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ベトナム人は何語を話す?ビジネス・コミュニケーション法を解説

「ベトナム人は何語を話すの?」ベトナム人採用や協働を検討する企業が最初に抱く疑問です。

ベトナムの公用語はベトナム語ですが、英語事情や地域差、発音特徴を理解せずに進めると、コミュニケーション不全や早期離職につながるリスクがあります。

本記事では、ベトナム人の言語事情から効果的なコミュニケーション方法、採用のメリット・デメリット、定着率向上のノウハウまで、外国人材活用成功の全体像を解説します。

この記事を読んでわかること
  • ベトナム語の特徴と英語事情:6つの声調・地域差・都市部と地方の英語格差の実態
  • コミュニケーション成功の具体的方法:言語の壁を越える3つの実践アプローチ
  • ベトナム人採用の総合判断材料:メリット・デメリット・他国籍との比較による戦略的選択

1.ベトナム語の基本:公用語はベトナム語

ベトナム語の基本:公用語はベトナム語

ベトナム人の言語を理解することは、効果的なコミュニケーションと人材定着の第一歩です。基本事実を正確に把握し、実務に活かせる知識を身につけましょう。

キン族を中心に人口の約87%が母語として使用

ベトナムの公用語は「ベトナム語」で、人口の約87%を占めるキン族が母語として使用しています。

ベトナムは実は54もの民族が住む多民族国家ですが、キン族以外の少数民族も学校教育を通じてベトナム語を習得し、共通語として活用しています。

つまり、ベトナム人従業員の大多数は、母語レベルでベトナム語を理解できるということです。企業がベトナム人とコミュニケーションを取る際、「ベトナム語が通じる」ことを前提とした対応策を検討できます。

地域による方言の違いも存在し、北部(ハノイ中心)、中部(ダナン中心)、南部(ホーチミン中心)で発音や語彙が多少異なりますが、相互理解は十分可能です。

一般的に標準語とされるのは、首都ハノイを中心とした北部方言です。

世界で約1億人が話す言語

ベトナム語は世界で約1億人以上が使用する言語で、話者数でいえば世界で21位にランクされています。

ベトナム国内だけでなく、アメリカ、オーストラリア、カナダ、フランス、日本などに住むベトナム系移民によっても話されています。

日本国内でも、2024年現在で約42万人のベトナム人が居住しており、これは在留外国人数で中国に次いで2番目の規模です。

特に群馬県では外国人住民の18.2%をベトナム人が占めるなど、地域によっては重要な労働力となっています。

この規模の大きさは、企業にとって重要な意味を持ちます。ベトナム語対応のノウハウを蓄積すれば、国内外で多くのベトナム語話者との連携が可能になり、事業展開の幅が広がる可能性があります。

また、ベトナム語学習のための教材や支援サービスも充実しているため、社内教育体制の構築も比較的容易です。

2.ベトナム語の特徴:文字と発音

ベトナム語の特徴:文字と発音

ベトナム語の構造を理解することで、なぜ日本語習得に時間がかかるのか、どのような学習支援が効果的かが見えてきます。言語的特徴を把握して、実践的な対応策を検討しましょう。

アルファベット表記(クオックグー)

現在のベトナム語は、「クオックグー(Quốc ngữ)」と呼ばれるローマ字表記を使用します。これは17世紀にフランスの宣教師アレクサンドル・ドゥ・ロードが考案し、フランス植民地時代に普及したものです。

アルファベットを基本としながら、独特の発音を表現するために母音記号と声調記号を付加します。

F、J、W、Zの4文字は使用せず、代わりにDのほかにĐ(ディー)があります。日本人にとって親しみやすいローマ字に似ていますが、読み方は大きく異なるため注意が必要です。

企業の実務面では、ベトナム語の文書作成や翻訳時に、適切な記号表記ができるシステム環境の整備が重要になります。

6つの声調と12の母音が特徴

ベトナム語最大の特徴は、6つの声調システムです。中国語(北京語)の4つ、タイ語の5つを上回る豊富な声調により、同じ綴りでも音の上がり下がりで意味が変わります。

この声調の豊かさが「鳥のさえずりのよう」と表現される理由です。

母音も日本語の5種類(ア・イ・ウ・エ・オ)に対し、ベトナム語は12種類(アが3つ、イが2つ、ウが2つ、エが2つ、オが3つ)と倍以上の複雑さを持ちます。

この発音の複雑さは、ベトナム人が日本語を学ぶ際には逆にメリットとなります。豊富な音韻体系を持つため、日本語の発音習得は比較的容易で、特にひらがな・カタカナの音は理解しやすい傾向があります。

中国語とフランス語の影響を受けたベトナム語

ベトナム語の語彙約70%は中国の漢字語に由来します。

これは約2000年間の中国支配の影響で、「感謝」を意味する「Cảm ơn(カム・オン)」は漢字で「感恩」と書けるなど、日本人にも理解しやすい単語が多数存在します。

一方、19〜20世紀のフランス統治時代の影響で、フランス語由来の語彙も豊富です。

フランス語ベトナム語意味
chefxếp, sếpボス、上司
automobileô tô自動車
cravatcà vạtネクタイ

語順は英語と同じSVO(主語-動詞-目的語)構造のため、英語に慣れ親しんだベトナム人にとって日本語のSOV構造は習得の難しさを感じる要因となります。

しかし、漢字由来の語彙の多さは、日本語学習において大きなアドバンテージとなります。

3.ベトナム人の英語力とビジネス活用の実態

ベトナム人の英語力とビジネス活用の実態

ベトナム人との協働では、英語を活用する可能性も重要な判断要素です。現実的な英語力と地域差を理解し、効果的なコミュニケーション戦略を立てましょう。

英語教育の普及状況

ベトナムでは英語教育が急速に進展しています。

2011年から小学校1・2年生で選択科目、3年生からは必修化され、2025年までに全生徒が3年生以降の12年間英語を学べる環境づくりが進められています。

1990年代半ば以降に生まれた世代は幼少期から英語に触れており、基礎的なコミュニケーション能力を持つ人材が増加中です。

しかし、2024年度のEF英語能力指数(EPI)ランキングでは世界63位と、英語レベルはまだ「やや低い」評価です。

ハノイやホーチミンなどの都市部では英語スクールが乱立し、国際的なビジネスの場での給与優遇を目指した学習意欲が高い一方、地方では学習機会が限定的なのが現状です。

企業としては、ベトナム人の英語力に期待しつつも、完全に英語に依存したコミュニケーションは避け、日本語学習支援や翻訳ツールとの併用を前提とした体制構築が現実的です。

ベトナム人の英語力の実態と日本企業での活用方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

ベトナム人の英語力徹底解説!日本企業での活用メリットとは
ベトナム人の英語力徹底解説!日本企業での活用メリットとは
本記事では、ベトナム人の英語力の実態と特徴、そして日本企業での活用方法について徹底解説します。
https://back-end.co.jp/media/contents/vietnamese-command-of-english/

ベトナム人の英語発音の特徴

ベトナム人の英語には独特の発音特徴があり、日本人には聞き取りにくい場合があります。主な特徴は以下の通りです。

発音の特徴例

  • 「tr」音を「チャ」と発音:Train(電車)→「チェイン」、Travel(旅行)→「チャベル」
  • 「S」音の省略:Hospital(ホスピタル)→「ホピタル」
  • 語尾子音の省略:good(良い)→「グッ」、Trap(罠)→「トラッ」

これらの発音特徴は、ベトナム語の音韻体系が影響しているため、短期間での改善は困難です。日本人側も「ベトナミングリッシュ」の特徴を理解し、相互に歩み寄る姿勢が必要でしょう。

逆に日本人の英語も、語尾に母音を付加する傾向(「I speak English」→「アイ・スピーク・イングリッシュ」)があるため、お互いの発音の違いを認識し、ゆっくり話す、重要な単語を繰り返すなどの配慮が効果的です。

英語が通じる場所と通じない場所

ベトナム国内でも、英語の通用度には大きな地域格差があります。

伝統的な市場や個人商店

ビジネス活用の観点では、都市部出身や高等教育を受けたベトナム人は基本的な英語でのコミュニケーションが可能ですが、専門的な業務指示や細かいニュアンスの伝達には限界があります。

重要な指示や契約関連の説明は、英語だけでなく日本語や翻訳を併用し、誤解のリスクを最小化することが推奨されます。

また、英語が得意なベトナム人従業員をキーパーソンとして、他のベトナム人スタッフとの橋渡し役を担ってもらう体制も効果的です。

4.ベトナム人とのコミュニケーションを成功させる3つの実践法

ベトナム人とのコミュニケーションを成功させる3つの実践法

言語の壁を効果的に乗り越え、ベトナム人従業員の定着率向上につなげる実践的なアプローチを解説します。これらの手法は他国籍の外国人材にも応用可能です。

わかりやすい日本語で伝える

ベトナム人との円滑なコミュニケーションの基本は、相手にとって理解しやすい日本語を使うことです。日本語に不慣れな相手には、何気なく使っている表現でも大きな障壁となります。

効果的な伝達のポイント

改善点避けるべき表現推奨表現
抽象的表現の具体化早めにやってください明日の17時までに完了してください
時間の明確化なるべく遅れないで9時ちょうどに来てください
作業の具体化ちょっと手伝って箱を3つ運んでください

言葉の置き換え

  • 和語を英語に:パソコン→ラップトップ、フロント→レセプション
  • 略語を避ける:アポ→アポイントメント、メンテ→メンテナンス

ジェスチャーを交えながら短い文章でゆっくり話し、相手の理解を確認しながら進めることも重要です。「わかりましたか?」だけでなく、「どの部分から始めますか?」など具体的な質問で理解度をチェックしましょう。

参考:出入国在留管理庁 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン

翻訳ツールと日本語学習支援の活用

言葉が通じにくい場面では、テクノロジーと教育支援の組み合わせが効果的です。翻訳ツールは即効性があり、日本語学習支援は長期的な関係構築に寄与します。

翻訳ツールの効果的活用

  • 音声翻訳機能:複雑な説明や専門用語が必要な場面で活用
  • テキスト翻訳:書面での指示書や報告書作成時に併用
  • 画像翻訳:安全標識や作業手順書の理解促進

業務指示は口頭説明に加え、翻訳アプリで翻訳されたテキストを表示することで、従業員の正確な理解につながります。

ただし翻訳精度には限界があるため、重要な内容は複数の方法で確認を取ることが必要です。

翻訳ツールと日本語学習支援の活用

特定技能1号外国人を雇用する場合、「日本語学習の機会提供」が法的義務となっているため、体系的な支援体制の構築が不可欠です。

ベトナム文化を理解し信頼関係を築く

文化的背景の理解は、表面的なコミュニケーションを超えた深い信頼関係の構築につながり、結果として定着率の大幅な改善をもたらします。

ベトナム文化を理解し信頼関係を築く

これらの文化的特徴を理解し、業務指導や評価の際に配慮することで、ベトナム人従業員は「理解されている」と感じ、長期的な信頼関係が構築されます。

結果として早期離職を防ぎ、採用コストの削減とチーム力の向上が実現できます。

5.ベトナム人採用のメリット・デメリット

ベトナム人採用のメリット・デメリット

ベトナム人採用を検討する際、言語面でのメリット・デメリットを客観的に評価し、他国籍人材との比較も含めて総合的な判断材料を提供します。

メリット:言語習得の速さと英語対応力

ベトナム人の言語習得能力は、採用において大きなアドバンテージとなります。特に日本語学習における優位性は、長期的な人材活用の観点で重要な要素です。

メリット:言語習得の速さと英語対応力

英語対応力の活用

  • 都市部出身者は基礎的な英語コミュニケーションが可能
  • 国際的な業務での橋渡し役として機能
  • 英語圏顧客対応における補完的役割
  • 社内の多国籍チームでの共通言語として活用

制度活用の観点では、特定技能・技能実習制度の活用しやすさ、日本語能力試験(JLPT)受験者数の多さによる人材選択の幅の広さ、ベトナム現地での日本語教育機関の充実といったメリットがあります。

デメリット:初期コミュニケーションの壁と文化ギャップ

一方で、言語面での課題も正確に把握し、適切な対応策を準備することが重要です。

ベトナム人雇用で想定されるデメリット

初期段階での困難

  • 日本語の複雑さ: 敬語、謙譲語、丁寧語の使い分けに時間が必要
  • 文化的ニュアンス: 間接表現や「察する」文化への適応困難
  • 語順の違い: SVO構造からSOV構造への適応期間
  • 発音の課題: 一部の日本語音素(「ツ」「ラ行」など)の習得困難

コミュニケーションリスク

  • 業務指示の誤解による作業ミス
  • 報告・連絡・相談(ホウレンソウ)文化への適応期間
  • 緊急時や複雑な状況での意思疎通困難
  • 職場での人間関係構築に時間が必要

サポートコスト

  • 日本語学習支援体制の構築費用
  • 翻訳ツールやシステム導入コスト
  • 管理職向け異文化理解研修の実施費用
  • 初期段階での生産性低下と指導時間の増加

他国籍人材との比較でわかるベトナム人の特徴

言語面での特徴を他国籍人材と比較することで、ベトナム人採用の戦略的位置づけが明確になります。

主要国籍別の言語特徴比較

ベトナム人の差別化要因として、

  • 日本語習得速度と英語併用可能性のバランスが良好なコストパフォーマンス
  • 勤勉な国民性による長期雇用への適性という安定性
  • 若年層の教育水準向上による将来的なスキルアップ期待という成長性
  • 日本の外国人労働制度との親和性の高さ

このような制度適合性が挙げられます。

総合的な判断指標

  • 短期的ROI: 初期投資(研修・サポート)回収まで約6-12ヶ月
  • 中期的効果: 1-2年で戦力化、業界平均2倍の定着率実現可能
  • 長期的価値: 管理職候補としての育成可能性、多国籍チームのキーパーソン

ベトナム人採用は、「高い日本語習得能力」「適度な英語力」「文化的親和性」のバランスが取れており、初期コストを許容できる企業にとって、中長期的に高いリターンが期待できる選択肢といえます。

6.ベトナム人の言語理解を深めて採用を成功させよう

ベトナム人の言語理解を深めて採用を成功させよう

ベトナム人の言語理解は、単なる知識習得ではなく、外国人材活用成功の土台となります。

ベトナム語が公用語であること、英語は都市部中心に通じること、文化的背景を踏まえたコミュニケーションが定着率向上の鍵であることを理解し、翻訳ツール活用や日本語学習支援と組み合わせることで、言語の壁を乗り越えられます。

ベトナム人対応で培ったノウハウは他国籍人材にも応用可能です。まずは基本的な挨拶から始めて、段階的に関係構築を進めていきましょう。

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記事を書いた人
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行政書士法人バタフライエフェクト
行政書士法人バタフライエフェクトは、外国人の就労ビザ取得、相談のエキスパートです。上場企業様から小規模の会社様まで、これまで10,000件以上の案件を支援。就労ビザを踏まえた外国人雇用のコンサルティングも行っており、年間実績1,500件、ビザの専門家が多数在籍しています。
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