ベトナム人の特徴7選｜採用・雇用の成功ポイントと注意点

本記事では、ベトナム人の特徴を深く理解し、採用・雇用における成功ポイントと注意点を解説します。

人事担当者や経営者の方々が、これからベトナム人材の強みをどう最大限に活かし、長期的に就労関係を構築するためにどのようなことを行っていけばいいのか、その実践的なヒントも一緒にご紹介していきます。

1．ベトナムの基本情報と在日ベトナム人の現状

地理と文化から理解するベトナム人の多様性

ベトナムは中国の南側、インドシナ半島の東側に位置する東南アジアの国です。

南シナ海に沿って南北に細長く延びている国土が特徴で、その地理的特性から地域によって国民性や気質が異なります。

• 北部（ハノイを中心とした地域）では、勤勉で真面目な人が多く、伝統を重んじる傾向にある。
• 南部（ホーチミンを中心とした地域）では、オープンでフレンドリーな人柄が特徴的。

このような地域差は、採用時や職場でのマネジメントにおいても考慮すべき重要なポイントとなります。

また、民族構成としては、キン族（越人）が全人口の約8割を占め、残りは54の少数民族で構成されています。

多様な民族が共存する国であり、それぞれが独自の文化や価値観を持っており、このような文化的多様性がベトナム人の柔軟性や適応力の背景になっていると言えるでしょう。

急増する在日ベトナム人の最新データ

日本に在留するベトナム人の数は急速に増加しています。

出入国在留管理庁の統計によると、2013年には約7.2万人だったベトナム人在留者数は、2023年には約52万人に達し、10年間で約7倍に増加しました。2025年現在では、さらに増加していると予測されています。

在留資格別に見ると、技能実習生が最も多く、次いで特定技能、留学生、技術・人文知識・国際業務などとなっています。

特に2019年4月に新設された特定技能制度により、製造業、建設業、介護業などの分野でベトナム人材の受け入れが加速しています。

就労分野としては、製造業が最も多く、次いで建設業、サービス業、IT業界と続きます。

地域分布では、製造業が集中する愛知県や静岡県、大都市圏である東京都、大阪府などに多く在住しています。今後も人手不足が続く限り、ベトナム人材の需要は高まり続けると予想されます。

ベトナム人の平均年収や日本での雇用するためのポイントも含め詳しく知りたい方は「ベトナム人の平均年収はいくら？日本での雇用のポイントを解説」の記事をご覧ください。

2．ベトナム人の7つの特徴と職場での活かし方

家族を何よりも大切にする強い絆

ベトナム人は家族を非常に大切にし、家族関係を最優先する価値観を持っています。

日常生活においても家族で集まることを当然と考えており、日本で働いていても家族のために月に数回帰国するベトナム人は珍しくありません。

特に「テト(※)」と呼ばれる旧正月は、家族一同だけでなく親戚も集まる最も重要な行事です。この時期は必ず帰国したいと考えるベトナム人が多く、企業側はこの時期の休暇取得に柔軟に対応することが求められます。

※テト・グエン・ダン（Tet Nguyen Dan）は、テト（Tet）としてよく知られており、ベトナムで最も重要な祝日・祭事です。テトは太陰太陽暦である旧暦に基づいており、春の始まりを意味します。

勤勉で真面目な仕事への姿勢

ベトナム人は総じて勤勉で真面目な性格を持っており、与えられた仕事に対して熱心に取り組む傾向があります。特にベトナム人女性は勤勉な人が多いと言われています。

その理由として、ベトナム戦争終結からまだ約50年しか経過しておらず、生活が困窮した経験を持つ親世代の影響で、一生懸命働いて家族を養うという価値観が背景にあります。

手先が器用で細かい作業に強い適性

ベトナム人は一般的に手先が器用で、細かい作業が得意という特徴があります。

昔から「縫製」や「刺繍」などの伝統工芸品の製造が盛んであり、特に女性の中にはこうした技術に長けた人が多くいます。

明確な指示を好む仕事のスタイル

ベトナム人は一般的に明確な指示を好み、曖昧な指示や「空気を読む」ことを前提としたコミュニケーションが苦手な傾向があります。

特に日本語の理解に苦労しているベトナム人にとって、曖昧な指示はストレスとなりやすいです。

日本の職場では「察する文化」が根付いており、明示的に指示されていなくても、状況から求められていることを汲み取ることが期待されがちです。

この文化的差異が、指示の解釈を巡るミスコミュニケーションの原因となることがあります。

短期的な利益を重視する実利的思考

ベトナム人は一般的に目先の利益を重視する近視眼的な思考を持つ傾向があります。

就職においても、将来的なキャリアアップよりも、現時点でどれだけ稼げるかを優先して判断する場合が少なくありません。

そのため、求人で重視されるのは「5年働くと昇給して高収入が得られるか」というよりも「現時点でどのくらい高収入か」です。

日本人の場合は、現時点よりも将来に備えることを重視する方が多いので、この違いもしっかり理解しておきたい部分です。

転職率が高く条件の良い仕事を求める特性

ベトナム人は一般的に転職のサイクルが早く、条件の良い仕事があれば移りやすい傾向があります。

日本人のような会社への忠誠心よりも、自分や家族のためにより良い条件の仕事を求める実利的な考え方を持つ人が多いです。

金銭的条件だけでなく、総合的な満足度を高める施策を講じることが重要です。

女性の社会的地位が高く決断力がある特徴

ベトナムでは「かかあ天下」と呼ばれるように、家庭内で女性が主導権を持つことが一般的です。

特に家計の管理や重要な決断において、女性が中心的な役割を果たしていることが多いです。

3．日本人とベトナム人の文化ギャップと対処法

仕事観の違いを理解する

日本人とベトナム人では、仕事に対する考え方に大きな違いがあります。

日本では「仕事第一」の文化が根強く、長時間労働や休日出勤も厭わない傾向がありますが、ベトナム人は一般的にプライベートや家族を優先する価値観を持っています。

下の表でも分かるように仕事選びや、休みの取り方、残業に関しても考え方は日本人とは全く違うのです。

業務の繁閑に応じた柔軟なシフト設計や、家族の事情による休暇取得への理解を示すなど、互いの価値観を尊重したワークスタイルの構築が重要になります。

また、残業が必要な場合は、その理由と期間を明確に伝え、代休や報酬で適切に還元することでモチベーションの低下を防ぐことができます。互いの価値観を尊重しあうことで、より長期的な人材確保に繋がっていくのです。

コミュニケーションスタイルの違いを乗り越える

日本人とベトナム人では、コミュニケーションスタイルに大きな違いがあります。

日本では「本音と建前」の文化があり、直接的な表現を避ける傾向があります。

相手の気持ちを慮って遠回しな表現を好み、「空気を読む」ことが求められますが、ベトナム人は比較的率直に自分の意見を表明する傾向があり、曖昧な表現による意図の汲み取りが苦手な場合があります。

これが、互いの意図を取り違えるコミュニケーション齟齬の原因となることがあります。

対処法としては、

• 定期的な1on1ミーティングを設ける
• 交流イベントを設ける
• 通訳や文化の橋渡し役となる人材を活用する

などがあります。

ベトナム人社員が安心して意見を述べられる環境を作ることが効果的です。また、意見を述べやすくするために、事前に議題を知らせておく、選択肢を提示して選んでもらうなどの工夫も有効です。

日本人側も、明確で具体的な表現を心がけ、曖昧な表現や婉曲的な言い回しを避けることを心がけましょう。

時間感覚と約束に対する認識の違い

日本人とベトナム人では、時間に対する感覚や約束事の捉え方に違いがあります。

日本では「時間厳守」が強く求められ、1分の遅刻も許されない場面がありますが、ベトナムではある程度の時間の融通が許容される文化があります。

この違いは、スケジュール管理や納期の認識にも影響し、日本人の期待する納期とベトナム人の認識する納期にずれが生じることがあります。

また、約束事の重みや優先順位の付け方にも違いがあり、家族の事情などが発生した場合の対応にも差が見られます。

対処法としては、

• 期限や時間に関する明確なルールを設定する
• 文書化する
• スケジュール管理ツールの導入
• リマインダーの活用

予定変更が必要な場合の連絡方法や代替案の準備など、柔軟に対応できる体制を整えておくことも重要です。時間感覚の違いを互いに理解し、少しずつ歩み寄ることで、円滑な業務遂行が可能になります。

4．ベトナム人採用・雇用の5つの成功ポイント

適性を見極めた採用選考の実施方法

ベトナム人材を採用する際は、彼らの強みを活かせる職種・業務への適性を見極めることが重要です。

特に手先の器用さを活かせる製造業や精密作業、勤勉さを活かせる品質管理業務などは、ベトナム人の特性と相性が良い傾向があります。

実際に採用していくにはまず面接・選考を進めていかなければなりません。

就労条件など難しい内容も含まれるため、あとになって間違いや認識のズレが起こってトラブルにならないように、しっかり通訳を入れてコミュニケーションをとることが大切です。

そのうえで通常の面接に加えて、実技テストや適性検査を取り入れていくことも有効です。

例えば

• 製造業の場合
  簡単な組み立て作業の実施をし、手先の器用さや作業の正確性をチェックする
• 人物評価の場合
  長期的に働く意欲があるか、現在の家族の状況、前職の勤務年数などを判断材料にする

採用面接では通訳を介して丁寧にコミュニケーションを取り、互いの期待値を擦り合わせることが、入社後のミスマッチを防ぐ鍵となります。

言語サポートと充実した研修体制の構築

ベトナム人材の定着と能力発揮のためには、言語面でのサポートと充実した研修体制が欠かせません。

具体的なサポートや研修をおこなっていくには以下の表のようなことができます。

項目	サポート内容
日本語教育支援	・定期的な日本語レッスン ・日本語能力試験の受験支援 ・業務で使用する専門用語や日常会話をまとめた用語集の作成
多言語マニュアルの活用	・作業手順書、安全マニュアルをベトナム語に翻訳する ・図や写真をなるべく多く使用する ・ベトナム語と日本語を併記する
技術研修プログラム	・3ヵ月ごとに明確なステップアップできるような設計をたてる ・定期的にスキルチェックと評価フィードバックを行う

このように具体的なサポート体制や充実した研修体制を作ること、また明確なステップアップの道筋を示すことでモチベーション維持につながります。

また、定期的なスキルチェックと評価フィードバックを行い、成長を実感できる仕組みを整えることも重要です。

家族を大切にする文化への配慮と支援

ベトナム人は家族を非常に大切にする文化を持っているため、この価値観に配慮した支援策が定着率向上に直結します。

まず、帰国時期への配慮とシフト調整として、テト（旧正月）などの重要な家族行事の時期には、可能な限り帰国休暇を取得できるよう配慮することが重要です。

年間スケジュールを事前に確認し、業務の繁忙期と重ならないよう調整することも有効です。

家族イベントへの理解と休暇制度としては、家族の冠婚葬祭や子どもの学校行事などに参加するための特別休暇制度を設けることが考えられます。

また、ビデオ通話などで家族と連絡を取る時間や環境を確保することも、心理的な安定につながります。

明確なキャリアパスと報酬制度の設計

ベトナム人材の長期的な定着とモチベーション維持のためには、明確なキャリアパスと適切な報酬制度の設計が欠かせません。

モチベーションを維持する昇給・昇格制度としては、勤続年数や業務習熟度、資格取得などに応じた段階的な昇給システムを構築することが効果的です。

特に目に見える形での評価と報酬が重要で、半年ごとの評価面談と連動した昇給制度などが有効です。

また、日本語能力試験のレベルアップに対する報奨金や、新たな業務スキル習得時の手当支給などがモチベーション向上につながります。

長期的な成長を促す目標設定としては、個人ごとの成長プランを策定し、定期的な振り返りと目標の再設定を行うことが重要です。

特に、ベトナム人は短期的な利益を重視する傾向があるため、短期目標と長期目標をバランスよく設定し、短期目標達成の積み重ねが長期的なキャリア形成につながることを実感できるようにすることが効果的です。

多文化理解を促進する職場環境づくり

多様な文化的背景を持つ人材が協働する職場では、相互理解を促進する環境づくりが重要です。

日本人社員向け異文化交流としては、ベトナムの文化や習慣、コミュニケーションスタイルの特徴などを学ぶワークショップを定期的に開催してみたり、ベトナム人社員に自国の文化や習慣を紹介してもらう機会を作ることで、相互理解も深まります。

またチームビルディング活動の事例としては、業務外での交流会や共同作業を通じた絆づくりが有効です。

例えば、社内運動会や BBQ、ボランティア活動などを通じて、言語や文化の壁を超えたコミュニケーションを促進することができます。

また、バディ制度（先輩社員がメンターとなる制度）の導入も、新入社員の不安解消と円滑な職場適応に役立ちます。

多文化共生を企業文化として根付かせることで、より創造的で柔軟な組織へと成長することができるでしょう。

5．ベトナム人雇用における3つの注意点と対策

転職率の高さへの対応策

ベトナム人材は一般的に転職率が高い傾向があるため、計画的な対応策が必要です。

まず、競合他社の動向分析と待遇の適正化として、同業他社や地域の外国人雇用企業の給与水準や福利厚生を定期的に調査し、自社の待遇が競争力を維持できているかチェックすることが重要です。

特に給与面では、能力や勤続年数に応じた明確な昇給制度を設け、長期勤務のメリットを感じられるようにしましょう。金銭面以外の満足度向上策としては、働きやすい職場環境や良好な人間関係の構築が効果的です。

職場の定着率をあげるためには

✔ベトナム語対応の相談窓口の設置

✔ベトナム人同士のコミュニティ形成支援

✔住居や生活面でのサポート

があると効果的です。

会社への帰属意識を高めるためには

✔表彰制度を設ける

✔社内イベントへの参加機会を作る

ことを心がけていくといいでしょう。

離職前に把握すべきサインとしては、遅刻や欠勤の増加、モチベーションの低下、同僚との交流減少などが挙げられます。

これらのサインを早期に察知し、個別面談で悩みや不満を聞き取り、改善策を講じることが重要です。

コミュニケーション齟齬の防止策

定期的なフィードバック面談の実施では、業務上の課題や悩みを早期に発見し解決するため、1〜2ヶ月に一度の個別面談を設けることが有効です。

この際、通訳を介した丁寧なコミュニケーションを心がけ、相互理解を深めることが重要です。

仲介者（ブリッジ人材）の活用としては、日本語能力が高く、両国の文化に精通したベトナム人社員や、ベトナム駐在経験のある日本人社員などを橋渡し役として配置することが効果的です。

彼らは単なる通訳としてだけでなく、文化的背景を踏まえた説明や調整を行うことで、より深いレベルでの相互理解を促進し、円滑な職場適応をサポートします。

長期休暇・帰国への対応方法

ベトナム人社員の長期休暇や一時帰国は、家族との絆を大切にする文化的背景から必要不可欠なものです。

年間スケジュールの事前調整としては、年度初めに帰国予定時期（特にテト期間）を確認し、業務計画に組み込むことが有効です。

特に繁忙期と重ならないよう調整し、必要に応じて交代制で休暇を取得できるようにすることで、業務への影響を最小限に抑えられます。

また、代替要員でもスムーズに業務を遂行できるように、業務マニュアルの整備や標準化を進めるなどの環境を整えることも大切です。

今は、IT技術を活用したリモートワークの導入も一つの選択肢となっているので、事務作業やデータ入力、設計業務などであれば、一部の業務を帰国中にも継続できる可能性があります。

クラウドツールやビデオ会議システムなどを活用し、物理的な距離を超えた協働の仕組みを構築することで、より柔軟な働き方が実現できるでしょう。

特定技能でベトナム人を採用するための方法と雇用後のポイントについて詳しく知りたい方は「特定技能でベトナム人を採用！5つのステップと雇用後のポイント」の記事をご覧ください。

6．ベトナム人採用・雇用の未来と展望

ベトナム人材の採用・雇用成功には、彼らの特徴や文化的背景への深い理解が不可欠です。

家族を大切にする価値観、勤勉さ、手先の器用さなどの強みを活かしつつ、適切なサポート体制と明確なキャリアパスを提供することで、長期的な定着が実現します。

文化ギャップを乗り越え、互いを尊重する職場環境を作ることが、多様性を活かした組織づくりの第一歩となるでしょう。