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インドネシア人の就労ビザ完全ガイド|技人国ビザと特定技能の申請手続きから費用・注意点まで解説

インドネシア人の雇用を検討する企業が急増する中、適切な就労ビザの取得は必須課題です。現在約5万人のインドネシア人が日本で活躍し、特定技能制度では前年比2.7倍の急成長を見せています。

本記事では、技人国ビザと特定技能ビザの申請手続きから費用、宗教的配慮まで、インドネシア人雇用に必要な全知識を2025年最新情報で徹底解説します。

この記事を読んでわかること
  • インドネシア人雇用に必要な就労ビザの種類と選択基準
  • 技人国ビザと特定技能ビザの具体的な申請手続きと費用
  • 宗教・文化への配慮とトラブル回避のための実践的対策

1.インドネシア人の就労ビザ基礎知識

1.インドネシア人の就労ビザ基礎知識

インドネシア人雇用の現状と背景

近年、日本で働くインドネシア人は急速に増加しており、現在約5万人のインドネシア人が日本で活躍しています。

厚生労働省の統計によると、特定技能制度の導入以降、インドネシア人労働者数は前年比2.7倍という驚異的な伸びを見せており、ベトナム人に次いで第2位の規模となっています。

地域別の分布を見ると、愛知県が2,773人で最も多く、続いて東京都の2,689人、静岡県の1,747人となっています。

これらの地域に共通しているのは、製造業が盛んな工業地帯であることです。愛知県のトヨタ自動車をはじめとする自動車産業、茨城県や群馬県の精密機械産業など、技術力を要する製造業でインドネシア人の技能が重宝されています。

インドネシア人が日本での就労を選ぶ理由として、まず経済的な魅力が挙げられます。

インドネシアの平均月給が約5万円であるのに対し、日本では特定技能制度を活用することで年間300万円以上の収入を得ることが可能です。

また、インドネシアの失業率5.45%に対し、日本は2.6%と低く、安定した雇用環境と充実した社会保障制度が魅力となっています。

一方、企業がインドネシア人を求める理由も明確です。

インドネシアの平均年齢は29歳と非常に若く、日本の高齢化が進む労働市場において貴重な若手人材を確保できます。

また、インドネシア人は勤勉で協調性が高い国民性を持ち、「ゴトンロヨン」と呼ばれる相互扶助の精神が根付いているため、チームワークを重視する日本の企業文化に適応しやすいのも大きなメリットです。

さらに、日本語とインドネシア語は文法構造に共通点が多いため、日本語習得能力が高いことも企業から評価されています。

就労ビザの種類と選択基準

インドネシア人が日本で働くためには、就労が認められた在留資格(就労ビザ)を取得する必要があります。

就労ビザは約19種類に分かれており、雇用形態や仕事内容によって取得すべきビザが異なります。

技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)の概要

技人国ビザは、オフィスワーカーやホワイトカラーと呼ばれる知的労働や技術・開発的労働を対象としたビザです。

システムエンジニア、営業、通訳などの専門職で活用されており、インドネシア人の在留資格として最も一般的なものの一つです。

大学卒業が基本要件となり、学歴と業務内容の関連性が重要な審査ポイントとなります。

特定技能ビザの概要

2019年に新設された制度で、介護、ビルクリーニング、建設、農業、外食業など16分野での就労が可能です。

技人国ビザと比較して、より幅広い業種での受け入れが可能で、即戦力としての活用が期待されています。学歴不問で、技能試験と日本語能力試験N4の合格が要件となります。

技能実習ビザの概要

技術移転を目的とした制度で、現在日本で働くインドネシア人の約55%がこの制度を利用しています。最長5年間の滞在が可能で、技能習得後は特定技能への移行も可能です。

その他の就労系在留資格(EPA、企業内転勤等)

EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士候補者のための特定活動ビザでは、母国で看護師資格や介護士認定を取得し、2年以上の実務経験と日本語能力試験N4以上が要求されます。

企業内転勤ビザは、同一企業の海外支社から日本支社への転勤者を対象としています。

ビザ選択の判断基準

ビザ選択時は、まず従事する業務内容を明確にし、必要な学歴や職歴要件を確認することが重要です。

技人国ビザは大学卒業が基本要件となる一方、特定技能ビザは学歴不問で技能試験と日本語試験の合格が要件となります。

雇用期間や更新可能性、将来的なキャリアパス(永住権取得の可能性等)も考慮して最適なビザを選択しましょう。

2.技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)の完全解説

2.技術・人文知識・国際業務ビザ(技人国ビザ)の完全解説

技人国ビザで可能な業務内容

技術・人文知識・国際業務ビザは、その名前の通り「技術分野」「人文知識分野」「国際業務分野」の3つの分野に分かれており、各分野で従事可能な業務が明確に定められています。

技術分野での職種例(エンジニア、CADオペレーター等)

技術分野(理系分野)では、機械工学や情報技術などの専門知識を活かした業務が対象となります。

具体的な職種として、システムエンジニア、CADオペレーター、ソフトウェアエンジニア、ゲームプログラマー、テクニカルサポート、設計士などが挙げられます。

これらの職種では、大学で学んだ理系の専門知識や、IT関連の資格が重要な判断材料となります。

技術分野

人文知識分野での職種例(営業、経理、企画等)

人文知識分野(文系分野)では、企画、営業、経理などの事務系業務が中心となります。

経営コンサルタント、マーケター、広報担当者、プロジェクトマネージャー、経理担当者など、専門的な知識と判断力が求められる職業が該当します。

この分野では、大学での専攻分野と業務内容の関連性が重要視されます。

人文知識分野

国際業務分野での職種例(通訳、翻訳、語学教師等)

国際業務分野では、語学力や海外の文化・考え方を活かした業務が対象となります。

語学教師、通訳者、翻訳者、貿易事務、デザイナー、コピーライター、商品企画・開発などが代表的な職種です。

この分野では、日本語検定などの語学力を客観的に証明することが特に重要になります。通訳・翻訳業務の場合、3年以上の実務経験があれば在留資格該当性を満たします。

国際業務分野

重要な注意点として、技人国ビザでは単純労働系(ブルーカラー)の仕事は対象外となります。

飲食店でのホール業務(ウェイター、ウェイトレス)、工場のライン作業、建設現場での現場作業などは、たとえ関連する会社に就職しても技人国ビザでは従事できません。

従事不可能な業務

申請要件の詳細解説

学歴要件(大学卒業、専門士取得等)

技人国ビザを取得するためには、まず学歴要件を満たす必要があります。

技人国ビザ取得要件

  • 従事する業務に必要な知識に関連する科目を専攻して大学を卒業していること
  • 従事する業務に必要な知識に関連する科目を専攻して、日本の専修学校の専門課程を修了していること(専門士または高度専門士の称号が必要)

大学等を卒業している場合でも、「技術分野」「人文知識分野」の仕事内容で申請する際は、学んだ分野と関連性が強い業務を行うことが条件となります。

理系の学部を卒業した場合は理系の職業、文系の学部を卒業した場合は文系の職業での雇用が一般的ですが、理系学部卒業者が文系職種に従事することも可能です。

国際業務分野の場合は、大学等を卒業していれば学んだ分野との関連性は問われません。

職歴・資格要件(実務経験年数、IT資格等)

学歴要件をクリアしていない場合は、実務経験や資格で代替することが可能です。

代替できる条件

  • 技術分野・人文知識分野:10年以上の実務経験
  • 国際業務分野:3年以上の実務経験
  • IT技術者の場合:法務大臣が告示で定める「情報処理技術」に関する資格
  • インドのDOEACC制度の資格保有者

ただし、実務経験を元に申請する場合、過去に働いていた会社が倒産していたり、証明書を入手できなかったりすることが多く、必要年数分の証明が困難なケースも少なくありません。

雇用条件要件

雇用条件として以下の要件を満たす必要があります。

外国人雇用条件

  1. 日本にある企業が雇用していること
    ⇒日本にある会社、国、地方公共団体、独立行政法人、公益法人等に雇用されている必要があります。
  2. 日本人と同等以上の給与収入があること
    ⇒「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」と規定されており、外国人だからといって同じ仕事をしている日本人より給料を低くすることはできません。
  3. 日本の法律を守っていること
    ⇒特に留学生を雇用する場合は、資格外活動の許可(週28時間以内のアルバイト制限)に注意が必要です。風俗営業等の店舗で働くことは認められません。

申請手続きの流れ

海外在住インドネシア人の招聘手続き

海外在住のインドネシア人を雇用する場合の手続きは以下の通りです。

海外在住インドネシア人の招聘手続き

申請人である外国人は日本にいないため、雇用する会社の採用担当者が代理人として申請します。

審査期間は1〜3ヶ月で、許可後は海外にある日本国大使館・領事館でのビザ(査証)発給が必要です。

在日インドネシア人の資格変更手続き

既に日本に在住するインドネシア人の場合は、在留資格変更許可申請を行います。審査期間は2週間〜1ヶ月で、申請人が海外にいる状態では申請できません。

必要書類の準備と注意点

申請書類は30〜100枚程度になり、雇用元となる会社の規模によって必要書類が異なります。学位記や成績証明書などの外国書類については日本語訳を添付する必要があります。

インドネシア人特有の手続きとして、SISKOTKLN(海外労働者管理システム)への登録があります。

これはインドネシア政府が運営するシステムで、インドネシア人自身が在日本の大使館・領事館で手続きを行い、推薦状の発行を受ける必要があります。

海外労働者管理システム(SISKOTKLN)は、海外で就労するインドネシア人の情報を管理するためにインドネシア政府が運用しているシステムです。

SISKOTKLNに登録された情報は、インドネシアの特定技能外国人が日本でトラブルに巻き込まれた際などの被害者保護のために、使われるため必ず登録しましょう。

SISKOTKLNへの登録は、「インドネシアからの呼び寄せ」と「国内人材の特定技能ビザへの変更」のどちらの場合でも必須の手続きとなります。

インドネシア人専門の専門メディア「海外労働者管理システム(SISKOTKLN)とは

3.特定技能ビザでのインドネシア人雇用

3.特定技能ビザでのインドネシア人雇用

特定技能制度の概要とメリット

技人国ビザとの違い

特定技能制度は2019年4月に新設された在留資格で、人手不足が深刻な16分野において、即戦力となる外国人材を受け入れることを目的としています。

現在、特定技能を活用して働くインドネシア人は34,255人に達し、全体の16.4%を占める第2位の規模となっています。

項目特定技能ビザ技人国ビザ
対象業種16分野に限定幅広い職種
学歴要件不問大学卒業等が必要
試験要件技能試験+日本語N4なし
在留期間最長5年更新可能(制限なし)
永住権取得不可要件満たせば可能

対象業種と業務内容の範囲

特定技能の対象となる16分野は、農業、林業、漁業、木材産業、建設業、造船・船用工業、鉄道、航空、介護、宿泊、外食業、ビルクリーニング、飲食料品製造業、工業製品製造業、自動車整備、自動車運送業です。

これらの分野では、技人国ビザでは従事できない現場作業や製造業務にも従事できるため、より幅広い人材活用が可能です。

特定技能制度の基本的な仕組み1
特定技能制度の基本的な仕組み2

雇用企業にとってのメリット

特定技能制度の主なメリットは以下の通りです。

雇用企業のメリット

  • 即戦力となる人材の確保が可能になる
  • 技能試験合格者のため一定の技能レベルが保証される
  • インドネシアでは送出機関を経由する必要がないため低コスト採用が可能になる
  • インドネシア政府の積極的な協力によりスムーズな採用が実現できる

インドネシア特有の手続き要件

IPKOL(労働市場情報システム)への登録方法

特定技能でインドネシア人を雇用する際、企業は労働市場情報システム「IPKOL」への登録を推奨されています。

IPKOLへの登録には、受入機関登録が必要となります。

日本の受入機関が、インドネシアの職業紹介事業者(以下「P3MI」という。詳細については、
後述項番2(1)参照)を利用することなくインドネシア国籍の方をインドネシアから新たに特定技
能外国人として受け入れるに当たっては、

インドネシア政府が管理する求人・求職のための「労働市場情報システム(IPKOL)」に日本側受入機関が登録して求人することを、インドネシア側は強く希望しています。

参照元:法務省「~特定技能外国人の受入機関の方々へ~

受入機関登録の手続きは以下の通りです。受入機関登録の有効期間は3年であり、3年ごとに更新手続きが必要です。

手続きの流れ詳細
1.必要書類の用意受入機関登録申請書、定款、事業計画書、財務諸表、雇用管理規程、日本語能力証明書、インドネシア語能力証明書など
2.申請インドネシア人材開発協会(IMDHI)に申請
3.審査IMDHIによる審査(審査期間:約2ヶ月)
4.登録審査合格後、IMDHIから受入機関登録証明書が交付される

SISKOTKLN(海外労働者管理システム)の活用

SISKOTKLNは、インドネシア政府が管理する海外労働者管理システムであり、登録により以下のメリットがあります。

  • SISKOTKLNは、インドネシア政府が管理する海外労働者管理システムであり、登録によりこのようなメリットがあります。
SISKOTKLN(海外労働者管理システム)のメリット

協議会への加入義務

特定技能でインドネシア人を雇用する場合、雇用主は該当する分野の協議会に加入する必要があります。

協議会への加入は特定技能でインドネシア人を受け入れてから4ヶ月以内に行う必要があります。

協議会は、外国人雇用に関する情報提供や研修、相談窓口などのサービスを提供し、特定技能制度の円滑な運用を支援する目的があります。

申請から雇用開始までの具体的ステップ

海外からの招聘ルート

海外に在留しているインドネシア人を雇用する場合の流れは以下の通りです。

海外からの招聘ルート

雇用契約書には、それぞれ記載する必要があるものや、在留資格認定証明書の交付申請に必要なものがあります。

雇用契約書記載事項
在留資格認定証明書の交付申請に必要なもの

在日外国人の資格変更ルート

日本に在留するインドネシア人の雇用を行う場合は以下の流れです。

在日外国人の資格変更ルート

在留資格の変更には2ヶ月ほどかかるため、期間に余裕を持って申請することが大切です。

各ステップの所要期間と注意点

全体のスケジュールとしては、海外からの招聘で2-4ヶ月、在日外国人の資格変更で2ヶ月程度を見込んでおく必要があります。

在留資格認定証明書の交付やビザの交付には時間がかかるため、企業が希望する就労開始時期から逆算して時間に余裕を持った準備が重要です。

特定技能制度の大きなメリットとして、インドネシアでは送出機関を経由する必要がないため、ベトナムやフィリピンと比較して低コストでの採用が可能な点が挙げられます。

インドネシア人の特徴や雇用するにあたっての大事なポイントなど、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

インドネシア人の特徴と雇用5つのポイント
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インドネシア人を雇っていくために事前に理解しておきたい、インドネシア人の特徴や文化について詳しく解説します。
https://back-end.co.jp/media/contents/indonesiatokuchou/

4.インドネシア人雇用の費用と期間

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申請にかかる費用の内訳

インドネシア人雇用にかかる費用は、取得するビザの種類によって異なります。以下に主要な費用項目をまとめました。

行政書士費用(10-20万円)

技人国ビザ、特定技能ビザともに、専門的な書類作成と申請代行が必要となるため、行政書士への依頼費用として10-20万円程度が相場となっています。この費用には、書類作成、申請代行、相談対応が含まれます。

入管申請料(4,000円)

出入国在留管理局への収入印紙代として4,000円が必要です。これは在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請共通の費用です。

登録支援機関委託費(月2-3万円)

特定技能ビザの場合、義務的支援を登録支援機関に委託する費用として、毎月2-3万円が必要となります。この費用には、生活オリエンテーション、住居確保支援、日本語学習支援、定期面談などが含まれます。

その他必要経費

  • 渡航費:約3-6万円(航空券代)
  • 健康診断費:約1-3万円(入国前検査)
  • 書類翻訳費:3-5万円(外国書類の日本語翻訳)
  • 給与:約20-30万円(日本人同等以上が必須)

これらの費用はあくまで目安であり、経験や能力が高いほど給与が高くなります。

また、インドネシア人を特定技能で雇用する際には他国と異なり、送出機関との契約が必要ないため、ベトナムやフィリピンと比較すると低コストでの採用が可能です。

審査期間の目安

ビザ申請から就労開始までの期間は申請方法により異なります。

在留資格認定証明書交付申請(1-3ヶ月)
在留資格変更許可申請(2週間-1ヶ月)

手続き全体のスケジュール管理

効率的なスケジュール管理のポイントは以下の通りです。

  1. 事前準備の徹底⇒必要書類のリストアップ化と早期収集を行う
  2. 書類の品質管理⇒不備による再提出を避けるため、専門家によるチェックを行う
  3. 並行処理⇒SISKOTKLN登録や健康診断を申請準備と並行して実施する
  4. 余裕を持ったスケジューリング⇒希望就労開始日の3-4ヶ月前から準備を開始する

特に製造業では繁忙期に合わせた人材確保が重要なため、計画的な準備が成功の鍵となります。また、インドネシアの祝日(ラマダン期間等)も考慮したスケジューリングが推奨されます。

申請書類は技人国ビザで30〜100枚程度、特定技能ビザで同程度の書類が必要となり、審査ポイントは学歴、職歴、仕事内容が重要な判断材料となります。

提出先は地方出入国在留管理局となり、申請後の追加書類提出要求に迅速に対応することも審査期間短縮のポイントです。

5.インドネシア人雇用時の重要な注意点

5.インドネシア人雇用時の重要な注意点

宗教・文化への配慮事項

イスラム教徒への配慮(礼拝時間、ハラル対応等)

インドネシア人の約8割がイスラム教徒であるため、宗教的な習慣への理解と配慮が円滑な雇用関係の構築において極めて重要です。

イスラム教徒は1日5回の礼拝(サラー)を行う義務があります。

イスラムー教では、一日に5回の礼拝が義務づけられており、礼拝の名称は時間により異なっています。

一日五回の礼拝–    時刻

1.ファジュル                 日の出前(明けがたから日の出まで)

2.ズフル                           お昼すぎ(正午から昼すぎまで)

3.アスル                           日没前(昼すぎから日没まで)

4.マグリブ                      日没後(直後)

5.イシャー                      寝る前(就職前)

参照元:アハマディアムスリム協会「サラート・礼拝

就業時間中には正午と午後の礼拝が重なるため、礼拝時間(10-15分程度)の確保、静かで清潔な礼拝スペースの提供、礼拝方向(メッカの方角:西南西)の確認などの配慮が必要です。

ハラル(食事)への配慮も重要で、豚肉、アルコール、豚由来の成分を含む食品は禁止されています。

社食でのハラル認証食品の提供、豚肉を使わないメニューの設定、歓送迎会等ではアルコールを強要しない、ハラル対応の飲食店選択などの配慮が求められます。

年1回約1ヶ月間のラマダン(断食月)期間中は、日の出から日没まで飲食を控えるため、勤務時間の調整(早朝出勤、早期退社等)、体調への配慮(重労働の軽減)などの対応が必要です。

インドネシア文化の理解

インドネシア人は「ゴトンロヨン」と呼ばれる相互扶助の精神が根付いており、困難な状況を共同で乗り越えることを重視します。

また、インドネシア社会は家族主義が強く、家族のために努力することが美徳とされています。このような文化的背景を理解し、チームワークを重視する企業文化との親和性を活かすことが重要です。

職場環境の整備方法

多様性を受容し、文化理解研修をスタッフ全員に実施することが重要です。

宗教的な祝日への配慮、服装規定(女性のヒジャブ着用許可等)の調整、宗教的な価値観や習慣を尊重する職場環境の構築が求められます。

法的リスクと回避策

不法就労助長罪の防止

外国人の不法就労は雇用主も処罰対象となるため、以下の確認が必須です。

在留カードの確認項目

日本に中長期間(3か月以上)在留している外国人は「在留カード」という身分証明書を必ず所持しています。

外国人の雇用を検討するときは「在留カード」を見せてもらい、現在の在留資格(ビザ)や、在留期間満了日(日本に滞在できる期限)等を確認しましょう。

資格外活動違反の注意点

留学生をアルバイトで雇用する場合、以下の点に注意が必要です。

  • 資格外活動の許可取得確認
  • 労働時間制限の遵守(週28時間以内
  • 夏期休業や冬期休業中は1日8時間まで
  • 風俗営業等の店舗での就労は認められない

適切な労働条件の確保

技術・人文知識・国際業務ビザにおいては「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」と規定されており、外国人だからといって同じ仕事をしている日本人よりも給料を低くすることはできません。

労働基準法の遵守、適正な労働時間・休日・有給休暇の付与、社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険)への加入義務も重要です。

参照元:出入国在留管理庁 在留資格「技術・人文知識・国際業務」

雇用後のサポート体制

定期的なビザ更新手続き

在留期間満了の3ヶ月前から更新申請が可能です。

  • 技人国ビザ:1年、3年、5年での更新
  • 特定技能ビザ:1年ごとの更新(最長5年)
  • 必要書類:在留期間更新許可申請書、雇用契約書、納税証明書等

転職時の手続き(就労資格証明書等)

インドネシア人従業員が転職する際の適切な手続き

  • 就労資格証明書交付申請⇒新しい職務が在留資格に適合するかの確認
  • 所属機関変更届⇒14日以内の届出義務
  • SISKOTKLN変更手続き⇒インドネシア政府への雇用主変更通知

技人国ビザをお持ちのインドネシア人の勤務先が変わった場合は「就労資格証明書交付申請」を行い、次回の在留期間更新が簡素化されるメリットがあります。

トラブル発生時の対応方法

トラブルが発生した時の対処法とは?

  1. 初期対応
    文化的背景を考慮した対話、通訳者の活用(必要に応じて)、宗教的配慮の再確認
  2. 専門機関の活用 
    外国人在留支援センター(FRESC)への相談、地域の国際交流協会の活用、専門の行政書士・弁護士への相談
  3. インドネシア政府機関との連携
    在日インドネシア大使館・総領事館への相談、SISKOTKLNシステムを通じた報告

継続的な支援体制として、日本語学習支援、生活支援(住居確保、銀行口座開設等)、健康管理、キャリア開発などが重要です。特定技能の場合は登録支援機関に委託することで、これらの支援を専門的に受けることが可能です。

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6.成功事例と実践的アドバイス

6.成功事例と実践的アドバイス

業界別成功事例の紹介

製造業でのCADオペレーター雇用事例

岡山県倉敷市の建築工事業を営む企業では、インドネシア人男性をCADオペレーターとして技人国ビザで雇用し、1回目の更新に成功しています。

  • 申請期間:依頼から許可まで60日
  • 申請書類:31枚
  • 申請種類:在留期間更新許可申請
  • 成功要因:前回の在留資格認定証明書交付申請時より職務内容に変更がなく、継続的な雇用実績が評価された

この事例では、インドネシアでコンピューター科学を専攻した学歴と、CADオペレーター業務の関連性が明確に証明されたことが成功のポイントでした。

建築工事業という業界で、設計業務に従事するという専門性の高い職務であることが審査で評価されました。

IT企業でのシステムエンジニア雇用事例

あるゲーム開発会社では、インドネシアの大学でコンピューター科学を学んだ留学生を、日本語学校卒業前に内定を出し、技人国ビザへの資格変更に成功しました。

  • 背景:子供の頃見た日本のアニメにあこがれて来日
  • 学歴:インドネシアの大学でコンピューター科学専攻
  • 成功要因
    • 学歴と業務内容の明確な関連性
    • 日本語でのコミュニケーション能力の証明
    • 早期からの準備(卒業年の前年12月から申請準備)

この事例では、趣味のPCゲームのプログラマーになりたいという明確な目標と、大学での専攻分野が一致していたことが重要なポイントでした。

サービス業での営業・企画職雇用事例

特定技能制度では、34,255人のインドネシア人が前年比2.7倍増という急成長を遂げています。製造業を中心に、技能実習から特定技能への移行や、母国からの直接雇用が活発化しています。

地域的成功パターンとして、愛知県(2,773人)、東京都(2,689人)、静岡県(1,747人)、神奈川県(1,665人)、大阪府(1,458人)の工業地帯で集中的に成功事例が報告されています。

成功要因は、IPKOLシステムの活用による効率的な人材マッチング送出機関不要による低コスト採用が挙げられます。

専門家からのアドバイス

申請成功率を高めるポイント

申請の成功率を高めるポイント!

  1. 学歴と業務の関連性証明
    • 大学の成績証明書で専攻分野を明確化する
    • 業務内容詳細書で専門知識の活用方法を具体的に記載する
    • 理系・文系に関わらず、国際業務分野での申請も検討してみる
  2. 適切な書類準備
    • 外国書類の正確な日本語に翻訳する
    • 雇用契約書の詳細な労働条件を具体的に記載する
    • 企業の事業内容と雇用の必要性の明確な説明をする

技人国ビザ申請ではインドネシア人の学歴を証明する書類や職歴を証明する書類が重要になります。

また、勤務先の書類として給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が必要となる場合が多く、企業規模によって必要書類が異なることも重要なポイントです。

よくある失敗パターンと回避方法

失敗パターン①:単純労働との誤解

  • 問題:製造業で現場作業員として雇用しようとして不許可
  • 回避方法:技術者、品質管理、生産管理など専門性のある職務内容に変更する

技人国ビザ申請をする場合、勤務先が飲食店やホテル、工場などの場合は要注意です。

失敗パターン②:学歴と業務の関連性不足

  • 問題:文系学部卒業者を理系職種で雇用しようとして不許可
  • 回避方法:国際業務分野での申請や、職歴での代替要件を活用する

失敗パターン③:資格外活動違反

  • 問題:留学生のアルバイト時間超過で在留資格変更が不許可
  • 回避方法:労働時間の厳格な管理と記録保持をする

長期雇用を実現するコツ

長期雇用を続けるためには

  1. 宗教・文化への継続的配慮
    礼拝時間の確保とスペース提供、ハラル対応の社食や懇親会、ラマダン期間中の勤務時間調整
  2. キャリア開発支援
    日本語能力向上のサポート、専門技能研修の提供、資格取得支援(IT資格、業界資格等)
  3. 適正な待遇と評価制度
    日本人同等以上の給与体系、公正な人事評価制度、昇進・昇格の機会提供

技人国ビザ申請は、申請すれば必ず許可されるものではなく、不許可になることもあります。一度不許可になると再申請に影響が出る可能性もあるため、専門家への依頼が推奨されます。

また、過去にオーバーステイや犯罪歴等がある場合はしっかり説明を行う必要があり、真実を正直に伝えることが許可取得のために重要です。

7.適切な準備で実現するインドネシア人材の戦略的活用

7.適切な準備で実現するインドネシア人材の戦略的活用

インドネシア人の就労ビザ取得は、適切な準備により確実に実現できます。技人国ビザは学歴と業務の関連性、特定技能ビザは技能試験合格が鍵となります。

イスラム教への配慮やSISKOTKLN登録など特有の要件もありますが、専門家のサポートを活用することで成功率を高められます。

インドネシア人の実際の日本語能力や教育事情などを踏まえた採用成功へ導くためのポイントなど、もっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。

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記事を書いた人
nakashima
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