語、日本語併用等)
- 多文化環境での協調性
言語切り替え能力のテスト
- 同じ内容を英語 → 日本語 → 再度英語で説明
- 各言語での表現の適切さと一貫性を確認
これらの評価方法により、単なる英語力以上の「言語を使った問題解決能力」を見極めることができ、採用後の活躍度をより正確に予測できるようになります。
5.採用成功のための注意点と言語サポート体制

ネパール人の優れた英語力を最大限活用するためには、適切な期待値設定と継続的なサポート体制が不可欠です。
多くの企業が見落としがちな重要ポイントを解説します。
英語力を活用した成功事例と適切な期待値設定
まず、実際の成功事例から学ぶべきポイントを整理しましょう。
製造業での成功事例
A社(自動車部品製造): ネパール人技術者の英語力を活用
- 海外工場への技術指導をリモートで実施
- 英語技術文書の作成・翻訳業務を内製化
効果: 外部翻訳費用を年間200万円削減
サービス業での成功事例
B社(IT企業): ネパール人エンジニアによるグローバル対応
- 海外顧客からの技術サポート要請に直接対応
- 英語での技術ドキュメント作成をリード
効果: 顧客満足度向上、海外売上20%増加
【適切な期待値設定のポイント】
項目 | 過大な期待 | 適切な期待 |
---|---|---|
即戦力性 | 採用直後から完璧に業務遂行 | 3-6ヶ月の適応期間を設定 |
英語レベル | ネイティブレベルの完璧さ | 実用的なビジネス英語力 |
文化理解 | 日本のビジネス慣行を完全把握 | 継続的な学習と適応過程 |
専門知識 | 業界用語を即座に理解 | 段階的な専門用語習得 |
継続的な言語サポートと文化的配慮のベストプラクティス
英語力が高いネパール人であっても、日本特有のビジネス文化への適応には時間が必要です。
効果的な言語サポート体制
- メンター制度の導入
- 日本人先輩社員との1対1サポート体制
- 定期的な面談(週1回、30分程度)
- 業務上の疑問点の気軽な相談環境
- 専門用語集の作成
例:建設業界での用語集
躯体工事 → Structural work
内装仕上げ → Interior finishing
竣工検査 → Final inspection
- 段階的な日本語研修
- レベル1
ひらがな・カタカナ(1-2ヶ月) - レベル2
基本的な漢字・敬語(3-6ヶ月) - レベル3
ビジネス日本語・報告書作成(6-12ヶ月)
- レベル1
これらの体制を整備することで、ネパール人材の英語力を活かしながら、長期的な戦力として育成することが可能となります。
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6.ネパール人の英語力を最大活用する採用戦略

ネパール人の英語力は、TOEFL74点・IELTS6.0という客観的優位性と、多言語環境で培われた高い適応能力を併せ持つ企業の貴重な資産です。
年間320万円のコスト削減効果と社内グローバル化促進により、単なる人材確保を超えた競争優位の構築が可能となります。
適切な評価基準設定と文化的配慮を含むサポート体制により、戦略的な外国人採用を成功に導きましょう。
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