ミャンマー人労働者数は前年比61.0%増という驚異的な成長を見せ、人手不足に悩む企業の注目を集めています。
しかし「どう採用すればいいの?」「法的手続きが複雑そう」という声も多いのが現状。
本記事では、ミャンマー人採用の7つのメリットと5つの注意点、具体的な採用手順まで実践的に解説します。
- ミャンマー人採用の7つの圧倒的メリット(日本人との文化的親和性、高い定着率、日本語習得の早さなど)
- 採用時に注意すべき5つの重要ポイント(送出機関の利用義務、OWIC手続き、文化的配慮など)
- 今すぐ始められる3ステップの具体的アクションプラン(採用検討から実際の雇用まで)
1.ミャンマー人採用が急増している背景と現状

近年、日本で働く外国人労働者の中でもミャンマー人の急激な増加が注目を集めています。
2021年の軍事クーデター以降の政情不安や経済的混乱を背景に、多くのミャンマー人が海外での就労を希望。日本企業にとって質の高い人材を確保する絶好の機会が到来しています。
日本で働くミャンマー人労働者数の急激な増加
出入国在留管理庁の最新統計によると、2023年12月末時点で日本に在留するミャンマー人は86,546人に達し、2022年末の56,239人から1年間で3万人以上という驚異的な増加を記録しました。
特に注目すべきは労働者数の増加率です。令和4年10月末時点のミャンマー人労働者数は前年対比で137.7%の増加率を示し、直近5年間では219.8%という全外国籍の中で最も高い成長率を実現しています。
この数字は、ベトナム人や中国人労働者が横ばいで推移している中で、際立った存在感を示しています。
この急増の背景には、ミャンマー国内の政情不安定化と、日本企業のミャンマー人材への評価の高さがあります。
出典:出入国在留管理庁 令和5年末現在における在留外国人数について
ミャンマー情勢が与える日本就労への影響
2021年2月に発生した軍事クーデターは、ミャンマー国内に深刻な経済的混乱と政情不安をもたらしました。
この政変により多くのミャンマー人が避難生活を強いられ、国外での就労機会を求める動きが加速しています。
政情不安定化により、安定した民主主義国家である日本への関心が急激に高まっているのが現状です。
日本が多額のODA(政府開発援助)を提供してきた歴史的経緯もあり、ミャンマー人にとって日本は「信頼できる就職先」として位置づけられています。
この状況により、優秀なミャンマー人材が積極的に日本での就労を希望するようになり、企業にとっては質の高い人材を確保する絶好の機会が生まれています。
他の東南アジア諸国との比較で見るミャンマー人材の特徴
日本で働く外国人労働者の国籍別動向を見ると、従来注目を集めていたベトナム人や中国人の人数は横ばいで推移しているのに対し、ミャンマーは対前年増加率49.97%(47,498人から71,188人)でインドネシアの56.0%に次ぐ第2位の高い成長率を示しています。
この数字が意味することは、採用市場におけるミャンマー人材の希少性と将来性です。
ミャンマー人材はまだ採用企業数が限られているため、中小企業でも比較的容易に優秀な人材にアプローチできる「ブルーオーシャン」状態が続いています。
出典:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(令和5年10月末時点)
特に製造業や介護業界では、ミャンマー人の勤勉さと技術習得への真摯な姿勢が高く評価されており、「隠れた優良人材の宝庫」として企業の間で評判が広がっているのが現状です。
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ミャンマー人材の採用は、数ある外国人労働者の受け入れ方法の一つです。特定技能や技能実習など10種類ある受け入れ方法を比較し、自社の状況に最適な制度を見つけるためのガイドとして、ぜひこちらの記事もご覧ください。
2.ミャンマー人を採用する7つの圧倒的メリット

ミャンマー人採用が企業から高く評価される理由は、単なる労働力不足の解決にとどまりません。
日本人との文化的親和性、真面目で勤勉な働きぶり、優れた日本語習得能力など、他国出身者にはない独特の強みがあります。
以下、7つの具体的なメリットを詳しく解説します。
日本人と驚くほど似ている国民性と文化的親和性
ミャンマー人採用の最大の魅力は、日本人との文化的親和性の高さにあります。
ミャンマー人と日本人は同じモンゴル系のルーツを持つため顔立ちが似ており、職場での違和感が少ないという実用的なメリットがあります。
より重要なのは精神的な価値観の共通性です。ミャンマー人の90%が信仰する上座部仏教は、日本の大乗仏教と共通する「思いやり」「和」「謙譲」の精神を重視しています。
実際に、ミャンマーでは寺院が教育の役割を担っており、幼少期から礼儀作法や道徳観念が身につけられています。
国民性においても驚くほどの類似点があります。

これらの特徴により、日本の職場環境に自然に溶け込むことができ、既存の日本人従業員との摩擦が起こりにくいという大きなメリットがあります。
真面目で勤勉な働きぶりと高い定着率
ミャンマー人の勤勉さは、教育システムと経済的背景の両方によって培われています。
高校卒業時に受ける「統一試験」は100点満点中40点を6科目で取る必要があり、合格率はわずか3割程度という厳しい試験です。
この試験の結果が将来の進路を大きく左右するため、多くの若者が必死に勉強に取り組む文化が根付いています。
経済的動機も高い勤労意欲を支えています。ミャンマーの平均月収は約8,000円程度であるのに対し、日本で働けば最低でも14~15万円の収入が得られ、本国の10倍以上の賃金格差があります。
この収入の多くは家族への仕送りに充てられるため、「家族のために頑張る」という強固なモチベーションが維持されます。
また、ミャンマー人は恩義を重んじる文化を持っており、採用してくれた会社や上司に対して深い感謝の気持ちを抱きます。
この文化的特性により、簡単に転職せず長期間同じ職場で働く傾向があり、実際に「単純作業でも文句を言わずに地道に続けてくれる」という評価が多く寄せられています。
日本語習得の早さと言語的優位性
ミャンマー人の日本語習得能力の高さは、言語学的な共通点に基づいています。
ミャンマー語と日本語はSOV(主語-目的語-動詞)構造という同じ文法体系を持っているため、他の多くの言語話者と比べて日本語の文章構造を理解しやすいという大きな利点があります。
発音面での優位性も顕著です。日本語が50音であるのに対し、ミャンマー語(ビルマ語)は280音という豊富な音素を持っています。
この事実により実際の採用現場では、3~6ヶ月で基本的な業務指示を理解できるようになり、特定技能の在留資格で働く場合に必要な日本語レベルを、他国出身者より短期間でクリアできる傾向があります。
これにより、採用後の日本語研修期間を短縮でき、実際の業務に早く配属できるという実務的なメリットが生まれます。
親日感情の高さと文化適応力
ミャンマーは東南アジア諸国の中でも特に親日感情が高い国として知られており、この好意的な感情は採用後の職場適応にも大きく影響します。
第二次世界大戦後のミャンマー独立において日本が重要な支援を提供した歴史があり、現在でもミャンマー人の間で感謝の気持ちが受け継がれています。
参考:ミャンマーはなぜ親日なの?日本とミャンマーの歴史を優しくご紹介
この親日感情は職場環境において以下のような具体的メリットをもたらします。

実際に、ミャンマー人を雇用している企業からは「日本の企業文化を素直に受け入れてくれる」「同じ業務内容でも賃金が違うことへの理解がある」という声が多く聞かれます。
温厚で協調性のある職場環境への貢献
ミャンマー人の国民性で最も評価が高いのは、その温厚で穏やかな性格です。
仏教の教えである「徳を積むことが幸福につながる」という価値観が浸透しており、人前で怒ったり争ったりすることをほとんど好みません。
この性格特性は職場環境に良い影響をもたらします。
- 同僚との意見の相違があっても感情的にならない
- 困っている同僚がいれば進んで手助けをする
- グループ作業において全体の調和を重視する行動
実際の職場では「ミャンマー人が入ってから職場の雰囲気が良くなった」「争いごとが減って、みんなが働きやすくなった」という評価を受けることが多くあります。
特に日本人従業員が多い職場において、既存のチームワークを壊すことなく、むしろ促進する存在として機能します。
特定業界での高い適性とやりがいの見出し方
ミャンマー人は特定の業界において、他の国籍の外国人労働者と比較して圧倒的に高い適性とモチベーションを示します。
これは宗教的・文化的価値観に根ざした深い理由があります。
介護・福祉業界での特異な適性
ミャンマー人にとって最も人気が高いのが介護分野です。
- 「他人のために重労働を行うことで徳を積める」という価値観
- 高齢者や困っている人への奉仕を神聖視する文化
この価値観により、日本人でも敬遠しがちな介護業務に対して、ミャンマー人は積極的に取り組み、やりがいを感じながら働くことができます。
製造業・サービス業での丁寧な作業姿勢
農業国であるミャンマーでは、季節や天候に左右される農作業を通じて忍耐力と継続力が培われており、これが製造業の単純作業や繰り返し作業において大きな強みとなっています。
コストパフォーマンスに優れた人材確保の実現
ミャンマー人採用の経済的メリットは、長期的な視点で見た時のコストパフォーマンスの高さにあります。
中小企業でも優秀な人材を確保できる機会
ミャンマーでは超一流大学を卒業しても就職先が限られているため、高学歴で優秀な人材が中小企業でも採用できる状況が生まれています。これは他の国では考えられない「宝の山」状態です。
長期雇用による採用コスト分散効果
ミャンマー人の高い定着率により、以下のコスト削減効果が期待できます。
- 採用活動費用の削減(頻繁な募集が不要)
- 研修・教育費用の効率化(長期間同じ人材に投資)
- 業務の習熟による生産性向上(継続的なスキルアップ)
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本文で触れた通り、ミャンマー人材は介護分野で特に高い適性を発揮します。こちらの記事では介護分野で外国人材の採用を検討している方向けに、4種類の就労ビザの要件やメリットを徹底比較しました。制度選びの参考にしてください。
3.ミャンマー人採用で注意すべき5つの重要ポイント

ミャンマー人採用には多くのメリットがある一方で、法的要件や文化的配慮など、事前に理解しておくべき重要なポイントがあります。
適切な準備なしに進めると、採用計画の遅延や法的リスクが発生する可能性があります。
成功のために押さえておくべき5つの注意点をご紹介します。
ミャンマー政府認定送出機関の利用義務と法的要件
ミャンマー人を特定技能で採用する際に最も重要な法的要件が、2022年4月に施行された特定技能外国人法に基づく送出機関の利用義務です。
この法律により、受入企業は必ずミャンマー政府が認定した送出機関を通じて採用手続きを行わなければなりません。
送出機関を通さない直接採用は完全に違法行為となり、以下の深刻なリスクがあります。
違法行為の内容 | 罰則・リスク |
---|---|
送出機関を介さない採用 | 在留資格取消、強制送還 |
不適切な書類での手続き | 受入停止処分、事業許可取消 |
適切な送出機関の選定方法
認定送出機関を選定する際は、以下の基準で評価するようにしましょう。
- ミャンマー政府からの正式な認定書の確認
- 日本語教育プログラムの充実度
- 過去の送出実績と企業からの評価
- 入国後のフォローアップ体制の有無
海外労働身分証明カード(OWIC)の確認と手続き
ミャンマー人採用において見落とされがちだが極めて重要なのが、海外労働身分証明カード(OWIC:Overseas Worker Identity Card)、通称「スマートカード」の確認と手続きです。
OWICはすべてのミャンマー人が海外で労働する際に必須となる公的身分証明書です。このカードなしでは、
- ミャンマーからの出国ができない
- 日本での在留資格申請が受理されない
OWICに関連する手続きには最低でも1-2ヶ月、情勢によっては3-4ヶ月を要する場合があります。そのため、採用決定から入国まで十分な期間を確保し、送出機関との密な連絡体制を構築することが不可欠です。
参考:法務省 ミャンマー国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ
文化的配慮と宗教的習慣への理解
ミャンマー人の90%が信仰する上座部仏教は、日常生活のあらゆる面に深く根ざしています。
採用企業としては、この宗教的背景を理解し、適切な配慮を行うことが長期的な雇用関係の成功の鍵となります。
仏教行事への参加希望への対応
ミャンマー人にとって重要な宗教行事が以下になります。
- ダガン月祭(2-3月):最も重要な祭り、帰国希望者多数
- カソン月祭(4-5月):仏陀の誕生を祝う行事
これらの時期には、宗教行事への参加や一時帰国の希望が出る場合があります。
【宗教的価値観を尊重した職場環境づくり】
ミャンマー人の宗教に配慮した環境を整えるようにしましょう。以下の内容を参考にしてください。
配慮事項 | 具体的な対応方法 |
---|---|
祈りの時間 | 朝夕の短時間の祈りへの理解 |
食事制限 | 豚肉を避ける食事の提供 |
休憩室設備 | 瞑想や祈りができる静かな空間 |
文化的誤解を防ぐためのコミュニケーション方法
ミャンマー人は直接的な拒否や反論を避ける文化があるため、以下を気に掛けるようにしましょう。
- 定期的な個別面談の実施
- 「分からないことは遠慮なく聞いて」という積極的な声かけ
- 表情や態度から察する観察力の向上
指導方法と叱責時の適切な対応
ミャンマー人の温厚で穏やかな国民性は、指導方法に特別な注意が必要であることを意味しています。ミャンマー人は母国で叱られたり怒られたりした経験がほとんどないのが一般的です。
強い叱責による精神的ダメージのリスク
下記に挙げたものは不適切な叱責により起こりうる可能性がある問題になります。
問題の種類 | 具体的な影響 |
---|---|
精神的な萎縮 | 積極性の喪失、提案力の低下 |
信頼関係の悪化 | 上司への恐怖心、距離感の拡大 |
離職リスクの増大 | 突然の退職、同国人への悪評 |
建設的なフィードバックの提供方法
効果的な指導のための具体的アプローチ例を以下に挙げます。
- 他の従業員の前では絶対に叱らない
- 良い点の評価を必ず最初に行う
- 「一緒に解決しましょう」という協力的姿勢
- 「あなたを心配しているから」という前置き
このような配慮により、ミャンマー人の持つ真面目さと向上心を最大限に引き出し、長期的に成長し続ける人材として育成することができるでしょう。
ミャンマー情勢による採用プロセスへの影響
2021年の軍事クーデター以降、ミャンマーの政情不安定化は日本企業の採用活動に様々な影響を与えています。情勢の変化を見据えた柔軟な採用戦略が必要と言えるでしょう。
政変後に発生した主要な問題により、計画していた採用スケジュールが2-6ヶ月遅延した企業が多数発生しました。現在は改善されていますが、処理能力の低下により通常より時間がかかる状況が続いています。
現実的な対応指針
- 採用決定から入国まで6ヶ月以上の余裕を持つ
- 緊急時の代替人材確保ルートを複数準備
- 国内在住ミャンマー人の積極活用
- 既存のミャンマー人従業員への心理的ケア
4.ミャンマー人採用の具体的な流れと成功のポイント

ミャンマー人採用を実際に進める際の具体的な手順と、成功のために重要なポイントを解説します。
採用ルートの選択から面接の進め方、入社後の定着支援まで、文化的背景を踏まえた実践的なアプローチが求められます。
初めて採用を検討する企業でも安心して進められる流れをご紹介します。
採用ルートの選択と手続きの全体像
ミャンマー人の採用には「国内在住者採用」と「海外現地採用」の2つのルートがあり、それぞれ異なるメリット・デメリットが存在します。
項目 | 国内在住者採用 | 海外現地採用 |
---|---|---|
採用期間 | 1-3ヶ月 | 3-6ヶ月 |
人材の選択肢 | 限定的 | 豊富 |
情勢の影響 | 受けにくい | 受けやすい |
初期費用 | 低い | 高い |
定着率 | やや低い | 高い |
特定技能外国人を受け入れるための必須要件
- 直近2年間の売上実績と適切な財務状況
- 労働基準法の遵守体制
- 社会保険の適切な加入
- 業界別協議会への加入(法的義務)
自社だけで全ての手続きを行うことも可能ですが、登録支援機関の活用により複雑な手続きの代行、入国後の生活支援、トラブル発生時の対応などのメリットが得られます。
初回採用の場合は、リスク軽減のため登録支援機関の活用を強く推奨します。
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ミャンマー人採用では、送出機関や登録支援機関との連携が不可欠です。信頼できるパートナー選びは採用成功の鍵を握ります。こちらの記事では、おすすめの紹介会社や良いエージェントを選ぶための具体的なポイントを解説します。
5.ミャンマー人採用を成功に導く実践ロードマップ

ミャンマー人材は日本人との文化的親和性が高く、真面目で勤勉な働きぶりが特徴的です。
一方で、送出機関の利用義務やOWIC手続きなど、法的要件への注意が必要。適切な準備と文化的配慮により、長期的に活躍する優秀な人材を確保できます。
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